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アメリカ生活録

 

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Isoko Durbinの著書

わかりやすいと、アメリカ人に好評!

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アメリカ生活録

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アメリカで出会ったおいしい料理

 

アメリカのキッチンは、とても機能的だと思う。日本の台所と明らかに違う点は、食器棚が作り付けになっていることではないだろうか。台所の壁は、冷蔵庫のスペースを除いて、全てキャビネットで覆われている。このため収納スペースが大きく、細々した台所用品を全て隠すことができる。キャビネットの中にも色々な工夫がある。「レイジースーザン(怠け者のスーザン)」と呼ばれる回転テーブルは、奥まで手が届きにくい場所に調味料を収納するのに便利である。大きなビン類を収納できる背の高い引き出しも、手を奥に伸ばすことなく、物を取ることができる。洗うことができないため、衛生上、私個人は好きではないのだが、まな板が棚と棚の隙間に付いている台所もある。

 台所の流し台は、大抵二つに分かれている。これは、食器の洗い方が違うせいであろう。アメリカ人は使った食器を、流し台に溜めた熱いお湯の中に放り込む。そしてスポンジではなく、お湯の中に洗剤を直接入れ、まるで洗濯機が汚れた服をまとめて洗うように、食べ残りが付いた食器を洗剤入りのお湯で洗う。その後もう一つの流しで、これまた熱いお湯をかけて、全ての汚れを洗い流す。アメリカの家庭では、このすすぐお湯は、ほとんど熱湯に近い、手が火傷するような熱いお湯でなければならない。スポンジに直接洗剤をつけないため、お湯に含まれている洗剤だけでは希薄に感じるからだろう。一度、アメリカ人と一緒に皿洗いをしていた時、「お湯がぬる過ぎる」と言われたことがある。アメリカで生まれ育つと、手の皮が厚くなるのだろうか、と思った。

 アメリカ人が発明した物の一つに、「ガーベージディスポーザブル」というのがある。これが何かと言えば、流された生ゴミを粉々に切り刻んでしまう機械で、流し台の下に付いている。この機械を使えば、確かに台所の流しが詰まることは無い。しかし、生ゴミを三角コーナーで水切りし、丁寧に捨てる日本で生まれ育った私は、この「全て流してしまえ」というアメリカ人の怠惰さが好きではない。台所から生ゴミを捨ててしまえば、その分、川の水も海の水も汚れる。「水は自然に浄化するから大丈夫だよ」と、私のアメリカ人の夫は言うが、水が自然浄化できる限度以上に、現代人が水を汚染しているのは言うまでもない。だから私は、食べ残しはまずゴミ箱に捨て、流しに落ちたゴミは、手で拾い上げるようにしている。大体日本人は、食べられる分だけ皿に盛り、食べ残さないのが大人の常識だと思うが、そんなことを気にしないアメリカ人は多い。

 食器棚が備え付けであるのと同様、調理用コンロが一緒になったオーブンも、元々付いている場合が多い。日本のオーブンは電子レンジほどの大きさであるが、こちらのオーブンは洗濯機と同じくらい大きい。アメリカの伝統的な料理には、オーブンで焼いた物が多いので、これくらいの大きさのオーブンは生活必需品なのである。オーブンや冷蔵庫は家に付属する物と考えられ、引越しをする時は持っていかず、次の住居人に引き継がれる。国全体の引越し荷物の量が減り、合理的である。

 備え付けの台所用品といえば、食器洗い機もその一つだ。これも洗濯機ほどの大きさがある。食器洗い機の中に洗剤を入れるケースがあり、そこに洗剤を入れ、スイッチを入れれば、機械が勝手に洗浄から拭き取り作業までやってくれる。ちょうど洗車機と同じような物だ。食器洗い機を使うなんて怠け者だわと思われるかもしれないが、実は手で洗うよりも、遥かにたくさんの水を節約できるのである。これは環境にいいことなので、私も使っている。

 私たちの家には、前の家主が置いていった自動缶切り機がまだ付いている。アメリカの缶切りは、二つの小さな輪を、横に付いたつまみでねじり合わせて切る。何度か使っていると、刃が付いた輪が噛み合わなくなり、缶を切るのにかなりの力とコツが必要である。そこで登場するのが、この自動缶切り機だ。しかし、この自動缶切り機も、そう頼れる物ではない。私の夫はうまく缶を開けることができるのだが、従来アメリカの缶切りに疑問を持っている私は、成功したことが無い。そこで私はいつも、日本の缶切りを使っている。日本からアメリカに移住するなら、缶切りを忘れない方がいい。

 前の住人が私たちのキッチンに置いていったもう一つの変ったものが、「ペーパータオルホルダー」だ。私は日本の実家にいた時、紙ナプキンを使ったという記憶がない。箱に入ったティッシュを使うことはあっても、紙ナプキンを毎回使うということは、日本の家庭ではあまり無いはずだ。「ペーパータオルホルダー」とは、トイレットペーパーのようにぐるぐる巻きにされた紙ナプキンを立てる、またはタオル掛けのように掛ける代物である。私たちが今の家に引っ越した時、空っぽのキッチンにこのペーパータオルホルダーが残されているのを見て、アメリカを感じたのを覚えている。

 こんなことをつらつらと書いてしまったが、アメリカと日本のキッチンの違いは、料理や生活習慣の違いから生まれた物だろう。生活に密着した場所であるが故に、国民性が良く見えるのかもしれない。