NHK受信料 (Wikipedia)

NHK受信料

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NHK受信料(エヌエイチケイ じゅしんりょう)は、日本放送協会(NHK)が受信契約を締結した者から徴収する負担金である。「受信料」と略称されることも多い。

目次

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受信料制度の目的

放送法には、受信料制度の目的がどのようなものであるかは特に明記されていない。なお、放送法の目的として以下三点があげられていることから、受信料制度も以下目的に資するとして規定されたと考えられる。

  1. 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
  2. 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
  3. 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

以下の受信料制度の必要性と問題点も参照のこと。

NHK受信料の法的根拠 

受信契約・受信料に関しては放送法32条に規定されている(他条文の準用規定にも注意が必要である)。

放送法32条(受信契約及び受信料)
  1. 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的 としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り 受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
  2. 協会は、あらかじめ総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
  3. 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。

上記条文により、条件を満たすテレビ等の受信設備を設置した者は、NHKとNHKの放送の受信についての契約を締結する義務があることになる。また、放送法32条2項よりその契約を根拠として受信料を徴収することが前提とされていることがわかる。

受信契約 

NHKは、NHKの放送の受信についての契約(以下受信契約)を日本放送協会受信規約により締結する方針を取っており、日本放送協会受信規約(以下 「受信規約」と書く)は総務大臣の認可を受けている。法律上適切な手続きを取れば、他の条項によって受信契約をすることも可能であるが、現在のところその ような例は知られていない。

受信契約締結義務者は、NHKと受信契約を締結すると当該契約に基づきNHKに対し受信料を支払う義務を負う。

日本放送協会受信規約の内容 

日本放送協会放送受信規約に よると、受信契約は個人の世帯※では世帯毎(一世帯に何台テレビ受像機を設置しても1契約)に、事業所の場合は設置場所(部屋)毎に行うこととなってい る。契約種別については、地上波のみの受信機を対象とした「地上契約」、地上波・衛星波両方の受信機を対象とした「衛星契約」、衛星放送のみの受信機を対 象とした「特別契約」に分けられ、受信料の金額もそれぞれで異なっている。また、家族全員が非課税の世帯や災害被災世帯等は全額免除、世帯主が視覚・聴覚 障害者の世帯などは半額免除となる制度があり、市区町村の福祉事務所等で「受信料免除申請書」を受領できる。その他に、小中学校などで教育のために使用す るテレビにおいては課金しないといった制度もある。

受信料は原則的に前払い扱いであり、最低1期分(1期は2ヶ月)は払わなければならないとされている。但し、6ヶ月(支払いは6月と12月)・ 12ヶ月(支払いは6月または12月のどちらか)分をまとめて払ったり、訪問集金ではなく口座引き落としで払うなどすれば、月額に月数を掛けた金額よりも 若干受信料は減額される。数ヶ月分前払いをしていて、その途中で受信設備を処分してしまったり、既に受信契約のある世帯に同居した場合、あるいは海外へ転 居した場合などは、NHKへ廃止手続きをすることで、元々の前払いの月数及び残りの月数から精算を行い、返戻金を受けることができる。但し、返戻が可能な のは、NHKに申し出て手続きをした月からとなるので、基本的に過去に遡ったいわゆる「遡及返金」はできない。

なお、テレビ国際放送のNHKワールドTV は海外向けの放送で無料放送になっていて、もともと日本国内での受信を想定していないが、物理的には日本国内でも受信可能であるため、日本国内でNHK ワールドTVおよびNHKワールド・プレミアムのノンスクランブル放送(2008年9月29日からおもにニュース・情報番組を中心に一部時間帯のみ)を受 信されていても追加分の受信料は発生せず、実質的に現行の「衛星契約」・「地上契約」・「特別契約」の受信料の支払いだけとなっている。

