被災者が主人公となる復興基本法を

2011/05/16 21:57 に Seiji Kamimura が投稿   [ 2011/05/16 22:29 に更新しました ]

津久井 進 (弁護士)

 「東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案」の国会審議が始まった。

 2か月以上のロスタイムは本当に残念だ。今もなお絶望と不安に苦しむ被災者が大勢いる。彼らのために,一刻も早く万全な体制が構築されることを切望する。 

 この復興基本法案は,平成7年に成立した「阪神・淡路大震災復興の基本方針及び組織に関する法律」の焼き直しである。 コピペした部分もたくさんあって,お粗末だと感じる人もあるだろう。 しかし,阪神の教訓が生きているかどうかは,かえって一目瞭然だ。 

 まず,進歩したところに目を向けてみよう。 基本理念に挙げられた次の3点は率直に評価したい。法律の中に「絆」という言葉が入っているのは大胆とさえいえる。

  1. 安心・安全な地域づくり(2条5号イ)
  2. 雇用機会の創出と持続可能性のある社会経済の再生(同ロ)
  3. 地域の文化の振興,地域社会の絆の維持・強化(同ハ)

 次の3点も,なかなか現実的である。特に,「民間な多様な主体」にはボランティアや民間専門家も意識したものと思われ,一皮むけた感じがする。

  1. 全国各地の自治体の相互の連携協力の確保=対口支援(2条2号)
  2. 被災で機能低下した地方公共団体への配慮(同条2号)
  3. 国民,事業者その他民間の多様な主体の自発的な協働(同条3号)

 他方で,大いに落胆した部分もある。しかも,それは核心部分である。 第1条の「目的」の中に,『被災者』が登場しないのである。「誰のために,何のために」という本法のミッションは,「被災者が,希望を取り戻すため」であることは明らかである。

その最も重要な視点が欠けている。

 我が国のめざすべき基本的な理念は,憲法にちゃんと書いてある。  個人の尊重を基本とする人権尊重と国民主権にほかならない。今,被災者の基本的人権は危機的状況にある。これを一刻も早く回復させることこそが最重要課題である。国民主権・住民自治という視点からは,単に「被災地域の住民の意向が尊重される」(2条2号)に止まらず,復興の主体が被災者だという結論が導かれるはずだ。

 こうした基本的な誤りが,2つの危険を導いている。

  • 第1に,施策優先で,被災者を置き去りにする創造的復興のリスク(2条1号,2号)。 
  • 第2に,復興構想優先で,原発被害者を置き去りにするリスク(13条)。

  決して杞憂ではないだろう。 

 「被災者主権」

 これこそ「災害復興基本法案」(昨年1月発表)の核心である。  もう一度,基本に立ち返り,復興とは一人ひとりの被災者の人間復興であるという理念を胸に刻もう。

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