『貧困ビジネス』ゼロゼロ物件の怖さ:林田力

『貧困ビジネス』ゼロゼロ物件の怖さ

本書(門倉貴史『貧困ビジネス』幻冬舎新書、2009年)は、急増する貧困層を食い物にして儲ける貧困ビジネスを取り上げた新書である。ゼロゼロ物件、リセット屋、偽装請負、人身売買、臓器売買など様々な貧困ビジネスを紹介する。モラルを失った業者の貧困ビジネスは日本経済の末期症状を示している。
中でもゼロゼロ物件の欺瞞には恐怖を覚えた。ゼロゼロ物件は「敷金・礼金なし」で貧困層を誘い込み、僅か数日の家賃滞納で法外な違約金を請求する。一見すると敷金や礼金がないために消費者に有利に見える分だけ悪質である。しかも他の貧困ビジネスと比べて、貧困層以外の幅広い層に応用可能なために有害性が高い。
本書は紹介が中心で、貧困ビジネスを撲滅する政策や被害者の救済策についての記述は薄い。ゼロゼロ物件業者への提訴や宅建業法違反の告発など貧困ビジネスに対する消費者の権利回復の闘いが全国各地で起きている。それらの運動の紹介も今後は期待する。
(林田力)
http://www.hayariki.net/poor.html

『ハウジング・プア』住まいの貧困を直視

本書(稲葉剛『ハウジング・プア―住まいの貧困と向きあう』人文社会科学書流通センター、2009年)は、住まいの貧困問題を説明し、解決策を提言する書籍である。格差社会化した日本ではホームレスやネットカフェ難民、ゼロゼロ物件詐欺、追い出し屋など住まいにまつわる様々な問題が発生している。別々の問題として捉えられがちな諸問題を住まいの貧困(ハウジング・プアHousing Poor)という統一的な視点で理解する点が本書の大きな特徴になっている。(林田力)

稲葉剛が住まいと暮らしの復興を語る

ゼロゼロ物件詐欺など住まいの貧困問題と戦ってきた稲葉剛氏が、東日本大震災から住まいと暮らしの復興を語る講演会が開催される。国連・憲法問題研究会(東京都千代田区富士見)の講演会「住まいと暮らしの「復興」を求めて~被災地と私たちをつなぐ視点から~」で、9月2日18時半から文京シビックセンター3階会議室ABで開催される。
稲葉氏はNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」代表理事であり、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人である。埼玉大学非常勤講師。著書に『ハウジングプア』(山吹書店)、『貧困のリアル』(共著、飛鳥新社)がある。
講演会の案内文を以下に転載する。
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 東日本大震災から半年になろうとしているが、未だに数万人が避難先での不自由な生活を強いられています。震災・原発事故によって住まい、生活の糧などを失った被災者への生活支援、居住支援は不十分なままです。「お盆までに避難所暮らしを解消」という政府の公約は実行できず、被災地域・被災者の実情を無視して建てられた仮設住宅の中には、空き家が出ている状況です。さらに、仮設に入居した被災者が、現金を得るために備え付けの家電を売るケースまで出ています。また、被災地での自殺の増加が報じられるなど、地震・津波で一命を取り留めた被災者の生存・生活が脅かされる事態が続いています。
 これらの問題の多くは震災前からの日本の社会保障制度、住宅政策の“貧困”が原因です。阪神大震災以来、何度も問題になってきた産業復興・経済成長優先の復興のあり方を、人間中心、被災者の生活再建優先の「復興」政策に変えていかなければなりません。これまでのような国が上から「自助努力」を強制するあり様では“被災者主権”の「復興」は遠のくばかりです。
 住宅・居住支援を求めて活動する稲葉剛さんに講演してもらいます。
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