Interlocal Journal はドイツ・エアランゲン在住のジャーナリスト・高松平藏が主宰するウエブサイトです。


行ってみたい、新潟の『燕三条 工場の祭典』

オープンドア・イベントと都市づくり


2013年9月13日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



新潟県で地域イベント『工場の祭典』がこの秋に行われる。このイベント、都市づくりそのものに強い影響を与えるポテンシャルがあるように思う。


■ドイツの常套手法
金物や洋食器などのものづくりで知られる町、新潟・燕三条の工場が一斉に門戸を開くイベント『工場の祭典』が10月に行われる。以前より越後三条鍛冶まつりというかたちで行なわれていたがそれをリニューアルしたかたちらしい。実はこのイベント、私は行ってみたくてしようがないのだ。
 
その理由はひとつ。実はドイツの取り組みが参考にされたらしいからだ。
拙著『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(学芸出版)などでもふれているのだが、ドイツで『オープンドア』という催しがよく行われる。市役所、企業、教会、病院、劇場、消防署など様々な組織が行うのだが、要は施設のドアを開け、自由に見てもらおうというもの。主催する側はパネルを用意したり、飲食ができるようにしたり、施設内ツアーなどアイデアを出して、訪問者を迎える。
 
そういう取り組みをパッケージ化したといえる例が、エアランゲン市と隣接するニュルンベルク市、フュルト市で行われる『科学の夜長』というオープンドア・イベントだ。
 
このイベントは2年毎に行われるのだが、大学、研究所、工場、企業などなど『科学』というキーワードでカバーされる施設や機関が一斉に門戸を開く。各『会場』になる施設の入り口はシンボルカラーの緑のライティングがほどこされ、さしずめ町そのものが万博のような雰囲気になる。 

燕三条駅にて撮影
■文化政策としての本質
オープンドア・イベントには様々な価値がある。まずは拠点地の人々に対する説明責任、コミュニケーション、マーケティングなどなど。ドアを開いた側にも、ドアをくぐった人にも刺激や充足感があるはずだ。
 
さらに『科学の夜長』のように町そのものを万博会場化する場合、地域資源の可視化、地域アイデンティティの醸成、地域のイメージづくりなど地域全体への様々な効果が考えられる。
 
つまり、地域オープンドア・イベントは域内をあるテーマにそって全体像を浮き彫りにする文化的手法だ。地域の資源であるにもかかわらず、『日常』になりすぎている各々の小さな営みを思い切りクールに、創造的に、可視化する。
 
これを自治体が政策として行うのであれば、まさに文化政策だ。その際、経済、都市計画、交通、警察、大学などの関係部所など関係するところには必ず協力を仰ぐ。またイベントを実現する専門家(文化プロデューサーに加え、デザイナーなどのクリエイター)も地域に必ずいるはずだ。自治体は意図を明確にして、地域の専門家たちに目一杯創造性を発揮してもらうとよい。
 
さらに付け加えるとすれば、ドキュメンテーションをしっかり作成することだろう。こういうイベントを継続していくと、必ずその時々の世界・日本の状況に影響を受けながら変化がある。地域オープンドアが『点』を『面』にして可視化する手法だとすると、毎回ドキュメンテーションをきちんと作成することは更に時間軸を加えていくことになる。これで地域を立体的に捉えることができるだろう。 

燕三条駅に展示されている同地域の刃物
■都市の捉え方をかえる
日独の都市づくりを比べたときに、決定的に、そして基本的な違いは、都市そのものをどう捉えるかということだと理解している。
 
どのように異なるかといえば、日本に比べてドイツは鳥瞰的に都市を捉える度合いが強い。たとえば美しい景観を作ろうという発想も全体像をみるからこそ出てくる発想であり、今の日本の都市づくりで鳥瞰的に捉えてみる価値はおおいにあると考えている。地域オープンドア・イベントはそういう捉え方を強くするとっかかりになるのではないだろうか。
 
実はこれまでも『あのオープンドアってのは面白そうですね』と興味を持っていただいたり、私のほうから『ドイツにこういうのがあって』と提案したこともあった。しかし様々な理由から実現には至らなかった。
 
ここにきて今回、開催地である三条市の市長、國定勇人さんは拙著で書いたオープンドア・イベントのことを面白がってくださった。これが『工場の祭典』の伏線にもなったようだ。そのせいか、『工場の祭典』にあわせて、市役所のオープンドアも開催されるようだ
 
この夏、私は日本に滞在し、同市に講演で2回ほどお邪魔した。少子高齢化という条件を睨みながら、これからどのような都市づくりをすべきか、本気で取り組もうとしているのが垣間見えた。だからこそ、『工場の祭典』を見てみたいのだ。うーん、もう少し日本にいたほうがよかったかな?(了)
マンホールの蓋は地域ごとにユニークなデザインのものが作られている。
三条市の蓋はなかなかかっこいい。ただ一歩踏み込むと、
マンホールの蓋という細部は綺麗に作れるが、景観全般はどうか、
という日本の都市の特徴が浮かび上がってくるような気もする。

工場の祭典(2013年2-6日/ 新潟県三条市・燕市全域)