カンピロバクターとギラン・バレー症候群 問われる社会的責任(上)患者、家族に重い負担

2018/07/03 8:26 に ギラン・バレー症候群患者の会 が投稿   [ 2018/07/03 8:27 に更新しました ]
カンピロバクターとギラン・バレー症候群

日本食料新聞 2018年6月15日掲載の記事より


カンピロバクターとギラン・バレー症候群 問われる社会的責任(上)患者、家族に重い負担

©日本食糧新聞社 https://news.nissyoku.co.jp/

2018.06.15 11715号 01面

 食品安全委員会が5月8日に公表した食中毒菌であるカンピロバクターについてのファクトシートは、鶏肉の生食、加熱不足、二次汚染の危険性を指摘したが、農場から販売・消費までサプライチェーンの適切な管理方法の提言までには踏み込めなかった。カンピロバクター食中毒は死亡に至るケースはまずないが、手足がまひし、後遺症も残るギラン・バレー症候群(GBS)につながる可能性がある。GBSは俳優の大原麗子氏や安岡力也氏も発症するなど決して遠い病気ではない。行政や業界の社会的責任について言及する前にGBSの患者の治療、リハビリテーションで何が起こっているかを明確にする。(伊藤哲朗)

 
16年ぶりに花見を楽しむたむらあやこさん

 写真がある。漫画家たむらあやこさんが函館・五稜郭公園で缶ビールを手に友人たちと花見。たむらさんが5月8日にSNSであるフェイスブックにアップ。GBSの治療やリハビリのため、屋外での花見ができるようになるまで16年かかった。「何でもない日常がありがたい」という。「1年間に1mmずつ神経が戻ってきている感じ」で「何かを踏んだらわかる」まで足の裏の感覚は戻ってきたが、足の甲に文鎮を落としても痛みを感じずに膝から崩れ落ちる。16年たっても闘病は続いている。
 たむらさんは2016年発行の自伝的闘病記「ふんばれ、がんばれ、ギランバレー!」(ふんギラ)の著者。02年にGBSを発症。十二指腸潰瘍と髄膜(ずいまく)炎も併発。高熱、嘔吐(おうと)、全身の壮絶な痛みなどさまざまな症状が出た。「息が吸えない状態」「痛い、つらい、具合が悪いしか考えられない日々」が続いた。
家族、親戚が交代でつきそい、3年近い治療と1年以上のリハビリで、座って自力で少量の食事ができるまで回復。だが、医師からは「これ以上良くならない」と厳しい宣告を受けた。たむらさんは「あきらめない」で立ち上がるリハビリも始めた。
高額療養費補助など公的支援制度を使っても1ヵ月に約50万円の治療費がかかった。痛みのために突然叫び声を上げるため、個室にせざるを得なくなり、半分は差額ベッド代だった。経済的負担も大きい。

 ●笑いをベースに
 家族、親戚も登場する「ふんギラ」は笑いがベースにある。たむらさんはチャーリー・チャップリンの名言「クローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇」を信条として、自分に起こったことを冷静な目で作品にした。
 たむらさんは高校時代に友人たちと漫画同人誌を発行するほど絵が得意だった。「これ以上良くならない」という医師の宣告よりも、指のまひで絵が描けないことにショックを受けた。絵を描きたいという思いで独自のリハビリを続けた。
 「絵で人の役に立ちたい」「寝たきりになっても収入を得たい」と考え、漫画家を目指した。高校時代の同人誌仲間からも「(才能がある)あなたがいたから漫画家をあきらめた、だから描け」と厳しいエールを送られ続けた。
 闘病をもとに描いた作品を14年に講談社の雑誌「モーニング」の新人賞に応募。編集部賞を獲得。この応募作をもとに「モーニング」とWebコミックサイトに集中連載、読者の支持も集めて、単行本となった。すでにGBS以外を題材にした作品も3冊出していて、その才能が開花しつつある。

 ●医師に知ってほしい
 たむらさんは脳神経内科の医師の診察を早い段階で受け、家族や親戚の支援もあり、漫画という収入の方法も得た。だが、全ての医師が迅速に診断できるわけでなく、闘病生活について患者も家族も悩むことが多い。
 16年7月に発足した「ギラン・バレー症候群患者の会」はクラウドファンディングを活用して、7月から全国の主要な病院などに「ふんギラ」を送る。
 「患者の会」は、患者を励まし支えることを目的とし、患者、元患者、関係者が集まって発足した任意団体。現在、参加者は約50人。毎月交流会を開き、体験談など情報交換を行う。厚生労働省の「指定難病」になっていないGBSは、地方自治体や病院の支援も得られにくい。治療後のリハビリや生活も大変ということを医師にまず理解してほしいと考えている。
 カンピロバクターは食中毒の原因菌第1位で年間300件、患者数2000人程度で推移しているが、460万~1133万人という推定もある。GBSの患者の10%~30%がカンピロバクター食中毒由来といわれ、GBS患者の15~20%に生活に支障を来す後遺症があり、たむらさんのように10年以上の闘病となる患者もいる。重篤になり生活の質の低下も懸念されるため、「鶏の生食、加熱不足はリスクが高い」という認識を消費者、鶏肉製品を製造している食品会社、レストランチェーンをはじめとする外食産業も持つ必要がある。(次回掲載は7月上旬)

 ●ギラン・バレー症候群 患者の会 ホームページ http://gbsjpn.org
 ●クラウドファンディング進捗状況のホームページ https://readyfor.jp/projects/gbs/announcements

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