救急医療

〇 2020年10月からの救急医療体制について

石狩市の救急医療体制については、2020年10月から「石狩市」で確保することになりました。

救急医療については、地域の実情に応じて、都道府県が計画を策定することとなっており、その計画では、初期救急医療については、市町村で整備しなくてはなりません。

石狩市の将来を見据えた救急医療体制について、協議がなされない状態が続きました。初期救急医療体制を確保する責務は市町村側にあるため、2020年10月からは石狩市で確保する形となります。

※初期救急医療とは、入院治療の必要がなく、外来で対処しうる帰宅可能な軽症な患者さんに対応する救急医療のことを指します。 二次・三次救急医療の重症な患者さんへの対応は、都道府県の役割となっています。

石狩市と本会のこれまでの経緯とこの度の結論の詳細につきましては、下記のとおりです。

1 今までの経緯について

(石狩市の救急医療体制は、1990年10月から会員医療機関が持ち回りにより行う「輪番制」という体制でした。)

本会の現執行部体制は、2015年6月23日から始まり3期目となります。現執行部体制で始まった翌7月、当時、監事の先生が体調を崩されて休診となったため、内科系輪番体制の維持が困難となる事態が発生しました。監事の先生は、闘病中も自身が抜ける救急当番への影響を心配され(他の厚生事業もですが)、病床の中、新たな先生を迎え、引継ぎをしてくださいました。2016年1月には、救急当番日に、当番日の先生が緊急入院されましたが、別の診療科の先生が駆けつけ、なんとか救急を確保したこともありました。医師に緊急な事態が生じた場合、ある程度の時間がないと、職員や薬局の手配は厳しく、当番医療機関へ介入せざるを得ません。ところが、医療機関というのは、電子カルテ等の設備、看護業務の体制、薬の処方など、当該医療機関の通常の診療に適した体制で構築されています(医師の下にスタッフ、薬局等が紐づけされている)。この輪番制というのは、医師の緊急事態を想定していない、つまり、医師が休まないことを前提とした体制なのです。

執行部では、医師も高齢化し、また、新規医療機関の開設もない状況の中、この輪番制に今後もトラブルが起き、立ち行かなくなってしまっては、既に手遅れであるとして、現執行部発足当初から石狩市に将来を見据えた救急医療体制にかかる方針を事あるごとに求めているところです。

石狩市からは、その後も一向に方針が示されませんでしたが、2018年、田岡前市長が退任を表明し、本会と田岡前市長とで結んできた救急医療の終了も決定しました。(新市長と新たな救急医療体制の方針を協議することになります。)

ところが、石狩市の担当部長から、新しい市長が方針を考える時間がほしいとのことで、2019年1月、石狩市側から初期救急医療体制にかかる方針検討スケジュール案が示され、2019年度(2020年3月末まで)の現体制の延長が求められました(下部参照)。医師会側としても新市長の方針ができるまでの間は、地域住民にとっても好ましい状況ではないと考え、2019年度に限り、田岡前市長時代の救急医療体制(現輪番制)を延長する形をとった次第です。

スケジュールでは2019年8月に、本会は、新市長の方針について協議することになっておりましたが、2019年8月どころか、12月、1月と待っても何も示されず、2020年2月、再度、前市長時代の輪番制の2020年9月までの延長を決め、現市長のために、合計2回、1年3か月間の延長をしたところです。

 

2 石狩市の救急医療体制について

 市町村に責務があるとされているのは、医療法で、救急医療については、都道府県で計画を策定することとされており、それを受けた北海道医療計画で、比較的軽度な患者さんに対する初期救急医療は、原則、市町村を単位として確保することが明記されているからです。

また、石狩医師会は、石狩町医師会を前身としておりますが、様々な地域医療の問題を把握し、医療行政へ適切な助言を行うことを目的として発足した団体です。

そのため、石狩市が救急医療提供体制として採り得る方策を示し、それについて、地域の医療事情を見渡しながら、助言を行うことが、本会の役割となります。

地域住民に対して有する責任の面から考えても、民間団体である石狩医師会が、先に救急医療体制を示し、地域の救急医療体制を作るものではありません。(地域住民の声を直接的に反映する仕組みを持つ市町村とは違うのです。)

 

3 結 論

現在の救急当番における輪番制は、1990年から始まりましたが、その当時から行政側との課題でもあります(1993年1月23日付北海道新聞)。これを見ても、今回も当問題をこのまま放置しておけば、将来的に、これからも医師会と行政が、きちんと話合いを持つことはできないと思います。

2014年3月、宮城県大崎市で、輪番制の継続困難を打診された市は、「医師会に甘えてきた」として、4日後に内部検討組織を発足、5月末には中間報告をまとめ、住民懇談会を経て、8月には救急医療体制基本方針を定めたといった事例があります。

今年は、2月に入り、新型コロナウイルス感染症にかかる対応も生じましたが、それは医療団体にとっても同じで言い訳にはなりません。医療団体は、新型コロナウイルス感染症への対応も求められながら、救急当番事業を行っているのです。

(PCR検査センターの件では、石狩市がどれほど積極的に対応されたでしょうか。)

現市長が就任後、1年を経過しました。もともと石狩市の職員でもありますし、十分な時間はあったと思います。

個々の医療機関においては、経営的な側面があるかもしれません。しかし、現救急医療体制をこのまま継続していけるのか、また、地域住民からは急病センターや小児救急などの声も聞こえる中、道内5万人以上の都市で、急病センターを持たないのは、実質、石狩市だけです。住民の声も検討されない中、今の救急医療体制が、果たして住民が望む形なのかも一度立ち止まって考えなければなりません。

それ故、石狩市からの方針が出されない以上、本会としては、これ以上の延長は行いません。ただ、石狩市が個別医療機関と直接交渉する道だけは、残しておきたいと思います。

  一般社団法人 石狩医師会



〇 初期救急医療体制にかかる方針検討スケジュール案(2019年 石狩市からの提出資料)