はじめに



平成23年10月から一般労働者派遣事業と職業紹介事業の
新規許可・更新の手続が見直されました。
これにより公認会計士による監査証明が必要になるケースがでてきました。

こちらのサイトで、一般労働者派遣事業の監査証明についてわかりやすく解説していきます。
当事務所では、監査証明業務をはじめとした会計・経営支援業務を通じて、 
労働者派遣事業者をサポートしておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。 




 
<目次>

 1. 制度の概要




1.  制度の概要

労働者派遣法において、一般労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならないものとされています(労働者派遣法5条)。
この際、申請者が当該事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものである場合に、厚生労働大臣がその許可をする旨が法律で規定されています(同法7条)。 

事業を的確に遂行するに足る能力を有するかどうかの要件については、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の中で定められており、
具体的には、一般労働者派遣事業の新規許可及び許可の有効期間の更新を行うにあたって、下記の要件を満たす必要があります。 

① 資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という)が
    2,000万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。

② ①の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。

③ 事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が
    一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること

しかし、上記3つの要件のうち、1つでも満たされない場合には救済的な措置が設けられており、従前において認められていた手続では、
ⅰ)市場性のある資産の再販売価格の評価額の証明、ⅱ)増資の証明またはⅲ)預金等の残高証明書を提出することによって、 
当該事業の新規許可及び許可の有効期間の更新が認められました。 

しかし、平成23年10月1日以後においては、ⅰ)~ⅲ)の手続が廃止されることになり、今後、新規許可または有効期間の更新を予定する場合、 
これに代替する手続として、許可要件を満たした中間又は月次の貸借対照表及び損益計算書に公認会計士による監査証明を添付して 
審査を受けるという手続が行われることになりました。ただし、有効期間の更新に限り、当面の間、監査証明のほか、 
公認会計士による「合意された手続実施結果報告書」による取扱いも可能とされています。

2.監査証明業務とAUP業務の違い

平成24年1月20日に、日本公認会計士協会から「一般労働者派遣事業等の許可審査に係る中間又は月次計算書に対して
公認会計士等が行う監査及び合意された手続業務に関する研究報告(監査・保証実務委員会研究報告24号)」が公表されました。
これに伴い、一般労働者派遣事業を行う会社について公認会計士が監査手続を実施するにあたって留意事項などが明確になりました。

ここでは、新規許可の際に実施される監査証明業務と
主に更新の際に実施される合意された手続業務(以下、AUP業務)の概要について解説していきたいと思います。

(参考) 公認会計士等が行う監査及び合意された手続業務に関する研究報告

監査証明業務とAUP業務は性質の異なるものです。 
まず、監査証明とは会社が作成した財務諸表が適切なものであることについて公認会計士が保証することをいいます。 
これに対しAUP業務は、財務諸表そのものの適正性について公認会計士が保証するものではありません。 

具体的には、基準資産要件や現金預金要件及び負債比率要件に関連する勘定科目の金額が、
帳簿記録などの裏付けとなる証拠に基づいて計上されたものであるかどうかについてのみ検証することになります。 
簡潔に言うならば、監査証明は貸借対照表ならびに損益計算書に計上されているすべての勘定科目について 
公認会計士が検証することになりますが、AUP業務の場合は監査証明業務よりも公認会計士の手続実施負担が少ないことになります。 
したがって、一般的にはAUP業務のほうが監査業務よりも報酬が少なくなるものと考えられます。

3.一般労働者派遣事業にかかるAUP業務の特徴

一般労働者派遣事業にかかるAUP業務の一番の特徴は、企業の月次決算書に対して手続が実施される点にあります。
私の記憶する限り、月次決算書の数字に対して何らかの意見を表明する業務は、この一般労働者派遣事業等の許可申請に係る手続以外にありません。 
研究報告にも記載されていますが、年度決算書について監査証明などが求められていない理由は、 
法人税の税務申告書に添付される財務諸表には一定の信頼性があるものと解釈されています。 
通常、月次決算を実施する場合においては、貸倒引当金の計上や、減価償却費の計上といった決算手続等が行わない会社も多くあると思われますが
税務申告書に添付される年度決算書に監査証明が必要とされない趣旨を考えると 
AUP業務を公認会計士に依頼するにあたって、このような決算手続も月次決算において実施する必要性が生じてくるでしょう。