日本放送協会受信規約以外の条項による受信契約について 

受信契約を締結する義務がある者であっても、法律上は日本放送協会受信規約で受信契約を締結することは義務づけられていない。そのため、日本放送協 会受信規約ではなく他の条項によって受信契約を結ぼうとする主張をする者がいる。多くは受信料を格安に又は無料にすることが目的であるように思われるが、 日本放送協会受信規約によれば総合テレビ・教育テレビの片一方が受信できる場合と双方が受信できる場合の受信料が同一であるなど、当事者にとっては必ずし も合理的と言えない料金設定になる場合もある。このため、日本放送協会受信規約以外の条項(または日本放送協会受信規約の該当部分の改定)による契約を求 める声を一律に不合理と言うことはできない。

なお、受信契約は附合契約普通取引約款参 照)であるので契約内容について交渉することはできず、日本放送協会受信規約の条項により契約を締結する義務があるとする主張もある。しかし、仮に日本放 送協会受信規約が附合契約なのであれば、附合契約の定義から契約を拒否する自由があることになる。仮に日本放送協会受信規約の条項により契約を締結する義 務があると解釈できるのであれば、日本放送協会受信規約は法に準ずる性格を持ち、NHKが事実上の準立法権を有することになる。

日本放送協会受信規約ではなく他の条項によって受信契約を結ぼうとしたところ、NHKに受信契約を断られた者が受信契約締結義務を果たしているかに ついては微妙である。ただし、NHKが仮に「受信契約締結義務を果たしていない」として訴訟をするならば、NHK側から受信契約を断った事実があれば裁判 上不利に作用すると考えられる。

受信契約締結時の割引について 

日本放送協会受信規約によれば、契約が成立すればその条項により受信機設置時からの受信料を支払うことになる。しかし、NHKのスタッフが受信契約を締結するように訪問してお願いする際などに、受信機設置後で契約締結日以前の月の受信料を徴収しない場合があるとされる。

これも、厳密に言えば「日本放送協会受信規約以外の受信契約」を結んでいると考えることができる。

尚、総務大臣の認可を受けた基準以外で受信料を免除する行為は放送法第32条2項に反する違法行為であり、「日本放送協会受信規約以外の受信契約」 は放送法32条3項に反する違法行為である可能性がある。いずれも放送法違反に該当すると判断された場合には、放送法第55条2項によりNHKの役員が 100万円以下の罰金に処される。

受信契約・受信料集金の郵便事業会社の委託について

郡部や離島など、NHK地域スタッフが訪問しない箇所では、NHKが郵政省時代から日本郵政公社時代まで集配を行う特定郵便局が契約、集金の委託を行ってきており、郵政の民営・分社化になった現在では特定郵便局という括りはなくなり、旧集配特定郵便局の集配を行う集配センター、ならびにかつて集配特定局だった郵便事業会社の支店が現在も引き続きNHKの委託という形で契約・集金を行っている。

受信契約の法的性格について 

東京大学大学院経済学研究科教授の醍醐聰によれば、受信契約の法的性格は、NHKが放送法にもとづいた放送を行う義務があり、受信者が受信料を支払う義務がある民法上の双務契約とされる。この立場によれば、放送法に違反した番組があれば、民法・533条同時履行の抗弁権により、受信者はその部分に関して受信料を支払う義務はないとされる。

なお、NHKは上記と異なる見解を表明しており、番組の内容がいかなるものであろうとも受信者は受信契約に定める受信料を支払う義務があるとしている。

受信契約対象外の受信設備 

NHKは以下のように主張していると言われる。法的な定義ではない。

  • 放送法第 32条に書かれた「放送の受信を目的としない受信設備」とは販売を目的として店頭に陳列・在庫している受信設備のことを指し、「多重放送に限り受信するこ とのできる受信設備」とは放送事業者がその事業の為に他局の放送をモニタリングする目的で設置している受信設備のことを指すとのことである。
  • チャンネル設定の変更またはチューナー設定をずらすことによりNHKの放送が見られないようにしても、一般の人が簡単にまた元に戻せる状態であるならば「受信することが出来る設備」と解釈されるとしている。

