卯・兎・兔・うさぎ・ウサギ(3):多多益弁-狡兔死走狗烹

たたますますべんず
  多多益弁(辦)。「多ければ多いほど結構!」というときに、この言葉を使う。
ただし、本家の中国では「多多益
duō duō yì shànという。

  『十八史略』では、「多多益弁」とあるが、『史記』「淮陰侯列伝」
では、「臣、多多而益善耳(多多にしてますます善きのみ)」となっているからである。

劉邦(漢の高祖皇帝)が、天下をとってのち韓信と雑談のおり、諸将の批評をした。

 「誰はどれほどの兵数を指揮できるか?」ということになったのだが、そこで劉邦が韓信に聞いた、

 「もしも、わしが将軍であったとすれば、指揮能力はどれほどのものであるか?」

 韓信、こたえて曰く、

 「まあ、せいぜい十万人というところでしょうな」

 劉邦

 「では、君ならどうか?」

 韓信

 「わたしは、多ければ多いほど好都合ですよ」

 劉邦は笑って、

 「それなら、どうしておまえはわしの家来としておさまっているのか?」

 韓信

 「陛下は兵に将たること能はざるも、善く将に将たり(陛下不能將兵、而善將將)

 こんなことを言うから、いくら命があっても足りない。若いときには隠忍自重し、無頼漢の股くぐりまでした韓信将軍の言葉としてはあまりにも不用意すぎるではないか。まあ、こんなところも韓信の魅力なのであるが、本当に読んでいてハラハラする。

 劉邦は、

 「百万の軍を連ね、戦へば必ず勝ち、攻むれば必ず取るは、吾れ韓信に如かず(連百萬之軍,戦必勝,攻必取,吾不如韓信)」『史記・高祖本紀』

 と口では褒めたが、腹の中では恐れた。天下が平定されて後、韓信は殺された。

「狡兔(コウト)死して走狗烹(に)られ、飛鳥尽きて良弓蔵(かく)し、敵国破れて謀臣亡(ほろ)ぶ」
(狡兔死走狗烹,飛鳥尽良弓蔵,敵国破謀臣亡)

 とさとったが、時すでに遅かった。



※「狡兎死して走狗烹らる」
  は、「臥薪嘗胆」(ガシンショウタン)で有名な越王勾践(コウセン)を批評した、謀臣范蠡(ハンレイ)の言葉としても有名。

 越王
(コウセン)が呉王夫差(フサ)をやぶってのち、范蠡(ハンレイ)は越を脱出した。同じく越の大臣の文種(ブンショウ)に、こう助言した。

 「越王は ”長頸烏喙” (チョウケイウカイ) つまり、首が長くて口がカラスのくちばしのようにとがっています。この人相の人は、苦難は共にできても、安楽を共にすることはできない性格だといいます。あなたも早く越を去るべきです。(そうしないと命が危ないですよ)」

 それでも
文種は越を去らず、そのかわりに病気と称して、出仕しないようにしたのだが、そんな中途半端なことをしたものだから、「文種に謀反の疑いあり」と讒言(ザンゲン)する者が現われ、王に疑われた。はたして践から剣を賜り、自殺に追い込まれた。

文種にしてみれば、病と称して災いを避けたつもりだったが、行動が中途半端すぎたのである。

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