概要(調査結果に対する意見)

本サイトの趣旨

平成27年3月28日

平成27年3月27日に「研究活動に係る不正行為に関する調査結果について」 という記事が岡山大学公式webサイトに掲載された。告発者、および披告発論文についてはこの記事からは不明であるが、時期的に見て本学薬学部の森山、榎本両教授(現在、停職中)による医学部論文の不正告発であることが推察される。告発書の内容、調査報告書がともに公開されていない現状において今回の調査結果を評価することは困難であるが、これまでに他大学で実施されてきた研究不正の調査報告と比較すると以下の点で異例である。
  • 本発表の主体が不明で、問合せ先として研究交流部の課長が指定されているのみである。調査委員長および学長の名前すら本文には付記されておらず、責任をもった調査結果の公開とは言いがたい形式である。
  • 調査報告書が公開されておらず、調査委員会の構成、画像解析の専門業者の公表が行われていない。そのため、調査委員会が開催された回数や、調査がどのように実施されたかという肝腎の情報が不明である。
  • 判断の根拠となる情報が提供されていないために、第三者が公正に判断の妥当性を評価することができない。大学側が調査し不正がないと判断したから、不正はないという回答は、一種の同義反復であり論理的ではない。
国立大学は社会から支援される研究教育機関として、学術的な問題に対しては最大限の誠実さと透明性をもってこれに応える必要がある。不正がない研究成果を不正として告発することは重大な瑕疵であり、告発者にはそれ相応の責任が生じることは言うまでもない。一方で、不正がある論文に対してこれを看過し、逆に告発者に対して懲戒処分を科すことは、研究機関としての自殺行為である。両者を峻別するためには、科学者コミュニティ、あるいは社会に対して調査結果を公表し、岡山大学が妥当な判断を下したことを証明する必要がある。研究領域の自浄作用を否定するような懲戒は厳にこれを慎むべきである。

私たちは両教授が係争中であるハラスメント問題とは一線を画しており、研究不正調査の適切な取り扱いを求めるものである。なお、実名での意見書の送付が適切であることは承知しているが、大学側の姿勢として、事実をもって議論するのではなく、権力をもって懲戒することが専らであることから、匿名による指摘に留める。指摘する内容はいずれも公開された事実であり、匿名か実名かによる影響を受けないことは言うまでもない。

匿名一教員


追記(平成29年3月31日)

高裁は岡大の解雇権乱用は認めず(NHKニュース)
本学に関する裁判の結果について(岡山大学)

広島高裁岡山支部は解雇権の濫用を認めた地裁の仮処分を取り消した。裁判の技術的な側面、あるいは法曹関係者のいう法理という面での評価はよく分からないが、現状の生命科学研究のモラルハザードを一層深刻化させる裁定であることは間違いないだろう。

研究機関が研究不正を隠蔽した場合、現状の選択肢は今回のケースのような法廷での闘争しかないが、司法で研究不正が裁かれるケースは少ないため、東北大学の元学長のケースのように、研究コミュニティが厳しい判断をしても、司法では逆に告発者の名誉毀損が認定されてしまうといった混乱が生じてしまう。

「不正と確定されていない論文を外部に公表し岡大の権威や研究への信用性を大きく揺るがしたことなどを踏まえると解雇の理由は認められる」というのが高裁の判断であるが、「不正と確定されていない論文を外部に公表し」という文言の指す意味はどのようなものだろう。不正かどうかは一般には調査の結果判明するものであり、研究論文の示す結果は公表された時点では仮の知見である。疑義を告発することが「不正とは確定していない論文を不正として公表する」という意味だと高裁が考えているのだとすると、一般に殆どの同一研究機関内の告発行為は解雇に値する非違行為となってしまうだろう。研究不正を指摘しても、研究機関が真面目に調査をしない、あるいは指摘を疑義のあるグループに漏洩して勝手に論文を修正してしまうといった対応に出た場合にはどうすれば良いのか。第三者的で、内部告発者が保護されるようなシステムがない場合は、不正の疑いは看過しなければいけないのだろうか。

