ボードゲームのメカニクス

2012/01/31 2:34 に Jun Shin が投稿   [ 2019/07/23 8:26 に更新しました ]
表紙画像

ボードゲームには様々なメカニクスがある。この記事では、ボードゲームをデザインするために取捨選択される様々なメカニクスについて思いつくままに列挙し、簡単に説明を加えていく。

メカニクスとは、例えばドミニオンにおける「デッキ構築」のように、ゲームを成り立たせる為に採用される仕掛けやルールの断片のようなものと理解している。特に、「ジレンマを生み出すための仕掛け」という点に着目してリストアップしてみた。「システム」とか「ルール」とかいう言葉と混同しやすい部分があり、実際それらはかなりの部分で重なっているものと思われるため、ここでは特に細かく区別していない。用語についてはなるべく一般的に流通している言葉を使ったが、特に定義が見つからなかったものは独自の用語を用いている。付随させた英語名も、そのものズバリがある場合はBGGから引用しているが、同じ概念が無い場合には適当に意訳している。

この記事は、私自身のボードゲームデザインのネタ出し用にまとめたものである。当然網羅していないし、項目のレベルも大小さまざまだし、他の人と見解が異なる部分も多々あると思う。今後も気づいた部分は加筆・修正を加えていくし、新しい項目もどんどん追加していく予定である。

他の人にとっても、何らかのヒントになれば幸いである。この記事を読んで「ボードゲームデザイン」に興味をもたれた方は、私も大好きなゲーム「テラフォーマー」などを製作された遊星からのフリーキックさんから出版されている「ボードゲームデザインの本」を読んでみて頂きたい。今後もシリーズ化が予定されているとのことである。他にも、人気ゲーム「ヴォーパルス」を製作されたI was gameさんが翻訳している一連の海外ゲームデザイナー記事も大変読み応えがある。

尚、「診断メーカー」でこの一覧を使った「ボドゲデザイナーになったったー」を作成したので、暇つぶしにでも遊んでみて頂きたい(日替わりで楽しめます)。意外と新しいゲーム製作のきっかけになったり・・・しないか。

目次

  1. 1 ゲーム進行に関するメカニクス(Mechanics about Game Progress)
    1. 1.1 ■手番制(Turn-based)
    2. 1.2 ■同時決定(同時解決)(Simultaneous Action Selection)
    3. 1.3 ■リアルタイム制(Realtime-based)
    4. 1.4 ■時間トラック(Time Track)
    5. 1.5 ■先にパスすると有利(Profitable Pass)
  2. 2 ランダムネス(無作為性)を実現するメカニクス(Mechanics for Making Randomness)
    1. 2.1 ■カード山札(デッキ)(Deck of Cards)
    2. 2.2 ■デッキ構築(Deck Building)
    3. 2.3 ■袋(Bag)
    4. 2.4 ■ダイスロール(サイコロ)(Dice Rolling)
    5. 2.5 ■デクスタリティアクション(器用なアクション)(Action / Dexterity)
  3. 3 資源の分配・選択に関するメカニクス(Mechanics for Distributing Resources)
    1. 3.1 ■競り(Auction)
    2. 3.2 ■選んだ人が最後に取る(Distributer-Takes-Last)
    3. 3.3 ■ダッチオークション(Dutch Auction)
    4. 3.4 ■ドラフティング(徴兵)(Drafting)
    5. 3.5 ■ワーカープレイスメント(Worker Placement)
    6. 3.6 ■ロンデル(Rondel)
    7. 3.7 ■トレーディング/交易(Trading)
    8. 3.8 ■投票(Voting)
  4. 4 課題(目的)を作り出すメカニクス(Mechanics for Giving Missions)
    1. 4.1 ■タイル配置(タイルプレイスメント)(Tile Placement)
    2. 4.2 ■ピック&デリバリー(Pick and Delivery)
    3. 4.3 ■エリアマジョリティ(Area Majority)
    4. 4.4 ■セットコレクション(Set Collection)
    5. 4.5 ■ネットワーク構築(Network Building)
    6. 4.6 ■株式(Stock Holding)
    7. 4.7 ■推理(Deduction / Logical Thinking)
  5. 5 コミュニケーションに関するメカニクス(Mechanics about Communication)
    1. 5.1 ■間接的な意思伝達(Indirect Communication)
    2. 5.2 ■少ない人に当てて貰う(Minimum Communication)
    3. 5.3 ■バッティング(相殺)(Cancel Each Other Out In Butting)
    4. 5.4 ■協力プレイ(Cooperative Play)
  6. 6 ゲームに彩りを与えるメカニクス(Other Mechanics)
    1. 6.1 ■コスト付きアクション(Costed Action)
    2. 6.2 ■フードサプライ(運用コスト)(Food Supply)
    3. 6.3 ■バースト(Bust / Press Your Luck)
    4. 6.4 ■アクションポイント(Action Point)
    5. 6.5 ■トリックテイキング(Trick-taking)
    6. 6.6 ■可変ボード(ランダムセットアップ)(Modular Board / Rondom Setup)
    7. 6.7 ■変動相場制(Floating Exchange System)
    8. 6.8 ■拡大再生産(Expanded Reproduction)
    9. 6.9 ■経年(期限付き能力)(Aging)



ゲーム進行に関するメカニクス(Mechanics about Game Progress)

 プレイヤーがゲームに参加する機会を公平にする事は大事である。一部のプレイヤーだけがゲームに参加しているのを見るのは苦痛だ。ゲームに参加する機会は、多くの場合「手番」というメカニクスによって規定される。これにより、ルールで「手番」を「プレイヤーが持つ資源」の一つとして扱い、同期を取ってゲームを信仰する事ができるようになる。これに関するメカニクスは、プレイヤーにどのように「ゲームに参加する機会」という資源を与えるかを規定していると言える。これらは公平に分配される事が望ましいが、逆に、手番自体を変動可能なものとして「奪い合う」事も可能にしているゲームも多い。

■手番制(Turn-based)

 基本的なボードゲームメカニクスの一つ。多くのゲームが「手番」というメカニクスを採用している。これは、もし各プレイヤーが全員同時に行動しても良い場合、意思決定の早いものが非常に有利になってしまったり、どちらが優先されるのか判断に困ることがあったりすることが多い為である。一人一人順番に「手番」を回していく方法により、各プレイヤーにじっくり考える余裕を与えることができ、また、プレイに秩序をもたらすことができる。反面、手番以外のプレイヤーはただ「待つ」ことが多くなり、これが「ダウンタイム」と呼ばれてマルチプレイヤーゲームの欠点の一つと言われることもままある。
 ラウンド制のゲームの場合、手番順が毎回同じだと、それによって有利不利が発生することが多い為、スタートプレイヤーを1つずつずらしていったり、何らかの条件によって手番順をラウンド毎に変更したりするケースが多い。「手番順」を決める能力がゲーム中に用意されていることもある。
 余談になるが、手番になってからカードを引く、というゲームの場合、手番が回ってくるまではあまり考えることがない。もちろん熟練してくればいろいろと考えることはあるだろうが、多くのプレイヤーは「カードを引いてから」考える。よって、ダウンタイムを軽減したいのであれば、「カードを引く」というアクションを必ず手番の最後に行うようにし、待っている間に手札から次の一手を考える事ができるようにした方が良いかもしれない。

■同時決定(同時解決)(Simultaneous Action Selection)

 手番制の「ダウンタイム」という問題を解決する為に、手番制ではなく全員同時に行動を行うようにするメカニクス。意思決定の早さによる有利不利の問題がある為、このメカニクスを採用するゲームでは、その問題を解決するような仕組みを導入していることが多い。例えば「魔法にかかったみたい」のようなバッティングゲームでは、全員が「秘密裏に」カードを選び、全員が選び終わったら順番に、または一斉に開示する、というようになっている。また、「7 Wonders」においては、全員同時に隣へカードを渡した後、隣から渡ってきたカードを受け取って1枚プレイするカードを選ぶ、というところまで同時にできるようになっている。
 同時決定の最大のメリットは、テンポがよくなることである。人数が増えてもプレイ時間が大きく変わらない為、大人数のゲームにも向いている。反面、うまく考慮しないとソロプレイ的になりやすい。
 逆に最大のデメリットは、「同時に」といいつつ、他の人がどう動くかを横目で見ながら自分の行動を決定したほうが有利になるケースがある、という点だろう。これを防ぐには、意思決定を秘密裏に行えるようにしたうえで、決定後の意志変更ができなくする仕組みを何か考えねばならない。それができなければ、そこだけ手番制を導入するかないだろう。「世界の七不思議」などでは、この部分は敢えて無視し、ゲームのテンポを優先していると思われる。

