受験から渡米まで
受験までの経緯
2015年6月に名古屋大学のリーディングプログラム(PhDプロフェッショナル登龍門)の一環でアメリカに1ヶ月滞在しました。その際に、修論の主要参考文献の著者であったPeter Schott先生(Yale)とEd Leamer先生(UCLA)と面会するチャンスを得ました(お二人は突然のメールでの依頼を快諾していただきました)。そこでのディスカッションがあまりにも刺激的で、さらに両先生からの薦めもあり、アメリカでのPhD留学を考えるようになりました。
出願から留学までのスケジュール
2016年
9月
Yale・UCLA訪問(研究報告と推薦書の依頼)
TOEF、GRE受験
10月
GRE受験(V149/Q170/AW3.0)
11月
推薦書のリマインド
TOEFL受験(2015年11月のスコア(103)で出願)
12月
Colorado・UC Berkeley・UCLA・Wisconsin・Stanford・Columbia、Michigan・Princeton・UC Davis・UCSD・Yale出願
2017年
1月
TOEFL、IELTS受験
Penn State・Vanderbilt・PurdueとUBC・Toronto出願
2月
Penn State Fundなしオファー(それ以外はすべて不合格)
奨学金探し
4月
オファーの受諾(4月15日がオファー受諾・)
二十一世紀文化学術財団 不合格
5月
6月
I20到着、VISAの申請と発給許可
Immunization Verificationのための予防注射・血液検査
金澤磐夫記念財団(1年)合格・本庄国際奨学財団(2019年から4年)内定
航空券の購入(往復で購入)
7月
行政手続き(住民票を抜く、年金を任意加入に切り替え)
名古屋大学での手続き(休学届、DC1と科研費を辞退)
国際運転免許証
8月
渡航
受験に必要なもの
アドミッションでどう使われるか等は、Yaleの伊神先生のページなどが詳しいです。
GRE
3パートありますが、Quantについては満点が基本のようです。問題一つ一つは決して難しくないのですが、「一点も落としてはいけない」というのに苦戦しました。特に、地方から受験する場合は、東京か大阪まで行く必要があるというのも負担でした。午前・午後に2回開催されることが多く、受験シーズンになると席が埋まってしまうこともあります。受験のインターバルや、年間受験回数に制約があるので、早めに予約することをお勧めします。
参考書(問題集)のうち良かったと思うのは以下の2冊です。
Verbalの方は、頻出単語がまとめられてある本で多少は勉強しましたが、テストスコアにどれくらい影響があったのかは正直分かりません。「逃げるは恥だが役に立つ」で平匡さんのリビングの本棚には、Princeton ReviewのPrep Bookがおいてありました。このシリーズもやりましたが、問題の量と解説については上記2冊がおすすめです。
TOEFL
トップスクールでは、各パートごとに最低点が設けられていることもありますが、基本は100点のようです。私は、基本的に単語帳重視で行きました。
こちらに来て、授業中や論文など読んでるときに「TOEFL・GREで勉強した単語」に遭遇することが多々ありました。スコアを抜きにしても、語彙を鍛えることはその後も役に立つと思います。
成績
基本的にはすべて電子的に送付します。
ハードコピーが必要な大学もあります(出願時点で必要なケースもあればPenn Stateでは合格後に提出が求められました)。大学によって「日・英語両方」「英語のみ」「課程ごとに学位(在学)証明書を同封」など指定が違うこともあります。あらかじめ各課程の学位証明書・成績証明書の日本語・英語版を20部ほど取り寄せておいて、必要に応じて厳封してもらうと良いと思います。また大学によっては、大学事務からアドミッションオフィスに直接送付することが必要な場合もありますので、EMSの送り状と2000円切手も手元に用意しておくと安心です。
推薦書
