生還記(18) 


 

2006年5月9日火曜日
 昨夜はうまく寝つけなかった。抗アレルギー剤を飲む時間をもう少し後にずらしてみようか。一番治りの遅い足が久しぶりに夜かゆくなってよく眠れなかった。何度も準夜勤の杉山さんが見にこられた。「大丈夫?」「まだ…薬(レンドルミン)はもう飲んだんだけど」。深夜に懐中電灯で離れたところから僕の顔を照らした看護師さんがいるのは覚えている。実際には眠れていると思うのだが、寝にくいと思った時間のことだけが記憶に残っている。朝は、6時半頃に田口さんが薬を持ってこられる。朝から田口さんは元気いっぱいだ。昨日、緩下剤をお願いしたのだが、要らないかもしれない。固いと血圧が上がり、心臓に負担がかかるので、こんなことにも注意しないといけない。
 昨日は、9ステージをクリア。中西さんがつきそってくださったので不安になることはないのに、久しぶりに階段を上り下りすることに緊張してしまった。足腰の筋肉がすっかり衰えている。「平地歩行」(岡田先生)の時とは明らかに違う筋肉を使うのがわかる。部屋に戻ったらちょっとした運動をした後のような気分だった。10日に10ステージに挑戦、昨日も書いたが、15日に心臓カテーテルによる検査がある。先の見通しがあるのはありがたい。検査は退院前の一つの大きな山である。
 三年目の夏に急性胃腸炎で倒れたのだった。その時、肝臓が悪いことがわかり、京都市立病院でかなり徹底して原因を探したが結局わからなかった。この時の経緯は『不幸の心理 幸福の哲学』にも書いた。岡田医師にはまだ直接たずねてないのだが、肝臓関係の数値は標準より高いが、ひどく高いわけではなく、入院してからよくなっている、と松岡看護師に教えてもらった。
 昼から手と腕を見ていたら、静脈が浮いてきた。アトピーがひどくて皮膚が硬化していたのだが、薬が功を奏してきたようである。
 こちら側の世界に僕を引き留めた未練の一つである、『アドラーを読む』の再校を、昨日、休み休み、少しずつ作業をしてやり遂げた。再校には編集者の修正案が付せられていて、それに全部目を通して必要なものは改めた。しかし、パワーがなくて、一から全部読み直してチェックすることはできなかった。入院して以来、長らくコンピュータを使えず連絡をとることができないので、本のことが気になって仕方がなかった。もっと早い時期だったら校正紙が送られてきても何もできなかっただろう。これは僕だけのリハビリの重要なステージである。
 朝食前に階段昇りに挑戦。三階まで行って、この病棟と前にいた病棟を繋ぐ通路のところまで行って見た。見晴らしがよくて気持ちがよかった。部屋に戻っても昨日のように疲れることはなかった。昨日、リハビリにつきそってくださった中西看護師が今日の僕の担当なので、この話をすると「なんでやろう」と不思議がられる。「一度できたら自信がつくのです。昨日は緊張してたし。あさっての10ステージは緊張しないでしょう」。「あさっても私やし…」それなら緊張する。
 こちらはいい天気。もう今日は何もないので本のカバー折り返しに入れるコピーを考えることにしよう。 

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