■リアルタイム制(Realtime-based)

 ゲームの中心となるプレイがリアルタイムで行われる。例えば「ウボンゴ」では、各プレイヤーに与えられたパズルを、全員が「せーの」で同時に解き始め、先に解いたものが高得点を得られる仕組みになっている。「ハイパーロボット」も同様で、ウボンゴでは各プレイヤーに異なるパズルが与えられていたが、ハイパーロボットではテーブル中央に置かれた1つのパズルを全員が同時に早解きする。1つのパズルを複数人で扱おうとすると、ピースの取り合いになるという問題が発生しがちだが、ハイパーロボットではそれを逆手にとって「パズルには手を触れず、頭の中で解く」という形にしているのが面白い。「マジックメイズ」のように、協力型ゲームとも相性が良い。刻一刻と進む、まさにリアルタイムな時間制限の中で、全員がルールにそって同時並行で動くのは非常に面白い。
 同時決定(同時解決)のメカニクスと少し違うのは、同時決定はあくまでも、「手番」を全員「個別に」同時にやるというのが目的であるのに対し、リアルタイム制は、「ゲームをリアルタイムで進める」事が目的であるという点である。その為、同時決定ではその間他プレイヤーとのインタラクションを制限している事が多いが、リアルタイム制では積極的に他プレイヤーとのインタラクションを取り入れている。
 例えば「メイクンブレイク」のように手番プレイヤーが時間内にパズルを解くのを他プレイヤーが見守る形式のゲームがあり、これもリアルタイム制の一種とは言えるものの、あくまでも手番は順番に回っていくので、また少し違った視点で見る必要がある。
 リアルタイム制はプレイヤーに緊張感やダイナミックさを感じさせることができるが、反面、疲れを感じさせる事もある。ルールの中に適度な休憩時間を(プレイヤーに休憩だと気づかれないように)入れるとゲームにメリハリが付くだろう。また、リアルタイム制の下では、ルールに沿っているかを他プレイヤーが監視しづらく、プレイミス(間違った場所に駒を置いた、等)が簡単に発生してしまいがちである。その点にも気を配って、プレイしやすいルールやグラフィック・デザインを心がけたい。

■時間トラック(Time Track)

 それぞれのアクションに決められた時間コストがあり、そのアクションを実行することで時間トラック上の自分の駒がコスト分進む。時間トラック上で最後尾のプレイヤーが常に手番を行う為、アクションコストの低いアクションを行ったプレイヤーが連続して手番を行うこともある。時間トラック上で最後に到達するとゲームが終了することが多い。「テーベの東」や「オリンポス」などで採用されている。また、「東海道」のように、タイルやカードを一列に並べ、遠くにある良い資源を取ってしまうと、飛び越した資源はもう取れない、という形になっているものもある。これは「資源の獲得機会」そのものをコストとして扱っているが、それをプレイヤーにいちいち管理させない部分がスマートである。
 このメカニクスは、高いコストのアクション(又は、誰もが欲しいがトラックの先にある資源の獲得)を行えば、しばらく手番がやってこないというジレンマがある点が重要である。これはある種の公平感をもたらす上に収束性も高く、また「時間」という概念がいろんなテーマと合致しやすいという利点があるが、ゲームに不慣れなプレイヤーにとっては見るべき対象が増え、ゲームのプレイ感を損ねることもあるかもしれない。大きなコストのアクションを実行すると、かなり長い間手番が回ってこない事がある点も、テンポを悪くする要因となりえる。
 「ヘヴン&エール」の事例は少し面白い。このゲームでは、「資源が一列に並んだトラック上で一度自分がジャンプで飛ばした資源はもう取れない(後戻りできない)」という点はまさに時間トラックの特徴だが、手番は時計回りに進んでいく。「最後尾が手番を行う」が無いのである。これは恐らく「強い資源」「弱い資源」というのが無い為に実現できたデザインだと思われる。「5」のタイルは強いが、「1」も決して弱いわけではない。資源の強弱よりも「どのタイルをどの順番で取って決算するか」が大事である為、そのジレンマが、時間トラックの「後戻りできない」という特徴とマッチしたものと思われる。資源の強弱が強いゲームでヘヴン&エールの真似をすると、バランスを崩す恐れがあるかもしれない。ゲームデザインはまだまだ奥が深い。

■先にパスすると有利(Profitable Pass)

 手番が何度も回ってくるラウンド制のゲームにおいて、先に手番を「パス」してラウンドから降りると、早いもの勝ちで有利な効果を選ぶことができる、というメカニクス。通常は、ラウンド中に何度も手番が出来た方が有利になるはずであるが、このメカニクスにより、「まだ手番を行う事ができるが、今パスしてラウンドから降りた方がいいかもしれない」という新たなジレンマが生まれる。また、「このラウンドは降りて次のラウンドに集中する」といった戦略も成り立つようになる。手番が早いほうが有利なゲームの場合には、「次のラウンドは、前のラウンドでパスした順番にプレイする」というルールを採用しているゲームもある。
 このメカニクスを導入する際には、パスによるメリットをあまり強くしすぎてはいけない。ほとんどのゲームでは、その楽しみが「ラウンドで手番をプレイすること」にあるはずで、「今、手番をやりたいのに、パスした方が有利」などという状況があまり頻繁に訪れてしまうようでは、ゲームの楽しみを阻害する可能性がある。また逆に、あまりメリットを弱くしすぎると、ジレンマとして機能しなくなる。上記で説明したように、「このラウンドは降りて、次のラウンドに賭ける」という戦略を成り立たせたい場合に、その補助的なメカニクスとして採用するのが良いかもしれない。

ランダムネス(無作為性)を実現するメカニクス(Mechanics for Making Randomness)

 無作為性は、ゲームに予測不可能性を与える。予測不可能性は、プレイヤーに対して選択のストレスを軽減したり、新鮮な驚きを与えたり、最後までプレイするモチベーションを与えたりもする。50枚のカードから1枚を選ぶより、50枚の山札からランダムに3枚引かれたカードから1枚を選ぶ方が気楽であるし、カードのランダムな組み合わせは様々なドラマを生み出し、毎回異なる課題をプレイヤーに与えてくれる。時に、適度な予測不可能性はプレイヤーに「たまたまうまくいった」だけの事を、まるで自分自身が上手くプレイできたかのように錯覚させ、楽しませる事ができる。しかし、まったく予測不可能にしてしまうと、今度はプレイヤーに「自分自身でプレイしている感覚」を失わせてしまう。自分がゲームにどのような予測不可能性を与えたいのかよく考え、それに適したメカニクスを選択、又は考案する必要がある。

■カード山札(デッキ)(Deck of Cards)

 基本的なボードゲームメカニクスの一つ。複数のカードを山札にして、基本的には裏向きにして上から1枚ずつ引いていく。カードをシャッフルすればこれが乱数発生装置(ランダマイザ)になり、シャッフルせずに順番に並べれば、場所を取らずに順序性を表現できる。
 例えばUNOでは山札はランダマイザとして機能している。これにより、次に何が出るかが予測しづらくなり、ドラマ性を演出している。また、ドミニオンでは自分専用のデッキを持っており、このデッキにどんなカードが入っているかはプレイヤーは承知しているが、次に何を引くかは確率的にしか予測できない。
 ホームステッダーズのオークションタイルでは、順序性を利用している。時代毎にカードをまとめた上でシャッフルし、時代の順序に積み重ねる事で、時代の移り変わりを表現しつつ、時代の中ではランダム性を楽しめる。また、エンデバーにおいては、カードの並び順が必ず決まっており、段々強いカードが出てくるようになっている。本来これは一列に並べて視認性を高めるものだと思うが、スペースを省略する為にデッキという形を取っているものと思われる。

■デッキ構築(Deck Building)

 最初から山札が用意されているのではなく、山札の内容を自分で決めながらゲームを進めていくメカニクス。デッキ内のカードバランスを調整する、というデッキの新しい活用法を見出している。大ヒットゲーム「ドミニオン」で初めて提示され、このメカニクスそのものも一大ブームとなった。もちろんこれはマジック・ザ・ギャザリングからの拝借だが、マジックではこれがゲームの準備段階で行われたのに対して、ドミニオンではゲームそのものにしてしまったのが新鮮だった。
 デッキ構築においては、ゲームが進行するにつれてデッキ内容が充実していくと同時に引きたいカードを引きづらくなるというジレンマがあり、不要になったカードをデッキから除外する効果を入れるかどうかでゲームバランスがガラリと変わる。
 デッキ構築ゲームを製作する場合には、デッキの回転の速さを考慮しておく必要がある。ドミニオンがヒットした理由の一つに、「自分のターンが終わったら、使わなかった手札も全部捨てる」というルールがある。これのおかげで、購入したカードがすぐにまたシャッフルされて手札へ回ってくるようになり、スピーディな展開を楽しめるのである。
 シャッフルの手間が問題となるケースがあり、また、ドミニオンがあまりに鮮烈かつ無駄のないシステムだった為、デッキ構築を採用したゲームのテイストがいずれも似てしまうという指摘もある。まだ新しいメカニクスであり、今後研究が続けられていくことになるだろう。

