3 他の裁判ブログ

1.原告ブログの多さ
 
裁判に関するブログには、支援する会のブログもあるが、「原告ブログ」が非常に多い。原告ブログは、支援者の多少にかかわらず出来るので、その意味で威力を発揮していると言える。体制に批判的な組織の問題点を告発しているために、組織的支援が受けにくいような裁判(社民党国会議員秘書に対する「社民党セクシュアルハラスメント裁判」や全労連系組合に対する裁判であるきずな裁判など)も広く宣伝できている

 

2.コメント欄、トラックバック――双方向性の試み
 
ブログの場合、コメント欄は、一、二の例外を除いて、みな開けていた。承認制にしている例も非常に少ない。HPにも、掲示板を設けているものが幾つかある。
 
コメント欄への書き込みの量は、全体として多くないが、ブログによってさまざまであり、ほとんど無い場合も、かなり多い場合もある。コメントが比較的多いのは、会のブログよりも原告ブログ、とくに、活動報告だけでなく原告自身の思いが書かれているようなブログである。原告ブログの場合、コメントの内容として最も多いのは、原告に対する励ましであり(もちろん勝利判決ならお祝い)、他の場で闘っている労働者との交流などもなされている。ブログ『うつ病患者の裁判しながら日記』を書いている原告の方は、「ブログにコメントをもらえたりすることで、私の症状はよくなっていきました」と述べており、これは、コメント欄が非常にプラスになっている例と言える。
 
コメント欄に、被告側の会社・団体に対する不満・告発や同じ職業の人からの不満が寄せられる場合もある23。また、裁判に対する素朴な疑問がコメントとして寄せられ、それに対する回答がおこなわれることもある。
 
残念ながら、弱者バッシング的・嫌がらせ的性格の原告非難コメントが書き込まれることも、ある。そうした質の悪いコメントに対しては、もちろん本人が反論することもあるが、原告以外の人がすかさず反論する場合も多い。本人まかせにしていては、二次被害の場になりかねないので、このことは重要と思う。また、荒らしや誹謗中傷に対して強い姿勢を表明しているブログもあり、たとえば「いわれのない誹謗中傷コメントには相応の対応をさせて頂きますのでご注意ください」(「うつ病患者の裁判しながら日記」)、「ご意見などは(……)匿名でなく、公表されてもご自身が恥ずかしくないものとして、責任を持って下さい。悪質な場合は、管理者側(弁護団含む)も措置を講じます」(「社民党セクシュアルハラスメント裁判にご支援を」)といった言明もなされている。もちろんコメントを承認制にする方法もある。「里美さんの裁判を支える会」のブログでは、「心ない書き込みが2チャンネルに掲載されている」という理由から、最初のうちしばらくは、コメントを承認制にし、嫌がらせと思われるものは掲載しないと表明している。私が見ることができたコメント欄の中には、「炎上」にまで至っている例はなかったが、削除されたコメントや荒らされたために廃止した掲示板もあったと思うので、コメント欄がすべてうまくいっているというつもりはない。けれど、さまざまな対処が試みられ、一定の成果を上げているとは言える。
 
もっとも、異なる立場の人との真摯な対話、建設的対話といったものは、非常に少ない。けれど、京都大学時間雇用職員組合(ユニオンエクスタシー)のブログには、比較的それに近い対話もたまにあり、また、攻撃的ながら一応議論を挑むようなコメントに対しては、ブログ主や支援者が的確に応答しており、教えられる。組合の行動に対する疑問もときどき寄せられるが、そうしたコメントもあることで、オープンな感じになっており、ときに組合の人が反省を表明することもある。もちろん時には「誹謗中傷」と言いうるコメントもあるし、コメントの削除・停止をおこなうなど、臨機応変にやっておられる。そうしたさまざまな努力を経て、コメントの質はさまざまであるが、全体としてにぎやかな広場のようなコメント欄になっているように思う。
 

ブログへのトラックバックは、全体にあまり活用されていない。そうした中、「ハイナンNET(中国海南島戦時性暴力被害者を支援する会)」のブログに対しては、「慰安婦」問題・戦争責任問題を扱うブログからのトラックバックが時々あり、参考になる。裁判支援は、その裁判が何らかの社会的に普遍的な問題を扱っているからこそおこなわれることを考えると、こうした形でもトラックバックを活用することができると思う。

 

ファイトバックの会の場合、原告一人で更新するのならば、「原告ブログ」は多いのであるし、やはり原告ブログにすべきだったと思う。その方が原告本人のさまざまな社会問題(非正規問題な)に対する姿勢も示すこともできて、プラスだったのではないだろうか? また、コメント欄を開いていたら、激励が寄せられたことは間違いなく、原告と同様の要求を持つ人との交流などができた可能性もかなりあると思う。ただし、ファイトバックの会のブログは、「フェミナチを監視する掲示板」でよく取り上げられたりもしていたので、コメント欄が荒らされる危険は他のブログより大きかったであろう。けれど、いったんコメント欄を開けて様子を見て対応を決める方法もあるし、上で述べたように、たとえば承認制にして、まじめな疑問や批判については立場の違いを超えて公開するなど、さまざまな方法がある。また、コメント欄を閉じている裁判ブログは珍しい以上、閉じている理由を説明した方が良かったかもしれない

 

3.問題が起きた際の謝罪――自らとは立場が異なる人に対しても、「事実と異なる表現」を謝罪したブログも
 
京都大学時間雇用職員組合のブログは、あるエントリーで、京都大学の労働者過半数代表選挙の候補者に対して裁判の争点などを質問したビラを掲載したがそのビラで、候補者の1(Aさん)を批判して、「使用者のかいらい候補を落選させよう!」という見出しを付けた2010.11.10 http://extasy07.exblog.jp/13606528/)。
 
