はじめに



決算日直前などに増資などを行ったため、思いもかけないことから

会計監査人を設置する必要性が生じた会社様も多いことと思われます。

ここでは、会社法監査を受嘱することが決まった場合に、会計監査人の選任にあたって

どのようなことを考慮すべきかという点について解説していきたいと思います。





<目次>



1.会社法監査とは

会社法では、貸借対照表上で資本金として計上した額が5億円以上の会社
もしくは負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である会社を、大会社として定義しています(会社法2条6号)。
そして、大会社には会計監査人の設置が求められており(会社法328条)
株式会社の計算書類及びその附属明細書について監査証明を受ける必要があります(会社法396条)。

2.会社法監査をめぐる不祥事

近年では、負債総額が200億円以上あるにもかかわらず
会計監査人を設置していなかった株式会社林原(2011年2月 会社更生法適用)の不祥事が問題になりました。
会計監査人となった公認会計士もしくは監査法人については
会計監査人設置会社である旨及び当該会計監査人の名称を登記する必要があり(会社法911条3項19号)
登記簿を見れば、誰でも会計監査人の設置の有無を確認することができます。
裏を返せば、会計監査人を設置せず
会社法に違反しているような事実がある場合、登記簿を見ればすぐにその事実が判明します。

また、株式会社林原の不祥事では
メインバンクである中国銀行が、負債総額200億円以上の会社に
会計監査人の設置が義務付けられることを知らなかったことも非常に問題視されました。
金融機関に携わる方にとっては、資本金5億円以上、負債総額200億円以上の会社に
会計監査が必要とされることは、もはや常識であると判断されます。
金融機関の融資担当者の方は、融資先の資本金額ならびに負債総額について必ずチェックする必要があるでしょう。

3.違反した場合の罰則について

会計監査人の選任を懈怠した場合には100万円以下の過料が科されることになっていますが(会社法976条22号)
過料が少額であるがゆえに会計監査人を設置せず、監査を回避している会社も多いようです。
日本公認会計士協会の調査によれば、会計監査人を設置していない大会社は500社以上あるとのことです。
しかし、近年では大会社の社会的責任の大きさから過料の引き上げを求める声も多く
会計監査人を設置しない会社へのしめつけも大きくなっているため
選任していない会社は早急に公認会計士もしくは監査法人の選任を行うべきであると判断されます。

なお、レアケースにはなりますが、取引量がきわめて少数になる場合
弊事務所において上記過料以下の金額で、監査対応が可能なケースもございます。
報酬の御見積りについてはお気軽にご相談ください。

4.会社監査人選任の流れ

会社法では、大会社に会計監査人の設置が義務付けられていますが(会社法328条)
会計監査人は会社の一機関であり、監査役の同意を得たうえで株主総会にて選任される必要があります(329条1項、344条2項)。

平成24年3月決算の会社を例に考えると、以下のような流れを経て会計監査人が株主総会で選任され
選任後に監査業務に従事することになります。


①平成24年3月決算(3月31日)の貸借対照表において、資本金が5億円以上もしくは負債総額が200億円を上回ることが確定

②平成23年3月期において会計監査人を選任していなかった場合には、平成24年6月に開催される株主総会の招集通知において
会計監査人の選任議案を提出(したがって、平成24年3月期の招集通知を送付するタイミングでは
会計監査人の候補を決めておく必要があります)。

③平成24年6月に行われる定時株主総会において、会計監査人を選任

④平成24年7月以後より、公認会計士が会計監査人として監査業務を開始

5.会計監査人には誰がふさわしいか?

(参考コラム)
会計監査人を軽率に決定していないか?

会計監査人は、監査法人が就任するケースと、個人の公認会計士が就任するケースがあります。
会社規模や取引規模などに応じて、どちらに監査を依頼すべきであるかどうかは慎重な判断を行う必要があるでしょう。

(監査法人に監査業務を依頼すべきケース)

① 事業を海外に展開しているグローバル企業

海外に重要な連結子会社などがある場合には、
外国語による対応や現地の税法などに通じた公認会計士に業務を依頼する必要があります。
このようなケースにおいては、海外の会計事務所をネットワークに持つ監査法人に業務を依頼するほうが効率的です。

② 売上高1000億円以上の会社

売上高300億円未満の会社では、個人の公認会計士が監査業務を行っていることもめずらしくありませんが
売上高1000億円を超える会社では個人レベルの対応が難しくなります。
林原のような会社の場合も、監査法人に業務を依頼すべきであったといえるでしょう。