■袋(Bag)

 不透明な袋にいろんな駒やタイルなどを入れて1枚引く、というメカニクス。主にランダム性を導入する為に使う。カードではないものにデッキのような効果を与えたい場合に有用だが、デッキのような順序性を表現することはできない。また、駒の形が異なる場合には手触りで判断できてしまうという問題もある(逆にこれを活かすゲームもあるかもしれない)。
 デッキに対する利点として、袋に追加する駒やタイルが、常にシャッフルされる点がある。デッキでこれをやろうとすると非常に面倒である。逆に、必ずシャッフルされてしまう(デッキだと、「追加する順番」や「捨てた順番」を保持することもできる)ので、それが問題となるケースには採用が難しい。あまり大きな問題となることはないだろうが、残りの駒数が少なくなってくると、袋に手をつっこんだ人だけが「残りの駒数」を確認できてしまうという点には多少注意が必要かもしれない。
 ゲームで袋が用意されていなくとも、「タイルを裏向きにして全部混ぜ、そこから1枚ずつ引いてください」のようなゲームの場合、自分で袋を用意してシャッフルや配置の手間を軽減することもある。袋に手をつっこんで1枚引くというのはなかなか楽しいものである。
 ドミニオンによって「デッキ」というメカニクスが再度脚光を浴びた為、「暗黒の金曜日」や「クォーリアーズ!」のようにこれを袋に置き換える流れも発生している。これらのゲームでは、ドミニオンと同じく袋の中身の「バランス」(つまり何かが引かれる確率)を調整することをゲームの主な目的としている。

■ダイスロール(サイコロ)(Dice Rolling)

 ダイス(サイコロ)を振って出た目に応じて何かをする、というメカニクス。古くから存在するボードゲームの基本的なメカニクスの1つ。ゲームにランダム性を手軽に導入できる。よく使われるのは六面ダイスで、立方体なので製作コストが安く付くのがその理由と思われる。
 タイルやカードと異なり、ダイスの各面に表示できる情報には限りがある。何らかのマークや文字1文字程度が限界である。この為、多くのゲームではダイスには数字が書かれており、駒の獲得や移動などの「アクションの効果数」をダイスで決めるというものが多い。また、出た目のマークや文字に対してどんな効果があるかを別紙のシートで表現するものもある。
 複数のダイスを一斉に、又は一個ずつ振り、出た目の組み合わせや合計数で何かが決まるという仕組みも多い。2個以上のダイスを振る場合に重要になってくるのは、ある組み合わせの出る確率のばらつきである。例えば六面ダイス2個振って合計7が出る確率は、他の組み合わせよりも大きく、合計2が出る確率は最も低い。「カタンの開拓者たち」ではこの特徴を応用してゲームに活かしている。
 多面体という特徴を活かして、「ビブリオス」や「サンティアーゴ・デ・クーバ」のように、ゲーム中のステータス表示に利用している例もある。小さなスペースで面の数だけステータスを表すことができて便利である。
 カードによるデッキ(山札)で表現される「ランダム性」と、ダイスのランダム性には、無視してはいけない大きな違いがある。それは、ダイスの出目には偏りがある、ということだ。例えば1-6の数字が書かれたカードがそれぞれ1枚ずつ、合計6枚あるデッキがあるとする。これをどのようにシャッフルしたとしても、各数字は1回ずつ必ず現れ、また、2回以上現れることはない。しかし、6面ダイスを6回振って、全部の数字が異なる確率は相当低い。この違いを考慮に入れずに「まぁ、ダイスの方が安くつくしダイスにしよう」と適当にデザインすると、まるで違うゲームになることがあるので注意が必要だろう。

■デクスタリティアクション(器用なアクション)(Action / Dexterity)

 ダイスや袋、山札などは、運を天に任せるしかない。「上手にダイスを振る」というような事は、(感覚的にはあるとしても)実際にはあってはならない。しかし、時には、自らの器用さをプレイの結果に反映したいと思うものである。例えば「ア・ラ・カルト」では、料理を完成させる為のスパイス駒を、瓶の中から「狙った数だけ振り出す」という方法でアクションを行う。振る角度、振る強さ、等、完全に思う通りに結果をコントロールできるものではないものの、その結果には何らかの「自分のスキル」が反映される為、自然とプレイには熱がこもり、結果にも納得がゆく。「サフラニート」では、売買の対象となるスパイスを、ボード上のスパイスエリアへ自分のチップをうまく投げ込む事で選択する。ゲームに適度な運要素を導入しつつ、それを「運」ではなく「自分のスキル不足」であると納得させることができる。半面、どうしてもプレイに「上手」「下手」が生まれてしまい、一方的なゲーム展開になったり、人によってはまったく思い通りにならずにゲームを楽しめない事もあるかもしれない。どの程度「ままならなさ」の度合いを高めるのか、デザイナーがゲームで表現したい「面白さ」をよく考え、調整したい。


資源の分配・選択に関するメカニクス(Mechanics for Distributing Resources)

 ゲームには一般的に、駒やカード、マップ上のエリア等、何らかの「資源(リソース)」が登場し、プレイヤーはそれを取り合ったり、手元で管理したりする。資源はゲームの根幹をなすものであり、それをどのようにしてプレイヤーに分配するか(プレイヤーに獲得競争させるか)が、ゲームの肝となる事が多い。新しい資源分配メカニクスを思いつく事ができれば、それは新しいゲームのタネが1つ出来上がったも同然である。資源は目に見えるものだけでなく、時間や手番、権利など、目に見えないものも含めて考えると、よりゲームの発想が拡がっていくだろう。

■競り(Auction)

 基本的なボードゲームメカニクスの一つ。ゲームのジレンマはすべて競りにつながる、という論も有るほどだ。代表的なゲームは「モダンアート(スタンプス)」。
 ある品物に対して、順番に、又は一斉に競り値を提示し、最も高い額を提示したものがそれを支払って品物を得ることができる。競りの方法として、一人ずつ順番に競り値を提示して次のプレイヤーはそれ以上を提示しなければ競りに参加できない、というものや、全員が秘密裏に手の中にコインを何枚か握り込み、一斉に開示するというもの、実際のオークションのようにリアルタイムにどんどん入札していく方法、等がある。
 例えば「電力会社」では、毎ラウンド何枚かの発電所が1枚ずつ競りにかけられる。その発電所が欲しいと思うプレイヤーは、スタートプレイヤーから順番に「8エレクトロ」のように競り値を入札していく。次のプレイヤーは、競りから降りるか、8より大きい額で入札をする。この時、8より大きければいいなら「9」がベストかというとそうでもない。そうすると、さらに次のプレイヤーがそれより高い額を入札しやすくなってしまうからである。「12なら買ってもいいかな」と思っている時に、「12」と先に言われてしまう時ほど悔しいものはない。本当に欲しいのであれば、先に「相手がそれ以上の額で入札しづらいギリギリの額」を提示してしまうべきなのだ。もちろん、常にそんな贅沢なことをしていては、限られた資金がすぐ底をついてしまうだろう。
 順番に競り値を上げていく場合、最初のプレイヤーがいくらからスタートするかも大きなジレンマの一つになる。たとえそれが欲しくなくとも、他のプレイヤーに安く買われるのは困る、という場合、果たしていくらから開始すべきか? 間違って相手が降りてしまったら、その額で引き取らねばならないのである。入札が「一周限り」か、「他の人全員がパスするまで続ける」かによってもジレンマは変わってくる。一周限りにした方がプレイ時間が短縮されるのは言うまでもない。
 競りには、ゲームバランスをプレイヤー自身が自律的に調整する効果があり、強すぎる能力や品物に対してはそれに見合うコストが市場原理的に決定する為、不公平感が生まれにくい。但しこれはプレイヤー同士がゲームを良く知っている事が必要で、ゲームに不慣れなプレイヤーがいるととたんにバランスが崩れる危険性を孕む。