しかし、同ブログは、次のエントリで、「かいらい」という表現は誤りだったと述べ、「『かいらいとは、操り人形のように自己の意志を持たない人物。しかし、A[原文は実名]さんは、少なくともご自身で何かをやろうとしている人でした。その意味で、『かいらと貶めるように書き方をしたことについて撤回し、Aさんに対して謝罪しますと書き、さらにビラを参考にして投票してくださった方々に対しても、事実と異なる表現であったことを訂正し、謝罪したいと思いますと書いている2010.11.14 http://extasy07.exblog.jp/13620528/)。
 
Aさんは、けっして組合寄りの候補者ではなかったすなわち、もう1人の候補者が組合の公開質問状に答え、組合がインタビューをした際には、組合側の見解に近い意見を述べたのに対Aさんは、公開質問状への回答を断り、インタビューに対しても、比較的使用者側の見解に近い意見を述べていた。
 
 しかし、京都大学時間雇用職員組合は、こうした、自らとは立場が異なる人に対しても、「事実と異なる表現」を認めて謝罪している。
 
 この謝罪は、コメント欄でも、「表面上『対立』している人とは、どうしても思い込みで矛盾を激化させてしまうことがありますね。でも素直に反省するは良いことですね。好感をもてます」(ヨシダ名のコメント)と好意的に受け止められている
 

 この謝罪とファイトバックの会のケースとを同一視はできないかもしれないが、こうしたきちんとした対応をするようにしたい。さらに、この組合のブログの場合は、もとのブログの記事を残したまま、訂正・謝罪した個所が明確にわかるようにしている。ファイトバックの会の場合は事情によりそれができなかったが、本来、同組合のようなやり方が、問題点を明確にする上でも、元の記事ウェブ上のどこかに残った際に誤解を招かないようにする上で好ましいと言える(24)

 

4.相手側からブログに対して「誹謗中傷だ」という非難や削除要求が出る場合も――非難や削除要求をはねつけられる質の記述が必要
 
「東芝・過労うつ病労災・解雇裁判」では、東芝側が出した「和解案骨子」の中に、ホームページやブログで「会社・上長・会社関係者に対する誹謗中傷・名誉棄損に該当する事項」の公表を禁ずるという項目があったという。それに対して、原告の重光さんは、「確かにホームページやブログで裁判のことは書いていますが、誹謗中傷・名誉棄損なんてしているつもりはありません」と主張した。
 
また、「不当解雇」ブログに対しては、相手方が「誹謗中傷だ」「虚偽もとりまぜて世界中に公開している」と非難したという。これに対しては、ブログ主の代理人である弁護士は「具体的にどこにどのような虚偽があるのが、全く指摘をしない(……)これは(……)ブログに虚偽の記載などまったく存在しないため(……)に他ならないが、被申立人のこのような態度は、労働者の正当な権利を不当に萎縮させる違法行為以外の何物でもない」と反論し、ブログ主は「ただいま係争中のブログ読者のみなさま、相手方からブログを攻撃されることはあると思います。でも、嘘や作りごとを書かなければ問題ないのです」と述べている。
 

しかし、もしかりにブログの記述の中に、事実誤認や憶測による記述、人格攻撃などが含まれていれば、その点が弱味になるだろう。重光さんや「不当解雇」ブログのブログ主のように、自信を持って反論できるだけのしっかりとした記述を心がけたい。

 

5.ファイトバックの会と似た問題が見られるブログ
 
他のブログには参考になる点が多かったけれども、ファイトバックの会と似た性格の問題が見られるブログも散見された。
 
1会のブログや複数の原告によるブログにおいて、ある人が個人として記事を書いている場合、執筆者名を明確にしているブログもある一方、そうした場合でも、無署名や文責不明確な記事が多いブログもいくつかあった。これは、責任の所在がはっきりしないので問題であるまた、個人の思いが書かれているのに、誰の文かわからないと、読む方も落ち着きが悪い感じがするのであり、実名までは出さなくても、無署名でなく、一人ひとりの個性が見えたほうが説得力もある
 
2HPがなく、ブログだけの場合、裁判に関する基本的事項がわかり難いもの、かなりあったサイドバーなどを利用して、原告の訴えの内容や裁判の経過を簡潔にまとめたページに容易に行きつけるようにした方がいいだろう。
 
3原告ブログのコメント欄が原告と友好的な人々で盛り上がる場合がある。これは、基本的には原告の励みになると思うが、被告側に対する批判の際などに、原告を励まそうとするあまりか、人格攻撃がおこなわれるなど、危うい場合も時にあった。とくに匿名コメントで盛り上がる時にそうなりがちである。「応援メッセージ」にも若干の危うさがある場合もあり、コメントを寄せる側も含めて、公開の場であることを意識して、気をつけたい。
 
4ファイトバックの会のサイトは著作権問題に対してルーズな面があったが、他の裁判ブログにも、新聞記事の全文転載をおこなって、自らの意見が「主」になっていないエントリがあるブログがかなりある。もし転載を無断でおこなっているとしたら、好ましくない
 

 (23)「看護師・村上優子さんの過労死認定・裁判を支援する会」の掲示板では、「皆さまの職場実態や思いをこのホームページの『掲示板』に書き込んでください。裁判官に届けます」と呼びかけて、看護師や患者の訴え・励ましがかなり寄せられている。

 (24)この点については、Kodakanaさんの指摘(http://pulpdust.org/item/606)と山口智美さんの事情説明(http://d.hatena.ne.jp/yamtom/20080915)参照。

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