ポストカードゲーム「おさわり人狼」はどうやって作られたか?

2015/02/08 23:34 に Jun Shin が投稿   [ 2015/02/09 23:01 に更新しました ]
ゲームマーケット2014秋の「ポストカーゲーム企画(十式ゲームワークス様企画)」に乗せて頂いた「おさわり人狼」について、一部では「インパクトを狙った一発ネタゲー」と思われているのではないか思うのですが(まぁ、このネーミングと見た目では仕方ないとは思いますがw)、実は結構、真面目に考えて作っている、真面目なゲームだったりします。真面目におさわりするゲームなのです(それもどうかと)。実際、遊んだ皆さんからは一様に「めちゃくちゃ盛り上がった!」というフィードバックを頂いていたりします。

今日は、そんな「おさわり人狼」がどういう経緯でデザインされていったかについて、デザイナーズノート的なものをまとめてみたいと思います。


このゲームはポストカードゲームとして発表されていますが、実はもともとは、ポストカードゲーム企画が発表される前から、「名刺の裏がゲームになっているようにしよう」と思い、「名刺ゲーム」としてデザインを進めていたものでした。

名刺の裏がゲームになっていれば、シャイな自分でも「あっこれ、裏がゲームになってるので、良かったら…」と言い出せるのではないか、また、誰かからも「名刺ください」と言って貰えるのではないか…という浅はかな動機ですけども…。

で、名刺版として作っている途中に、たまたまポストカードゲームの企画が発表されたので、「あ、これ、ポストカードサイズにしても大丈夫だな」と思い、急きょポストカードゲームとしてリデザインしたのが「おさわり人狼」だったのです。

「名刺の裏をゲームにしよう」という単なる思いつきから始まったとはいうものの、せっかく作る以上は「へー、まぁ頑張ったね」で終わるような中途半端なものは作りたくない自分としては、真面目に考えました。ポストカードゲームにしても名刺カードゲームにしても、まず、「それ一枚でゲームとして成立している必要がある」ということが大事です。それ以外に何か必要なものがあったとしても、それはだいたいその辺にあるもので代用できなくてはならず、「お店に行って○○を買ってきてください」とすれば、恐らくそのゲームは一生遊ばれないだろう、という確信がありました。必要なものがあれば同梱すればいいのですが、今回は名刺ゲームとして作っているので、それは不可能です。

そして何よりも、「名刺サイズ(またはポストカードサイズ)であることが活かされている」ゲームであるべきだと、自分は考えました。小さいサイズであることは持ち運びに便利ですし、安価に作れることで「お試し」的な意味があるわけで、必ずしも小さいサイズを活かしたゲームである必要性はないと思うのですが、「がんばって小さいサイズに収めてあるけど、これだと小さくて遊びづらそう…」というようなものは避けたいと考えました。その大きさに必然性が欲しい、ということです。ルールがカード裏にまとめきれないような複雑なものも、基本的には「ネットからルールをダウンロードしてまで遊ぶ物好きはほとんどいない」という確信があり、とにかくシンプルなものを目指すことにしました。

また、名刺カードなりポストカードなりが1枚しかないゲームというのを考えた時に、果たしてそれをゲーム会などに持ち込んで、「それ遊んでみたい」と他の人に言って貰えるだろうか? ということも非常に重要視しました。それ単体で、「ぱっと見ただけで面白そう」と思わせる仕掛けが必要だと思ったのです。

まずは、名刺カードが1枚、テーブルの上に置いてあるシーンを想像してみました。テーブルの中央に名刺カードが1枚置かれているだけ・・・このシチュエーションで、ゲームを成立させる為には、まず、全員に名刺カードの前へと集まって貰わねばなりません。遠目に座って、テーブル中央に「ぽつん」とカードが1枚あるだけのゲームは、多分見た目にも悲しく、盛り上がりません。

