ウォルナットグローブ開拓史(Walnut Grove)

2012/03/20 8:41 に Jun Shin が投稿   [ 2015/09/30 21:47 に更新しました ]
デザイナーはPal LaaneとTouko Tahkokallioというコンビ。Tahkokallioは最近「Eclipse」という大ヒットを飛ばした新進気鋭のデザイナーだ。
1-4人プレイ、45分。「大草原の小さな家」に農場を構え、タイル配置で農場を開拓しながら資源を生産し、生産品をウォルナットグローブで売ったり、労働者を雇用したりと拡大再生産を行う短時間ゲームだ。ゲーム会で遊ばせてもらい、持ち主の方は「うーん、今のところ微妙」と言われたのだが、私としてはかなり気に入ってしまい、自分でも購入した。


最初に言っておくと、このゲーム、インタラクションが非常に低い。所謂「ソロプレイ感」というのは確実にある。例えば、登山ゲーム「K2」をプレイして、あまりインタラクションを感じなくて面白くない、というようなタイプだと、ノットフォーユーかもしれない。また、運要素が強いのでその辺もガチのゲーマーには敬遠される所がありそうだ。しかしそれでも私はこのゲームを大いに気に入ったし、そこまで構えずにプレイすれば、幅広く受け入れて貰えるゲームなのではないかと思っている(マネジメントすること自体に興味が沸かない人には向かなさそうだが…)。

なぜこんな事を言うかというと、今日、私が家でもう5回目ぐらいのソロプレイを遊んでいると(そう、このゲームはソロプレイもめちゃくちゃ楽しい)、小1の娘がやってきて「お父さん、何やってるの?」としつこく言うので、「ここがうちの畑で、ここに働く人を送って、魚を取ったり小麦を作ったりして貰うんだよ」とか説明していると、「やりたい」と言い出したのだ。そしてなんと、その後(多少ハンデは付けたのだが)ほぼ完全にルールを理解した上で、自分で考えてタイルを配置して農場を広げ、そこにワーカーを置いて資源が生産されていくのを「楽しい」と言うのである。それどころか「カービィより面白い」とまで言うのだ。星のカービィは、娘が今めちゃくちゃハマっている大人気ゲームなのだが、あれより面白い・・・のかこれ??(笑)

冬の食料供給フェーズになると、「薪はちゃんと用意したよ!青い人用のご飯もあるし、黄色い人のご飯もある!」と、嬉々として語るのだ。タイル配置の際には、引いたタイルのうち「うーん、うーん、どれもいいなー・・・」と言っていろいろ組み合わせを悩んでいる。ゲームを終えた後は即効で「もう一度!もう一度!」という状態であった。

これを見て、ひょっとしてこれは凄いゲームなんじゃないかと思い至ったわけである。

このゲームでは1ラウンドを1年として、8年行い、終了時の得点計算をして終わる。1ラウンドでは「タイルを配置して農場を広げる」「農場にワーカーを置いて資源を生産する」「街で購入や売却アクションを各自1回ずつ行う」「ワーカーに食料や暖房を供給する」で終わる。それぞれかなりシンプルな手順となっており、1ラウンドはあっという間に終わるので、慣れれば30分で終わるかもしれない。

この短時間というのがこのゲームの最大の魅力だと考えている。同じゲームを繰り返し遊ぶ事でゲームをより楽しめると考えている私にとっては、短時間で終わるというのは重要な要素だ。しかし、短時間で終わるにも関わらず、このゲームは近年のユーロゲームが持つ様々な「面白さ」を貪欲に取り入れているのである。

ぱっと考えるだけで、カルカソンヌのような「タイルを引いて配置する(タイル配置)」、プエルトリコのような「資源の生産と管理(リソースマネジメント)」「拡大再生産」、ストーンエイジのような「ワーカーへの食料供給(フードサプライ)」、そしてアクションの実行方法はナヴィガドールのような「ロンデル」風味かつケイラスのような「ワーカープレイスメント」風味になっており、さらにアクションの実行には所謂「矢印ゲー」と呼ばれる、リソースを消費してアクションを実行したり何かを獲得したりする「コスト付アクション」が採用されているのである。

たかが45分程度で、これら全部を味わえる?それでいて悩ましい?そんなバカな!? でもそうなのだ。45分の中に、これら全部が、確かに凝縮されている。

これを「凝縮」と見るか、「中途半端」と見るかは人によって違うかもしれない。ヘビーゲーマーには、中途半端に見える人もきっといるだろう。

特に、前述した「インタラクション」は大きく犠牲にされている。タイル配置フェーズ、生産フェーズ、供給フェーズ、いずれも同時に行うようになっており、インタラクションはほとんどない。唯一「街での購入/売却」フェーズでのみ、早い者勝ちの、ちょっと悩ましいアクションの取り合いがあるだけだ。むしろここは「たまたま他人とかぶるとちょっと痛い」ぐらいのもので、わざと邪魔をする為に取る、というのはそこまでいい手ではないゲームになっている。
ユーロゲームの特徴のひとつは「適度なインタラクション」であるから、これが弱いのは大きなマイナスポイントと言えるだろう。

しかし、思うに、他のゲームではインタラクションを重視するあまり、やたらギスギスしたゲームになったり、手番順争いなどが生じて初心者が泣いて逃げ出すゲームになっている例も良く見るような気がする。ウォルナットグローブでは、そういうのはまったくない。純粋にゲームの「メカニクス」を楽しめるようになっている。ユーロゲームのメカニクスをふんだんに取り入れたパズルゲーム、といってしまうと、ちょっと誤解を与えるだろうか。なんにせよ、短時間で近年の面白いメカニクスをまとめて味わえるのはお得だ。

