Interlocal Journal はドイツ・エアランゲン在住のジャーナリスト・高松平藏が主宰するウエブサイトです。


ポップカルチャー上のエスニック

ユーロビジョン・ソング・コンテストのポーランド代表を見た印象


2014年5月13日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



欧州放送連合(EBU)加盟放送局によって行われるユーロビジョン・ソング・コンテストが今年も開催された。スラブ人の伝統を前面に出したポーランド代表を見た印象を備忘として書いておきたい。

ポーランド代表、ドナタン&クレオ『My Słowianie - We Are Slavic』のプロモーションビデオより

■私たちはスラブ人
ユーロビジョン・ソング・コンテストは古くは『ダンシング・クィーン』などのヒット曲で知られるアバ、あるいはセリーヌ・ディオンといったアーティストを輩出したコンテストだ。今年、個人的に気になったのがポーランドの代表ドナタン&クレオ。タイトルは『My Słowianie - We Are Slavic(私たちはスラブ人)』、シンガーのクレオおよび一緒に登場する女性たちは胸元を強調した現代風の伝統衣装で、楽曲もエスニックな風味を効かせたものである。

これを見てすぐに思いだしたのが数年前からドイツでも流行っているディルンドルという女性用の伝統衣装。スカート丈が短く、胸元を強調した現代的なデザインになっている。そして、興味深いのは『ディルンドル・ロック』とか『ディルンドル・パンク』と言う形でファッションや音楽が展開されていることだ。筆者が住むエアランゲン市のビール祭りに登場するバンドでも、昨年はロック風に黒のレザーをあしらったディルンドルを着た女性シンガーが会場を盛り上げていた。

■中欧・東欧らしさ
このポップカルチャー上に復活したエスニック要素を見ていると、大げさかもしれないが、『ああ、やっぱり中欧・東欧だなあ』と思うのだ。というのも、ドイツ(中欧)、東欧、バルカン半島の国々は、フランスのように市民革命で国家ができたわけではなく、むしろ民族の拘泥のなかでできてきたからだ。

東欧が混乱するときは『民族』がどこかでからんでいることが多いし、ドイツもなんだかんだいっても『民族』が好きだ。外国系市民の社会的統合というテーマひとつとっても、ドイツの場合、民族へのこだわりが強さが何かしら影響しているように思える。逆にフランスはドイツに比べるとこういう問題に対してあっさりしている(フランスの実情はよく知らないのであくまでも印象だが)。

もっともポップカルチャー上に現れたエスニック要素は、一時期の流行として消費されるだけなのかもしれない。ただ『My Słowianie - We Are Slavic(私たちはスラブ人)』の歌詞では血とかDNAを根拠にスラブ人は美しいといったような内容が並んでいるようだ。ドイツのディルンドル・ロックの類に比べると、けっこう過激な印象がある。突飛な想像力を働かせると、将来東欧でややこしいことが起こったとき、ポンとこの楽曲がはまってシンボル的に使われるようなことがおこるかもしれない。(了)