次回例会のお知らせ

7月の関西地区例会は、「東南アジア大陸部における被戦争社会とレジリエンス」をテーマに3本の報告からなるワークショップとして開催します。お誘いあわせのうえ、ふるってご参加ください。

●日時:2017年7月8日(土)午後2時~午後6時
●会場:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(213)
(http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/)
※当日入口は施錠されています。13:30~14:00まではドアを開閉するスタッフがいますが、その後に来られた方は、入口に貼ってある電話番号にご連絡ください。
●プログラム:
14:00~14:10 【企画説明】瀬戸裕之(新潟国際情報大学国際学部)
14:10~17:10  
 瀬戸裕之 「ラオス中部における被戦争社会の変容とレジリエンス:戦争期の住民移住を中心に」
 倉島孝行(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「東北タイ東部の元タイ国共産党員らとその家族の50年:土地利用と生業様式を生んだ断絶性と連続性」
 片岡樹(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)「冷戦がもたらしたタイ国山地社会の変動」
 ※報告は45分、質疑応答10分、途中15分の休憩あり
17:10~17:20 【コメント】岩井美佐紀(神田外語大学外国語学部)
17:20~18:00 全体討論

●企画趣旨
 現在、東南アジア大陸部は、1980年代以降の和平の進展と市場経済化の導入、1990年代以降のASEANの地域統合の展開を受けて、人々の生活や社会が大きく変化を遂げつつある。しかし、この地域は1960年代、1970年代に、ベトナム戦争をはじめとする大きな国際紛争を経験し、戦火の中での移住、生活の破壊や社会の分断、住民構成の変化など,戦争から様々な影響を受けてきた。これらの変化は、戦争期だけでなく、その後の人々の生活や地域の社会形成にも大きな影響を与えたのではないかと推測される。
 「東南アジア大陸部の被戦争社会の変容とレジリエンス」研究会は、東南アジア大陸部を、戦争によって社会形成が大きな影響を受けた地域(=被戦争社会)として位置付け、戦争下での地域住民の生存、戦後の生活再建などを考察し、戦争に対する地域の人々の生存戦略(=レジリエンス)を明らかにすることを目的として研究を行っている。その中では、第1に、国レベルより下の地域・村レベルでみたときに、戦争が地域の人々にどのような影響を与えたのかを考察し、第2に、戦争中・戦争直後の人々の被害だけでなく、その後の生活や社会の変化を考察することにより、戦争の影響を受けた人々の生存戦略が社会形成に与えた影響について再考することを課題としている。
 報告では,ベトナム戦争の影響を受けて激しい戦闘の舞台となったラオス中部の事例と、同戦争の直接的な舞台ではなかったものの、同時期に内戦を経験していたタイ東北部、タイ北部における事例を報告し、戦争が地域に与えた影響と人々の生存戦略について議論する。

●報告要旨
・瀬戸裕之「ラオス中部における被戦争社会の変容とレジリエンス:戦争期の住民移住を中心に」
 本報告では、ラオス中部における内戦期の強制移住と住民の生存戦略について考察する。ラオスでは、1960年代、1970年代はじめにかけて、国内で激しい内戦が行われた。これまでの歴史研究でも、内戦期に戦争の影響によって、多くのラオスの山地民・山間地民が、それまで生活していた地域を離れて、ヴィエンチャン周辺の平野部へと避難したことが指摘されているが、内戦期に住民たちが、どのような経緯により、どのような手段で移住を行ったのか、戦争被災者が移住後にどのように生活を再建してきたかについて、具体的な事例に基づいた分析は行われていない。本研究では、ホアパン県、シエンクアーン県からヴィエンチャン県に移住した村を事例に、戦争期に住民たちが移住した背景、移住の手段、移住後の生活変化を考察し、ラオス中部における戦争と地域住民の生存戦略(=レジリエンス)について検討する。

・倉島孝行「東北タイ東部の元タイ国共産党員らとその家族の50年:土地利用と生業様式を生んだ断絶性と連続性」
 もともと都市労働者層をターゲットに据えていたタイ国共産党(CPT)による革命運動は、サリット政権の都市部での弾圧を経て毛沢東の農村革命論へと傾斜し、やがて農村から都市を包囲するという武闘路線を打ち出した。そして、実際にそれに合わせ、CPTは辺境の森林地帯に革命拠点を置きはじめた。以上は1950年代末から60年代にかけて起こった出来事である。以来、多くの農民がCPTの運動に自発的あるいは半ばやむなく加わり、1980年代初めまでその状況が続いた。本発表は、タイで見られた以上の事象をその渦中もしくは周辺で体験した、農民らの50年間について報告するものである。特に彼/彼女らの土地利用と生業様式に照準を定め、内戦前と内戦中、さらには内戦後で何が変わり、何が変わらなかったのかを述べ、その時間的、空間的な断絶性と連続性について論じる。

・片岡樹「冷戦がもたらしたタイ国山地社会の変動」
20世紀後半のタイ国北部山地社会に見られる顕著な特徴は、人口の激増と民族構成の激変である。タイ政府が行った山地集落調査によると、1970年代から1990年代にかけ、全国平均を大幅に上回る人口増が記録されている。そのなかでも、特定地域・特定民族の極端な人口増が全体の数値を押し上げているのが特徴的である。これは明らかに自然増ではなく、冷戦期の政治的要因にもとづく越境流入人口の増加と推定される。山地における人口の推移については、従来の先行研究では焼畑移動民の習性によるものとして漠然と説明されるにとどまる傾向にあったため、そこでの社会変化を冷戦期政治史の文脈で考察する試みは低調であった。本報告では、冷戦期の極端な人口変化の事例として、チェンライ県において現在ではラフやアカといった山地少数民族が集住する地区をとりあげ、現在見られるような民族構成が、冷戦期を通じいかに形成されてきたのかを検討することにする。

共催:科研費・基盤B「東南アジア大陸部の被戦争社会の変容とレジリエンス」(代表:瀬戸裕之)