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村人はお祝いになぜパレードをするのか

mp3誕生の村の750年記念

2015年7月3日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



750周年の記念年を迎えた人口4,000人のドイツの村で先日パレードが行われ、村のNPOや企業などの山車が練り歩く。とりわけ村の『共有資本』が公開された機会といえるだろう。
農業・酪農も行われており、パレードには子牛をのせた山車も。

■“mp3”が生まれた村
私が住むエアランゲン市の一部にテンネンロエという村がある。1970年代に同市に組み込まれたが、それ以前は農業中心の自治体で、今も市庁舎だった建物に可愛らしい宮殿、そして教会もある。やがて住宅も増え、80年代にはベンチャー企業を支援するビジネス・インキュベーターが作られた。それとともに研究所やレーザー関係のハイテク企業なども集まった。

この村で世界的に有名なのがフラウンホッファー研究所だろう。音声ファイルのデータ形式で知られる“mp3”はこの研究所で開発された。彼の地は mp3 誕生の村なのだ。他にも周辺地域で数多くの店舗を持つパン製造・販売会社も参加。本社がこの村にある同社は元々この村のパン屋さんだった。

■『シビックプライド』ならぬ『ビレッジプライド』
750周年を記念して、先月20日に行われたパレードには村内を拠点とする企業・研究所・金融機関も参加。経営戦略の側面からいえば地域リレーションシップといったところか。だがハイテク企業や研究所がトラクターの山車で参加しているのを見ると、中世に見られる『共同体と職業組合の一体感』が今も感覚的に続いているようにも思える。

他にも消防団、楽団、スポーツクラブ、芸術NPO、ビール祭のためのNPO、子供関係の施設などなど、村の『共有資本』ともいえる団体が練り歩く。裏を返せば、こういった諸組織を通じて『信頼関係の網目』を構築し、コミュニティとしての人的つながりを強めているかたちだ。そしてパレードによって『シビックプライド』ならぬ『ビレッジプライド』を確認しているかのように見える。以下、写真でお伝えしよう。

mp3を開発したフラウンホッファー研究所の山車。サーバーのようなものを積んで、トラクターにはヘッドホン。mp3はデータ形式なので表現が難しいのはよく分かる(笑)
他にもグローバル展開しているレーザー技術の会社などもパレードに参加している。

村の弓術クラブ。弓術クラブはドイツ各地で昔からある伝統的なクラブ。

消防団。別の自治体のパートナーの消防団も。日本では地縁組織だが、ドイツは組織形態としてNPOのような法人格をもつ。それにしても地域の防災組織として存在感は大きく『地元の誇り』として扱われることも多い。

1950年にできたスポーツクラブの会員数は約1000人。
同クラブのサッカー部署。これ以外にスキー、柔術、体操、テニスなどの部署も参加。

創業から120年。今日、EU内で成長率の高い企業の1つにまでなった、パン製造・販売会社。
元々は地元のパン屋さんで創業時の家屋は今も村に残っている。 

信用協同組合。農村の金融機関として始まった歴史がある。
自動車は派手だが、人が少なくてちょっとさびしい。

芸術NPOの山車。村の中には『彫刻公園』などもあり、村のビール祭りではアートプログラムなども併せて行う。今回も750年の記念に村の教会の前にアーティストに依頼したオブジェを新たに設置した。

元々農村だったので、今も農業や酪農が営まれている。
トラクターの後ろには隣の農村から応援にきたアスパラガスのプリンセス。

『まあ、一杯』と沿道でパレードを待っていたオジサンが蒸留酒を消防団に振る舞う。後に続く子供たちが『俺も、俺も!』と調子にのる。『おまえら、子供やろ。あかん、あかん』と言いながらオジサン退避。日本のお祭りでもありそうな一幕。

村のビール祭の時には25-30mほどの装飾した木を会場の中心に建てる。そのミニチュア(?)を山車にして練り歩くビール祭りの青年NPO。

最終的には巨大なテント内で式典。背景の幕は旗やフライヤーなどにも使われているデザイン。シンボルである教会、パン、農業・酪農、mp3などが表現されている。

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