ジャーナリストの片瀬氏の調査等を参考にすると、岡山大学が提出した調査報告書は、文部科学省においても適切ではないという評価を受けていることが強く推察される。文部科学省研究公正推進室は、岡山大学に調査報告書の妥当性について再度見直すように働きかけているようであるが、岡山大学はこれを無視している。調査委員長の山本理事が拙速であることを認めている報告書を、阿部理事は「一切不正はない」と断言している。高裁は文部科学省が無応答、かつ岡山大学が調査報告書が十分なものと強弁していることを根拠として、調査報告書は妥当、即ち研究不正はなかったと判断しているのではないだろうか。

文部科学省研究公正推進室は、自らの不作為を通じて、研究不正の告発者の解雇に間接的に荷担している。オーウェル的な説明をすれば、研究公正推進室とは、実際には研究不正容認室なのだろうか。裁判所は法の論理に基づいて判断するものなので、研究コミュニティのモラルハザードの蔓延を防止すべきなのは文部科学省である。文部科学省がこの責務を放棄するならば、ライフサイエンス研究の前途は暗いものにならざるを得ない。研究公正の実現に貢献したいのであれば、今からでも遅くないので、岡山大学の調査報告書には明らかな瑕疵があることを、裁判所にも分かるように指摘するべきである。

追記(平成29年1月10日)

一審の判決とともに本サイトが再び注目されることも考えられるので、記録として記事投稿停止後の出来事を掲載する(平成29年1月10日現在)。なお、仮処分は大学側の申立が却下されており、裁定が確定している状況である。

・教職員組合は両教授の解雇の事実関係を説明するよう何度か誌面上で訴えていたが、その後の経緯については曖昧なままで、平常運転に戻りつつある。
・学長選考では、現執行部を構成する4名の理事が立候補し、槇野病院長が選出された。
・槇野病院長は岡山メディカルセンター構想で森田学長と鋭く対立していたが、和解したようである。
・岡山大学病院は寄附金の不透明な管理問題など、いくつか運営上の問題点が指摘されているが、選考委員会は病院長にかかるこれらの責任については不問としたようである。

学長選考会議委員名簿(pdf)

・教職員への意向調査(学長選考における教職員の投票)は実施されたが、その結果は開示されなかった。このような措置は岡山大学では初めてのことである。
・教職員組合は大学運営に教職員の声を反映させる機会として、特設webサイトまで作成して投票を促していたが、結果の公表がないことに対しては沈黙を続けている*。

・森山、榎本両教授の後任人事は一部の教授の反対があったもののそのまま進められた。森山研の方は選考中。榎本研は4月に上田准教授が昇任することが決定した。
・大学院の学位審査では、森山研、榎本研の大学院生の審査保留事例が続出している。研究環境の悪化による研究活動の中断、現場で指導していた研究者の解雇、指導者の変更等が影響した可能性が考えられる。両研究室の学生の学修環境に配慮するという学長や理事、研究科長、薬学部長の言葉はいずれも偽りであったことは客観的にも明らかである。
・薬学系の平成29年度の博士課程(4年制)、博士後期課程(3年制)の志願者はいずれもゼロであり、在籍学生からの博士課程教育に対する信任を失った状況にある。

*教職員組合は、学長選考会議に投票結果非公開の判断について問い合わせをしていたようで、3月7日付けの組合だよりに学長選考会議の泉史博議長からの回答が掲載されている。「学内構成員による意向調査の結果をそのまま公表すると、あたかもそれが選考に直結するような誤解を生み、無用の混乱を招く恐れがある」という考えのもと、意向投票の公開は今回初めて見送るとのことである。泉議長(中国銀行)の見解は、「岡山大学には「意向調査」をそのまま学長選挙と考えてしまうような愚かな教員が多いので、賢明な我々が混乱を未然に防いだ」という主張のようにも受け取ることができる。こうした見解を組合だよりというwebでも閲覧できる場で発信できるという人物が学長選考会議の議長であることは、岡山大学にとって極めて不幸なことと言えるだろう。