一方、NHKの受信契約制度に批判的な立場の者などからは、法律を根拠として以下のように主張されることがある。(なお、主張の詳細は人によって異なり、以下の一部のみを主張する者も多い。)

  • ビデオ再生・DVD鑑賞・ゲーム機用のモニタ使用を目的として、例えばアンテナを設置せずにテレビを設置した場合は、放送の受信を目的としない受信設備であることから、受信契約締結の義務はない。通話を目的として購入したテレビ(ワンセグ)チューナー付き携帯電話、ケーブルテレビ(有線放送)の場合も同様である。
  • アンテナ・フィルタの組み合わせ等により民放の放送が受信できるがNHKの放送が受信できないテレビを設置した者は、協会の放送を受信することのできない受信設備を設置しているので受信契約締結の義務はない。
  • チャンネル設定を変更することまたはチューナー設定をずらすことでNHKの放送が受信できないテレビを設置している者は、設定を変更してNHKの 放送を受信できるようにするまでは受信契約締結の義務はない。一般の人がすぐに設定を変更できる状態であっても、設定を変更するまでは協会の放送を受信す ることのできない受信設備である事実には変わりないことから、受信契約締結の義務はない。

ケーブルテレビと受信契約の関係

最近になって、ケーブルテレビでNHKを視聴する場合は受信契約の義務を負わないという主張をする者が増えているようである。これは、放送法有線テレビジョン放送法のそれぞれの解釈から出てきたものである。

  • NHK側の主張
放送法第 32条1項では、協会の放送を「直接受信出来る」ではなく単に「受信出来る」となっている。このことは、アンテナを用いて直接受信しようがケーブルテレビ による再送信で間接的に受信しようが「受信出来る」には変わりなく、最終的にNHKの放送が視聴可能であればケーブルテレビであっても受信契約義務は発生 する。アンテナが「自宅にあるか」「自宅以外にあるか」の違いだけであり、有線テレビジョン放送法にはその点についての表記が無いが、これは「書くまでもないこと」ゆえに他ならない。
  • ケーブルテレビ契約者側の主張
放送法上で定義される「放送」とは「公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信」(第2条1項)であるのに対し、有線テレビジョン放送法上で定義される「有線放送」とは「公衆によつて直接受信されることを目的とする有線電気通信の送信」(第2条1項)である。
このため、有線放送を受信するよう設置されているテレビは、放送法第32条の「協会の放送を受信することのできる受信設備」に該当しない。有線テレビジョン放送法などの他の法律にも第32条の準用規定が設けられておらず、受信契約締結の義務はないと解釈するほかはない。

なお、筑波大学大学院 人文社会科学研究科 憲法学専攻の土屋英雄が、「NHK受信料は拒否できるのか 受信料制度の憲法問題」の57ページから展開しているのも上記の「ケーブルテレビ契約者側の主張」と同様の内容である。

現在のところ一般のケーブルテレビ会社では、NHKの受信契約については「ケーブルテレビ視聴料金にはNHKの受信料は含まれておりません」として放置するところと、NHK衛星放送の団体割引制度を利用したケーブルテレビ会社を通した受信料納付を呼びかけるところに分かれる。

受信契約の解約 

放送受信契約の解約は、受信規約第9条に基づき、受信設備の故障等により撤去した・他人に譲渡したなどで受信設備を廃止した等で契約の必要性が無く なった場合は、NHKに対し「放送受信機廃止届」を出すことにより受信契約を解約することが出来る。その手続き方法の詳細についてはNHKのサイトに記載 されている受信契約相談窓口か、自分の住所を管轄するNHKの放送局・支局・営業センターを探し出して問い合わせをするとよい。

