アコニチン

化学が専門の人でも、天然物の毒ってのは嫌なものです。




どんな人でも、トリカブトという毒草の名だけは知っていると思います。

保険金目当ての殺人事件にも使われました。
古くはアイヌもトリカブトの根から採取した毒を矢毒にしたそうです((大量の水と加熱、特にアルカリ条件で加熱するとエステルの結合が切れ、毒性を失います。これは、矢毒にとっては大事な要素なのです。))。
この植物にはアルカロイドと呼ばれる天然アミンが多く含まれているのですが、有名なのがこのアコニチンです。
この化合物はトリカブトから単離される一連のアルカロイドのうち、脊椎動物に対する毒性が最も高いものです。
静注での LD50 は 0.2mg/kg っていいますからかなり強い毒です。
植物毒では最強だといわれていますね。ボツリヌス毒素は別ですよ。



何百年も前から人間はトリカブトの毒性を知り、畏れ、様々なところで利用してきました。
今でも心臓病の薬として用いられています。
この最強の毒草は化学者、薬学者の興味を惹きつけ、古くから毒成分の単離の研究が世界中でされてきました。
日本では、大正時代に東北大の真島グループが取り組み、多くの類縁体を単離しています。


いかにも斜方晶系だぞ、という感じの結晶。四角柱状で、末端は茅葺きの屋根のように削げ落ちています。
この化合物、実は天然物の中ではかなり大きくてキレイな結晶が作りやすいことが昔から知られています。
1cm以上の巨晶に育て上げた人もいます。((Crystallographical characters of aconitine from Aconitum napellus, Journal of the Chemical Society, Transactions (1891), 59, 288-290.))。
屈折率の高い、たいへん美しい結晶ができるのですが、毒性が高すぎて触れることがためらわれます。
「きれいな花には毒がある」の諺どおりです。




きっちり最初に結晶構造を調べあげたのは、カルガリーのグループでした((Acta Crystallographica, Section B:  Structural Crystallography and Crystal Chemistry  (1982),  B38(9),  2519-22))。