追記(平成28年6月6日)

岡山地裁によって解雇無効等の仮処分の判断が下された。「客観的に合理的な理由を欠き、あるいは社会通念上相当と認められないから、解雇権の濫用として無効である。」との判断である。また、研究不正の告発には公益性があることも認められている。地位保全については認められていないが、これは差し迫った危険がないということが理由として大きいようである。後任人事が着々と進んでいることや、森山研や榎本研における研究に夢をもって配属された学生が卒業してしまうことなどは差し迫った問題のようにも思うが、これは大学教員の感覚なのかもしれない。

一方、岡山大学のプレスリリースでは肝腎の判決の結論部分は一切述べられず、地位保全が認められなかったことが大学側の正当性を裏付けるような文面である。いずれ様々な資料は公開されることとなるので慌てる必要はないが、本件が落着した際には、法や道義よりも学長の判断を優先する法務・コンプライアンス室は解体的な出直しが必要であろう。

下記サイトでPDFとして判決の全文を読むことができる。
岡山大学で不正告発をした教授らの解雇無効申立仮処分決定について(warblerの日記:片瀬久美子氏のブログ)

岡大に解雇無効の仮決定(NHK岡山)
論文改竄告発で解雇、岡山大元学部長らへの処分は「無効」 地裁、大学側に給与支払い命令(産経West)
岡山地裁、「研究不正告発で解雇」無効の仮決定~岡山大学事件続報(Yahooニュース、榎木英介氏)
研究不正を告発して解雇された岡山大学教授らの仮処分が決定(Togetterまとめ)
岡山大学医学部の論文不正を告発した森山芳則・榎本秀一両教授を森田潔学長が解雇したのは解雇権の乱用 岡山地方裁判所が給与支払いを命じる仮処分の決定(日本の科学と技術)

追記(平成28年3月11日)

京都女子大学現代社会学部の小波秀雄教授の呼びかけで「森山先生を支援する会」が設立され、既に事件についての勉強会も開催されている。Webサイトでは募金も呼びかけられている。文部科学省の研究公正推進室が本件について沈黙を続けている中、研究者から抗議の声が上がらなければ、研究公正の問題はそれほど重要ではないという誤解を社会に与えることになるだろう。殆どの研究者が危機を感じているが、研究を続けるためには沈黙せざるを得ないという異様な状況を打開する第一歩は、本件が適切な結末を迎えることである。広く支援の輪が広がることを期待している。

森山先生を支援する会

森山、榎本両教授の研究室に対しては大学より早々に後任教授を決定するよう指示があったようである。両研究室は現在、准教授がそれぞれ責任をもって運営を続けているところであるが、後任教授の公募にあたって研究室名の変更を強制されたり、あるいは、研究室が作成するHPから森山、榎本両教授の痕跡を消すことを求められているとのことである。榎本研究室のリンクをご覧いただくと分かるが、榎本教授の名前は掲載されていない。また、森山研究室は教授の名前を消さないことから、薬学部からのリンクを切断されたという。

森山研後任人事(公募要領、JREC-IN)
榎本研後任人事(公募要領、JREC-IN)

追記(平成28年1月4日)その2

本日薬学部教職員に対して12月28日付で森山、榎本両教授の解雇が行われた旨が報告された。また、夕方には薬学部の全学生を対象にメールで両教授の退職が通知された。解雇の事実、その理由等が一切示されていない(「岡山大学の決定として…両教授がご退職された」という異様な表現らしい)、学生にとってはよく分からないメールとのことである。

追記(平成28年1月4日)

元日のYahooニュースにおいて、榎木英介氏による昨年の研究不正事件をまとめる記事が掲載された。ここでは世界各国の不正事例に加え、国内では岡山大学の研究不正に対する対応が悪質であることが指摘されている。片瀬氏による調査、報告に端を発し、次第に今回の岡山大学の対応の異常さが理解され始めているようである。

