Interlocal Journal はドイツ・エアランゲン在住のジャーナリスト・高松平藏が主宰するウエブサイトです。
このページは「インターローカル」な発想から執筆していただいたゲスト執筆者の記事です。


地域の中でスポーツが貢献できること

スポーツの良し悪しを把握し、最大限に活かす

2017年1月24日


執筆者 石井 邦知(スポーツコミュニティマネージャー)



【川口市】総合型地域スポーツクラブ「きゅぽらスポーツコミュニティ」を埼玉県川口市(人口約58万人)で立ち上げて6年目になる。活動とともに、見えてきた地域におけるスポーツの役割を紹介したい。


■チームスポーツを主軸とした活動
「きゅぽらスポーツコミュニティ」は埼玉県川口市を拠点とした総合型地域スポーツクラブだ。「スポーツやコミュニティの力で楽しく前向きな地域づくりに貢献する」というミッションのもと、フットサル・バレーボール・バスケットボール・バドミントン・卓球の5種目を定期的に行っている。
バレーボールで点が入った時はチームメンバー同士でタッチ。
スポーツならではの人間関係を深める行為だ。(写真=石井邦知)

その他にも、参加者の要望をもとに、運動会や球技大会などのイベントを実施し、さらに、スポーツとは直接関係しないが、親子向けイベントや健康に役立つ講座なども、よく開催している。これらの活動で毎月150名以上の皆さんに楽しんでいただいている。

活動を通して、さまざまなノウハウも蓄積されてくる。小学校の学童保育向けに、定期的にスポーツレクリエーションプログラム提供という形でそのノウハウを活用。チームで楽しめて体を動かすことそのものが楽しい、そんなふうに小学生に感じてもらうことが狙いだ。

これらの活動に共通しているのは、年代や業種に関係なく、人々が一緒に楽しめるという点。そのためにも既存の用具やゲームのルールも柔軟に変えている。 
運動会で10人11脚レース。老若男女問わず一緒できるのが面白い。(写真=石井邦知)

■ベッドタウンには広範囲から人が集まる 
クラブの拠点である川口市は東京のベッドタウンで、川口で寝起きして東京で働くという人々が多い街だ。またベッドタウンゆえに新住民としてやって来る人も多い。

こういう立地は当クラブにも反映している。
クラブには毎月30~40名が新たに参加されるが、ネットで調べて知ったという方が全体の半数にのぼる。その中には川口市周辺地域に住んでいる人もいる。これは同市が東京のベッドタウンゆえ「東京周辺」が活動範囲になっているということだろう。また転勤等で他地域から引越してきたばかりという方も多いのもベッドタウンという事情が反映しているのだと思う。

興味深いのは20・30代の若年層の参加率が高いことだ。実はこの世代のスポーツ参加率は日本で低く、問題視されている。しかしネットが情報源になると、この世代の参加につながりやすいということだろうか。
キンボールをつかってバレーボール。
「参加者が楽しめる」ということを目的に、時には用具を変えてプレーすることもある。(写真=石井邦知)

■川口における地域スポーツの役割
ここで2016年末にクラブ内で実施したアンケートを少し紹介したい。定期的に参加されている方のクラブの捉え方は下記の通りだった。 

        生活の一部

        欠かせないもの

        楽しむ場、交流の場、スポーツできる場

        人とスポーツの輪

        様々な方と交流できる場所

        楽しい仲間がいる存在

        世代共存

        いろいろな人と関われる

        異業種交流

        人と人とのつながりの輪

        知り合いをつくるきっかけ

        楽しい場所

        健康のためのスポーツができる場

        ゆるく運動を楽しめる場

        レベル関係なし

        一週間分の運動

        交流 ストレス解消

        ストレス解消の場、ストレス発散


表.当クラブをどう捉えているか(2016年末アンケート結果 表記の順位は関係ありません)

川口市のようなベッドタウンは、地縁のような人間関係を自然なかたちで構築するのが難しいと言われている。また「新住民」が地域で気軽に参加できたり、多世代の人々が一同に集まれる場は一般的に少ないだろう。

それに対して、当クラブはどなたにとっても敷居が低く、また、アンケートにあがった人々との交流や仲間ができたという結果も、クラブの目的を達していると考えている。加えて「様々な人と接することが楽しくなった」「自分から人に話しかけるようになった」という変化の声を聞けるのはスポーツならではかと思う。 

■スポーツの”閉鎖性”を回避する工夫を
一方、活動を重ねることで、スポーツの”閉鎖性”を実感することもある。

これまでの参加者のうち、約2割は複数の種目に参加しているが、バレーボール、バドミントンなどに人気がある。すなわち、特定種目が好きなメンバーが定着するわけだ。こうなると、プレイのレベルも徐々に上がり、交流も深まるが、新規参加者、特に初心者が入りづらくなる恐れもあり、コミュニティとしての広がりが期待できないジレンマが生まれる。

実際、初めての方の中には、「初心者でも大丈夫でしょうか?」と質問され、足を引っ張って迷惑をかけないか心配される方も多い。その背景に「スポーツ=経験者がやるもの、勝ち負け重視」といった日本旧来の価値観が根強く残っていることも伺える。

また学生時代は野球・サッカー・バスケットボールといったチームスポーツの部活に所属している人も多いのだが、大人になればなるほど、個人スポーツを楽しむ人の方が多いのも現状。これも「迷惑をかけたくない」という心理につながっているのだろう。

こうして閉鎖的になっていきそうな流れの芽は意識的に摘んでいかなくてはならない。そしてチームスポーツを誰もが身近で楽しめる環境を今後さらにつくり、日本におけるスポーツと地域コミュニティの空気を変えていきたいと思っている。(了)

<ひょっとして関連するかもしれない記事>


執筆者 石井 邦知(いしい くにとも)

2011年2月に埼玉県川口市を拠点とした総合型地域スポーツクラブ「きゅぽらスポーツコミュニティ」を設立(代表理事)。チームスポーツを通じて、年代や業種など異質で普段つながることのない人々がカジュアルに交流し、仲良くなれる場をつくっている。
2014年3月に一般社団法人日本コムスポーツ協会の設立を経て(代表理事)、スポーツを支える方向けのwebメディア「こむすぽ」(http://comspo.net/)の運営や小学校の学童保育で運動レクを実施している。





短縮URL https://goo.gl/TIrplQ