BSデジタル放送等におけるメッセージ表示 

最近ではBSデジタル放送に限り、NHKチャンネル(BS-1・BS-2・BS-hi)に合わせた時に画面左下にNHKへ受信機設置の連絡をするよう促すメッセージが出ることがある。なお、これはBS日テレなど、民間放送のチャンネルでは表示されない。これは受信規約第7条に基づくもので、目的は受信料の公平負担を徹底することであり、受信を開始してから30日が経過した時点で設置届をまだNHKに出していない場合に表示される。なお、衛星放送の受信契約を締結していても、受信機の設置届を出していないとメッセージが表示される。

また、デジタル放送受信機に同梱されているB-CASカードのユーザ登録を行う際、「登録されたユーザ情報を使って各放送局がその利用案内を送ることに同意しますか」の選択肢で「いいえ」を選択していると、NHKに受信機を設置した情報が伝わらないためにメッセージが出るようになる。

メッセージ表示を消したい場合は、B-CASカードのユーザ登録の際に先述の選択肢で「はい」を選んで登録するか、メッセージ中に表示される所定の電話番号(フリーダイヤル) に電話をして自分の名前・住所・電話番号、受信機に同梱されていたB-CASカードの番号を言えば、その後NHK(BSデジタル)にチャンネルを合わせた 時にB-CASカードのデータ更新が即座に行われてメッセージを消すことが出来る。これらは、上述の直接アンテナやチューナーを設営して受信する場合の 他、ケーブルテレビや、スカパー!光光パーフェクTV!を通して受信する場合でも同様に表示されている。

この設置届でNHKの受信契約が成立することにはならないが、NHK側で受信者としての情報を把握されることになるため、その後受信契約を締結しなければ訪問・電話などで衛星契約手続きをするよう話を受けることになる。

受信料制度の必要性と問題点 

受信料制度の必要性 

NHKおよび受信料制度の賛同者は、受信料は「NHKを見る・見ない」に対する対価ではなく、テレビ放送受信機所有者から公平に徴収される「特殊な公的負担金」であると主張する。そして、受信料制度には以下のような目的があることから必要性があると主張される。

  • 公正な報道を行うため、政府・企業等の圧力に屈しないよう財源の独立性を維持する
国民の「知る権利(情報受領権)」を守る
一部の権力者等にとって都合の良い情報ばかりが流され、結果的にそれで国民が誘導されたり洗脳されたりすることを防ぐ
  • 安定した財源を確保して視聴率等の市場経済の原理に流されない機能を維持する
放送普及のために日本全国広くあまねく放送が利用出来るようにする
文化の(生活基盤を支える)担い手となり、国民の生命・財産を守る
情報を共有して地域の人々の結束を深める
視聴率が得られなくとも必要とされる教育放送・福祉放送・災害緊急放送を行う
視聴率の影響を受けると、視聴者の興味本位的な番組やスポンサーに迎合する番組制作が行われて放送内容が低俗化することなどが懸念されることから、それを防ぐことにより放送そのものの質の維持・向上を図る
  • テレビ設置者に公平な負担を課すことによって、より民主的な事業運営を図る
株式会社の制度では、より多くの株を持っている株主がその会社を動かす権力を持っていると言える。このような事態になることを防ぐために特定の個人や企業に負担が偏らないようにし、事業運営に民主主義を反映する

受信料制度の問題点

現行の受信料制度には様々な問題点が指摘されており、これらの理由から受信料制度の抜本的な変更や廃止が必要であると主張されることもある。また、このことを理由として放送法で受信契約の義務が定められていてもそれを締結しない者、受信料を払わない者もいる。