4.AUP手続の実施概要について

一般労働者派遣事業にかかるAUP業務については、その手続について業務依頼者である事業主との合意が必要になります。 
しかし、公認会計士が実施する手続については、一般的に研究報告に基づいて、以下の手続が実施されるものと判断されます。 

①期首残高の検証

研究報告では、手続実施の出発点として、最近の年度決算書の貸借対照表及び損益計算書に計上された勘定科目の金額について、 
帳簿記録や税務申告資料と照合する手続を実施します。

②期中取引の検証

年度決算書日後、検証対象となる月次決算書までの期間について、資産科目については増加、負債科目については減少に着眼して、
基準資産に重要な影響を及ぼす勘定科目について、証憑との突合せを行います。

③会計方針の検証

年度決算書において適用された会計方針を聴取し、当該会計方針が継続して適用されているかどうかについて留意し、
質問などを行います。 

5.AUP手続における検証対象科目の決定

一般的には、資産及び負債の中から基準資産または負債比率の算定に重要な影響を及ぼす科目を選択し、
公認会計士が手続を実施することになります。 

なお、研究報告では、一般的な労働者派遣事業を営む会社において、 
下記の勘定科目が重要になると考えられるものと具体的に記載されています。


(資産科目)

現金預金、売掛金、未収入金、商品、土地、建物、ソフトウェア、貸付金 

(負債科目)

未払費用、前受金、借入金


また、現金預金については、手続実施結果報告書の記載例に、銀行が発行する残高証明書と帳簿記録との突合を
実施する手続が掲載されており、重要な勘定科目として位置づけられています。
場合によっては、公認会計士が金融機関に対して直接残高確認書を送付する手続が行われる可能性もあります。 
月次決算書の現金預金の金額と、銀行の残高証明書の金額が一致していない場合は、AUP業務の工数も増加し、 
コストの増える可能性があるので、事前にきちんと決算手続を行う必要があるでしょう。 

6.監査人の探し方

はっきり申し上げますと、一般労働者派遣事業の登録・更新の際に
監査証明が求められることを知っている会計士は、非常に少ないです。
「知り合いの公認会計士に相談したのだけれども、制度自体を把握していない」というのは日常茶飯事です。
そのため、いろいろと手続に不備が生じ、監査を依頼した会社様と会計士(監査法人)との間で
トラブルが発生することも少なくないようです。

そんなトラブルを未然に回避するためには、どういうことに留意したらよいのか
いくつか留意点をあげてみましたので、ご参考にしてください。

① 新規登録と更新の違いがわからない会計士には頼まない方がよい。

そもそも、新規登録と更新申請の場合では、会計士の監査対応が異なります。
話を聞いてはぐらかされたり、よくわかっていないようであれば
どんなに提示される報酬が安くても、頼まないほうが無難です。
あとあと、トラブルの原因になりかねません。

② 監査を受けても、申請が通るとは限らないことを理解している会計士に頼むべき

あたりまえですが、一般労働者派遣事業の監査証明をもらっても、登録申請が通らない場合があります。
財務要件を満たさない場合があるからです。
よく知っている会計士は、会社の財務状況をヒアリングしたうえで
監査をすることに意味があるかどうかを、まず判断します。

問い合わせた際に、財務内容について、なにひとつ質問を受けなかった場合には
絶対に、その会計士には仕事を依頼しない方がよいでしょう。

③ 個人の会計士に頼む場合、報酬はあまり変わらないので、報酬面では比較しない

監査法人に頼む場合は、個人の会計士に頼む場合よりも報酬が高くなる傾向がありますが
正直、個人の会計士に依頼する場合の報酬は、どんぐりの背比べです。
数万円単位の違いで、あまり悩まない方がよいでしょう。
むしろ、トラブル発生を回避するため、①や②の事項を考慮すべきであると思われます。
電話をかけて、安い報酬で受けてくれる会計士を探すのは、結果的に非効率だと思います。

④ さりげなく、専門的な知識があるかどうかを試してみる

我々会計士の業界でも、一般労働者派遣事業監査をサービスメニューに標榜しながら
意外と派遣事業について何も知らない人がいます。
こういう会計士に、業務を依頼するのはやめましょう。
特定派遣と一般派遣の違いや、監査報告書はどこに提出されるのかといったことを
知らない会計士には頼まないほうがよいかもしれません。


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