生還記(19) 


 

2006年5月10日水曜日
 昨日からエレベータを使って院内を自由に歩くことを許されたので、朝、3階まで行ってみた。ここまではプログラムの一環なので歩いて階段を昇った。JRの線路や国道、新緑の山々が見える景色のいいところで、もう少し元気になったらこの通路を渡って前にいた救急病棟にまで行ってみたい。
 5階にあるにじのこ学級も見てきた。ここは病院に入院している子どもたちが勉強しているところである。後で3階に再び行った時に、小さな子どもが母親に連れられて歩いていた。よく見たらその子は点滴をしていて、母親が点滴台を引っ張っていた。この子がにじの子学級に通っているのかはわからなかったが、闘病している小さな子どもを見ると胸にあついものがこみあげてくる。
 前も書いたが、心のコントロールはできるのに、まだ身体をうまくコントロールできない。昨日は、先に書いたくらいしか歩いてないのに、疲れてしまった。5時頃に準夜勤の看護師さんがvitalを取りにこられる。「お変わりありませんか?」とたずねられたので、たしかに大きな変わりはないので「はい」と答えたら、風のようにすばやく帰っていってしまった。また僕が知らない間に、今度はvitalは日に一度でいいことになってしまったようだ。もしもこの時、「どうですか?」とたずねられていたら、身体の疲れのことをいえたかもしれないし、vitalを計ってもらったら異常が出ていたかもしれない。
 夜になって、いよいよ疲れてしまって、ナースコールを押した。朝、病院をめぐっているうちにテレフォンカードの販売機を見つけ、夜、公衆電話に電話をかけに行った。しかし、結局、その目的は達成できなくてがっかりして部屋に戻ると、一気に疲れが出てしまったようだ。ナースコールを押すという行為自体にも緊張したのか、詰所のモニターは不整脈は出ていなかったが、脈拍は120を示していたので、中西さんと杉山さんがかけつけてこられた。それだけで安心してしまったが、血圧は150、体温も7.8度まで上がっていて、氷枕をあてて休むことにした。
 僕はこの日、気が弱っていて、こんなふうに今は元気そうに見えても、本当は医師がまだ僕にいっていないことがあるのではないか、そういえば回診の時、僕が疲れて横になっていたら「どうした? 疲れてるのか?」と顔が曇ったし、「いきなり写真を見せたら恐いから、木曜日に説明しましょう」という部屋を出ていき際の先生の言葉を思い出したり、看護師さんたちの対応に不満があったり、そんなことが重なっていたのか、夜遅く再び様子を見にこられた中西さん、杉山さんの前で感情的に取り乱してしまった。中西さんは日勤を終え、非番の時間だったのに僕の話を聞いてくださった。いつもは僕が話を聞くほうなので逆の立場は慣れない。おかげで穏やかな気持ちになり、早めに眠ることができ、朝まで一度も目を覚ますことなく眠れた。
 

日記目次に戻る