連城の璧→完璧(レンジョウのヘキ・カンペキ) 2013-06-30 Sun 16:06

「完璧」(カンペキ)とは、「人から借りたものを大切に返すこと」というのがもとの意味。
熟語の直訳は、「完全な璧(ヘキ)」「完全無疵(むきず)の璧」。
由来は、藺相如の「完璧而帰(璧を完うしてかえる)」から。

「璧」(ヘキ)というのは(ギョク)の一種で、環状をなしている玉。(→「和氏之璧(かしの・ヘキ/たま)」の注を参照)

「ぎょく」というのは、丸い「たま」とは限らない。翡翠(ヒスイ)・瑪瑙(メノウ)などの半透明な石のこと。

「完璧」という言葉は、戦国時代、趙(チョウ)の藺相如(リンショウジョ)という外交官の話に由来する。

秦の昭襄王(ショウジョウオウ)は、武力で趙に迫り、趙の恵文王が手に入れた天下の名宝「和氏の璧」(カシのヘキ)と、十五城との交換を申し込んだ。

「城」といえば、日本人はいわゆる「おしろ」、すなわち大阪城や姫路城のような、天守閣のある建築物を連想してしまうが、中国の「城」は違う。
中国で「城」といえば、「万里の長城」を見ればわかるように、国全体・領土全体を囲む城璧のことであり、また城璧に囲まれた領域全体を指す。

始皇帝が登場する以前は、中国は現在のヨーロッパのように、いろんな国に分かれていた。「城」といえば、その国々を指すこともあるし、飛び地の領土を指すこともあるし、内城をさすこともあるが、とにかく城璧に囲まれた広い範囲全体が「城」であることにかわりはない。

だから、西施のことを「傾城(ケイセイ)の美女」と呼ぶが、「傾城」「傾国」は同じ意味だから、「傾城の美女」「傾国の美女」なのである。

余談が過ぎたが、「連城の璧」というのは、十五の領土に匹敵するほどの値打ちがある宝石という意味。すごい宝物だ。

その宝石に食指を動かしたのが、秦の昭王。(「食指動く」はまた別の項で)

なにしろ、強国となりつつある秦のことだから、趙の恵文王としては、その申し出を断るのも恐ろしく、またダマされてお宝だけまきあげられるのもこわい。承諾するのを躊躇した。

その時、藺相如が和氏の璧を持って秦の国に行きたいと申し出た。
「秦にダマされて、十五城が手に入らないときは、璧を完全な形で持ち帰りましょう」--『完璧而帰!』(ヘキをまっとうしてかえらん)

藺相如は璧を擁して使いした。
昭王はやはり、十五城を与えるつもりはなく、璧をただ取りしようとした。
そのことが判明した瞬間、藺相如は「髪は怒りで逆立ち、冠を突き上げた」
すかさず、藺相如は
「その璧に疵(きず)があるから、しらべます」
と言って和氏の璧を手に取り、サササーッと後ずさりして、
「柱にぶっつけて璧を砕(くだ)き、いっしょに自分の頭も壊(こわ)す!」
と言った。
そして、こっそり使者に璧を持ち帰らせた。

藺相如自身は死を覚悟して、秦の処分を待った。が、秦の昭王は「賢臣である」として藺相如を趙に返した。

こうして、藺相如は完璧(カンペキ)に、その役割を果たしたのでした。

恵文嘗得楚和氏璧。 秦昭王、請以十五城易之。欲不与畏秦強、 欲与恐見欺。藺相如願奉璧往。「城不入、則臣請完璧而帰。」既至。秦王無意償城。相如乃紿取璧、怒髪指冠、卻立柱下曰、「臣頭与璧倶砕。」遣 従者懐璧、間行先帰、身待命於秦。秦昭王賢而帰之。

『十八史略』巻一(原典)


「刎頸之交(刎頸の交わり/ふんけいのまじわり)」
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