ランカスター(Lancaster)

2011/07/23 5:38 に Jun Shin が投稿   [ 2014/02/04 23:10 に更新しました ]
ランカスター。2-5人用。「グレンモア」の作者であるマティアス・クラマー(Matthias Cramer)の最新作であり、2011年ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門にノミネートされた作品だ。ワーカープレイスメントと投票システムが肝の、運要素がかなり少ない本格派ゲームながらシンプルにまとめられた傑作である。

「グレンモア」はちょっとルールが煩雑で結局リプレイできていない為、このランカスターもちょっと躊躇していたのだが、やってみるとものすごくいいゲームだった。私の最近のお気に入りなので、紹介したい。

この作品を最初にプレイしての感想は、「なんとなくトロワ(Troyes)に似ている」だった。トロワに同じく、このゲームもワーカープレイスメントであり、また、毎ラウンド訪れる「敵襲」に対処する所も似ている。また、トロワでは毎ラウンド(最初の3ラウンドだけだが)新しいイベントカードが公開されて展開に彩りを添えるが、ランカスターでも新しい「法案」が毎ラウンド公開される。同じく5ラウンドで終了する。

敵襲への対処が特にテイストが似ていて、1つの敵に複数プレイヤーで立ち向かい、そこだけちょっとした協力ゲームのようで実は競争になっている、みたいな所もそっくりだ。もちろん敵襲だけがメインのゲームではなく、勝利点獲得方法にはさまざまなルートが用意されている。

トロワと同様に、「多方面について同時に考える」という、非常に悩ましい仕組みであるにもかかわらず、トロワのような「複雑さ」を感じさせず、可能なかぎりシンプルな形でルールをまとめているのが、このランカスターの素晴らしい所だ。

とはいえ、もちろんトロワとは全く違うゲームであり、そもそもダイスは存在しないし、異なるメカニクスが中心になっている。ひとつは「強さがあるワーカー」であり、もうひとつは「法案システム」だ。ワーカーには強さがあって、レベル1の騎士(ワーカー)は、ほかプレイヤーのレベル2の騎士にはじかれてしまうのである(はじかれると手元に戻ってきてまた配置できる)。

手持ちのワーカーはもちろん公開情報なので、「これをあそこにおくと、たぶんあいつはあの騎士でこれをはじくだろうから、自分は今度はあそこに置けるよな…いやまて、その前にあいつがここに騎士を置いたら、自分が置けるのはあそこしかなくなるじゃないか!」みたいな先読みが必要になってくる。これがアツい。この辺はちょっとした競り要素的でもある。「レベル1の騎士でここを取られるのは癪だから、別にこのアクション要らないけど敢えて自分のレベル1騎士を置いて邪魔してやろう。きっとあいつはレベル2の騎士でここを取り返してくるぞ。レベル2の騎士駒を無駄遣いさせてやれ、ククク…!」みたいな嫌らしい事を考えていると、「ふーん、じゃあオレこっち置くわ」「おい、ちょっと待てよ、なんでここに置かないんだよ!…あっそうか、しまったーー!!」みたいな事が起こったりする。

また、「あいつはあそこを欲しいはずだから、ここに自分のレベル1騎士を置いても、まさか邪魔してこないだろう…」とか思ってドキドキしながら待っていると、ちゃっかり弾かれてしまい「うっそーん!!なんでそこ置くんだよォォォォ!!!お前そこ要らないだろうがよぉおお!」「いや、レベル1で取られるのも癪だから」みたいな逆の立場に追い込まれて泣きを見たり。

こんな経験をすると、一刻も早く騎士のレベルを上げたくなる。しかし、騎士のレベルを上げるべきか、騎士の数を増やすべきか、その辺も悩ましい。

アクションの種類は基本的に少なく、9個のアクションマスがあるものの、取れる効果は「騎士レベルアップ」「レベル1騎士を追加」「城の建設(自動収入を増やす)」「点数獲得」ぐらいのものだ。後はこれらの組み合わせと、手番順の変更権などで、シンプルだ。なので、やれることが多すぎて分からなくなる、といったこともない(トロワだと、かなり慣れたゲーマーでないと、やれることが多すぎて混乱してくるように思う)。その分、他プレイヤーとの読み合いの方に思考をまわすことができ、インタラクションを増やしているように思う。この辺トロワだと、盤上の要素が多すぎて、自分の場合、駆け引きレベルまで思考をまわせない。

強さのあるワーカー以外に特徴的なシステムが「法案」だ。例えば「お金を一番持っている人が追加で○○を得る」とか「敵襲に対処している人は敵1つに付き3勝利点」みたいな「法」が書かれたカードが、場に3枚並んでいる。これが現在の法であるが、その下に、別に3枚の「新しい法案」が並んでいる。この新法案に対して毎ラウンド、全員が手に秘密裏に「賛成」か「反対」かを「投票マーカー」と一緒に握りこみ、「こんな法案、通してたまるか!w」とか「この法案だけは絶対に通させてもらうw」といった意地(?)を張り合うのだ。

