日本生体エネルギー研究会から





生体エネルギー研究会 第49回討論会(山口)

 生体エネルギー研究会第49回討論会は山口大学の薬師先生が世話人となり、12月14日(木)〜16日(土)にかけて山口大学吉田キャンパス大学会館で開催されました。山口大学での開催は松下先生が世話人となった第33回(2007年)以来16年ぶりになります。あいにくの天気でしたが、生体エネルギー研究会らしい議論ができて楽しい会でした。

 特別講演では久堀先生が「葉緑体ATP合成酵素の活性制御の分子機構 ー 40年でどこまで理解できたか ー」というタイトルで葉緑体のレドックスポテンシャルによるATP合成酵素の制御機構について解説されました。チオレドキシンによるγサブユニットジスルフィド結合の還元とTrx-Like2による酸化、回転制御、そして電子伝達系との関わりはよくできたシステムと感じました。長きに渡る葉緑体ATP合成酵素研究への貢献、お疲れ様でした。

 ブレークスルー講演では東大の加藤先生がチャネル型ロドプシンのイオン選択機構について、京産大の横山先生がATP合成酵素の分子機構について、大阪公立大の宮田先生がミニマル合成細菌を用いた細胞運動について話されました。また、招待講演では北大の渡邊先生がヘテロジスルフィド還元酵素の話を海外からオンラインで講演されました。複合体内での電子伝達とその制御がとても興味深く、サブユニット間電子伝達と電子の流れの分岐制御が鍵のように感じました。

  若手奨励賞は4名の方が受賞し、分子研の小林稜平さんが「ミトコンドリア型ATP合成酵素の阻害因子IF1が示す回転方向依存的な制御機構:1分子操作実験と分子動力学シミュレーション」で、京大の大鳥祐矢さんが「クライオEMによるcaffeineのRyR2への作用機序の解析」で、京産大の西田結衣さんが「哺乳類V-ATPaseの構造解明」で、そして千葉大の濱口紀江さんが「ATP駆動型トランスポーターP糖タンパク質の基質結合様式解明を目指したクライオ電子顕微鏡構造解析」で受賞しました。

 第49回討論会は薬師先生とスタッフの方々の努力で素晴らしい会になりました。厚く御礼申し上げまあす。来年は小嶋先生と阿部先生が世話人となり、名古屋大学で開催されます。日程は12月12(木)〜14日(土)の予定です。次回は生体エネルギー研究会が発足して半世紀、50回目の討論会になります。皆様ふるってご参加ください。

(2023.12 表)





生体エネルギー研究会 第48回討論会(京都)

 生体エネルギー研究会も48回目を迎え半世紀近くの歴史を持つようになりました。今年度は京大農学部の三芳先生が世話人となり、京大北部キャンパスの益川ホールで開催されました。昨年は新型コロナ感染症のためオンライン開催となったので、対面での討論会は2年ぶりになります。今年も呼吸鎖やポンプ、鞭毛モーターを始めとして様々な分野の研究成果が披露され活発な討論会でした。

 特別講演ではAlbert-Ludwigs-Universität FreiburgのThorsten Friedrich博士がバテリア呼吸鎖複合体Iの構造と分子機構について最新の研究成果をオンラインで解説されました。オンライン化により海外研究者の講演を聞く機会が増えたのはよいことだと思います。

 ブレークスルー講演では、伊福先生が光化学系IIによる水分解機構、小川先生がリアノジン受容体の構造と機能、最後に三芳先生がコレラ菌のユビキノン酸化還元酵素の研究成果を紹介されました。リアノジン受容体はCa2+結合による部分構造の小さな変化がてこのように作用して大きな変化になり、それが連鎖することで巨大タンパク質の構造変化につながって行くようです。この受容体は自分が学生の時に読んだ教科書にも記載があり、感慨深いものがありました。電子顕微鏡のブレークスルーによって世界が大きく変わった気がします。

 また、若手奨励賞には髙井 菜月さんがメラノーマ細胞のエネルギー代謝の解析で、奥山 あかりさんがプロトンポンプロドプシンの電気生理学的解析で、⽯川 萌 さんがユビキノン酸化還元酵素の解析で選ばれました。

 世話人の三芳先生、村井先生、そしてスタッフの方々、お疲れ様でした。来年は薬師先生が世話人となり、山口大学で開催されます。日程は12月14(木)〜16日(土)の予定です。温泉もありますので、皆さま奮ってご参加ください。

(2022.12    表)