やっぱり小保方さんなんてかわいいほうだった~2015年も多発した研究不正事件(Yahooニュース)

3日には毎日新聞において、岡山大学の研究不正調査の問題点が指摘されている。研究不正問題にどう取り組んでいくかを考える上で重要な論点をふまえた素晴らしい記事である。不正調査自体の杜撰さや、指摘を受けてもそれが是正されない背景には、文科省のガイドラインに問題があることを二つの記事を通じて指摘している。文科省の研究不正に対するガイドラインは決定的なものではなく、随時見直しをしていくことが表明されている。大学執行部が関わる研究不正案件について、大学執行部自身が第三者性をもって調査できないことは自明である。文科省の方針は学長への権限の集中をはかり、機動的な国立大学の運営を求めるものであるが、学長への権限の集中により生じる問題点についての検討は必ずしも十分とはいえない。文科省が岡山大学の構成員に自浄作用がないことを指摘することはもっともかもしれないが、一方で監督官庁として自らが定めた仕組みから生じた問題については責任をもってこれを是正する義務があるだろう。大学からの公式発表はまだないものの、岡山大学自体は告発した両教授に解雇という判断を下しているようであり、評議員を含め執行部には自浄作用がないことは明らかである。今後、社会から厳しい批判を受けることは免れないだろう。

告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委(毎日新聞)
「シロ」判定 文科省指針では公表不要(毎日新聞)


追記(平成27年12月8日)


明日は岡山大学の評議会において森山、榎本両教授の解雇について審議される予定である。研究不正の公益通報が隠蔽され、さらには停職、疑義不詳の自宅待機、解雇という措置が国立大学において取られたことの意味は限りなく大きい。平成26年のSTAP細胞事件、東大分生研の大規模な捏造論文の発覚に続く形となったが、本件は、研究者コミュニティにおける自浄作用が踏みにじられた実例である。本件を看過、容認することは我が国における科学研究に取り返しのつかない傷跡を残すことだろう。医学部と近いところにいない基礎研究者の方にはなかなか理解が難しいことではあるが、大阪大学や東京大学、そして岡山大学で起こっていることは、医学部におけるヒエラルキーを維持するのか、あるいは科学研究を死に追いやるのかの二択を迫るものといえる。

研究不正を内部告発した教授らに大学が解雇処分の判断(warblerの日記:片瀬久美子氏のブログ)

追記(平成27年10月26日)

23日に続いて再びNHKより報道が行われた。今回は岡山大学による昨年度の科研費の不適切な取り扱いを報じている。森山教授と協議することなく研究交流部より辞退届を日本学術振興会(JSPS)に提出し、一方でおよそ560万円の森山教授の研究費についてはJSPSには返却していないという。大学側の言い分では、まるで森山教授が手続きをしていないかのようであるが、実態は勝手に科研費を召し上げたもののJSPSには説明も適正な手続きもできていなかったという杜撰な話である。森山教授に対する迫害は熱心にやるが、法的な手続きは適正に実施できない。疑義不詳で懲戒を予告したまま自宅待機を命令する組織に相応しいエピソードである。

「未使用の科研費 返還できず (NHK岡山放送局)」web版のリンク

研究費の不正使用は一般に厳しい措置が取られるが、事務方の不正行為にはどのような懲戒処分がとられるのであろう。研究担当の山本理事の責任はいかがなものであろう。森山教授の科研費は今年度も継続予定であったようだが、停職処分が解けた今、復活措置は取られているのだろうか。不正を告発した研究者を懲戒し、処分後も法令無視の自宅待機と研究費召し上げを行う岡山大学執行部は社会から厳しい批判を受けるべきであろう。学長の権限強化を目指す文科省は、このような失敗を放置していて良いのだろうか。このままではガバナンス不在の国立大学という批判を受けることは免れない。

追記(平成27年10月23日)

