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アメリカ生活録

 

家の改築

 Isoko Durbinno著書

わかりやすいと、アメリカ人に好評!

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Isoko Durbin のブログ集

アメリカ人夫の一言

カンザスシティーの週末

 

私の夫は、私たちが一緒に住み始める数ヶ月前に、オークションで中古の家を購入した。オークションであるから、最終的に一番高い値をつけた買い手の言い値で売買がなされ、一般的な家の価格よりかなり安く買うことができる。しかし、最も大切な財産である「家」を、価格交渉ができないオークションなどで売るのは、売り手にそれなりの理由があるからである。彼が購入した家は、荒れ果てた生活をした結果、借金に困った元住人がその返済のために手放したものだった。購入当時は、水道、ガス、電気が全て止められているのはもちろん、パイプやメーターが壊れており、シャワーを浴びることもできず、トイレの便器は誰かが盗んだのか、そこにはなかった。いったい、元住人はどうやって生活していたのだろうと思うのだが、まずこういった生活必需品を修理することから、私たちの生活は始まった。

 幸いなことに私の夫は大工仕事が得意で、改築の大部分は業者を雇わず、ほとんど趣味のように彼自身が行っている。彼は知識も豊富で、私には使用方法が想像もできない代物を、ホームセンターで購入してはリフォームに使っている。日本では家の改築を自分でするという事はあまりないかと思うが、アメリカでは、例えばペンキ塗りなどを家主がするのは、ごく当たり前なことなのである。

 家の売買に関する感覚も日本とはかなり違うと思う。日本では中古家は、月日が経っている分価値が下がると思うのだが、アメリカでは大抵、家を売る前に改築を行い、購入した価格より高く売ってお金を稼ごうとする。もちろん私の夫もそれを頭に入れながら、いくら投資すれば家を売る際、黒字になるかを計算しながらリフォームしているのである。このような改築、転売を専門にするビジネスも存在する。彼らは古くて誰も買う者がいない家を安く買い取り、大掛かりな改築をした後、最初の購入価格より遥かに高い値段で売りさばくのである。家を売るというのはなかなか大変な仕事で、その分リスクも高いのだが、家のデザインをし、お金を儲けることができるのは、楽しいのではないかと思う。

 DIY を専門にするテレビ番組を見ていると、暖炉が有るか無いかは、家を売る時の重要なポイントらしい。不動産業者は、暖炉があればそれを最大限にアピールしなさいと、口を揃えて言う。オークションで買った私たちの家には、幸いなことにこの暖炉がある。確かに暖炉は家に堂々とした風格を与え、暖かい灯が特別な時間を作り出してくれる。しかし、この暖炉を実際に使っている家庭は、意外に少ないのではないかと思う。暖炉を使うと灰が残り、家の中から匂いがしばらく消えないため、私自身は暖炉を使用するのがあまり好きではない。友人宅を訪れた時、ろうそくが暖炉の中で灯を点していたのを見たことがある。家を暖めるという意味では役に立っていないかもしれないが、安全性や後の処理のことを考えれば、こちらの方が便利だと私は思う。

 さて、私たちの家は、まだ改築が完成したわけではないが、購入当時に比べれば、見違えるほど美しく生まれ変わった。リビングルームの壁は、オレンジ色と茶色の中間色で塗られ、壁の淵はオフホワイトになった。このような色の組み合わせは、テレビドラマに出てくる家などによく使われているので、トレンディーな生活をしていると、私たちは自己満足している。玄関脇にある階段の壁には、夫の友人から貰った大きな絵を掛けた。日本人は壁に穴を開けたくないため、絵を飾ることを躊躇しがちだが、夫と住むようになってから、アメリカ人がどうして気軽に絵や写真を壁に掛けられるのかが分かった。彼らは壁の修復の仕方を知っているのだ。穴が開いても、修復しペンキを塗れば、なんら問題は無いのである。これに安心して、私はクラッシック縁取りが付いた楕円形の鏡を壁に貼り、その下に茶色の小さな机を置いた。この机は、観葉植物や花を飾るのに使っている。窓を新しく取り替え、リビングルームの壁の色に合わせて茶色のソファも購入した。

 こうして時間とお金をかけて、少しずついろいろな努力をしているうちに、初めは住むこともできないほど荒れ果てた家が、友人たちが羨ましがるほどおしゃれな家に生まれ変わったのだ。「うさぎと亀」の童話のように、順調な出発ができなくても、常に改善を加えていけば、いつか他人より前にいる自分に気付くことができるのかもしれない。