私はタイル配置ゲームが結構好きだし、それ以上に「タイルやカードの上に資源キューブを生産して置いていく」ゲームが大好物である。ウォルナットグローブでは、それらの楽しみを存分に味わえる。もし同じような好みの人がいたら、これは買って損はない。

また、食料供給がカツカツ気味に調整されており、その辺の適度な緊張感も素晴らしい。万能のリソースとして使えるコインの存在があるので、そこまでカツカツにもならないのも良い。とはいえ、街のアクション数は限られている(各ラウンド1回、計たったの8回!)ので、コインを得るための「売却」を選んでばかりもいられないのがまた悩ましい。


写真:プレイヤーボード。ボードの上に、農場タイルを配置していく。地形が一致している必要はないが、同じ地形が連続していると、それだけ多くの資源を一気に生産できるので効率的だ。ボード上には資源やコインを置く倉庫や、ワーカーを休ませる家&野営地がある。

あと、娘の反応を見ていて思ったのだが、このゲームはテーマが素晴らしい。ゲームの説明をするときに、すべてテーマに沿って説明できるのだ。

「タイルを引いて、畑を広げましょう」「今年は魚が一個多くとれる年です」「秋になったので、街へ行ってお買い物をするか、作物を売ってきてください」「じゃあ、買い物が済んだので冬になります。全員おうちへ戻してあげてください」「今年は青い人は2倍おなかがすく年なので、ご飯を2個あげてください」「家がない人は寒いので、薪を燃やして暖めてあげないといけません」

黄色いワーカー駒は、黄色い資源を食べる。青いワーカーは青い資源を食べる。わかり易すぎる。笑
このワーカー達を「コムギスキー」「サカナスキー」「ミルクスキー」と呼ぶ事にした(ネットでそんなのを読んだのでw)。ミルクスキーは別名「おっぱいスキー」である。ちなみにおっぱいスキーだけは他2人よりも食わせにくい。おっぱいはこのゲームでは結構貴重なんである。

とにかくテーマとマッチしていてわかりやすい。アイコンが見やすいのもいいのかもしれない。なにせ小1が理解できるのだから。
むしろ私が、「違うよお父さん、今年は石が多く取れる年だよ?」などとプレイミスを注意されたりした。

この「テーマとの整合性」は、感覚的にプレイする女性や子供、または家族で遊ぶのに適していると感じた。なんといっても「畑耕して作物作ってお買い物して食わす」という、ごく身近なテーマだ。女性ほどビンビンくるはずだ。
これには、インタラクション(つまり腹の探りあいなどの割と嫌らしい要素)が低い点も寄与しているだろう。

総じてこのゲームは、現代のボードゲームが持つ魅力的なメカニクスを、特に入門者やライトゲーマーに味わって貰うのに非常によく出来ているように思う。そう考えると、イベントやタイルの引きによる運要素が大きい点も、しっくりくる。

最初にプレイした時は、イベントによる運がでかすぎる、と思ったのだが、何度もソロプレイしていると、これはむしろこういう「えええー!」とか「やったー!」とかを楽しむゲームなのだと理解できた。どうせ短時間で終わるのだから、これぐらいでいいのだ。

ガチゲーマーが本気でやるゲームではないかもしれないが、ガチゲーマーにも気軽なカツカツパズルゲームとして考えれば楽しめるはずだし、もちろん入門者にもお勧めだ。

いつも軽いゲームでばかり遊んでいるゲーム仲間にいきなりアグリコラ、とかプエルトリコ、とかの前に、こういうゲームで慣らしてみるのも、面白いかもしれない。意外とハマってくれるんじゃなかろうか?

とはいえ、自分がかなりのゲーマーで、運要素の低い、インタラクションの強いゲームを求めているのであれば、明らかにノットフォーユーになると思われるので、その点だけはご留意を。

なお、小1にやらせた時は、初期労働者駒用に小屋を1つ、最初から与えておいたら非常に良い難易度になったことを付記しておく。

ルール和訳と、デザイナーによるルール不明点の解説の訳も作ったので、よろしければご利用頂きたい。

【追記】
ルールで間違えやすい点をいくつか列挙。
  • 商品の売却アクションでは、表示されている各商品につき1個ずつしか売れない。「青白黄」の店ならば、青2個とかは売れない。青1個&白1個&黄1個、合計3個まで。
  • 秋フェーズでの街での行動は、各プレイヤー1手番ずつやっておしまい。
  • コインは「ワイルドカード商品」として、秋フェーズでの買い物、冬フェーズでの薪や食料の支払いに使える。秋フェーズでの「商品の売却」には使えない(コインを売ってコインを得ることはできない)。また、隣人の助けタイルの返却にコインは使えない
  • 隣人の助けタイルは「街での購入」には使えない。街での移動時の税金&教会バザーや、冬フェーズなどの、「強制的な支払い」にのみ使える。
  • 地形タイルの配置は、隣り合う地形が一致している必要はない
  • 改良タイルを買える店には2つマスがあるが、奥から詰めて止まる。また、1つめのマスから2つめのマスへ、ボードを1周せずに止まることはできない。
  • 夏フェーズの生産時に、「余った生産力」を隣人の助けタイルの返却に使うことはできない。例えば生産力3の土地エリアに貯蔵スペースが2つ空いていた場合、「まず2つ生産してから隣人の助けタイルを返却して貯蔵スペースを空け、あと1つを空いたスペースへ置く」というようなことはできない。この場合、単に2つしか生産できない。生産前に隣人の助けタイルを返したり、生産後に返すことは可能。

現在、日本での流通は殆ど無いようですが、米Amazonで購入できます。

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