NHK岡山放送局により、森山、榎本両教授が長きにわたる自宅待機命令の取り消しを求める訴えを岡山地裁に起こしたことがテレビ報道された。ニュースでは、両教授は教員に対するハラスメントの疑いで停職処分を受けたが、処分終了と同時に自宅待機命令が出たこと、停職処分については仮処分で違法性が認定され、停職期間の給与の支給が地裁により命令されたこと、がそれぞれ報道された。大学側への配慮を感じさせる表現ではあるが、事実関係については適切に報道されている。そもそも自宅待機の疑義が不明であること、既に5ヶ月になろうとしていることが追加されれば、大学側の措置の異常性がより明らかになったと思われる。本件は、NHKのみが先行報道しているようである。

森田潔学長は博士論文不正の隠蔽を指示したことを否定しているようであるが、予備調査委員会、本調査委員会が設置されながらも、3年以上何の判断も下されていないという事実が全てを物語っている。医学部論文のようにシロ判定の発表ができないのは、博士論文全体が剽窃によって作成されており、不正の否定は事実上困難であるためらしい。

追記(平成27年9月14日)


サイエンスライターの片瀬久美子氏によって岡山大学に対して情報公開請求が行われ、本サイトが指摘していた問題点以上に杜撰な研究不正調査報告書の一端が明らかにされている。調査委員会の構成員の名前が明かされないことについては疑問に感じていたが、早稲田大学の小保方博士論文の調査委員会と同様、この調査報告書に署名するようでは研究者失格の烙印を押されても仕方ないだろう。いずれ真相が明らかになるだろうが、外部の調査委員の方はこのような不名誉を甘んじて受けるのであろうか。また、このような明らかな瑕疵のある調査報告書について文部科学省はどのような見解を示すのであろうか。

岡山大学医学部不正調査の問題点(warblerの日記:片瀬久美子氏のブログ)

両教授は停職期間を含めるともうすぐ丸1年間薬学部への立ち入りを制限されていることになる。疑義不詳の自宅待機命令の継続は、大学執行部の措置には大義はなく、力で研究不正を封じ込めようとしていることを示唆するものでああろう。学長の任期は1年以上残されており、不透明な幕引きを計ることは難しい。

追記(平成27年8月29日)


平成27年5月26日の阿部宏史理事のメールは、岡山大学の法務・コンプライアンス室のメールアドレスより発信されているが、ここでは「両教授においては、パワー・ハラスメント等とは別の非違行為の疑いがあることから、現在、当該事案の調査を行っているところです。」という記載がある。既に3ヶ月が経過しているが、今もって「別の非違行為」とは何かは明らかではなく、阿部理事からの報告もない。「法務・コンプライアンス室」を名乗る組織が、疑義も示さず長期の自宅待機を命令するという異常な処分に積極的に荷担するというオーウェル的な状況は、岡山大学が大学という組織の理想からかけ離れた全体主義的な状態にあることをよく示している。監査を行わない監事・法人監査室、コンプライアンス意識の欠けた法務・コンプライアンス室、研究不正を隠蔽する研究大学、いずれも学長の強引な運営がもたらした倒錯である。

このような強引な懲戒処分を継続する背景は誰しもが関心を持つところであるが、その一つが研究不正の隠蔽にあることはおそらく間違いないだろう。

・学位論文不正

博士論文で盗用疑惑、学内調査委が再審査勧告(平成26年6月18日佐賀新聞記事アーカイブ):平成24年1月に発覚した学位論文不正は平成26年6月の記事にあるように、再審査が勧告されているが、1年以上経過した現在も調査は実施されていない。
・研究論文不正
大学側は公式HPを用いて全ての告発は誤りであることを主張しているが、その根拠は示されていない。以下のような客観的に判断できる瑕疵が、不正認定はおろか論文修正すら指示されないことについては十分な説明が必要である。これらの論文が調査を経てなお何の修正もなく社会に公開されていることは、岡山大学が研究機関としての責任を果たしていないことを示している。