法は最大3つしか残らず、新法案が通るたびに一番左側の古い法が破棄されていく。3つの新法案の可否が終わり、残った3つの法を、左から順に実行していくことになる。

この法案システムが、おそらくこのゲームの肝だろう。特に最後のラウンドでは、直接点数に響く法案がいくつも出てくる。初回プレイでそこまで意識するのは無理だろうが、2回、3回とプレイを重ねていくにつれ、これらの法案をいかに利用するかが鍵になってくるように思う。


さて、このゲームでは、勝利点を取る方法がいくつか用意されている。

(1) 敵襲に対処する
(2) 法案を利用する
(3) 食客を集める
(4) 盤上の「6勝利点」アクションを取る
(5) 騎士の兵力合計ボーナス、城の最大数ボーナス

どれかひとつに特化、というだけでは勝てないようになっている。この中で、1つの得点源として最大の得点が得られるのは(3)の食客で、最大36点を獲得できるが、食客を全部集めるのに集中していると、他に何もできなくなってしまう。もちろん36点だけでは勝てない。

敵襲への対処で得られるのは、そこに集中したとして、1ラウンド平均で5,6点がいいところだろう。そうするとここでも30点程度が関の山だ。あとは法案だが、うまくすれば1ラウンドで8点とか10点とか取れるチャンスがある。しかしこれは1人だけが突出して有利な法案は、他全員が結託してつぶしに来る(笑)ので、なかなかうまくいかない。(4)は兵力4の騎士駒でないと取れない上に、兵力を一時的にアップする「従者駒」によるアツい戦いが繰り広げられる為に、一人で独占はなかなか難しい。(5)にいたっては、1位が8点、2位が4点と、どちらかというと「オマケ」的な点数がゲーム終了時に入るだけで、それだけを狙って勝てるものでもない。

とりあえず、敵襲を無視はできないだろう。基本はここを狙っていくのがよいと思われる。

この「敵襲」システムもなかなか面白い。敵は毎ラウンド2枚現れるのだが、敵のレベルが「8」だった場合、そこに配置される全員の騎士駒の兵力合計が8以上にならないと勝利できない。そうすると、次のラウンドに戦闘が持ち越されるのだ。その間、その騎士駒は使えない。勝利すれば1位、2位、3位に勝利点が貰えるのだが、面白いのが、勝利できなくても1位と2位に(少し少ない)勝利点が入るという点だ。例えば、勝利した場合には1位2位3位にそれぞれ6・3・1点、勝てない場合には1位2位に3・1点が入るとしよう。もしここに、自分が兵力1の騎士駒を配置して、他プレイヤーが誰も置かなかった場合、戦闘に勝利はできないものの、自分だけ3点が入るのだ。次のラウンドも誰も置かなければ、そのまままた3点が入る(その場合、騎士が捕虜になってしまうので、レベル数分のコインを支払って釈放してもらう)。兵力1の騎士駒1個で合計6点が入るのなら、割と美味しいじゃないか・・・という計算が成り立つ。

ところが、同じような事を他のプレイヤーも考えて、同じ敵襲にレベル1騎士を置いたとする。すると、なんと「同じ兵力なら、後に置いた方が順位が上になる」のである。3点が1点に減ってしまう。それどころか、さらにもう1人のプレイヤーが騎士駒を置くと、1点も入らなくなってしまう。これはもう、アホかといわんばかりの失態だ。(ちなみに同じ敵には最大3人までしか騎士駒を置けない。同じプレイヤーが、一度置いた騎士駒の上にさらに騎士駒を重ねて兵力を増強するのはOK)

そうすると、「先に置くのはアホやな」ということになってしまうのだが、一概にそうでもない。敵襲に騎士駒を置くと、最初の6人まで、「特別ボーナス」をその場で受け取れるのだ。それは「コイン3枚」とか「従者駒2個」とか以外にも、「騎士駒をレベルアップ」とか「食客を1人取れる」とかの強力な効果もあり、これらは早い者勝ちになっている。先に敵襲において欲しいボーナスを得るか、後で置いて勝利点を狙うか、ここでもジレンマが発生する。

ゲームの「フェーズ」の流れも絶妙である。

まず、敵襲やアクションマスへ各自の騎士駒を配置していくのだが、その効果はまだその場では解決しない。
その状態で、まず「法案」の処理をするのだ。その後に、まずアクションマスの効果をAからIまで順番に解決、その次に、建設した城の自動収入を解決、最後に「敵襲」を解決、となる。