■選んだ人が最後に取る(Distributer-Takes-Last)

 競りのゲームでときどき見られるメカニクス。どの品物を競りにかけるか、競りにかける順番はどうするか、などを、スタートプレイヤーが選んで決定することが出来るが、スタートプレイヤーは買えるのが最後だったり、などの選択上の不利を被る。「もっとホイップを」のケーキ分割問題が分かりやすい例。このゲームではスタートプレイヤーが好きなようにケーキタイルを切り分ける事ができるが、取れるのは自分が最後なので、可能な限り平等に、みんながどう考えているかをよく見つつ切り分けなければ、というジレンマが発生する。
 有名なゲームでは「ズーロレット」「コロレット」の、「カードを引いた人は取れずに配置するだけ」というルールも、このメカニクスの一種と言える。競りと同じく、プレイヤーが自律的に公平性を表現しなくてはならない為、ジレンマは増える分、あまり複雑なゲームでこのメカニクスを導入すると、ゲームに不慣れなプレイヤーにはプレイが難しくなる側面がある。

■ダッチオークション(Dutch Auction)

 本来のダッチオークションは、競りのシステムのひとつで、値段を「競り上げていく」のではなく、時間とともに自動的に価格が下がっていくので、早いもの勝ちで「この値段で買う!」と宣言する。ゲームでは例えば「ストーンエイジ」のように、複数のカードが一列に並べられ、左から順に4→3→2→1とコストが安く設定される。そして、そのラウンドで購入されなかったカードは自動的に右へずれていき、次のラウンドの価格が下がるのである。入札の仕組みが非常に簡略化された競りのシステムとも言え、万人向けだし、複雑になりがちなゲームをなるべくシンプルにする効果もあるだろう。このシステムの亜流として、「そのラウンドに購入されなかったカードの上にディスカウントクーポンを置いて価格を下げる」のようなシステムもある。その場合、そのカードがずっと残ったりしないように、それでも売れないカードはゲームから取り除く、のようになっている事も多い。
 注意しなければならない点として、カードの獲得順によって有利不利が大きい為、プレイ順を公平にするなんらかのメカニクスを導入すべきだろう。

■ドラフティング(徴兵)(Drafting)

 場にあるいくつかの資源(カードやタイル等)を、何らかの方法で各プレイヤーが順番に、極力平等に獲得していくというメカニクス。野球のドラフト制度が分かりやすく、「ウェーバー方式」というドラフト方式の場合、最も下位のチームから順番に獲得したい選手を指名できる。この方式では、上位のプレイヤーがどんどん有利になるのを防ぎ、下位プレイヤーが逆転しやすい環境を作るため、ゲームが盛り上がる。この方式では先手が有利になる為、公平性を表現したい場合には、全員が選んだ後、今度は逆周りにもう1つずつ選ぶ、という方法が取られることがある。これを「ロチェスター・ドラフト」と呼び、例えば「カタンの開拓者たち」のように、初期配置選択などで採用されることが多い。
 また、マジック・ザ・ギャザリングの「ブースタードラフト」ように、「パック」(又はブースター)と呼ばれるランダムな一組数枚のカードセットを各プレイヤーが持ち、そこから1枚選んで残りを隣に渡す、という行動を最後の1枚まで全員同時に繰り返すドラフト方式もある。これはダウンタイムも軽減される上に、「相手にこのカードを渡したくないが、自分が欲しいカードも他にある」という悩ましいジレンマを生みだす。「世界の七不思議」はこれ自体をゲームの根幹に据えている。
 ドラフティングでもう一つ重要な点は、場の資源の補充のタイミングである。例えば「チケット・トゥ・ライド」では、場に5枚のカードを表向きに並べ、そこから2枚選ぶ。1枚選ぶ度に新しいカードが山札から表向きでめくられ、補充される。プレイヤーは山札からめくられる場のカードに一喜一憂し、全員平等に同じ枚数から選ぶ事ができる。逆に補充のタイミングが手番の最後になっているゲームもあるし、ラウンドの最後まで、又はゲームの最後までカードが補充されないゲームもある。補充がなかなかされないゲームは、それだけ先を読む事が必要になり、プレイの難易度は上がる。あのカードは次の手番まで残っているのか、今すぐ取るべきカードはどれか。この場合、ドラフトはより「競り」に近づき、「手番」をカードへの値付けと考えたカード1枚の価値の見極めが肝心になる。
 ドラフト後の資源の補充タイミングでは、「それまで残っていた資源の扱い」にも注意が必要だろう。多くの場合、それらの資源は「優先度が低い」から残ったままになっている。それらを残したままにしておいても、それ以降でもまた残る可能性が高い。せっかく場に並べているのに選択されにくいというのは、通常、良いデザインとは言えない。「ダッチオークション」の項で紹介した方法と同じく、多くのゲームでは、これらの資源をゲームから除外し、新しく場をリセットしたり、資源にディスカウントクーポンを載せたりして対処している。例えば「チケット・トゥ・ライド」では、虹色のカード(機関車)が場に3枚以上出てしまった場合、場をリセットするようになっている。こういうきめ細かい調整がゲームをより面白くする。
 ドラフトは、何も「複数から1枚選ぶ」だけではない。「同じ種類のカードを全て取る」や格子状に並んだカードから「横1列全て取る」など、いろんな方法があり得る。新しいドラフト方法を思いつけば、それはゲームになり得るかもしれない。

■ワーカープレイスメント(Worker Placement)

 プレイヤーが取れる様々なアクションを「資源」と捉え、プレイヤーにその奪い合いをさせる。ケイラスやストーンエイジなどに代表されるメカニクス。各プレイヤーがいくつかのワーカー駒を持ち、場にある「特定のアクションを実行できるスペース」へそれを配置することでアクションを行う。多くの場合、アクションスペースは「早い者勝ち」であり、誰かがそこへ置いたらもう他の人は置けない為、「生産アクションと売却アクションに置きたいが、次に自分の番が回ってくる頃には売却アクションは埋まっているだろう。さてどちらに先に置くべきか」というようなジレンマが発生する。
 これはドラフティングの一種と見ることもできるし、競りの一種と見ることもできるが、際立っているのは「ワーカー」の存在である。ワーカーがなくなればそれ以上行動することはできなくなる。この特徴を利用して、ワーカーの数をゲーム中に増減できるようにしたり、ラウンド毎に使ったワーカーを「手元に戻す」為にコストが必要になったりといった仕組みを追加する場合もある。
 ワーカープレイスメントは比較的新しい(「ケイラス」が最初と言われている)メカニクスであり、今後まだまだ研究が進められていくと思われる。

■ロンデル(Rondel)

 選択できるアクションが円環上に一列に並んでおり、前回選んだアクションから円環上に時計周りに進んだ先のアクションしか選択できないというメカニクス。同じアクションを連続して選びにくく、まんべんなく様々なアクションを駆使する事を強制する。一般的には、等分割された円グラフのような図の各パイの所にアクション名が書いてあり、そこに駒を置いて「駒が置かれた場所から右回りに3つ先までのマスに駒を移動し、そこのアクションを実行できる」のような制限の中、アクションを選択していく、という形で表現sだれる。マック・ゲルツが考案し、主に彼がロンデルのゲームを作り続けている。最近だと「Navegador」がこれにあたる。
 アクション選択の幅に制限があることがこのメカニクスの特徴であり、自分にとって都合のいい順序でアクションを次々選択していきたくとも、「3つ先のアクションまでしか選択できない」という制限により、そうできないというジレンマが発生する。2手番先に「航海」アクションを実行するには、ここで「植民地」アクションを実行していては間に合わない・・・というようなジレンマだ。
 アクションの実行順序が重要で、人より先にそのアクションを行うことが有利に働くゲームにおいて、このロンデルは非常に良いジレンマを生み出すことになるだろう。
 アクションの種類が多い場合でも、考えるのは「今選択できるアクションから選ぶ」だけになる為、考える事がその分減るのはメリットの一つかもしれない。ロンデルの「○個先までのアクションしか選べない」という制限は、コストを支払う事で破ることができることもあり、この場合、この選択肢がゲーム中の良いアクセントになるが、あまり多用できるコストにするとロンデルの妙味が失われるだろう。
 最近は、ロンデルそのものを可変にした「フィンカ」や、各プレイヤーが個別に自分のアクション選択環(=ロンデル)を構築する「ロンデル構築」型のゲームも登場しており、見た目がロンデルのような円環でなくとも、実質的にロンデルと言えるようなメカニクスも見かけるようになった。例えば「グレートウェスタントレイル」は、すごろく上をぐるぐると周回しながらマス目上に自分のアクションマスをどんどん建築して効率を高めていくゲームだが、すごろくをロンデルに見立てれば、自分のロンデルを構築しているとみる事もできる。だからといってグレートウェスタントレイルがロンデルゲームだと言ってしまうのはいささか乱暴だろうが、「今回はこのマスは飛ばして、次の周で実行しよう」のように考えるゲームは、それだけで面白い。考えようによってはいろいろと応用が効くメカニクスだろう。

