第25回GIS学会大会特別セッション

第25回GIS学会大会特別セッション 「オープンデータ時代の地理空間情報の利用を考える(1)」

多くの方にご参加頂き,盛況のうちに閉会いたしました。ありがとうございます!

 日時:2016年10月16日 FOSS4G分科会主催シンポジウム:10:50~12:30、自治体分科会主催ワークショップ:13:30~15:10

 場所:立正大学品川キャンパス11号館 会場A(1151 ) 

開催趣旨

 近年,インターネット上で様々な地図サービスが公開され,その利用が容易になってきている。これらのサービスにより,地理空間情報はこれまで以上に日々の生活に深く関わり,様々な場面で利用される様になってきている。例えばスマートフォンの地図サービスを使わないで,初めての場所に行くことを想像できるだろうか。ほんの数年で,我々の生活パターンは大きく変わったといえるだろう。

 これらの地図サービスの多くは,無料の利用が可能である。しかし,無料ではあるものの,提供者がサービスに関わる知的財産権を放棄したわけではない。Web上の地図サービスは,閲覧は無料でできるものの,その利用となるとかなり制限されるのが実情である。しかし,実際の利用例では,著作権侵害や利用規約違反となる場合も少なくない。例えば,地図画像をキャプチャーし,それに書き込みを加え,Webページに公開したとなると,「許可無く複製,改変,送信」を行ったといえる 。これは,個人のWebページであっても,公的機関のWebページであっても,同様である。

 ただしこれは,著作権自体が現在のようにデジタルデータがWebを通じて容易に,複製や改変が可能になることを念頭において作られた法律では無いためという側面もあるだろう。さらに,そもそも著作権とは「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」とあるように,利用の制限が目的ではなく,著作者の権利を保護するとともに,利用を促進するのが目的である。であるならば,著作権法が現在の実情にそぐわず,著作物の適切な利用を阻害しているのならば,それは本末転倒といえるだろう。

 そうしたなかで,デジタル時代に即した著作物の使用許諾として作られたのが,クリエイティブ・コモンズである。「クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons、以下「CC」)とは、とは、著作物の適正な再利用の促進を目的として、著作者がみずからの著作物の再利用を許可するという意思表示を手軽に行えるようにするための様々なレベルのライセンスを策定し普及を図る国際的プロジェクト及びその運営主体である国際的非営利団体の名称である」

 また,公共データを開放することにより,行政の効率化や透明性の確保をめざしたOpen Government,行政に限らず様々なデータの開放により,再利用の促進と効率化をめざすOpen Data,科学的研究成果を一部の専門家のためで無く広く一般にも開放することを目指したBudapest Open Access Initiative など,旧来の著作権の制限にとらわれず,データや成果を積極的に共有,利用しようとする動きも活発になっている。さらに,こうした基盤の元に,従来のクローズな体制ではなく,オープンソースソフトウェアの開発のように,開かれた体制で技術的革新や、科学的発見を実現しようとするオープンイノベーション,オープンサイエンスなどの動きも生じつつある。

 そうしたなか,特に大学や公的機関の研究者,行政機関の所属する者にとって今日的な課題となってきているのが,オープンデータや,オープンアクセスの実行である。オープンデータについては,電子行政オープンデータ戦略,世界最先端IT国家創造宣言などでその推進がうたわれ,本年5月20日「オープンデータ2.0---官民一体となったデータ流通の促進」が政府IT総合戦略本部により決定されている。また,学術分野においても,「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会」や「オープンサイエンス推進に関するフォローアップ検討会」,さらには文部科学省・科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会による「学術情報のオープン化の推進について」等において,「公的研究資金による研究成果のうち、論文及び論文のエビデンスとしての研究データは原則公開とすべきである」との方針が示されている。つまり,われわれ行政担当者や研究者は,遠からず,もしくは今まさにこれらを実行しなければならない状況にあるといえるだろう。

 さて今日,上記の様なオープンデータの流れもあり,様々な地理空間情報がオープンデータとして流通している。しかし,これらのデータを使いこなすためには,一定の技術が必要とされるとともに,アップデートについても,頻繁に行われるわけではない。それに比べ,無料の地図サービスは,多くの人にとって使いやすく,さらに更新頻度も、多くのオープンデータに比べれば早いということができるだろう。そのために,様々な場面でこれらのWeb地図サービスを利用している方も多いだろう。一部の研究や報告書では,これらのツールやデータを全面的に採用したものもある。

 一方で,行政や研究の分野では、前述のように,オープンデータやオープンアクセスの推進が必要とされている。こうした論文や報告書等をオープンデータやオープンアクセスとして公開することは,単独での利用や使用については,著作権や使用許諾の範囲で許可されている場合であっても,これらの報告書等の二次的利用については,問題は生じないのだろうか。またそれ以前に,そもそもこうした無料のWeb地図サービスを使う場合,どこまでが著作権で許可された利用であり,どこまでが許諾が必要な使用になるのであろうか?

 初めにも述べたとおり,無料のWeb地図サービスは様々な場面で利便性をもたらすものであり,それを使わないということは難しいであろう。しかし,利便性がました一方で,意図せずに著作権侵害,利用許諾違反になっている恐れもある。さらに,作成したものをオープンデータやオープンアクセスとして公開する場合に,問題は生じないのか。

 この様な問題意識の元で,本特別セッションを企画しました。本特別セッションは,FOSS4G分科会と自治会分科会の共催で行われ,午前中はFOSS4Gセッションから3つの話題提供をさせて頂きます。

登壇者

  • 池田 玲菜 様 (北海道行政書士会 会員)
    発表題目:著作権法の概説とWeb上の著作物

  • 飯田 哲 様 (一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC))
    発表題目:Web地図と著作権 発表資料:https://speakerdeck.com/nyampire/gisxue-hui-webdi-tu-tozhu-zuo-quan

  • 中島秀敏様(国土地理院関東地方測量部)
    発表題目:国土地理院の“オープン”施策~効果的な情報共有のために~

 これらの事例紹介を受けて,午後のセッションでは,ワークショップ形式で地図の利用について議論を進めていきたいと考えております。具体的には,参加者の皆様に幾つかのグループに分かれて頂き,グループ毎にディスカッションをして頂く形式を予定しています。ディスカッションのテーマは,全てのグーループで共通とし,2~3程度のテーマを設定します。

 本セッションが、参加者の皆様にとって有益なものとなれば幸いです。

Comments