2.失行


失行とは「運動可能であるにもかかわらず合目的な運動ができない状態」と定義されています。
麻痺や失調といった運動障害がなく、指示されたことへの理解も不十分ではないのにも関わらず、日常生活などでいつも行っている行動がうまくできなくなることをいいます。
ある行動や行為について指示された内容は分かっていますが、やろうとしても簡単な運動を間違えてやってしまったり、道具をうまく使えなかったりします。

主に脳の背側運動前野や縁上回近傍(頭頂間溝近傍)などが障害されることによりおこります。

具体的な症状

・ 道具がうまく使えない。
・ 日常の動作がぎこちなくなる。
・ 普段している行動でも、指示されるとできなくなる。
・ 目的に沿った行為ができない。
・ 手先を使うことができない。
・ 服を着ることができない。
・ 形を作ることができない。
・ 見たものをつかむことができない。
・ 左右両手を協調させて使うことができない。



理解ある支援のために
失行のある方への関わり方は、わたしも本当に難しいと感じています。
わたしたちは普段、手足を思うように動かし、何気なく道具を使い日常生活を送っていますが、失行のある方はそれができないということなのです。
例えば、何かのジェスチャーをして、それを真似て動いてみてくださいと患者さんに言ったとします。患者さんは言われている内容は理解できていても、真似して体を動かすことができず、違う動作になったり行動に移せなかったりするのです。
しかも、失行のある方の多くは、右上肢(利き手)の麻痺を伴っていることがほとんどです。また、失語症も合併しやすく、指示理解が十分にできない場合もあります。
以上をまとめると、利き手が麻痺の状況で、動かせるはずの体は意図しない動作をし、さらにコミュニケーション能力までも低下した状態ということになります。

想像しようにも、それをはるかに絶する世界に患者さんはいるのだと思います。

ですが、失行は急性期に生じることが多く、その後は改善しやすいと言われています。

急性期の関わりで大切なことは、"日常生活動作の改善"に重点を置くことです。患者さんが日常生活を送るにあたって、具体的に何ができないのかを把握しなければなりません。そのため日常生活で行う動作を実際にしてみてもらいます。どこかで間違えた動作をした時には、そのままにしておかず、お手本を見せる・実際に手足をサポートしながら正しい動作を体験してもらうなど多角的に刺激をしていく必要があると考えます。
何度も繰り返し、ひとつひとつの動作を体で体験しながら覚えていってもらうといいと思います。

そのような関わりの中で注意したいことは、決して焦ってはいけないということです。
先に述べた患者さんの状態を想像してみてください。なにをするのにもとても困難な状況です。ひとつの動作を習得するのにも、かなりの反復訓練と時間を要するでしょう。
難しいことだとは思いますが、できないことに着目しながら、できないことに固執せず、できたことを大切にして穏やかな関わりを維持していってもらいたいと思います。