■トレーディング/交易(Trading)

 プレイヤー同士でのカードや駒などの交換を許可するメカニクス。これをメカニクスと呼んでいいかは分からないが、便宜上ここに列挙する(BGGではメカニクスとして分類されている)。例えば「カタンの開拓者たち」では、誰かと資源カードを交換することがゲーム中有利になるようになっている。交換しないままだと、運に左右されることになる。どこまでトレードを「必須」にするかはデザイン上のバランスになる。カタンでは、トレードしなくてもなんとかなる「港」というものが用意されており、必ずしもトレードが必須ではない。対して「Pit」ではトレードそのものがゲームであり、最初から全部カードが揃っているのでもない限り、トレードしなければ勝つことはできない。
 トレードがあるゲームでは、ある種協力ゲーム的な側面を持つことになる。相手の同意を得られない限りトレードは成立しないので(同意がなくてもトレードできるメカニクスもありうるかもしれないが)、自分や相手の強み・弱み、相手の目的などをよく理解したうえで、お互いにとってWin-Winなトレードを持ちかけなくてはならない。しかしここには得てして「あいつは信用ならないからトレードに応じない」といったメタゲームが介入する余地があり、トレードの導入の際にはこの点に注意する必要がある。

■投票(Voting)

 ゲーム全体に影響する意思決定を、プレイヤー同士の投票によって決定するメカニクス。例えば「人狼」では、そのラウンドに誰を脱落させるかをプレイヤーの投票によって決める。この投票は匿名投票であったり、公開投票であったりする。それぞれに面白さがある。また、「ランカスター」では、そのラウンドに発生した法案についてプレイヤー全員で任意の数の「投票駒」と「否決か可決か」を示すタイルを握って一斉に公開する。投票駒自体がリソースであり、ゲーム中にたくさん獲得したものが有利になる。
 投票のあるゲームにおいては、少数派にならないようにすることが重要となる。人狼のようなコミュニケーションゲームであれば、意図を知られないように他プレイヤーの考えを誘導することが大事であるし、ランカスターのような「投票」に強弱があるゲームの場合、少数派であっても強さで押し切る戦略もある。
 多くのゲームにおいて、投票は出来レースになる事が多い。なぜならば、投票が始まる前に、各プレイヤーはどちらに投票するかを考えながら行動するからである。もし投票の結果に驚きや逆転要素を入れたいのであれば、「囚人のジレンマ」を程よくミックスすると良いかもしれない。つまり、「どちらについても構わない」ぐらいのプレイヤー(キングメーカー)を常に登場させ、そのプレイヤーに裏切りのメリット・デメリットを選択させるのである。

課題(目的)を作り出すメカニクス(Mechanics for Giving Missions)

 メカニクスとは基本的にプレイに制限を与えるものであるが、他のメカニクスが、何らかの目的の為にプレイに制限を与えるのに対して、以下に挙げるメカニクスは、制限を与える事自体が目的になっている。言わば、ゲームに「課題」を作り、プレイヤーに目的を与えるメカニクスである。多くの場合、これら単体ではゲームにならず、資源分配のメカニクス等何らかの他のメカニクスと組み合わせる必要がある。逆に、資源分配のメカニクスだけではゲームにならない事が多いので、課題を作り出すメカニクスを用意しなくてはならない。これらはゲームの両輪を成すメカニクスと言える。テーマと合致させやすいのはこのメカニクスかもしれない。

■タイル配置(タイルプレイスメント)(Tile Placement)

 カルカソンヌに代表されるメカニクス。手札から、又は山札等から1枚のタイル(四角だったり六角形だったり)を選び、既に場に置かれているタイルに隣接させるなどの制限の元にそのタイルを配置していく。どのように置けば、自分に有利になって他の人が不利になるか、という選択が悩ましい。パズル的な面白さを持つ為、タイルを配置していくだけでも十分楽しめる。
 アルハンブラやグレンモアなどのように、共通の場に配置していくのではなく、自分専用の場に配置していくタイプもある。
 タイル配置の際にどのようなルールを課すかによって、ジレンマの種類が変わってくる。タイル配置のルールがきついものは、配置そのものがジレンマになるが、配置のルールが緩いものは、配置した後のタイルの効果の活用方法がジレンマの中心になる。カルカソンヌでは「相手の置きたい場所にタイルを置けなくする」という攻撃も有効である。これには賛否両論があり、テーマを阻害しているという意見や、これによりゲームに深みが増すという意見がある。デザイナーはどちらを優先したいかを考えてから、攻撃要素を含めるべきかを決める必要があるだろう。
 タイルがつながって大きくなっていくのを見るのは満足感があり、ゲームに勝っても負けても、最後にそれを見て満足できるケースが多い。反面、場所を取りがちである。

■ピック&デリバリー(Pick and Delivery)

 マップ上の資源を、別の場所へ配達(消費)することで何らかの効果が発生するメカニクス。資源獲得や配達は早いもの勝ちであることが多く、それによって「今、どのルートを通るのが最も効率がいいか?」に加え「他のプレイヤーは何を狙っているのか」というジレンマが発生する。資源獲得場所や配達場所がランダムに決まることもあり、この場合はゲームが毎回、ドラマチックに変化することになる。
 大抵の場合、「Steam」や「Age of Industry」のようにデリバリーするための道路そのものをゲーム中に建設する(ネットワーク構築)ことになる為、ゲームの進行に応じてマップが出来上がっていく楽しさがある。「シティ・タイクーン」のように、タイルプレイスメントと絡めた例もあり、マップを作っていくメカニクスとの相性は良いかもしれない。
 視覚的に理解しやすく、またテーマとも合致させやすいが、半面、資源を獲得して運ぶだけ、という感じでゲームが単調になる可能性もある。

■エリアマジョリティ(Area Majority)

 マップ上の各領域に駒を置きあい、最もたくさん置いているものがその領域の支配権を得る、というメカニクス。陣取りの一種であり、視覚的にも分かり易いことから「エル・グランデ」「ドミナント・スピーシーズ」「王と枢機卿(チャイナ)」「君主論」など多くのゲームで採用されている。囲碁のように一箇所に1つしか駒を置けず、ゲーム盤全体での多数を競うものや、王と枢機卿のように各エリアに複数の駒を置きあってそれぞれのエリアで支配権を争うものがある。前者のような場合、単純に駒やタイルをルールに従って置きあうものが多いが、後者のような場合、他に何らかのアクションを行ってから、そのアクションの結果としてエリアに駒を配置できる、という段階を踏んでいることが多い。
 例えば「王と枢機卿」の場合、駒を置きたいエリアの色と同じ色のカードを集めてプレイすることでそのエリアに駒を送ることができる。
 あるエリアにおいて、1つの駒でマジョリティを取ることができれば最も効率が良い。しかし、他プレイヤーはそれを許してはくれないだろう。いかにして他プレイヤーを出し抜き、自分だけが有利な駒の置き方ができるかが肝であり、また、そういうプレイが出来る仕組みを同時に提供する必要がある。

■セットコレクション(Set Collection)

 カードやタイルを集め、特定の組み合わせを作ると勝利点や能力を得るメカニクス。ルールとして理解しやすく、またテーマとも合致させやすいため、多くのゲームで採用されている。古くから「麻雀」やトランプゲームの「セブンブリッジ」といった例があり、海外ボードゲームでも「チケット・トゥ・ライド」のような有名ゲームでも利用されている。多くの場合、「同じ色のカードを規定枚数集めると条件クリア」のような形になっており、誰がどんな色を集めているかという情報はゲーム中重要になる。メカニクスというよりゲームの目的に近く、これだけではジレンマは生まれにくい為、集める過程においてどのようなジレンマを盛り込むかが鍵となる。
 例えば、麻雀のようにセット条件クリア時のボーナスを早い者勝ちにしたり、「コロレット」のように、取りたくないカードを取らせるジレンマを入れたりなどといったものがある。手札枚数に上限を加えたり、手札を多くするとコストがかかる、などのジレンマも面白いかもしれない。また、「アルハンブラカードゲーム」や「もっとホイップを」のように、同じ色を最もたくさん集めたものが勝利点を得るといったエリアマジョリティ要素を加えたものもある。この場合、手札情報が公開されることが駆け引きを面白くするだろう。

