原発震災『夢』の現実味

黒澤明の1990年の作品『夢』、これはオムニバス作品ですが、その中に『赤富士』という一編があります。これは原子力発電所が爆発するという夢の話です.

富士山があって原発があるというと,これは浜岡原発でしょうか.ちょうど浜岡6号機の話が持ち上がっているところですが,6基が次々と爆発するという事態は,原発震災以外では考えられないでしょう.

これは夢の話ですが,放射性物質に色を付けるということ以外は,現実に起こり得る話です.

~登場人物~
私:寺尾聰
子供を抱いた女:根岸季衣
電力会社の男:井川比佐志

私:     何があったんですか?何があったんですか?

噴火したのか、富士山が。大変だ!

女:     もっと大変だよ、あんた知らないの?発電所が爆発したんだよ、原子力の!

男:     あの発電所の原子炉は6つあるんだ。それが次々と爆発しているんだ。狭い日本だ、逃げ場所は無いよ。

女:     そんなことわかってるよ。逃げたってしょうがない。でも逃げなきゃしょうがないじゃないか。他にどうしようもないじゃないか。

(場面が変わり、海。断崖)

女:     これまでだよ。

私:     でも。どうしたんだろ、あの大勢の人たちはどこに行ったんだ?どこへにげたんだ?

男:     みんなこの海の底さ。あれはイルカだよ。イルカも逃げてるのさ。

女:     イルカはいいね。泳げるからね。

男:     ふん、どっちみち同じことさ。放射能に追いつかれるのは時間の問題だよ。

男:     来たよ。あの赤いのはプルトニウム239。あれを吸い込むと1千万分の1グラムでもガンになる。黄色いのはストロンチウム90。あれが体の中にはいると骨髄にたまり白血病になる。紫色のはセシウム137。生殖腺に集まり、遺伝子が突然変異を起こす。つまりどんな子供が生まれるか分からない。

しかしまったく、人間はアホだ。放射能は目に見えないから危険だと言って、放射性物質の着色技術を開発したってどうにもならない。知らずに殺されるか、知ってて殺されるか。それだけだ。死神に名刺もらったってどうしようもない。

じゃあお先に。

私:     君、待ちたまえ。放射能で即死することは無いって言うじゃないか。なんとか……。

男:     何ともならないよ。ぐじぐじ殺されるより、ひと思いに死んだ方がいいよ。

女:     そりゃ大人は十分生きたから死んでもいいよ。でも子供たちはまだいくらも生きちゃいないんだよ。

男:     放射能に冒されて死ぬのを待っているなんて、生きてる事にはならないよ。

女:     でもね、原発は安全だ、危険なのは操作のミスで原発そのものに危険はない、ぜったいミスは犯さないから、問題はないってぬかしたヤツは、許せない!あいつらみんな縛り首にしなくっちゃ。死んだって死にきれないよ!

男:    大丈夫、それは放射能がちゃんとやってくれますよ。すみません……。ぼくもその縛り首の仲間の一人でした。

私と女が迫り来る放射能を見ているうちに、背後で電力会社の男は海に身を投げる。

そして必死に放射能を追い払おうとする私……。

Comments