そこで、強制的に名刺カードの周囲にプレイヤーが集まらねばならないようなルールとして、「カードの上に全員が指を置いてプレイする」というルールをまず作りました。


こうすることで、名刺カードは常にゲームの中心になり、しかも「そのサイズであること」に必然性が生まれます。プレイヤー同士の距離もぐっと縮まります。

そして、そこから逆算して「では、全員がカードの上に指を置いていることに理由があるゲームとは、何か?」を考えました。

実際にカードをちょきちょき切って、その上に指を置いて考えます。こっくりさんみたいになんか動かしてみる? を立ててみる? うーーん。うーーーーーん。考えこみながらふと目を閉じると、そこで「ん?」とひらめきました。目を閉じている間に、誰かが自分の指を触ったら、それって多分、なんかすごく「非日常」な気分だろうな。これゲームにしたらどうかな。と。

そこからはすぐに「これは人狼系のゲームにすればいい」と気づき、「おさわり人狼」が完成しました。目をつぶっている間に、誰かが自分の指を触る。触ったのはいったい誰!? というのをみんなで推理する人狼。一般的な、役職満載の人狼は自分はちょっと難しすぎて苦手なんですが、あまり理詰めではなく「えー、その表情は嘘をついてる表情では!?w」などと盛り上がるのが好きな自分としては、「触られた感触」とか「誰が触られた/触られていない」といった情報を話の肴にしつつああだこうだと推理で盛り上がるのは、きっと楽しいに違いありません。

ただし、「さわりかた」にある程度の制限が必要だと思いました。あまり体にベタベタ触られるのを嫌う人もいるでしょうし、触るのは基本、指だけにしました。また、「人狼が誰もさわらない」だとゲームになりませんし、かといって「常に全員をさわる」になってしまうのも面白くないと考えました。そこで、「人狼は、必ず1人以上さわる」というルールにしました。1人以上触っていれば、何人でも大丈夫、というルール。今思えばこの決定が、このゲームの肝でした。

試しに子供たちを呼んでルールを説明し、感触をテストプレイしてみました。目をつぶっている間に指を触られるというのがどんな感じなのか確かめたかったのです。プレイ開始と同時に目をつぶります。すると、何やら右の方から、私の指をつんつんする感触が・・・思わず表情が綻びますw これは面白いw 思っていた以上に面白いw

「こっちの方から触られなかった?」「なんか撫でるみたいな触り方だった」などと会話もはずみ、結局、嘘をつききれない5歳の次女が「えへへw 私が狼さんでしたw」と自分から白状してしまったのですが(いちおうおさわり人狼は8歳からです)、いやはや、「指を触る」というだけのことが、これほどまでに会話を弾ませるきっかけになり、しかも実際に推理の根拠になりうるとは・・・!

その後、実際にゲーム会に持ち込んでのテストプレイも行い、4人でも8人でも面白いということが分かりました。異性がいるとより盛り上がりますが、男ばかり、女ばかりでも白熱します。何よりも、指と指が触れ合う、というのは、それだけで密なコミュニケーションであり、親密度が上がるのです(これは意図通りなのですが、想像をはるかに超えて、楽しい経験でした)。


(上記写真は、声優の吉成由貴さん(なんと、「おさわり探偵なめこ」の小沢里奈の声優さん)が、お友達とおさわり人狼を遊ぶ中継をしてくれた際の画像)

ゲーム中、いろんなテクニックが編み出されます。「わざと反対方向から触ったように見せかける」「小指で触って女性だと錯覚させる」「関節部分で触ってゴツゴツした指だと錯覚させる」は序の口で、「一人残して全員さわり、自分も触られたと主張する狼」や、しまいには「全員触って、自分は触られなかったと主張する狼」という、裏の裏の裏をかくテクニックまで登場しました(最後のはまんまとしてやられましたw)。このあたりは、「一人以上、何人でもさわってよい」というルールが非常に効いています。

ただ、一つだけ、基本テクニックというか「やってはいけない戦略」が見つかりました。それは「1人しか触らずに、自分も触られなかった、と主張すること」です。ルール上、1人以上触ること、となっているので、「触られた」と言っている人は人狼でない事が確定してしまいます。1人しか触らないならば、自分も触られた、と言うべきでしょう。「え?ということは、2人が触られたと言っていたら、どっちかが人狼ってこと?」とは、なりません。2人触って、自分は触られなかったと言う人狼が潜んでいるかもしれませんから。

