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フランス柔道、体育の時間に何をしているのか?

浮かび上がる教育体系としての柔道

2017年3月22日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



フランスは柔道人口が多い国として知られているが、学校の体育の授業でも行われている。フランスのスポーツ教師 ナターシャ・ダヴィド=ロベールさんにどういう授業が行われているのか聞いた。柔道はもともと教育体系だが、体育授業にうまく組み込まれているようだ。
「近代JUDO」(ベースボール・マガジン社) 20016年11月号執筆分を加筆修正

■思ったよりもハード、ドイツのスポーツクラブ 
フランス西ロワール=アトランティック県からドイツに引っ越してきたダヴィド=ロベールさん(39歳・女性)は体育教師歴15年のベテラン。12歳の生徒を対象に授業を行ってきた。 インタビューを行う前に、私が住むドイツ・エアランゲン市内のスポーツクラブの道場で行われている柔道のトレーニングを見学してもらった。

見てもらったのは、10代から60代の男女が一緒に行っているのもので、競技柔道ではなく、健康・余暇・コミュニケーションなどを目的にした「幅広いスポーツ」と分類されている内容のコースだ。 

「思ったよりもハードだと思いました。フランスのスポーツクラブでの柔道は見たことはないのですが、おそらく、同じようなものだと思います。それに対して、体育での柔道はもっとソフト」という。 

■授業柔道は教育が目的
道場にはドイツ柔道連盟が定めた「礼儀」「謙虚」「親切」「尊重」などの「柔道の価値」のポスターが貼ってある。同氏はそれを指差しながら「ああいうことを教えます。授業柔道は教育が目的ですから」という。 

体育授業の目的は、「体を元気にする」「運動を通じて身体について学ぶ」「社会的関係性を学ぶ」ということだ。授業ではダンス、ジムナスティックなど様々なことを行うが、その中でボクシング、レスリング、そして柔道などの格闘技も行う。ダヴィド=ロベールさんの場合、格闘技についてはボクシングを扱っていた。「もっとも、あくまでも目的は教育。実際に殴るわけではなく、拳が相手に触れるところまで」。

では、授業での柔道ではどのようなことを行っているのだろう。 
「フェアであること、それに負けたとしても、その負けを受け入れて、相手に敬意を払う。そういうような原理をまず教える。それから、なぜ礼をするのか、といったことも扱います」という。

 面白いのは試合も行うが、審判も持ち回りで行わせることだ。「柔道」のすべての役割と技術の理解を進めることができるからだ。また、授業中の乱取を通して、「なぜ、あの時に、こう動いたか」「あの時、どうするべきだったか」といったことを話し合う。身体で行う「柔道」を言語化する過程が組み込まれているかたちだ。 
積極的に発言することで、「柔道」を言語化できる。理解や深い思考、他者との意見交換などにつながるだろう。
(写真はドイツの子供向けトレーニング)

■教員養成の課程で柔道の歴史も
このような授業の進め方は、生徒たちへの成績評価」とも整合性を見いだせる。同氏によると、評価はおおまかにいえば2つに分野に分けている。 

1つめは技術。乱取での勝ち負けよりも、どういう技術を試したかといったことにポイントをつける。 
2つめが社会的な分野で、「フェアにできたか」「役割を果たしたか」「態度はどうであったか」ということを評価する。また、「社会的分野については、生徒のパーソナリティにあわせて指導するポイントが変わってきます」と笑う。

先述のように、同氏自身、授業では柔道は扱わない。しかし、ここまで説明ができるのは、大学での教員養成の課程で、柔道のことも学ぶためだ。「簡単ではあるが、柔道の歴史も勉強する」(同氏)。もともと柔道は教育体系だが、フランスでは「体育」とうまく統合されているのが浮かんでくる。(了) 



 
  
※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。