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このページは「インターローカル」な発想から執筆していただいたゲスト執筆者の記事です。


町並みづくりはパーティで?

住民とプロセスをシェアする「パーリー建築」

2017年12月12日


執筆者 
 
木田悟史 (日本財団 鳥取事務所所長



【鳥取市浜村町】町並みづくりには、建築のプロセスを地元の住民と共有することがカギだ。パーティを通してそれを行う活動が鳥取市浜村町にある。「パーリー建築」と称する宮原翔太郎さん取り組みを紹介したい。


■パーティーしながら建築しちゃう? 
鳥取市中心部から車で30分程のところに浜村(はまむら)という町がある。
以前は温泉街として賑わい、小泉八雲もここに滞在していたという記録の残る、どこか趣きのある町だが、今では温泉街としての賑わいは息をひそめ、人通りもまばらだ。 

この浜村温泉町で、「パーリー建築」という面白い活動を行っている若者に出会った。宮原翔太郎さん(27歳)がその人。「パーリー建築」とは、聞き慣れない言葉だが、英語のPartyをネイティブ発音風にカタカナ表記した書き方。文字通り「パーティーをしながら建築をする」こと。基本的に法律に遵守する形で進めているそうだが、実際どうするかは後述する。宮原さんがこの活動を始めるきっかけとなったのは、建築の専門学校時代にさかのぼる。卒業制作で尾道へ行き、セルフビルドでゲストハウスを作るプロジェクトに関わったのが始まりだ。 
軒学生時代はラグビーをやっていた宮原さん。笑顔がとっても素敵である。(写真=筆者撮影)

ここでカフェを営む村上さんと知り合う。同氏はベルリンDJとして活動していたこともある人物で、「何をやるにしても、人と人の交流がすべてだ」という言葉に強く共感。そんな言葉を傍らにおきながら、住民の方と一緒にゲストハウスづくりを続けるうちに、ひとつのアイデアが浮かんだ。「パーティーやりながら建築すれば楽しいかも」というものだ。そこからどんどん発想が膨らみ、「パーリー建築」にいたった。 

このアイデアの背景には、宮原さん自身がもともと抱えていた問題意識があった。学生時代に文化人類学を専攻していたが、アカデミズムという閉じた世界ではなく、何か具体的に社会と関わる方向を模索。そこで建築を志し、建築事務所の就職を考えるも、働くことなく「パーリー建築」を始めてしまった。同氏にとって建築も社会と遠い存在と感じるようになり、住民と一緒にものづくりをやっていこうと決めたからだ。 

■パーリー建築とは? 
さて、気になる「パーリー建築」だが、実は宮原さん自身もまだうまく言語化できないという。ただ活動内容やアイデアを聞いていくと、「人と人とのつながりをベースに、各人の得意技をもって、何らかの形で建築のプロセスに関わることができる仕組みをデザインすること」といえそうだ。実際、次のような進め方をしている。 

  1. 施主と考え方やコンセプトを共有。現場でイメージを固める。
  2. 宣誓書を取り交わす 
  3. ワークショップやパーティーを交えながらの建築作業 

1は通常の建築工事でも行われるプロセスだと思うが、パーリー建築がユニークなのは2と3だ。 
宮原さんは、これまで様々な解体工事に関わった。毎回大量のゴミが発生し、時にはその取り扱いに大変な苦労があるという現実を見てきた。こうした経験から、「最初から環境に負荷をかける材料を使わないこと。購入価格は安くても、製造過程でエネルギーがかかり過ぎており廃棄が難しい材料は使わないこと」を施主側と合意してもらうことにしている。 

また、こうした状況が一般に、あまり知られていないことこそが問題であるという考えから、「解体工事ワークショップ」といったプログラムを用意し、地域住民に建築の中身をオープンにしている。 
時にはBBQもしてしまう建築の現場は本当に楽しそう。
現代社会は製造物・建造物のトレースができず、自分たちの身体感覚からかけはなれて複雑。
パーリー建築という手法で、こういう社会に変化を促す。(写真=宮原さん提供) 

■建築をオープンに、複雑な社会の仕組みを知る 
専門家でもない限り、家の壁をはがしたら何があるのか知っている人はほとんどいないだろう。私達の多くは、身の回りにある建造物がどんなふうに作られ、その素材がどのようなものかをよく理解でせず暮らしている。さらにテクノロジーが加速度的に発達し、経済的な仕組みも分かりづらい。人々が住む空間は複雑な社会の仕組みの中で作られているのだが、その複雑さすら見えにくいのだ。 

だからこそ、身の回りにあるものを解体し、それを一般の人にもオープンにすることが重要だ。実際のモノを見たり触ったりすると、直感的に理解が進むことも多い。「ワークショップに参加した人には、建築って意外に単純なんだと感じてもらえるようだ。そんな驚きから変化が始まると思う」と宮原さんは言う。そんな同氏が作る見積書は何にいくらかかって、それがどういうものなのか一目両全。「世界一分かりやすい」と自負する。 

住民達とパーティーをしながら建築をすすめていく方法は、建造物の背景にある社会構造を理解し、さらに環境負荷をかけず、積極的に住む地域づくりに関わることにほかならない。「今後やりたいことですか?まずは自分の暮らしている浜村という町を、より過ごしやすい空間にしていきたい」。宮原さんの中にはパーリー建築の「首謀者」であると同時に、住民としての強い意識もあるようだ。(了)  


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執筆者 木田悟史(きだ さとし)

日本財団 鳥取事務所所長。
ソーシャル・イノベーション本部国内事業開発チーム チームリーダー。慶応義塾大学 環境情報学部卒業後、日本財団入団。総務部や助成事業部門を経て、NPO向けのポータル・コミュニティサイト「通称『CANPAN』カンパン」の立上げに関わる。企業のCSR情報の調査や、東日本大震発災後、支援物資の調達や企業と連携した水産業の復興支援事業の立上げを担当。その後、情報システムや財団内の業務改善プロジェクトを経て今に至る。



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