というわけで、誰とでも気軽に遊べる「おさわり人狼」が完成したわけですが、グラフィック・デザインにも頭を悩ませました。カード1枚がパッケージであり、同時にプレイボードでもあるので、それらの機能を同時に果たさねばなりません。また、前述のように、ゲーム会などで目についたときに「なにこれ、やってみたい」と思って貰えるようなものにしなければなりません。

中央に目立つように大きめのロゴマークを入れ、ロゴマーク自体でもどういうゲームか分かる工夫をします(4~5パターンぐらいロゴマークを作って没にしました)。そして、指を置く位置をグラフィックで示し、それをポップな感じで表現するようにしました。これにより、とりあえずここへ指を置く、というのがスムーズに理解できるようになっていると思います。これはルール説明の簡略化にも寄与しました。

タイトルを「おさわり人狼」としたのも、ちょっとネタっぽい雰囲気を出して興味をもってもらう為です。ポストカードゲームってだけで、どうしても「所詮~」と思われがちですので、まずは興味をもってもらわないと始まりませんから。結果的にこのネーミングは成功し、ボードゲーム界隈だけでなく、人狼関係の皆様にも広く遊んで頂きました。普段からガチの人狼を楽しんでいる皆様にも受け入れられたというのはとても嬉しく、自信に繋がっています。

ただ、その反面、冒頭で書いたように「一発ネタゲーで、たいして面白くないんだろうな」と誤解されるケースもあったように思われ、その点は機会損失だったかもしれません。でもちゃんと真面目にデザインして、面白く仕上げているゲームですので、スタンプグラフィティやくだものあつめ等のオマケでゲットされた方も、ぜひ遊んでみてくださいませ。きっと想像以上に楽しんで頂けると思います。(^▽^)ノ

おさわり人狼」は、現在全国のショップ様やプレイスペース様でご購入が可能ですが、2015年3月1日に大阪ハナミズキホールで開催される「ゲームマーケット2015大阪」でも販売致します。ブースは「ちゃがちゃがゲームズ」。ブース番号は【A12】です。1枚100円、3枚200円、6枚300円とお得な価格で販売しますので、この機会にぜひ、ゲットしてくださいね。ゲームマーケットのお土産にもちょうど良いかも! ゲームマーケット2015大阪では、おさわり人狼以外にもいろんなゲームを販売します。一部についてはご予約も承っているので、よろしければご予約ください。また、ゲームマーケットでは、協力型お絵かきゲーム「スタンプグラフィティ」やマンカラお買い物ゲーム「くだものあつめ」をお買い上げの方全員に、おさわり人狼を1枚、プレゼントします(箱に同梱しています)。

【追記】
そうそう、書き忘れていましたが、おさわり人狼にはその後、「変態」という役職が加わっています。変態さんは、人狼の仲間で、触られていないのに「触られた」と主張します。詳しくは公式ページをどうぞ。(^^)

この新しい役職「変態」は、ゲームに新しい深みをもたらします。どのような深みかというと、プレイヤー同士で「あなたひょっとして変態では?」と言い合うことができる、という深みです・・・というだけではない、様々な意図が、この役職には込められています。

一つは、これまでただの「平和な情報提供」であった、「私、触られました!」という報告が、変態の導入により「変態の証」として見られるようになる、ということ。単に触られたというだけではみんなに信じてもらえないので、よりリアルに、より詳細に、緊張感をもって「さわられた」ということを報告しなければならなくなります。これまでも、人狼が「さわられた」とウソをついている可能性はあったのですが、変態によってより疑心暗鬼を生み出します。

もう一つは、「さわられなかった人」を浮かび上がらせる効果。通常のおさわり人狼では、誰にも触られないと、ちょっと寂しいことがありました。しかし、変態を導入することで、「私は変態ではない」と堂々と主張することができるようになります。少なくとも変態でないことが確定している(人狼かもしれませんが)プレイヤーの話は、推理の根拠として重宝されるでしょう。この効果に関連して、「人狼」役以外にも役職を作ることで、よりゲームに参加した気分を味わえる人が増える、という点もあります。

基本的には通常のおさわり人狼で十分楽しめますが、最後に軽く、この「変態」入りを楽しんでみるのもまた一興かと思います。(^ω^)

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