指摘されている問題点にはおよそ次のことがある。

放送内容が公共放送として相応しくない
本来公共放送は、報道の中立性・公平性を確保し、視聴率が得られなくても必要とされる放送等を行い、また視聴率稼ぎのために放送内容が興味本位になることを防ぐ等の目的を掲げているはずである。しかし実際は、野球中継放映権民間放送の相場以上の金額で獲得したりするのをはじめ、視聴率獲得を意識した過剰な演出・表現を行ったり(近年ではニュース番組の『NHKニュース7』『News Watch 9』についてもこれらのことが非難されている)、必要以上に娯楽番組が多かったり、全国放送でありながら一部の地域を偏重した番組作りが行われたり、特定の政治勢力・公的組織を擁護する放送に内容が傾いているのではないかということを指摘する意見も少なくない。公共放送と言えども、結局自身に不都合なことは隠蔽する可能性があり、背後には国会総務省等の国の機関があることから「報道の中立性を確保する」も机上の空論に過ぎないのではないか、またいかなる外力に屈しないということは、放送・事業内容も独善的になるのではないかという意見もある。
地上デジタルテレビジョン放送アナログ放送の受信料が同額で、釣り合っていない
2006年以降、東京都大阪府など都市部を皮切りに、各県庁所在地や一部のでも段階的に地上デジタルテレビジョン放送(地デジ)の普及が進みつつあるが、NHKは契約者の在住地で地デジが受信できるようになった場合、または地デジ対応のテレビに変更した場合であっても受信料を改定(値上げ)しておらず、据え置きのままとしている。
2009年以降になってもなお、地デジやデータ放送が利用できず、アナログ放送しか受信できない地域(主に山村離島などの過疎地)も多々あるが、これらアナログ放送しか受信できない場合でも受信料は変わらないため、著しい不公平感が拭えない(逆に、テレビの故障などでアナログ放送のテレビに変えざるを得なくなった場合でも同様に受信料が変わらない)。
安定した財源と法律・政策で守られ、不必要に組織が巨大化している
民間放送は市場経済の原理のもと、その存続をかけて厳しい競争の中で動いているが、NHKは受信料収入という安定した豊かな財源が確保され、また特殊法人である故に法人税が免除されている等かなり保護・優遇された組織であると言える。その財源により不必要なまでに子会社を 設立して受信料とは別に多くの利潤をあげ、多くの官僚・上層部の天下り先になっているということ、また不必要な事業に多額の投資をしすぎているのではない かとの声もある。そんな中、2004年夏頃、(受信料で賄われるべきの)番組制作費がプロデューサーらに着服される事件などの不祥事が相次いで発覚し、それにより従来から受信料を払っていた世帯からも受信契約の廃止・受信料支払いの拒否をされるに至っていることがある。
民間放送のみでも十分ではないのか
報道関係の番組や緊急地震速報などのニュース速報民間放送(民放)でも行われており、災害の被災者等の中には公共放送でなくても、民放だけで十分足りるという考えを持つ者も増えている[1]。柔軟な番組編成や教育番組の充実、衛星放送やデジタル放送など新たな放送技術の開拓など、受信料制度が果たしている役割を評価する一方、日本全国に広くあまねく放送が利用できるインフラ整備も成熟し、無料で視聴できる民間放送WOWOWスカパー!などの有料放送も多く存在するようになった現在、公共放送・受信料制度を存続させる必要性を疑問視する声もある。
NHKは見ないが受信料を徴収される。「選択の自由」がない・奪われている
実際の放送はNHKの放送以外にも無料・有料の民間放送が存在しており、例えば「無料の民間放送だけを見たい」「WOWOWスカパー!といった特定の有料放送だけを見たい」と思っても、NHKには受信料を払わなければならない。さらに法律の文面だけを見ると「NHKを視聴する意志がなく、受信契約を望まない人はテレビが持てない」という状況を強いられると解釈できる。それゆえ「何故、利用もしないものに金を払わなければならないのか」「放送電波の押し売りだ」などと不満を持たれることになる。前述の通り公共放送受信料は対価ではない「特殊な公的負担金」とNHKは主張しているが、WOWOWやスカパー!などの有料放送を視聴する権利を買う為の視聴料も視聴者が経済的負担をすることには違いないことから、「公共放送有料放送ではないのか」という考えを主張する意見もある。また受信料は全額が消費税の課税対象となっており、対価に類するものであると政令(消費税法施行令)に明記されている。