■ネットワーク構築(Network Building)

 マップ上の「点」同士を繋いで行くことで利益を得るメカニクス。エリアマジョリティと同じく陣取りの一種であり、「チケット・トゥ・ライド」「電力会社」「ブラス」など軽いものから重いものまで多くのゲームに採用されている。
 基本的にはある点と、そこから離れた点を、点そのものや点を繋ぐ路線の「所有権」を得ながら繋いでいくプレイとなる為、もし途中の点や路線を他人に奪われると非常に大きなダメージとなる。これを緩和するため、例えば「チケット・トゥ・ライド・ヨーロッパ」では他人の路線を利用できる「駅舎」というルールがある。ネットワーク構築を採用する多くのゲームにおいて、点と点と繋ぐルートは1つではなく、短いルートや長いルートなどいくつかのルートが用意されており、邪魔はされてもなんとか迂回ルートで挽回できるバランス調整がされている。
 エリアマジョリティと同じく、別のアクションを介した上でマップ上の陣取りを行う二段階の仕組みが用意されていることが多いが、エリアマジョリティがそれ単体ではジレンマとして単調であるのに対して、ネットワーク構築ではその構築方法にさまざまなルートがある為、多くのジレンマを表現し易い。反面、ゲームとしては複雑になりがちな上、他のネットワーク構築ゲームと「見た目がそっくり」になりやすいというデメリットもある(これは、このジャンルが好きな人には逆にいい目印となるのだが)。

■株式(Stock Holding)

 実在の株式のように、いくつかの会社があり、それらの「株券」を持っていると、その枚数に応じて恩恵が得られるという仕組み。多くの場合、株券の価値はゲームを通して変動する為、「今後価値が上がる株式はどれか」を読む必要がある。「アクワイア」では、格子状のマップに座標が描かれたタイルを配置していき、いくつかのホテルの敷地を拡張していく。ホテル同士の敷地を繋ぐ座標のタイルを配置すると、そこで「合併」が起こり、吸収される側の株式を持っているプレイヤーにお金が支払われる。盤面を見ながら「このホテルはどこまで大きくなるのか」「あのホテルに吸収されるのか、それとも吸収するのか」等、様々な事を考えながら株式を購入していく必要がある。うまく高値で売り抜けた時は爽快である。
 株式ゲームでは、売買に何らかの制限がかけられている事が多い。例えば「毎手番3枚までしか株券が買えない」とか「手札に合致する種類の株券しか買えない」とかである。これは、無制限に売買を許可してしまうと、資金の限界まで特定の株式を購入し、ちょっと上がったらすぐに全部売る、のような大味な展開になりがちだからであろう。
 現実の株式では、株価というのは、売れば下がるし、買えば上がる。実際にそのようにデザインされているゲームも多いが、現実の株式とゲームの株式の違いを意識しておかないとおかしい事になる。その違いとは、「現実の株式では非常に多くのプレイヤーがいてバランスを取り合っているが、ゲームではプレイ人数分のプレイヤーしか存在しない」という事である。買い手も売り手も数人しかいない「市場」において、現実の株式と同じような価格変動は自然には生まれにくい。よって、「それっぽい動き」をするメカニクスをデザインする必要がある。「暗黒の金曜日」では、袋から色駒を取り出し、それまでに購入された色の株式と一致するかどうかを見る。色が多い株式が上がり、少ない株式が下がる。よって、購入された色の株式程価格が上がりやすい。しかし、購入された色駒はその後袋から出にくくなっていく為、徐々に価格が上がりにくくなっていき、ある時「黒駒」の存在により、一気に価格が下落するデザインになっている。シンプルな仕組みで現実の株式のような動きをシミュレーションする面白いデザインと言える。
 単純にシステムが用意した「株式変動シミュレータ」に応じてプレイするだけでは、インタラクションが不足しがちな為、価格変動にプレイヤーが何らかの介入をすることができる仕組みが用意されていることも多い。ただ、介入があまりに強すぎると、株式ゲームというよりもプレイヤー間でバランスを取り合うマルチゲームになってしまう危険性がある(もちろん、それで良い場合はそれで良い)。

■推理(Deduction / Logical Thinking)

 特定の答えを導き出す為に、システムから少しずつヒントを提供して行き、先に答えに辿りついたプレイヤー(又は陣営)が勝利する、というメカニクス。例えば「クルー(クルード)」では、「犯人」「凶器」「犯行場所」の3つが秘密裏かつランダムに決定され、残った犯人/凶器/犯行場所カードを全員に均等に配る。そこから互いに手札情報を与え合い、先に「抜かれたカードは何なのか」を推測するという仕組みになっている。基本的には答えはヒントからの消去法等によって論理的に導き出されるが、最初から全てのヒントを提示すると単なる論理的パズルになってしまう為、それらのヒントをどのように提供し、プレイヤー間で共有していくかが鍵となる。「ドメモ」や「ダヴィンチコード」のように「プレイヤー間での質問」を互いにさせる事でゲームを成り立たせるのがシンプルだ。
 プレイヤー間の情報のやり取りを完全に自由交渉に委ねた「ハグル」というゲームもあり、それだけでもゲームが成り立ってしまうというのが面白い。純粋な論理的思考ゲームではないが、近年は「アンロック!」のように、事前に作られた1回しか楽しめないストーリーを元に、情報の断片を映画のように少しずつプレイヤーに与え、みんなで推理させるというゲームや、「ワトソン&ホームズ」のように、小説の断片を読ませて想像を膨らませて結末を推理するゲーム、というのも出てきている。いずれもある程度の論理的思考が求められる。

コミュニケーションに関するメカニクス(Mechanics about Communication)

■間接的な意思伝達(Indirect Communication)

 直接的な表現を用いずに相手に自分の意思を伝え、相手にそれを当てて貰うメカニクス。「伝言ゲーム」などが代表例である。伝言ゲームでは、最初に渡されたキーワードを、そのキーワードを用いずにいくつかの言葉や絵だけで表現し、次のプレイヤーに伝えなくてはならない。伝言ゲームの一種である「テレストレーション」は、与えられたキーワードから絵を描き、次のプレイヤーはその絵だけを見てもとのキーワードを推測し、次のプレイヤーはその推測されたキーワードだけを見て絵を描き・・・というのを繰り返していく。決められた時間内に、どういう方向性で絵を描けば伝わる絵になるのか、というのがジレンマになり、結果的にどんな絵が出来たとしてもゲームが盛り上がるのが素晴らしい。
 どのような「間接的な表現」を見つけ出すかが、このゲームが面白くなるかどうかの鍵である。日常生活の多くは意思伝達で成り立っており、無意識に(直接的ではない)様々な方法で意思の伝達を行っているはずだ。それらを上手くゲームにアレンジできれば、きっと面白いゲームが作れるだろう。ただ、自己表現が苦手なプレイヤーも多く存在する為、あまり難易度の高い表現方法をプレイヤーに課すと、敷居の高いゲームになってしまいがちである。

■少ない人に当てて貰う(Minimum Communication)

 他プレイヤーに自分の表現するものを当てて貰いたいが、なるべく少ない人数に当てて貰った方が得、というメカニクス。単純に、当てて貰ったら1点、当てた人も1点、とするだけで機能する。「ディクシット」ではさらに、自分の意図を「全員に当てられ」ると0点、また同時に「誰にも当てられない」のも0点、というルールになっており、分かり易いヒントを出せば全員に当てられ、難しくすれば誰にも当てられないというジレンマが生まれている。
 「間接的な意思伝達」のゲームにこれを取り入れる事で、お題に関わらずプレイヤー自身が表現の難易度を自律的に調整してくれる為、盛り上がりが生まれやすい。使いやすいメカニクスであるが、意思伝達系のゲームで毎回これを採用していると、プレイ感が似通ってしまうということはあるかもしれない。

■バッティング(相殺)(Cancel Each Other Out In Butting)

