Interlocal Journal はドイツ・エアランゲン在住のジャーナリスト・高松平藏が主宰するウエブサイトです。
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合宿型プログラム『インターローカル スクール』

ドイツの『ローカル』で思考を鍛え、日本の『ローカル』で活躍


2013年12月13日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



ドイツに話を聞きにきていただき、検証・議論を行う合宿型のスクーリングプログラム『エアランゲン インターローカル スクール』をこのほど行なった。書きとどめておきたい。


エアランゲンという具体的な街に迫りながら、すすめていくスクーリングプログラム。
セミナーを核に検証・議論・発表をセットにしている。

■役割は社会の議論の活発化
一時帰国するたびに私はドイツに関する講演を行なっている。講演に聞きにくださる方はドイツの先進事例に期待されていることが多い。確かに他の国や地域の事例を知ることは自分たちの取り組みの評価につながったり、思わぬインスピレーションを得ることもあるだろう。しかし、より重要だと考えるのは、事例がなぜ成り立っているのか、なぜ出来上がったかというバックグラウンドの理解である。それらは現地の政治、社会、歴史、風土、メンタリティ、価値観など極めて深く広範囲にわたる。

ジャーナリストの役割は『権力のチェック』などいくつかあるが、いずれも『社会』に対して専門職として取材成果を提供することだと考える。私のような立場でいえば、取材成果を記事や講演でお届けすることで社会の中の議論を活発化する働きがあると位置づけている。

その考えからいえば、先進事例を紹介するだけでもある程度役割は果たしているが、その背景を理解していただくことで、より深い議論につながると確信している。というのも、例えば環境問題についていえば、その捉え方や議論の背景が日本とはかなり異なる。これが少しでもわかれば、環境問題の捉え方そのものをより幅広く、より根源的なところから見直せるきっかけになる可能性があるからだ。

■思考と感性のフル稼働
ところが、自分の能力を棚に上げていえば、記事や講演を通じて伝えることの難しさを毎回痛感している。大げさにいえば、象を見たことのない人に象の説明をしているようなものだからだ。だから、数年前から私の記事などに興味を持ってくださっている方に、エアランゲンでの集中セミナープログラムの腹案を話すこともあった。

プログラムは私のセミナーを核に検証と議論・発表で構成したものだ。話をきいてもらって、実際を見聞し、さらに参加者の皆さんの理解が進むように議論し、最後は参加者全員にプレゼンテーションをしてもらうというもの。

イメージとしては大学などのサマー・スクールのような感じだが、ドイツ・エアランゲンという『ローカル』に来ていただき、ここで、たっぷり思考の枠を広げ、思考を躍動させる。感性のアンテナも目一杯広げていただく。そしてその成果をプレゼンでもって言語化してもらう。これによって自分の『ローカル』での活躍に活かしていただければというのが私のアイデアだった。

ここにきて、環境カウンセラーの方々5人が今月はじめ来られた。ドイツ社会の特徴や構造といったテーマのセミナーを長時間、みっちり受けていただき、街歩きや市内の機関などを訪ねて検証。最後は皆さんにプレゼンテーションをしていただいた。

■インターローカル スクールの今日的価値
今日、ネットを少し検索すると、ドイツの最新事情は日本語でもけっこう読める。環境問題などの分野ともなると熱心に情報発信していらっしゃる方もかなりいるのでなおさらだ。

そんな恵まれた時代にわれわれはいるわけだが、だからこそ、こういう合宿型のスクーリングプログラムに価値があると考えている。これによってネットで得られるドイツの情報を、より深い理解をもって読めるのではないか。

プログラムを作った側として、反省点もある。またセミナーの内容も取材・調査・観察や文献ベースで得たことをもとにできるだけのことを展開しているが、まだまだ不足しているところがある。それにしても、セミナーの時間以外にも移動中や食事中も質問が参加者の皆さんからとんできて、議論も始まる。これがよかった。こうしたことを通して思考も感性もフル稼働につながっていたと思う。

帰国されたあと、いただいたメールを読むと、刺激になったとのことで、私も少しほっとしている。中にはエアランゲン再訪も早々と考えていらっしゃる方もいるようだ。(了)