生還記(15) 


 

2006年5月6日土曜日
 11時に寝て、6時半に起きる。vitalを計りに杉山さんが。深夜勤の看護師さんがこられることになっている。血圧は110/70。脈拍は60。帰ってから眠れたか、たずねたら「昨日は早く帰れてそれからお風呂はいって、4時間くらい寝たし、身体はわりと楽」と。別の看護師さんのことだが、目の下に隈ができているのを見てしまったことがある。激務であることが察することができる。「ノートが〔ベッドから〕落ちてたので拾っといたよ」。寝ている間にもぞもぞ動いたり、足でテーブルを蹴ったりしているようだ。寝る時は左側にだけ柵をしている。レンドルミンを飲むと、深く眠れるが、抑制がきかないところがあるようだ。
 朝、清拭。今日は足湯はなかった。清拭についていうと、人によってちょっとした配慮の仕方が違っている。僕としては、裸になるわけだから、部屋のカーテンを閉めてほしいし、おしも(って何ともいえない響きがある。みんなこういういい方をする)を拭く時は、看護師さんに部屋の中にあるカーテンの向こうに行ってほしい。もちろん、じっと見ている人はないのだが。リハビリの次のステージになれば、シャワーを使えるようになるから、気を遣わなくてすむのだが、そこに至るまでの日数の方が長いので、こんな配慮してもらえるとずいぶんと気が楽になる。絶対安静の頃はおむつを外されて、洗われていたことは前にも書いた。恥ずかしいと思うような余裕もなかったが、清拭の際、導尿の管に乱暴に触られると(触れるということだろうが)と、痛くてかなわなかった。この痛みは女性の看護師にはわからないのかもしれない。清拭がすみ、vitalは「また後で」といって出ていかれた看護師さんはいつになってもこられない。とうとう食事の時間になり、お膳を運んでこられた市川看護師にたずねたら「vitalは日勤の間に一回でいいことになってるんです。でも、『後』が長いですねえ」と。日勤の間に一回になったことは僕は知らなかった。気にしない人は気にしないのだろうが、僕は気にしてしまう。元気になってきたら、僕は「待つ」という感覚を思い出した。
「今日は清拭何時にしよう?」
 9時くらいにたずねにこられる。
「僕は何時でもいいですよ。時間はいくらでもあるから
「じゃ、10時半でいい?」
「待ってます」 身体の向きを変えることも許されなかった時には、時間が止まったようだった。未来がくることを信じられないと、待つことはできない。
 中西さんは清拭の際、僕が脱いだ浴衣やパジャマを必ずきちんとたたまれる。

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