私は名大の師匠とYaleとUCLAの先生に書いていただきました。後者二人の先生には、直接会って研究報告をして、SoPに書く内容についてもお話ししました。
提出はオンラインです。出願のポータルサイトで、推薦者を入力すると、自動的に推薦者の先生にメールと案内が送られる仕組みになっています。
先生方も私一人だけの推薦書を書いているわけではないので余裕を持って依頼して、締め切り1週間ほど前にリマインダーを送りました。
Statement of Purpose(志願書)
私はこれまでやってきたことを前提に、Yale・UCLAでのディスカッションを踏まえて今後どんなことを研究したいか書きました。
学会の地域部会でSoPに書く内容を前提にしたリサーチプロポーザルの報告をさせていただいたことも、SoPの筋立てを明確にし、論理的に文章を組み立てる上で、非常に重要だったと思います。
英語面では、アメリカ人の先生(文学博士)に校閲をしていただきました。
ノースカロライナ州立大学で研修を受けた際に、英語には「Action Verbs」というパンチの効いた強い動詞があるということを学びました。Resume等でこうした単語を効果的に使うことが大事とのことで、英文校閲をしてもらった後の文章には、随所にこうした単語が使われていました。
Writing Sample
私は修論のフォローアップ論文を出しました。大学によってページ数の制限が違うので、各大学の要件を事前にチェックしておくと良いと思います。英語面では、英文校閲業者に出して校閲してもらいました。
合格発表後に必要なもの
I-20発行・VISA発給
さほど大変ではありませんでしたが、早め早めの対応が重要です。合格通知が来たら、すぐにI20発行のための手続きを進め、I20到着後には各地域の管轄大使館・領事館にてVISA面接を予約します。書類はすべて用意できているのに、I20にサインするのを忘れているだけでVISA発給は却下されてしまうので注意です。。
家探し
北米の大学院は4月15日までにオファーを受諾するか決めることになっているので、4月後半になると「良い物件」はすぐに押えられてしまいます。早めの対応が重要です。
一般化できることかは分かりませんが、不動産屋にメールで問い合わせをしても返ってこないパターンは多いです。また、アパートの評判もネットの情報だけでは分かりません。留学先のプログラムに日本人の学生がいれば、連絡を取ってみて家探しの相談をしてみることをおすすめします。留学生活は助け合いですので、きっと力になってくださる人がいると思います。
アメリカの家賃は日本に比べると高いため、ルームシェアは一般的です。ただし、不動産屋のルームメイトマッチングに任せるのはおすすめできません。学部生と一緒になってしまい、真夜中までのパーティーに毎週末悩まされたという友人がいました。1年目はかなりストレスフルですので、せめて家だけはリラックスでき、勉強に集中できる環境に整えることが大事です。
予防接種
Penn Stateの場合には、MMR(麻疹・風疹・おたふく)が必須でした。私は名鉄病院の予防接種外来にお任せしたのですが、トータルで4万以上かかりました。情報の非対称性につけ込まれ、言いなりになっていたところもありますが、健康に就学できなければ元も子もないので、仕方ない出費だったと思っています。私は医学の専門ではないのであくまでも参考程度に。
Penn Stateの場合、MMRを2回打っていれば、抗体の有無がどうであれ、規定的にはOK。ただし、幼児の時に打った抗体は、20代後半には消えていることが多く、私の場合も、実際に罹患したおたふく以外は、すべて抗体がありませんでした。アメリカのMMRワクチンは日本のワクチンと異なるため、輸入ワクチンの接種を推奨されました。輸入MMRを日本で1回、2回目をアメリカで接種しました(アメリカでは保険適用で無料)
2019年4月Penn Stateではおたふく風邪が少し流行したようです。
その他推奨ワクチンとして、輸入Tdapワクチン(破傷風・ジフテリア・百日咳)を接種しました。これも、日本のDPTとは厳密には違うものだそうです。
A・B型肝炎も推奨されていて、私は以前に2回接種しており、A型については抗体が定着していたので、B型のみ3回目の接種しました。