写真の取り間違いを修正した訂正論文においてさらに写真の間違いがあるような杜撰な研究は、不正の意図の有無に関わらず、その論文自体の信頼性がない。データ画像の切り貼りが場合によっては問題であるということは既に過去のいくつかの事例で明らかである。また、同一の臨床研究を対象とした二つの論文(一方は日本語の受賞記念論文)で明らかに異なる二種類のデータが示されていることは、臨床研究のデータの取り扱いの杜撰さを示しており、深刻な疑義を招くものである。

追記(平成27年8月18日)

森山、榎本両教授に対する無期限の自宅待機命令はもうすぐ3ヶ月に達しようとしている。薬学部教職員に対する理事からのお知らせでは、停職処分時とは異なる新たな非違行為の疑いがあり、懲戒処分を科す予定であるということが記載されていた。しかしながら、今なおその疑義は明らかにされておらず、懲戒処分の手続きが進んでいる様子もない。通常、刑事犯による逮捕等の客観的に明らかな理由による懲戒処分決定までの期間が自宅待機処分にあてられるが、両教授の非違行為が何かは今もってよく分からないままである。薬学部は事実上、二名の教授を欠く状況が継続しており、研究、教育、学部運営、いずれにおいても今後の計画を立てることが難しい状況にある。両教授の研究室のスタッフ、学生たちは先の展望が見えない状況で疲弊している。

岡山大学執行部のこうした措置は極めて不可解なものであり、両教授の復職を断じて阻止しなければいけない強い理由があることがうかがえる。それが博士論文不正の問題なのか、あるいは医学部の研究不正にあるのか、詳細は不明である。文科省は4月から学長の権限を強化し、速やかな意思決定が可能な大学運営を目指しているが、岡山大学の事例は、権力の監視やチェックが全く機能していない惨めな失敗例である。速やかに事態を収拾し、問題点を検証する必要があるだろう。

追記(平成27年7月10日)

本サイトは、研究不正の告発が岡山大学により正当な理由なく却下され、告発者が逆に懲戒処分を受ける可能性があることについて指摘することを当初の目的としていた。しかしながら、その後の進展は国立大学の対応としては極めて異常なものとなっている。

学部内におけるパワーハラスメントを理由とした停職措置は5月25日をもって完了した(ハラスメントによる懲戒処分妥当性については岡山地裁において係争中)が、引き続きハラスメント以外の疑義で懲戒することが予告されており(疑義の内容は不明)、無期限の自宅待機命令が下された。懲戒の根拠は不明で、時期も明らかにされないことから、研究室のスタッフ、両教授から研究指導を受ける学部生、大学院生の動揺は大きい。

以下に指摘するが、大学内において学長をはじめとする執行部の独走を牽制する動きは見られない。学長と両教授の係争を通じて、最も弱い立場にある学生が大きな被害を被っている。


岡山大学で現在進行していることは、高等教育機関としての使命の放棄である。関係各位は大学の責務を再確認し、正常化に向けた努力をすべきである。

・学生に対する研究・教育の指導
医歯薬学総合研究科長は、薬学部の学生に対して、責任をもって卒業、修了までの間、適正な研究環境を確保することを約束する旨をメールで知らせているが、森山・榎本両研究室の学生たちは、疑義も不明のまま指導教授が無期限で自宅待機を命じられるという理不尽な処遇を受けている。このことに対して、薬学部長、研究科長、あるいは学長、理事は、一度も学生に対して説明を行っていない。既にこの異常な状況は6週間を越えており、両研究室の学生、スタッフは精神的な限界に追い詰められている。

・学位授与機関としての使命

薬学部において不正な博士の学位授与があったという疑義は、研究科長をはじめ複数の教員の知るところであるが、告発後3年以上放置されている。十分不正の判定が可能な証拠があると思われるが、調査活動が停止している。

・公正な研究活動
森山、榎本両教授により告発された研究不正については、全てが研究不正ではないという判断を公に発表したにも関わらず、調査委員会の委員構成、告発内容を否定した根拠等が一切示されていない。大学執行部がシロと言えば不正ではないという判断は、研究活動の根幹を揺るがすものである。