受信料で制作された番組等の営利的な転売
関連会社を通じて放送番組の放送権を転売したり(例:CS局やWOWOWへ大河ドラマ等、モバHO!へニュース番組)、民間会社を通じて放送番組がDVD等でビデオパッケージ販売されており、非営利の公共放送と呼べるのか疑問である。
テレビ所有者の全員が受信料を払っているわけではない
在日外国人で受信料を払っていない人がいる。在日米軍の問題については在日米軍のNHK受信料問題を参照。
現在のところ、受信契約を締結せず受信料を支払っていなくても、実態としてNHKの視聴が可能であり、NHKは立ち入り調査権がないためテレビを 所有していても「所有していない」と嘘をついている人がいても、それらの視聴者に対しても事実上お咎めなしという状態になっている。また、「日本固有の領 土である」と日本政府が主張する北方領土の受信機設置世帯からは徴収していないこと(外国政府が実効支配しており、徴収が困難なため)や、日本に駐留する 在日米軍基地内に設置されているテレビに対しては受信料を徴収していないという実態もある。また、企業などの事業所の契約率が低く、大規模な企業であっても実際の受信機設置箇所数ではなく「全社で3台分契約」といったアバウトな契約も少なくない。[要出典]ホテル旅館の 場合も、各部屋にテレビがあれば1室1契約必要である(2009年2月より2契約目以降の受信料は半額)、正確な台数で契約していないホテル等も多い。こ れでは払う方が損だということで受信料を納めることを拒む人も多い。そもそも、日本国内における正確な受信機の設置箇所数がはっきりせず、正確な契約率を 算出すること自体が不可能な状況なのである。また、2004年7月にNHKの不祥事が発覚して以来、受信料の支払いを拒否する世帯が急激に増え、受信料を払っている人の中から「なぜうちが払わなければならないのか」という不満の声が上がっている。
地域開発スタッフらが違法な勧誘を行っている
地域開発スタッフ(NHKから委託を受けて受信契約の取り次ぎや受信料の徴収業務などを行っている業者。通称:地域スタッフ、以下同じ)などが放送法32条1項の最初の段落のみを強調した上で、「不 満があっても法律にはきちんと従え」「法律を守らないのは非常識だ」と、半ば命令口調・半強制的・強迫的に受信契約をするよう繰り返し要求したり、また早 朝・深夜といった時間帯に突然訪問されること、戸をどんどんと叩く行為、受信契約書であることを告げずに「ここにサインをして下さい」などと氏名・住所を 記入させ、印鑑を押させるなど違法なケースがある[要出典]。NHKではスタッフに対して接遇教育を行ってはいるものの、効果が薄く言い訳のための教育となっているのが現状である。
地域開発スタッフはあくまでも「契約・集金代行業者」であってNHKとの雇用契約はなく、本来「NHKの者です」と名乗るのは職業詐称にあたる。また、地域開発スタッフに対して「帰って欲しい」との意思表示をしたにもかかわらず退去しない場合は、刑法130条不退去罪に処することもできる。また、この地域開発スタッフの中には契約を迫る際に「今契約されれば、初回の請求は来月分からとさせていただきます」「今月分だけは無料とさせていただきますから」と虚偽の発言をした上にNHK受信料についての規定の説明もほとんど行わず受信契約(大半のスタッフは、その場で受信料の口座自動振替継続払いの手続きまでさせている)をさせ、実際には契約した当月分から請求されたというトラブルが多発している。
NHKの経営に視聴者が参加できない
NHKは受信料を支払う視聴者の放送局であるはずなのに経営に視聴者の意思を反映する手段が限られており、経営委員会や放送番組審議会の構成員は 企業経営者や学識経験者が占めていて視聴者の意見を代弁しているとは言い難い。また、NHK会長の記者会見にマスコミ関係者以外の視聴者が出席する方法が 無い。