③ 監査意見にブランドを求める会社

財務諸表監査が適切に行われている限り、誰が監査証明を行ったとしても、監査業務の質に何ら変わりはないのですが
メインバンクや投資家サイドの意向で、大手監査法人による監査証明が求められるケースも多々あります。

(個人会計士などに監査業務を依頼すべきケース)

① 特一時的に大会社になったものの、翌年度には減資などにより大会社ではなくなる会社

欠損填補のために多額の資金調達を行うことになり、
一時的に最終事業年度における資本金が5億円を超えてしまったという話はよくうかがいます。
しかし、翌事業年度には減資が予定されており、資本金は5億円以上であるのは一時的であるという場合には
会計監査を受ける必要があるのは1事業年度のみであるので、組織的で対応が煩雑になりがちな監査法人よりも
個人の会計士に業務を依頼するほうが、コスト面でもリーズナブルな可能性があります。

② 特別目的会社などのような、単一事業を行うビジネスモデルが比較的シンプルな会社

単一事業を行い、本業以外の事業投資などをあまり行っていない会社は、貸借対照表の勘定科目も少数になり
監査手続も省力化されます。特に、特別目的会社のような会社では、貸借対照表も非常にシンプルなものとなり
資本金などが5億円を超過していても、多くの監査手続が必要とされないことがあります。このような場合では
組織的な対応が必ずしも求められないため、機動的な意思決定が可能になる個人の公認会計士の監査を依頼すべきであると判断されます。

③ 国内を中心に事業展開をしている売上高が100億円程度の会社

一般に、売上高が100億円程度の会社では、個人の公認会計士でも監査対応は可能です。
この場合、個人事務所を開業している複数の公認会計士によるチーム編成で、監査業務を行うことが多いようです。
しかし、このようなケースであっても、個人事務所では事務所賃借料や人件費などの負担が少ないため
一般的に監査法人よりも報酬提示額が低いことが多く
コスト面を考えた場合には個人の公認会計士に業務を依頼するほうが得策であるといえるでしょう。

上記に該当する会社で会社法監査の依頼をお考えの際には、弊事務所にお問い合わせください。

6.会計監査人を個人事務所に変更する場合

① 会計監査人に対する不満

最近では、会計監査人を変更するケースもめずらしくなくなってきました。
弊事務所でも、会計監査人変更に関するご相談をうかがっております。
しかし、話を総合すると会計監査人の変更をお考えになる理由は
①会計監査人(監査法人)に対する不満、②監査コストの削減の2点に集約されるようです。

まず、会計監査人に対する不満ですが、具体的には

・法人内の審査会などでの検証が必要になるという理由で、会計上の判断に関する意思決定が非常に遅い。

・一度、打合せなどで決定した決め事が、審査会などで覆されることがある。

・対応するのは会計に関する相談のみで、税務や経営に関する相談をしても回答してもらえない

・監査責任者が、現場にまったく顔を出さない

と言ったものが多いようです。

このような不満は、株式公開しているかどうかを問わず非常に多く寄せられていますが
監査法人は無限責任を負うパートナーによって構成されるものであるため、組織的な意思決定を行うことが必然的に求められます。

また、長年監査法人に在籍している公認会計士は、税理士登録などもしたことがない方のほうが多いため
中小企業などの税務申告や経営相談に対応した経験も少なく、会計以外の相談に対応できる人はそう多くないと思われます。
さらに、事務所内での業務も相当数にのぼるため
監査責任者が会社に顔を出すことが全くないということもめずらしくありません。

② 個人の会計事務所に業務を依頼するという選択肢

こういった不満は公認会計士が個人で開業している事務所に依頼することで解決できるのでしょうか。
まず、監査証明書へのサインは単独で行うことが多いため、責任の所在は必然的に個人に帰属することになるため
意思決定が遅くなるということは非常に少なくなると思われます。
また、個人で開業している公認会計士は、税理士登録をしている資格者も多く、税務経験なども豊富にあり
事務所の経営者としての側面も持っているため、多岐にわたったアドバイスを受けることが可能でしょう
なお、サービス業を行っているという意識から、現場にも頻繁に顔を出すことが多く
監査法人よりも良好なコミュニケーションがとれていることが多いようです。

上記のような不満を持つ場合には、個人の公認会計士に会社法監査を依頼するという選択肢も考えるべきであると思われますが
やはり会社規模や取引規模によっては監査法人に業務を依頼するほうがよい場合もあります。
売上高や事業展開する範囲などを考えて、会計監査人を決定する必要があると思われます。

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