日本人は小学校でBCGを接種するため、アメリカの検査で「結核」と判断されてしまうことがあるらしく、結核ではないことを証明する「T-Spot」検査を受けました。これは、Penn Stateの規定には何も書かれていなかったのですが、言われるがままに検査を受けました。
奨学金について
私のPhD受験の最大の失敗は、奨学金を応募しなかったことです。アメリカの大学院の場合は、授業料免除とStipend(TAやRA)が付くのが通常という言説を信じて、「大丈夫だろう」と高をくくっていました。近年、州立大学などは財政も厳しいようで、Penn Stateでは私の年からファンドなしオファーを出すようになりました。
合格後に慌てて探した奨学金ですが、幸いにも2つの財団からオファーをいただくことができました。しかし約4万ドルの授業料は自弁しなければなりませんでした。両親からの援助がもらえない状況だったので、1年目の経済状況は非常に深刻でした。修士の時からリーディング大学院と学振DCで奨励金をもらっていて、かつ授業料も免除されていたので、ぎりぎりで1年目の学費を賄うことができましたが、2年目はもう払えないことが分かっていました。学期中は常に「来年ファンドが付かなかったら辞めなくてはならない」という不安がのしかかっていましたし、自分が払った4万ドルが、隣の席の同級生のStipendになっていることを思うと複雑な気持ちでした。結果的にはその苦しさがあってこそ踏ん張ることができたし、その成果として、2年目からファンドが付くことも決まったので、人生の経験としては悪いものではなかったのかな・・・と思っています。ただ、PhDの1年目はそれ以外の部分で大きなストレスがありますので、経済的な不安がない状態で勉学に集中するに越したことはありません。
多くの奨学金は、大学への出願前が締め切りなので、大学への出願準備に並行して奨学金への応募も勧めることをおすすめします。
アメリカへの引っ越し
私はヤマト運輸の海外引っ越しサービス(航空便の海外留学宅急便)を使いました。EMSや通常の船便で送っていた友人もいましたが、アメリカはUSPS(郵便局)のサービスがひどいので、家にいないと郵便局留めになってしまうなど不便があります。その点、ヤマトで送った場合、アメリカではFEDEXが運送してくれるのでトラッキング・再配達も含めて安心でした。私は、段ボール2箱(計50キロ)を約7万円ほどで送りました。デスクトップのPCもHDDを外して送りました。
家具の購入
家具なしのアパートではベッド、机などを含めてすべて購入しなければなりません。私は、入居日に合わせて配達されるよう、すべてAmazonで揃えました。
持ってきてよかったもの(随時更新)
オフィス系
ポータブルスキャナ(入学当初はペーパーワークの山でPDFで送るよう求められることが結構ありました。学期中も、提出した宿題を電子媒体で残しておいたりするのに大いに活躍しました)
WiFiルータ(アメリカはケーブルインターネットが主流ですがモデムやルータをレンタルするかどうかで値段も変わってきます。私は、モデムはアメリカのAmazonで買い、ルータは日本から持って行きました。軽いものですし、すぐにネットが使えるようになるので便利でした)
文具(こちらに売られている文房具は日本製が多いですが種類は少なく割高です。私は使い慣れているものが良かったので、大量に消しゴムやシャープ・ボールペンの替え芯を持ってきました)
書籍
日本の経済数学の教科書
暇つぶし用の小説(現実逃避用)
キッチン系
包丁(アメリカの包丁はひどいので…私は送別の品にいただいた日本橋木屋の牛刀を愛用しています)
その他
航空券について
新入生オリエンテーションの日程などが決まったら、Google Flightなどで値段のチェックを始めると良いと思います。私は、1学期目に相当に精神を痛めてしまったので、年末には帰国しました(多くの同級生が帰国していました)。先輩などから話を聞いて、12月何日頃なら安心して帰国できるか確認して、往復で予約することをお勧めします。