岡山大学における以下の構成員はそれぞれの職責を果たすべきである。

学長:本件の責任者として、学生の修学環境、責任ある研究活動の回復につとめなければいけない。両教授との係争と、大学としての責務を混同するような態度は学長として著しく不適切である。
研究科長:速やかに学生に対する約束を履行し、薬学部における修学環境を回復すべく努力しなければいけない。また、博士論文不正の予備調査の責任者として、早急に本件の収拾をはかるべきである。
薬学部長:両教授の薬学部からの追放を画策しているようであるが、両研究室の学生の修学環境の維持についての配慮が不十分であり、薬学部全体における学生と教員との信頼関係を毀損していることを自覚すべきである。
各理事・副理事・副学長:学長の判断に盲目的に従うのではなく、国立大学の責務を改めて認識し、軌道修正をはかるべきである。
監事・法人監査室:裁判所から強制執行を受ける、あるいは不当な自宅待機命令など、遵法意識に欠ける学長、理事に対して適切な意見を述べるべきであり、この状況で何もしていないようであればポスト、あるいは組織としての存在意義がない。
各部局長:評議員として執行部の判断に対して異議を唱える人物が一人もいないという状況について疑問はないのか。事実の確認すら出来ないということでは、評議員の責務を果たしているとはいえない。本件は岡山大学の存立基盤を揺るがす可能性のある事件である。
事務職員:国立大学職員として遵法意識をもって業務に取り組むことが優先されるべきで、上司の命令に盲従し違法である可能性のある行為に及ぶことは厳に慎むべきである。(良識のある一部の職員の方の陰の協力には感謝しております)
職員組合:非組合員という理由で、両教授に対する措置に関心を示さないような職員組合には存在意義がない。

緊急の追記(平成27年5月26日)

平成27年5月20日に岡山大学森田潔学長により、森山、榎本両教授に対して5月26日以降の自宅待機命令が発せられたようである。命令書には追加懲戒の意向が示されているが、懲戒事由が何であるかは明らかにされていない。岡山大学は研究不正の告発に対する調査報告は完了したという認識であることから、「真正な」研究成果を不正として告発した両教授に対しては懲戒処分が行われる可能性がある。今回の懲戒事由は異なるものである可能性もあるが、そもそも何の根拠も示さずに研究不正がないとしている岡山大学の独善的な調査報告が修正されない限りは、研究不正の虚偽の告発を事由とした懲戒処分の懸念は解消しない。

緊急の追記として、岡山大学における研究不正告発の経緯、およびその主体であった薬学部に対する大学執行部の対応を公開(岡山大学における研究不正の告発(時系列))する。両教授を継続して支援する必要性から、今回も匿名教員として記録を行う。何故、匿名とせざるを得ないかについては、これまでの大学執行部の対応からご理解いただきたい。

(平成27年5月27日現在)森山、榎本両教授に対する自宅待機命令は、懲戒処分の対象となる疑義については一切説明されることなく、その期限も設定されていないことが明らかとなった。薬学部長、医歯薬学総合研究科長も理事からのメール以外の経緯は知らないという。既に係争対象となっている疑義では8ヶ月の停職処分が執行され、引き続き自宅待機が命じられている。研究室に所属する学生、院生が喪失した教育指導を受ける機会を取り戻すことが不可能であることを考慮すると、教育機関としての責任を果たしているとは到底言いがたい状況である。

(平成27年6月12日現在)自宅待機命令にかかる疑義の開示、今後の展望について薬学部長に複数の教員が問い合わせを行っているようであるが、今もって事情は明らかにされていない。疑義不詳のまま、自宅待機状態は既に2週間を越えている。復職を期待していた学生、スタッフはそれぞれ抗議の声をあげているが、今のところこれらは適切に取り扱われていない。一部の学生はこのような状況の中、就職活動を継続している。両教授の復帰の目処は立たず、一方では懲戒予告は解雇であるという噂が流れており、強いストレスがかかる状況が続いている。国立大学の教職員は見なし公務員であるが、上司の命令より法律遵守を優先させるような動きは皆無である。

匿名一教員