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ドイツの小さな村のスポーツクラブとコミュニティ

1,500人の自治体を散歩して見えるもの

2016年3月18日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



たまたま人口1,500人余りの村を訪ね、散歩。そこから見えてくるものを元にドイツの自治体の「標準装備」とは何か考えてみた。


■サッカーグラウンドが2面
クラインゼンデルバッハ(バイエルン州)という基礎自治体を訪ねた。ここのスポーツクラブのサッカーチームと息子が所属しているチームの友好試合が行われたのだ。文献には1062年にその名前が見出せ、歴史と美しい自然がある。たぶん晴れた夏の日はサイクリングやハイキングのために、たくさんの人々が来るのかもしれない。 が 特殊な産業があるとか、文化的に特筆すべきものがあるといったこともない小さな自治体だ。

それにしてもスポーツクラブがあり、サッカーグラウンド(もちろん芝生)が2面ある。
こぢんまりとしたクラブハウスに隣接したメインのグラウンドには、この村と周辺自治体の事業体の看板広告がならぶ。(写真下)

グラウンドの周囲には地元の事業所の広告が並ぶ。

羅列してみると、薬局、工務店、銀行、ビール会社、新聞社、印刷会社、理学療法のクリニック、旅行会社、パーティサービスなどなど。小自治体の中でスポーツクラブは人が集まるところであり、広告価値のある場所ということになるだろうか。これも地域経済の一端だ。

もう一面、自治体のはずれの森に囲まれたサッカーグラウンドがあるが、その隣にはバスケットボールとスケートボードなどが楽しめる場所が作られている。(写真下)
訪ねたのは夕方。天候も悪く、野外でスポーツを楽しむような状態ではなかったが、夏場はきっと若者を中心によく利用されるのだろう。牛糞と思われる香りがほのかに漂ってくるのはご愛嬌。

■スポーツクラブ以外にもNPO
また、隣の自治体のスポーツクラブで行われるディスコパーティのお知らせが貼ってあり、近隣同士の交流や、スポーツクラブが若者たちを中心に娯楽の拠点になっていることがうかがえる。

スポーツクラブは日本でいうところのNPOのような非営利法人なのだが、面白いのは同自治体のホームページによると、スポーツクラブ以外にブンデスリーガーのサッカーチームFCバイエルンのファンクラがあることだ。ドイツのバーなどにはスポーツチャンネルの衛星放送を入れているところがけっこうあるが、同自治体のスポーツクラブのクラブハウスにもこの衛星放送がはいっている。おそらくFCバイエルンをはじめ、大きな試合があると、人々が集まってテレビ中継を見ながら、皆で盛り上がるのだろう。

また、政党関係、コーラス、スポーツ振興、教会の管理、バイク、釣り、カーニバル、伝統音楽、ハイキングなど合計18の非営利法人と団体がある。これらの中には専従や部分的な仕事が発生することもあるかもしれない。小さいながらも連帯経済や里山資本主義のような経済活動が発生している可能性もある。
文献にこの自治体の名前が出てくるのは1062年。歴史の一端を垣間見ることができる。

■「中の人」ならぬ「中に人」がいる
「中央通り」のバス停を見ても平日1日5回ほど来るだけ。しかし家族向けの新しい家もけっこうあるので、自動車中心の生活で、近隣のニュルンベルクなどの町へ働きに行く人が多いと思われる。
美しい自然はあるが、自動車中心の生活だと思われる。

それでも年間のイベント行事を見ると、高齢者向けの昼食会、フリーマッケット、サイクリング、音楽会、サマーフェスティバル、保育園を解放して誰でも施設内を見たり、説明を聞いたりできる「オープンドア イベント」、クリスマス市場、鯉の食事会などが行われる。また役場のお知らせ版には、「難民が訪問するので、お世話係のボランティアを希望する人、準備会議に招待します」という旨の首長名義の張り紙があった。
役場

自治体には経済やインフラ(エネルギー、水、交通など)が必要だが、他にも「標準装備」として、自治体の社会そのものを構成する要素(政治、宗教、文化、伝統、スポーツ、娯楽、個人の自由意志による社会的活動など)が不可欠。1,500人の共同体でもクラブなどを通じて形にしており、「中の人」ならぬ「中に人」がいるのが透けて見えてくる。 (了)


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