するとどうなるかというと、最後の「敵襲」を解決するまでの間に、法の効果やアクションマスの効果、城の効果などによって、「敵襲」に配置した騎士駒がレベルアップしたりするのである。騎士駒の配置時点では「よーし、これで自分は敵襲の8点は確定だな」とか思っていたのに、敵襲の解決をするまでに自分以外のプレイヤーが騎士駒をレベルアップさせてしまい、兵力の逆転が起こってしまう、ということがありえるのだ。ちゃんと先まで読んでいないと、足元をすくわれることになるだろう。

私はこれを初プレイでやって、中途半端に騎士駒ばかりレベルアップさせて食客も5枚ほどしか取らず、法案もぜんぜん活かせずいいところなしだったのだが、一度プレイすると、「次はああしてみたい」という戦略が浮かんでくる。どうやらこれは多くの人がそうなるようで、友人とやったときも「ちょっとこれ、もう一回やろうぜ」となったし(もう夜中の3時だったのでお開きになったけど)、他のときなんかは実際にもう一度続けてやった。さらにもう一回やろうかという話にすらなったぐらいだ。

5ラウンドで終わってしまうというのが、なんとも後味を引く理由のひとつだろう。最後のラウンドでは、各自のワーカー数が5個以上とかになって結構長くなるのだが、それでも「えっ、もう最後のラウンド?」といった感覚になる。ぜんぜん準備が整ってないのだ。下手すると、「ここから点数取っていく予定なのに・・・w」という状態でゲームが終了してしまう。

「お手軽トロワ」と最初に書いたが、もちろんそれは「トロワに比べたらシンプル」という意味であって、決して「誰でもお勧めのライトゲーム」ではない。むしろ運要素がほとんど無い、ガチンコゲームと言っていい。ルールも、ゲーマーならすんなり分かるすっきりしたものだが、初心者には「難しいね」といわれる程度の複雑さはある(少なくともカタンよりは難しいと思う)。とはいうものの、さすがドイツ年間ゲーム大賞が「エキスパート部門」とはいえノミネート作品として選んだだけはあって、ゲーマー向けには万人受けすると思われる、「買って損の無い」タイトルだろう。

買って損がないといえば、ランカスターのコンポーネントは豪華だ。特に騎士駒の木の感触。存在感。レベル4の騎士はレベル1の騎士の4倍の高さがあり、見た目で兵力差が分かるようにもなっている。これをボード上に「パチリ!」と置くこの感じは将棋みたいなうれしさがある。法案カードや敵襲カードも、ペラペラのカードでなくタイルになっており、扱いやすい。各自専用の城ボードがあり、細長い城タイルも「城を建設したぞー!」という雰囲気に浸れてうれしい。豪華な分、箱はズッシリと重いので、海外からの輸入の際には箱の角などの破損に注意したほうがよいだろう(私のは、箱の一部が破れていた…)。

国内で買うとけっこうするのだが、有志による素晴らしい和訳ルールが公開されており、私のようにamazon.deを使ってお手軽に個人輸入も可能だ。その場合は4000円-5000円程度で入手できる。まぁ、国内で買っても6800円程度で購入できるので、安心を求める場合は国内でも、ぜひ!

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2011年ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門ノミネート作品として、このランカスターの他に7Wonders(世界の七不思議)とストラスブールがあり、今年は7Wondersが受賞した。私はすべて所有して、いずれも何度かプレイしているのだが、今のところこの3つの中ではこのランカスターが一押しである。7Wondersももちろん面白く、この中ではもっとも幅広いプレイヤーに訴求すると思うのだが、その分「深み」に欠ける。ストラスブールも独特の競り要素と陣取り要素、秘密の目的要素が楽しく、自分もかなり好きなのだが、ランカスターの「騎士駒置きあって戦争もするよ!」に比べるとちょっと地味めだ。

ランカスターもまだ4回しかプレイしていないので、今後の評価がどうなるか分からないのだが、7Wondersは連続して10回とかを何度かやったらちょっと飽きてきた所があるので(人数によってカード枚数をそろえるのが面倒なのもあって)、ランカスターぐらいのプレイの長さのほうが「連続して10回」とかありえないので逆に末永く遊べるのかもしれない。

トロワのプロモカード(イベントカード)のように、追加の法案や特殊効果を持つ敵襲など、ちょっとした拡張が出てくれると、またいろいろと楽しめそうだが、エキスパート部門にノミネートされたわけだし、期待してもいいのだろうか?

