「完璧」(カンペキ)とは、「人から借りたものを大切に返すこと」というのがもとの意味。
→ 「刎頸之交(刎頸の交わり/ふんけいのまじわり)」
熟語の直訳は、「完全な璧(ヘキ)」「完全無疵(むきず)の璧」。 由来は、藺相如の「完璧而帰(璧を完うしてかえる)」から。 「璧」(ヘキ)というのは玉(ギョク)の一種で、環状をなしている玉。(→「和氏之璧(かしの・ヘキ/たま)」の注を参照) 「ぎょく」というのは、丸い「たま」とは限らない。翡翠(ヒスイ)・瑪瑙(メノウ)などの半透明な石のこと。 「完璧」という言葉は、戦国時代、趙(チョウ)の藺相如(リンショウジョ)という外交官の話に由来する。 秦の昭襄王(ショウジョウオウ)は、武力で趙に迫り、趙の恵文王が手に入れた天下の名宝「和氏の璧」(カシのヘキ)と、十五城との交換を申し込んだ。 「城」といえば、日本人はいわゆる「おしろ」、すなわち大阪城や姫路城のような、天守閣のある建築物を連想してしまうが、中国の「城」は違う。 中国で「城」といえば、「万里の長城」を見ればわかるように、国全体・領土全体を囲む城璧のことであり、また城璧に囲まれた領域全体を指す。 始皇帝が登場する以前は、中国は現在のヨーロッパのように、いろんな国に分かれていた。「城」といえば、その国々を指すこともあるし、飛び地の領土を指すこともあるし、内城をさすこともあるが、とにかく城璧に囲まれた広い範囲全体が「城」であることにかわりはない。 だから、西施のことを「傾城(ケイセイ)の美女」と呼ぶが、「傾城」と「傾国」は同じ意味だから、「傾城の美女」=「傾国の美女」なのである。 余談が過ぎたが、「連城の璧」というのは、十五の領土に匹敵するほどの値打ちがある宝石という意味。すごい宝物だ。 その宝石に食指を動かしたのが、秦の昭王。(注「食指動く」はまた別の項で) なにしろ、強国となりつつある秦のことだから、趙の恵文王としては、その申し出を断るのも恐ろしく、またダマされてお宝だけまきあげられるのもこわい。承諾するのを躊躇した。 その時、藺相如が和氏の璧を持って秦の国に行きたいと申し出た。 「秦にダマされて、十五城が手に入らないときは、璧を完全な形で持ち帰りましょう」--『完璧而帰!』(ヘキをまっとうしてかえらん) 藺相如は璧を擁して使いした。 昭王はやはり、十五城を与えるつもりはなく、璧をただ取りしようとした。 そのことが判明した瞬間、藺相如は「髪は怒りで逆立ち、冠を突き上げた」 すかさず、藺相如は 「その璧に疵(きず)があるから、しらべます」 と言って和氏の璧を手に取り、サササーッと後ずさりして、 「柱にぶっつけて璧を砕(くだ)き、いっしょに自分の頭も壊(こわ)す!」 と言った。 そして、こっそり使者に璧を持ち帰らせた。 藺相如自身は死を覚悟して、秦の処分を待った。が、秦の昭王は「賢臣である」として藺相如を趙に返した。 こうして、藺相如は完璧(カンペキ)に、その役割を果たしたのでした。
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