系列位置効果

 

 

 

 

系列位置効果


 

 

短期記憶と長期記憶の系列位置効果について自由再生での遅延再生と直後再生の再生率で検討した。再生する際直後条件と挿入課題がある遅延条件の二つの条件における課題の再生率を実験参加者で測定した。直後再生条件では初頭効果も新近効果も表れ遅延再生条件では初頭効果のみ表れた。直後再生条件と遅延再生条件で新近効果の差があったことから短期記憶貯蔵庫を起因しているという仮説が支持された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


問題

 

 系列位置効果とは、刺激の系列位置によって自由再生の成績が影響を受けることであり、入力順の最後の項目が最もよく再生させる新近効果、次に最初の項目が再生される初頭効果、そして真ん中の項目が再生が最も悪いことである。新近効果は、入力と出力の間に遅延課題を挿入すると打ち消される(Postman&Philips,1965)ことがわかっている。また、項目の提示時間を長くすると初頭効果は増加するが、新近効果は影響を受けない(Glanzer&Cunitz,1966)

 このことから、初頭効果と新近効果には異なる機能が影響していると考えられる。記憶には記銘 保持 想起という3つの過程がある。中でも感覚記憶 短期記憶 長期記憶という3つのシステムがあると言われている。Atkinson&Shiffrin,(1968)は、短期記憶に関わる貯蔵庫として短期記憶貯蔵庫を、長期記憶に関わる貯蔵庫として長期記憶貯蔵庫を想定し、二重貯蔵モデルを提唱した。本研究では、二重貯蔵モデルから自由再生での系列位置効果を検討する。

 二重貯蔵モデルでは、感覚器官を通じて入ってきた情報のうち、注意が向けられたものが短期記憶貯蔵庫に入るとされている。但し、短期記憶貯蔵庫の容量には限界があり、一度に7±2チャンクしか貯蔵できず、保持時間も数十秒程度である。このうち積極的にリハーサルされたものは長期貯蔵庫に移り、半永久的に貯蔵される。

 系列位置効果のうち、新近効果は入力と出力の間に遅延課題を挿入すると打ち消される(Postman&Philips,1965)ことから、短期記憶を反映したものだと考えられる。初頭効果は項目の呈示時間を長くすると増加することから(Glanzer&Cunitz,1966)長期記憶貯蔵庫に情報を送るリハーサルの容易さが影響していると考えられる。

 そこで、自由再生課題について、記銘直後に再生する直後再生条件と、記銘課題の後挿入課題を行ってから再生する遅延再生条件を設定し、両条件の再生率を測定する。条件別に系列位置の項目の再生率を系列位置曲線で表し、系列位置効果への短期記憶と長期記憶の影響について検討する。

本実験の仮説

 初頭効果が長期記憶貯蔵庫を反映したものであれば直後再生条件と遅延再生条件のどちらでも表れるだろう。新近効果が短期記憶貯蔵庫に起因するものがあれば、直後再生条件では表れるが遅延再生条件では見られないだろう。

 

 

方法

 

実験参加者

女子大学生19名が参加した。

器具

パソコン、プロジェクター、ストップウォッチ、実験冊子を用いた。

刺激

小川・稲村(1974)から、有意味度が3.005.00の名詞を72語抽出し、12語からなるリストを6セット作成した。また、遅延再生条件の挿入課題として2桁同士の足し算を用いた。

手続き

実験冊子として、再生用紙と、遅延再生用に挿入課題用紙を閉じたものを配布した。記銘リストは、プロジェクタを用いてスクリーン上に、注視点(※)を呈示後1秒後に、1語につき2秒のペースで合計12語呈示した。リスト終了後、直後再生条件では、90秒間の自由再生を行った。いずれも、実験者の合図で行った。自由再生課題は6試行行い、各試行の間隔は30秒とした。直後再生条件と遅延再生条件を交互に行った。教示は、以下の通りである。直後再生条件では、「これからスクリーン上に※印が出た後に、単語1語ずつ合計12個出てきますので、声には出さないで読んで覚えてください。12個で終わったら合図として※印が出ます。その後、私が「はい」と言ったら、先ほど見て思い出した順番に単語を用紙に書いていってください。」

遅延再生条件では、「これからスクリーン上に※印が出た後に、単語1語ずつ合計12個出てきますので、声には出さないで読んで覚えてください。12個で終わったら合図として※印が出ます。その後、私が「はい」と言ったら、計算課題を始めてください。しばらくして、私がもう一度「はい」と言ったら、計算をやめて、次のページに先ほど見て思い出した順番に単語を用紙に書いていってください。」

 

結果

 

 直後再生条件、遅延再生条件ごとに集計を行った。再生できた語を各系列位置ごとに集計して、再生率を求め、平均再生率を算出した。また、横軸に系列位置、縦軸に平均再生率をとり、系列位置曲線を書いた。(図1)

図1 直後および遅延の各再生条件の系列位置曲線

 

 直後再生条件では最初4系列目までは下がっていき8系列目までそのまま増減がないがそれ以降上がっていく。ただし11系列目は10系列目と12系列目より低くなっている。遅延再生条件では4系列目までは下がっていき5系列目が少し高くなるが6系列目で一番低くなり7系列目から12系列目まであまり差がないようになっている。直後再生条件と遅延再生条件を比べると1系列目から2系列目まで下がるのは同じだが11系列目から12系列目が違う。直後再生条件では再生率が上がるのに対して遅延再生条件では下がっている。つまり新近効果の直後再生条件と遅延再生条件の差が大きくなっている。

 また平均再生率を利用して、最初の系列と真ん中の系列、最後の系列を真ん中の系列を比べる。最初の系列は第1系列で最後の系列は第12系列である。真ん中の系列は第6系列と第7系列の平均値である。(表1)

 

最初の系列

真ん中の系列

最後の系列

直後再生条件

0.56

0.37

0.49

遅延再生条件

0.47

0.17

0.16

表1 最初の系列、最後の系列の平均再生率と真ん中の系列の再生率の平均値

 

 直後再生条件でも遅延再生条件でも最初の系列の再生列は約半分であるが、真ん中の再生率はどちらの条件も低くなっている。最後の系列では直後再生条件が最初の系列と同程度の再生率に対し遅延再生条件は真ん中の系列より下がっていて一番低くなっている。最後の系列が一番差がある。

 

考察

 

 直後再生条件では第1系列から下がっていき第12系列までにまた上がっていた。最初の系列と最後の系列では低いとは言えない。真ん中の系列は再生率が低いということがわかった。遅延再生条件では第1系列から下がっていき第5系列が高くなりそれ以降第12系列まで低くなった。最初の系列の方が高く最後の系列が低くなった。最初の系列はどちらも次の系列に向かって下がっていったので初頭効果はどちらの条件にも表れている。直後再生条件は1系列目と12系列目が再生率が低いとは言えないので新近効果が現れたが遅延再生条件では1系列目より12系列目の方が再生率は低くなっているので新近効果は直後再生条件のみに表れた。つまり初頭効果が長期記憶貯蔵庫を反映したものであれば直後再生条件と遅延再生条件のどちらでも表れるだろう。という仮説は棄却され新近効果が短期記憶貯蔵庫に起因するものがあれば、直後再生条件では表れるが遅延再生条件では見られないだろう。という仮説が支持された。

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