 プレイヤーが順番に手番を行うのではなく、プレイヤー全員で秘密裏にカードや行動を選択し、同時に公開する。この時、他の人と被っていたら(バッティングしたら)、カードをプレイしたりその行動を取ったりすることができなくなる、というメカニクス。逆に、バッティングしたらメリットがある、という使われ方もある。他人の思考は完全に読む事はできない、という前提が背後にあり、ある意味、他プレイヤーを乱数発生装置(ランダマイザ)として利用していると言えるかもしれない。
 例えば「ハゲタカのえじき」では、より高い数字を出した人が強いが、もし同じ数字を出した人がいたら、たとえ最強の「15」であってもその数字は無効化されてしまう。また2人対戦ゲーム「よくばりキングダム」では、相手の攻撃を防御する為に、相手が出すカードを読んで3枚ずつ出し合う。バッティングしたカードは無効化される上にカードのコストは支払わねばならない為、かなりドキドキの展開になる。
 基本的にはいかにして相手の裏をかくか、という展開になる為、相手の意図がある程度読めるようになっていなければ、ここからジレンマは生まれない。よくばりキングダムにおいては、「このシーンでは、相手はあの資源が欲しいはずだから、きっとこのキャラクターを選ぶはず」というような読みが発生する。しかし、完全に読めてしまっては面白くないので、よりリスクが高い別の戦略や、効果の低い別の戦略などを同時に存在させることで、読み合いに幅を持たせている。
 バッティングのメカニクス自体は、最終的には腹の探りあいになり、答えは見つからない(見つかっては面白くない)ので、このメカニクスだけではゲームは単調になる。また、戦略性を高めようとすると「答え」が見つかってしまったりするので、その辺のデザイン上のジレンマがあるかもしれない。バッティングをメインで採用するのなら、いっそシンプルなパーティーゲームに留めておくのが無難なのかもしれない。
 プレイ人数によりバッティングの確率やパターンが大きく変動することがある為、デザインの際にはその辺の考慮も必要だろう。

■協力プレイ(Cooperative Play)

 プレイヤー間で協力して勝利を目指し、全員が勝つか、全員が負けるか、というメカニクス。各プレイヤーが異なる能力や手札を持ち、お互いの能力を駆使して目的を達成する。代表例は世界に広がる病原菌を退治して回る「パンデミック」である。例えば「スコットランドヤード」における犯人役のようにプレイヤーの一人が敵役となるゲームも多い。全員で協力することになる為、一体感が生まれ易く、良いコミュニケーションツールになり得る。
 協力ゲームの難しい点は、プレイヤー同士の相談を無制限に認めてしまうと、誰か一人チームリーダー的な存在がすべての意思決定を行ってしまい、他プレイヤーは言われた通りに行動するだけになりがちという点である。特に、プレイヤー同士が手札を見せ合っても良いルールだとそうなりがちだ。しかし、プレイヤー同士が手札を見せてはいけないルールにしても、そうする動機がプレイヤー自身にない(見せることによるデメリットがない)為、有効に機能しにくい。
 協力させつつも各自の判断を自分で決めさせる為には、第三の勝利条件を組み込む必要があるかもしれない。つまり、「全員が勝つか、負けるか」以外にも、「そのプレイヤーだけが勝つか」というオプション、つまり裏切り要素を含めるのである。いくつかの協力ゲームには「裏切り者」がプレイヤーに潜んでいる場合があり、これによって「相手に手札を見せてもいいかどうか」というジレンマが発生する。
 このような点を除いたとしても、協力ゲームは家族など気心の知れたプレイヤー同士でストーリーや雰囲気を楽しむ目的でプレイするのに向いており、そういう目的でデザインするのであれば良いメカニクスとなる。また、初めて出会ったもの同士がお互いを知るためのツールとしても機能する可能性がある。

ゲームに彩りを与えるメカニクス(Other Mechanics)

 上記のいずれにも当てはまらない(当てはまりにくい)メカニクスを以下に示す。考えようによっては他の分類に含める事もできるかもしれないが、明確でないものは避けた。多くは、他のメカニクスと組み合わせて追加のスパイスとして使用できるが、メインとなるメカニクスにはなりにくいようなものばかりなので、多くの場合、これだけでゲームを成り立たせるのは困難だろう。逆に言えば、ありきたりなゲームであっても、こういうスパイスを加える事で、ちょっとした目新しさを感じさせる事ができるかもしれない。

■コスト付きアクション(Costed Action)

 あるアクションを実行する為にコストがかかるというメカニクス。例えばカードやタイルの獲得や配置に、それに表示されているコストがかかったり、アクションそのものにコストがかかったり等。ドミニオンやストーンエイジではカード獲得コストが存在し、通常、高いコストはその分強い効果を持つようにデザインされる。コストが高いものはゲーム序盤では選べない等の工夫により、ゲームに長期的な戦略性とマネジメントが要求されるようになる。
 手番がくれば任意のアクションを行えるゲームよりも複雑になるが、より緻密な戦略性を導入することができる為、多くの戦略ゲームがこのメカニクスを採用しており、またこのメカニクスを好むゲーマーも多いように思う。コストの種類が増えてくると「リソースマネジメントゲーム」と呼ばれ、よりゲーマー向けになるが、プレイ時間も延びる傾向がある。
 多くの場合、コストは固定であり、このコストをどうデザインするかがデザインの鍵となる。テストプレイ不足でゲームバランスが取りづらいゲームと言えるかもしれない。しかし、目的の効果を得るためのコストをせっせと貯める作業というのは割りと日本人に向いているような気がする。

■フードサプライ(運用コスト)(Food Supply)

 毎ラウンド、指定されたコストを支払わないとペナルティがある、というメカニクス。多くのゲームでこれは「食料」として表現される為、このような呼ばれ方をしている。例えばル・アーブルでは、毎ラウンド指示された数の食料を供給できない場合、強制的に借金して支払わされる(借金はマイナス点)為、毎ラウンドその「ノルマ」を達成する為にいかに動くかが重要になる。通常、フードサプライそのものが勝利点に結びつくことは少なく、あくまでも「ノルマ」止まりであり、勝利点を得るにはノルマを達成しつつほかの事をする、というバランスになっている。ノルマを達成しつつ、勝利点も追わなければならないということであり、これが良いジレンマを生み出している。
 また、所有している能力に対して、毎ラウンド何らかのコストがかかりつづけるという見せ方になっていることもある。これはワーカープレイスメントとの相性が良く、例えば「ストーンエイジ」のように、「所有しているワーカー1つにつき、毎ラウンド1つの食料が必要」などのルールにより、ワーカーを増やすとフードサプライがきつくなるというジレンマが発生する。
 コスト付きアクションと違い、所有しているだけでコストがかかりつづける為、その能力を獲得するべきかどうかに対してよりシビアな判断が求められる。フードサプライを強くしすぎると、後述する拡大再生産の仕組みを阻害することになるので注意が必要だ。意図的な制限としての導入ならばよいが、安易な導入は、プレイミスをしたプレイヤーがそこから先にまったく進めなくなるような激しい影響を生み出しかねない(そこがいい、というプレイヤーももちろんいる)。

■バースト(Bust / Press Your Luck)

 何らかの総合に対して上限を設け、それを超えるとペナルティを課すというメカニクス。例えば「ノミのサーカス」では山札から何枚でも好きな枚数カードを引いて選択肢を広げることができるが、引いた中にこれまで引いたカードと同じ色が含まれていた場合、バーストとなり、何も取ることができない。「あと一回やるべきか否か」というジレンマを生み出し、多くの場合、「あと一回」の結果にはランダム要素が絡むため予測できない。「カタンの開拓者たち」では、手札上限が7枚であり、8枚を超えている状態で誰かが7の目を出すと、バーストとなり手札の半分を捨てなければならない。
 上限に達するにつれて緊張感が高まり、最後に一気に爆発する為、パーティーゲームにおいてゲームが盛り上がる要素となりえる。反面、運要素によって有利不利が大きく変動することがある為、戦略性の高いゲームへの導入の際には、ランダム性にある程度の法則を導入したりなどの予測可能性を入れておくなどの配慮が必要かもしれない。

■アクションポイント(Action Point)

 アクションを行う回数に制限があるメカニクス。各プレイヤーは毎ラウンド、何点かのアクションポイントを受け取り、アクションを行うたびにそれを消費する。アクションポイントを使い切ったら手番を終了する。例えば「ア・ラ・カルト」では、毎手番3つのスプーンを受け取り、1つアクションをする度にこれを次のプレイヤーへ渡す。3つともスプーンを渡したら次のプレイヤーの手番となる。また、「ハンザ・テウトニカ」では、アクションポイント(アクション回数)をゲーム中に増やす事ができる。
 アクションポイント数をあまり多くすると管理が面倒になる為、多くの場合、これは2とか3である。アクションポイントを採用したゲームでは、大抵の場合、1手番で同時にたくさんのアクションを行いたくなるようにデザインされる。これにより、アクションポイントを使い切っても目的のためにはあと1アクション足りない、というようなジレンマを生み出すことが多い。そのようなデザインの場合、ゲーム中に「1回だけ追加のアクションが行える」というような能力を持つカードやタイルが出ると、これが大きな鍵となる。

