11月の関西地区例会は、現在博士論文を執筆中の若手2名の報告となっております。お誘いあわせのうえ、ふるってご参加ください。 ●日時:2017年11月11日(土)午後1時半~午後6時 ●会場:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室 (http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/) ※当日入口は施錠されています。13:00~13:30まではドアを開閉するスタッフがいますが、その後に来られた方は、入口に掲示されている電話番号にご連絡ください。 ●プログラム: ◇報告1 13:30~15:30 【報告者】藤村瞳(上智大学グローバルスタディーズ研究科博士後期課程/学術振興会特別研究員(DC2)) 【タイトル】「19世紀後半ビルマにおける近代的主体による政治活動とその背景:カレン民族協会結成の歴史的意義再考」 【コメント】池田一人(大阪大学大学院言語文化研究科准教授) ◇報告2 15:45~17:45 【報告者】伊澤亮介(大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程) 【タイトル】「各劇団に共通する演目に見るベトナム水上人形劇の一側面とベトナム民間文学」 【コメント】赤松紀彦(京都大学大学院人間・環境学研究科教授) ※各報告は、報告60分、コメント10分、討論50分とします。 ●要旨 ◇藤村瞳「19世紀後半ビルマにおける近代的主体による政治活動とその背景:カレン民族協会結成の歴史的意義再考」 本報告は、19世紀末ビルマにおけるカレン・キリスト教徒らによる活動を事例に、近代的主体の形成を論じることを目的とする。米国バプテスト派の信徒らによって1881年に結成されたカレン民族協会(KNA)は、ビルマにおける初の民族団体として、またカレン民族運動の嚆矢として従来理解されてきた。しかし、団体結成の背景や実際の活動については、ほとんど実証されていない。本報告では、カレ ン語史資料を用いて、同団体結成の経緯や1880年代の活動内容を詳述する。そこから、19世紀前半から宣教をつうじて近代的価値観・知識を学び取り自立性をもったキリスト教徒エリート層が出現していた点、そして彼らを中心にしたKNAの初期活動は、民族運動的側面を併せ持ちつつも、イギリス植民地における領民としての権利獲得を求めていた点を明らかにする。そこから、 KNA結成と初期活動を、単に民族運動として性格づけるのではなく、ビルマにおける近代的主体による政治領域への積極的関与の初期事例とする解釈を提示する。カレン信徒らによる活動の背景を米国バプテスト宣教の文脈から再考し新たな解釈を示すことで、民族という枠組みを軸に語られがちなビルマ史への多角的理解の一助としたい。 ◇伊澤亮介「各劇団に共通する演目に見るベトナム水上人形劇の一側面とベトナム民間文学」 農村で生まれ、農民によって受け継がれてきたといわれるベトナムの水上人形劇だが、現在活動している劇団が共通してもっている演目をみると、「西遊記」や「三国志」など、中国の小説を題材にしたものや中国の有名な故事などを基にしたものが多くみられる。ハノイ郊外の人形劇村に残されていたチュノムによって書かれた台本によりそのような演目の具体的な内容が分かるようになった。「西遊記」について、その内容は、小説の世界とは異なったものであるが、同じくチュノムでかかれた六八体の詩には共通するものがある。翻案文学のようないわゆる知識人の文学、諺に代表される民間の文学に加えて、このような形の民間文学の世界が、20世紀の半ば、ローマ字化されたベトナム語によって元の小説が翻訳されて広く読まれるようになるまで存在していたと考えられる。チュノムによって書かれた台本の内容を紹介するとともに、そこに見られる民間文学の特徴について考える。 |