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アートもあり、ドイツのキッズ柔道プログラム

「Judoサファリ」に見る複数の尺度

2017年5月23日


執筆者 高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



柔道は教育体系である。これが世界中に普及している理由のひとつだ。一方日本を見ると、長きにわたり競技柔道が主流で、しかも「勝つこと」に傾注しすぎた。それに対してドイツでは「競技」以外の柔道が様々なかたちで展開され「教育体系」としての柔道を実現している。そんな子供向けプログラムのひとつが「Judoサファリ」だ。
「近代JUDO」(ベースボール・マガジン社)2016年7月号執筆分をもとに大幅に短縮
■クラブの創造性が試される 
このプログラムはドイツ柔道連盟が作ったもので、開催は各地のクラブに委ねられている。参加した子供たちは「柔道の試合」「身体を動かす競技」「文化的競技」の3つの分野で競い、ポイントを集める。ポイント数に応じて動物のマークのワッペンが貰える仕組みだ。

面白いのは「柔道の試合」以外の分野は開催するクラブで自由に作ってよいこと。だが裏を返せば開催するクラブの創造性、もう一歩踏み込むと企画力、さらに踏み込むと、頭の柔らかさが問われているともいえる。 

また、このプログラムには、競うことの楽しさがあるが、「柔道が強い」「身体能力が高い」といったことだけではない複数の尺度が盛り込まれている。 昨年3月、ドイツ中南部のミュールハウゼンのスポーツクラブの柔道部署が行ったプログラムを見てみよう。 

午前10時スタート参加人数は19人。年齢は6-12歳。年齢別の3グループに分かれて行う。 
まずは「身体を動かす競技」だ。 サッカーグラウンドで「三段跳び」「遠投」「徒競走」。日本の感覚から見ると、ちょっとした運動会とか体育の授業のようだが日本のような行進などもないし、服装もバラバラだ。  
三段跳び!この日は大人も「ボランティア」として大活躍だ。
■「文化的競技」
柔道クイズにお絵かき これが終わると道場へ移動、「文化的競技」が行われた。 内容は上の年齢2グループ(9-10歳と11-12歳)は柔道クイズ。下の年齢グループ(6-8歳)はトレーナーの絵を書く。

クイズの問題はこんな具合だ。 
  • 柔道はどの国から来た─中国、日本、韓国、タイ?
  • 柔道の創始者は─ブルース・リー、ブリンクマン(クラブのトレーナー)、ブルース・ダーネル(モデル)、ジゴロー・カノー?
  • 国のボスで有名な柔道家は─プーチン、ベルスコーニ、オバマ?
  • Mokusoの時はどうすべき─眠る、畳へ行く、静かにする、固め技を緩める?

ドイツの柔道でも「Mokuso(黙想)」などの日本語の用語をそのまま使われている。それだけに、子供たちにとってハードルが高そうだ。欧州から見ると日本は遠い。その観点からいえば、柔道は日本を知る機会を作っているといえる。 
柔道クイズ、奮闘中。

■競技以上の価値がある 
最後が「柔道の試合」だ。時間は2分。もちろん勝ち負けで得点がついていくのだが、それ以上に教育的な意味付けが強いように思えた。

というのも、まずは審判が中学生に相当するクラブのメンバーが務めている。審判役の少年は試合にも出場している選手でもあるのだが、審判を行うことで、柔道の試合そのものを見る目を養うことにつながるだろう。 
「はい、ここで礼をして・・・」 競技以上の価値がある。

また、試合をする子供たちに対してトレーナーが、「はい今、そうそう、頭を下げて礼」という具合に手とり足取り教える。技をかけたりすることや、勝ち負けも大切だが、「柔道」の価値を試合でどのように実行するかということに重きをおいているように思われた。 





  
※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。