【戦略の話】

ちょっと戦略の話を。まだ4回しかやってないけどw
そういうの嫌いな人はここから先は読まないで頂きたい。

このゲームにおける勝利点の獲得方法はすでに説明したとおりだが、やはり敵襲を無視することはできないように思う。毎ラウンドコンスタントに勝利点を稼げ、ラウンド1からある程度確実に点数が取れるのはここだけである。5ラウンドしかないこのゲームにおいて、毎ラウンド確実な勝利点を稼げるというのは重要だ。

特に、「戦争に負けても、1位と2位には少し点数がもらえる」というのは重要で、これは積極的に狙っていきたい。特に、前ラウンドから流れてきた敵襲に誰も駒が置かれていない状態で、もし自分の手番が最後だったりしたら(他プレイヤーは全部駒を置ききっている状態)、ここにレベル1騎士駒を1つ置けば、非常に美味しい。もちろん手元に、捕虜開放のための1金があることが前提だが・・・。

城の建築だが、個人的にはあまり重要視していない。実のところ城アクションは「救済要素」に近いのではないかと思っている。例えば騎士駒をレベルアップしたり追加したりしたいが、すでにアクションを取られている場合などに、仕方なく利用するための場所だ。そういう場所なので、効果も非常に地味で弱い。ラウンド1で「2金自動収入」の城を建てたとしても、ゲーム全体で10金にしかならない。城の建築の代わりに「レベル1騎士駒を追加」にしていれば、その騎士駒を敵襲に毎ラウンド置いて「2金・3金ボーナス」を取ることで、10金以上稼げる可能性は高いし、そもそも勝利点にもなる。

ゲーム終了時の最大城建築数ボーナスだって、たかが8点・4点だ。なんとも微妙な所なのである。「今回はお金を最大限利用しよう」とか「従者駒を利用しまくろう」といった戦略がある場合に、それを補完するために使うなどはありえるので、この辺、今後の研究が必要だと思われるが、初心者が何の戦略もなしに適当に城を建築するよりは、素直に騎士を増やしたりレベルアップするほうへとアクションを使った方がよいと思う。

特に強いと感じているのが、「初手でレベル1騎士駒を敵襲に置き、その場で騎士駒レベルアップの恩恵を得て、手元のレベル2騎士駒をレベル3にする。そしてそのレベル3騎士を、レベル1騎士駒追加アクションに置く」という戦法だ。自分だけが追加の騎士駒を得つつ、敵襲への対処の勝利点も得ることができる。他プレイヤーが敵襲に参加すると勝利点もらえないケースもあるが、そうすれば、今度は他プレイヤーは次のラウンド、自駒1個でプレイするハメに陥る。これがどこまで有利なのかは、まだプレイ経験が浅いのでなんともだが、4回中3回は、この戦法を取ったプレイヤーが勝利した。

これに対抗する方法をいろいろ考えているのだが、なかなか死角がない。あるとすれば、初期の法律である「お金を一番持っているプレイヤーが騎士駒レベルアップ」と「従者駒一番持っているプレイヤーがレベル1騎士駒1つ追加」の法案をなんとしても残して、少しでも同条件に近づける、ぐらいだろうか。その場合、このラウンド中、他のプレイヤーはお金や従者駒を集めねばならないのは言うまでも無い。(追記:どうも、ゲーム開始時に1枚好きな城タイルを建てれるルールを失念していたようで、これを適用すると、それほどこの戦法が強いわけでもなくなるようです。)

食客を集めるのも重要だ。最大9枚で36点。1枚あたり3点になる7枚あたりからかなり美味しくなってくる。6枚だと1枚あたり2.5点。5枚だと1枚あたり2点にしかならない。3枚程度では、取らないほうがマシぐらいの勢いだ。ただ、食客は点数だけではなく、投票マーカーの源泉でもある。もし、自分の戦略がある一点の法案を通すことにかかっているのであれば、その為に食客を集めるというのもアリだろう。また、食客を集めることにした人は、法案を通しやすい(却下しやすい)事を前提にして、ある特定の法案に依存したもうひとつの戦略を進めるのが重要だと思う。

レビュー文中にも書いているが、騎士力合計ボーナスや城タイル数ボーナスにはあまりこだわらないほうがいい。それを戦略の基礎にするなんてのはもってのほかだ。たかが8点。侮ることもできないが、おまけにすぎない。それよりも、自分の戦略の関連法案をいかに利用するか、だ。今関係なくても、次のラウンドには関係ある、ということもある。みなの隙をついて、自分だけが有利な法案を通してしまうのが、このゲームの醍醐味なんではないかと思う次第だ。

法案をベースにした戦略を考えると、いろいろ楽しい。あんなことやこんなことができるんじゃないだろうか。そうなってくると、城の建築が意味を持ち始める。やっぱこのゲームは、法律を利用してナンボじゃなかろうか。ワーカープレイスメントの方にばかり気を取られると、なかなか勝てないのかもしれない。
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