こういった声は政界の一部からも聞かれたが、2006年1月から自民党の通信・放送産業高度化小委員会等の場で「放送受信料の支払拒否に対する罰則の導入」を内容とする放送法改正の検討を始めてられており、受信料制度廃止の実現は困難な情勢となっている。

スクランブル化について 

現在、受信料不払いや受信契約の解消等の問題がある一方で、受信料を払わずともNHKが視聴出来てしまうことや、NHKを視聴していないにもかかわらず受信料が課金される等の不公平感を無くす為、受信料を支払っている契約者以外は視聴できなくするスクランブル方式を導入しようとする討論もなされている[2]。デジタル放送においてはスクランブル化は技術的に困難ではないが、「特定の人にしか視聴出来なくすることは情報に自由にアクセス出来なくなることになり、公共性が失われることになる」「経済的に窮地に立たされている人に対し情報格差を生じさせることになる」との理由により、NHKとしてはスクランブル化は避けるべきであるという見解を出している[3]。しかし、NHKの主張する受信料の義務化・罰則化は、「受信料を払えなければ無料の民放すら見られない」という状況を意味し、スクランブル化以上の情報格差を生じさせる事になり、非常に矛盾に満ちた主張が展開されていると言える。結局のところ、NHKはスクランブル化によってTV所有者全体から受信料を徴収するという前提が崩れ、減収となるためスクランブル化に反対しているのである。

罰則について

放送法第32条第1項では、所定の条件を満たした者にNHKとの受信契約を義務付けている。しかしながら、条件を満たしているにもかかわらず受信契約を締結しない者に対する罰則は規定されていない。

民法の一般原則を適用すれば、受信契約を結んだ上での受信料不払い(未納)については、契約不履行による損害を受けたとして、NHKは民事訴訟による損害賠償請求が出来ると考えることも出来る。同時に、「政治的に公平であること」(放送法第3条の2)などの放送法の規定に反したNHKの放送部分については、受信者は民法上相当する受信料の支払いを拒むことができ、さらに民事訴訟によりNHKに対して損害賠償請求が出来ると考えることも出来る。

テレビを所有しているのに受信契約を締結しない場合は、契約を結ばないこと自体を不法行為として考えることができる可能性があり、民事訴訟による損害賠償請求が出来ると考えることも出来る。しかし、NHKがこの請求をおこなうためには、米軍基地内のテレビ設置者に対しても同様に損害賠償請求をおこなわなければならないことになる。

ただし未契約者に対し、受信規約に定める受信料額を請求可能であるとすると上述の「日本放送協会受信規約以外の条項による受信契約について」にもあ るように、日本放送協会受信規約が法として機能することになる。未納については民事訴訟を起こす方針を打ち出したがテレビを所有しているのに受信契約を締 結しない場合も、法的手段による取り立てを行おうとした事例は無い[1]

ただし現行の制度では、受信料はテレビ設置者全員からの公平負担を原則としている一方で受信契約をしない者や受信料を払わない者でもNHKが視聴可 能であり、また法律の趣旨を全うしている契約者のみが損をするといった事態が起こっていることになり、これを問題視する意見も多い。これに対し「罰則を導 入すべきだ」と主張する者もいる。またこういった問題を解消する為、地域開発スタッフらが日夜未契約者世帯を訪問してまわり、受信料制度の必要性を理解し てもらうよう説得にあたっているが、これにかかる経費が年間800億円以上であるとも言われており、この経費がかかりすぎているとの指摘もある。