■トリックテイキング(Trick-taking)

 プレイヤーが順番にカードを出してゆき、一番強いカード(又はカードの組み合わせ)を出したプレイヤーがそれをすべて獲得するというメカニクス。トランプゲームでは「ブリッジ」などが代表例となる。手札はランダムに配ることもあるが、最初から全員が同じカードセットを持ってプレイするものもある。弱いカードは単に弱いだけでなく、「相手の強いカードに弱いカードを出して無駄に消費させる」という使い方がある為、決して強い順に出していけば勝てるメカニクスではない。カードの出し方は、全員が裏向きで出して一斉に表に向ける方法もある。この、全員が場にカードを出した状態を「トリック」と呼び、そこで一番強いカードを出すことを「トリックを取る」と言う。
 通常、トリックテイキングには「フォロー」のルールがある。これは、スタートプレイヤーが出したカードの種類によって、今回出せるカードに制限がかかるというルールだ。例えばスタートプレイヤーが赤のカードを出したら、次のプレイヤーは赤のカードしか出してはいけない、というもの等がある。このフォローにも「マストフォロー」と「メイフォロー」があり、マストフォローのルールの場合、条件に合うカード以外は(手札にない場合を除いて)出してはいけない。メイフォローの場合、条件に合わないカードを出してもいいが、その場合はトリックをとることはできない、といったジレンマが用意される。
 他、「切り札」というメカニクスが追加されることも多い。これは、それを出せば勝てるというカードで、これをいつ出すかというのがジレンマになる。切り札自体が毎ラウンド変化するというものもあり、とかくトリックテイキングは奥が深い。

■可変ボード(ランダムセットアップ)(Modular Board / Rondom Setup)

 「カタンの開拓者」のようにゲームボードそのものが初期配置の組み合わせで変化するメカニクス。ドミニオンのランダムサプライも、この一種だと考えることができるが、マップ要素の位置関係が重要なゲームにおいては、特に重要なメカニクスとなる。可変ボードは、戦略を固定化せず、毎回新鮮なプレイ感をプレイヤーにもたらしてくれる。反面、組み合わせによってはゲームバランスが大きく崩れる場合もある為、その点注意が必要となる。ランダムセットアップを採用しているゲームの場合、「最初のお勧めの配置」を明示しておくのが安全であるし、もし「ゲームが壊れてしまう組み合わせ」が発生する可能性が少なからずあるのであれば、ランダムセットアップを諦めて、いくつかの組み合わせを提示するに留めた方が良い。
 デザイナーにとっては、どこまでを固定として、どこまでを可変とするかがデザインの肝となるだろう。可変部分によってゲームのコア部分が変わってしまってはいけない。例えばドミニオンにおいては、銅貨などの財宝カードと勝利点カードは必ず場に存在する。これだけでもいちおうゲームは成り立つぐらいである。
 可変ボードのメカニクスは、拡張セットを出し易いとか、プレイヤー自身が「好きな配置で遊ぶ」ことが可能、といった別のメリットもある。デザインの段階でそういう部分にも考慮をしておくと良いかもしれない。また、ランダムに決まる事による有利・不利を避ける為に、配置をドラフティングによってプレイヤー間で決定する、という方法が、このメカニクスと相性が良い。

■変動相場制(Floating Exchange System)

 プレイヤーが持つ資源の売買があり、この時の価格が変動する相場表によって決まるメカニクス。多くのケースで、相場は現実世界の相場と同様に「その品物を売ると下がり、買うと上がる」ようになっている。表現方法としては大きく2つの種類があり、マーカーによって相場価格を示す方法と、品物自身が表の上に複数置かれており、その品物を置いたり取ったりすることで、示される品物の価格が分かるようになっている方法がある。後者のほうが需要と供給の関係がはっきりしていてシンプルだが、前者の方法は実際の需給とは無関係に価格を変動させられる自由度がある。
 変動相場制のあるゲームでは、基本的には「安いときに買う」のが重要となる。売ることもできる場合には、「高いときに売る」ことも重要だ。これが戦略として有効になるには、「今後の相場変動がある程度予測できる」か、「自分で相場に干渉できる」ことが必要になる。もしこれがただランダムに決まるのなら、運ゲームになってしまうだろう。前者は「次に発生するイベントタイルが公開」などのメカニクスで表現されることが多い。後者は各自が手札として持つカード効果などで実現されることが多い。例えば「暗黒の金曜日」は、デッキ構築という手段により、ある程度の予測可能性を提示しつつプレイヤーの多少の干渉も可能にしている。
 変動相場制はプレイヤー間の干渉が強い為、プレイヤー間にある種の協力体制が生まれることがある。その効果をよく理解した上でデザインをしなければ、下手をすると一人いじめの状況にもなり得るし、先手番が何をしたかによって後手番が何をするかがほぼ決まってしまうような状況も生み出してしまうだろう。

■拡大再生産(Expanded Reproduction)

 初期資源を投資して生産能力を増強し、その生産結果によりさらに大きな投資をする、というメカニクス。ゲームを通じて必ず「成長していく」ことになる為、プレイヤーの満足度が高い。反面、指数関数的な増え方をすることになる為、一度差がつくと逆転がしづらくなる。また、最初のミスが後になるほど大きな差となって現れるので、非常にシビアなゲームになりがちだ。この点の調整をいかにするかがデザイナーの腕の見せ所になるだろう。
 拡大再生産ゲームをデザインする際には、最終的な勝利点(目標)へと結びつく「ルート」をいくつ用意するかという視点が大事になる。例えば、木材からスタートして大きな建物を建て、ワーカーを沢山養いつつ、最後に人海戦術で大量得点、という戦術と、食料からスタートしてすぐに多目のワーカーを雇いつつ、食料が尽きるまでの間に陣営を整える、という戦術などを、同時に存在させるようにするのである。バランス調整に失敗すると、誰もが「最初は木材でしょ」となってしまい、ジレンマが失われる。
 他人の邪魔要素をどれだけいれるか、も重要かもしれない。拡大再生産は、一度拡大し始めるとなかなか方向修正が効きづらい側面がある為、誰かに邪魔されて一度その流れが途切れると、その時点で逆転不可能になってしまう事が多い。そのような事態はテーマと合致しなくなる恐れがある。しかし、かといってまったく干渉がないのでは、ただのソロプレイゲームになってしまう。逆転可能性を生み出す為に、ゲーム後半により強い効果を持つカードやタイルをランダムに出現させるケースも良く見られ、実際に成功している事が多いように思われるが、あまりにやりすぎると「前半は地味、後半は大味」ともなりかねないので注意が必要だろう。
 拡大再生産は非常に人気のあるメカニクスで、「プエルトリコ」「アグリコラ」「ル・アーブル」など多くの人気ゲーマーズゲームで採用されている。ある意味「ハズレのない」メカニクスとも言えるが、使い古されているとも言える。前述する「フードサプライ」や、後述する「経年」のように、拡大再生産を抑えるメカニクスも注目されている。
 また、「ドミニオン」の勝利点のように、拡大再生産が直接勝利点に結びついておらず、どこかで勝利点の獲得へと舵を取り始めると、そこから生産力が減速する仕組みを導入している例が多い。この場合、どこで拡大を止めて勝利点へ向かうか、という見極めのジレンマがゲームを面白くする。

■経年(期限付き能力)(Aging)

 駒やタイル、カードに「寿命」があるメカニクス。ラウンドの進行と共にマーカーやカウンターで経年を表現し、経年が一定数溜まったらゲームから取り除かれる。「ヴォーパルス」で有効に活用されており、ここでは各ユニットはラウンド終了時に1つ経年カウンターを得る。経年カウンターが1つでも乗っていれば、次のラウンド終了時にゲームから取り除かれる為、基本的には各ユニットの寿命は2ラウンドしか持たない。
 経年システムの大きな特徴は、拡大再生産が弱まるという点だろう。これにより、一度うまく回り始めた拡大再生産がゲーム中に終わってしまい、ここに逆転の可能性が生まれやすい。逆に、せっかく獲得した能力が失われてしまうことに寂しさを感じるプレイヤーもいるかもしれないが。
 ヴォーパルスにおいては、経年カウンターを2個以上載せる戦術(過剰に経年させる)が存在し、経年カウンターが乗ったほうが強くなる、というユニットと組み合わせる事でゲームを際立たせている。個人的に、経年というシステムは現実世界の有り様とも一致し、面白いジレンマを生み出すのではないかと考えている。様々なゲームへの応用を期待したい。


Comments