ちなみに日本の受信料制度には罰則が無いが、例えばTVライセンス制度を導入しているイギリスBBCで は受信料の不払い者を独自の機器などを使って特定したり、訪問調査するなどし、違反者に対しては罰金1,000ポンド(日本円で約20万円)が科せられた り、裁判を起こされてその訴訟費用を請求されたり、警察から逮捕・拘留されるなどしている。このように国によって差違があるのは、その国のたどってきた歴 史や文化・国民性の違いがあるからだと考えられる。但し、イギリスなどでもこのTVライセンス制度に対する反対意見・世論があるのも事実[4]で、「欧州人権規約に反する人権侵害だ」と民事訴訟が起こった事例もある。しかし、5年毎に行なわれるBBCを公共放送として存続させるかの国民投票で、廃止票が過半数を占めていないので、イギリスの世論はいまのところTVライセンス制度を支持していると言える。また、フランスでも受信料制度廃止論が国会で議論されたこともあった。

なお、日本同様に罰則が無い受信料制度で運用がなされている例としては、イタリアRAI がある。

日本の受信料制度の歴史

かつて日本で放送が始まった頃は社団法人日本放送協会によるラジオ放送であり、この頃からラジオを聴くことに対する聴取料というもの が存在していた。この当時はラジオ放送とは呼ばず「聴取無線電話」と称しており、まずラジオが聴ける設備を設置した場合、政府の管轄する逓信局から「聴取 無線電話私設許可書」という許可証(免許)を得る必要があった。許可証には、「施設者は無線電信法及び放送用施設無線電話規則並びに之に基づく命令を遵守 すべし」(現代文に変換して転記)とあり、それに基づき日本放送協会に聴取料を払うというしくみで、当時は「聴取料は当面1円(月額1円)」となっていた ようである。聴取料を導入した理由は、放送を電話のように公益性の高い事業にすることで、民間企業による放送局設立出願を排除し、ラジオ放送を速やかに全 国あまねく普及させるためであった。

戦前までは、無線電信法という当時の法律によって、電報や電話などの公衆電信や放送の運用・番組内容について規定し、放送事業を政府の一元的管理統制の下におくと共にラジオ放送を社団法人日本放送協会に独占させ、管理統制していた。戦後はGHQにより放送制度の民主化が進められることになり、1950年、現在の放送法などの電波三法を制定。これにより、民間企業による放送事業参入が認められるようになったと同時に、日本放送協会は社団法人から特殊法人に変わり、放送の普及と社会・公共の福祉の為の放送事業を行っていくこととなった。この際、政府・企業等の圧力に屈さないよういかなる組織に依存する体制を無くす必要があり、その結果、放送の受益者よりその負担金を徴収する「受信料制度」が誕生した。

なお、現在ではラジオの受信料というものは存在していないが、これが無くなったのは1968年5月か らで、その際にテレビ契約が「カラー契約」と白黒受信を目的とした「普通契約」とに分割された。ラジオの受信料が廃止された当時のテレビの普及率は 96.4%(うちカラーテレビは5.4%)である。その後、BS放送の開始に伴い、「衛星カラー契約」・「衛星普通契約」が開始される。2007年9月には「普通契約」・「衛星普通契約」は廃止、「カラー契約」・「衛星カラー契約」の料金に一本化され名称変更し現行の受信料契約種別となった。つまり、地上波のみの受信を対象した「地上契約」、地上波・衛星波両方の受信を対象とした「衛星契約」、地形などにより地上波が全く受信できない地域など衛星波のみの受信を対象とした「特別契約」の3種類である。なお、旧普通契約者は当分の間、旧普通契約時の料金が適用されており、実質は普通契約の新規取り扱いを廃止となっている。

NHKが2008年1月16日に国に提出した平成20年度の予算案・事業計画案においては、営業効率化の一環として、訪問集金制度を2008年9月末で廃止し、口座振替及び金融機関・コンビニエンスストア口支払いに一本化する方針が示されている。また、国の特殊法人改革に関連し、それまで自前で行っていた営業に関する事務を外部委託することも視野に入れ、「市場化テスト」に似た制度の導入に向けて検討を始めている。[5]

出典 

関連項目 

外部リンク