・武久源造「ピアノの発見」第二章 「父と息子の対決=バッハ家の場合:あなたの中に、父は生きているか?」

当日のライブ演奏全曲をYoutubeにアップしました.
J.S.バッハ        イタリア風協奏曲 ヘ長調
                            半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
                            インヴェンションとシンフォニアより
                            2台の鍵盤楽器のための四つのデュオ
                            2台の鍵盤楽器のためのソナタヘ長調
C.P.E.バッハ       ロンド イ短調



Miyazaki1
プログラム
J.S.バッハ イタリア風協奏曲 ヘ長調
半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
インヴェンションとシンフォニアより

W.F.バッハ 2台の鍵盤楽器のためのソナタヘ長調
独奏鍵盤楽器のための12のポロネーズより

C.P.E.バッハ2台の鍵盤楽器のためのデュオ


昨年のコンサートのライブ録画Youtubeで公開されています.

賛助出演:宮崎貴子

「ピアノの発見」第二章 「父と息子の対決=バッハ家の場合:あなたの中に、父は生きているか?」
ヨハン・セバスチャン・
バッハ(1685-1750) には4人の著名な作曲家の息子がいる。ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750) には4人の著名な作曲家の息子がいる。 最初の妻、マリア・バーバラ・バッハとは7人の子をなしたが、3人だけが(息子二人、娘一人)成人し、二人の息子は作曲家になる。マリアは37歳で亡く
なり、バッハは後妻、アンナ・マグダレーナ・バッハ(旧姓ヴィルケ Wilcke)を迎え、13人の子をなす。そのうちの二人の息子は作曲家となる。バッハの孫、曾孫たちは大バッハほど輝かしい業績を残していない。

一方、バッハ家の系譜をさかのぼると、最初の職業音楽家はよく知られたヨーハン・ゼバスティアン・バッハではなく、少なくとも3代は遡ることができる。6代に渡って総計数百人の職業音楽家を輩出している。ヨハン・セバスチャン・バッハの4代前のファイト・バッハ(1550-1619) は粉挽きパン屋であり、職業音楽家ではないが音楽をこよなく愛し自らもシターンCitternと呼ばれるリュート様の撥弦楽器(ギター、マンドリンなど)を水車小屋に持ち込んで演奏していたと言われている。ファイトFeitは、小麦と言う意味であり、Bachは、流れ、或は、小川と言う意味であるから、ファイト・バッハは「小川の傍の小麦さん」という意味になる。また、流れる、という語義から、バッハ家の祖先が流浪楽人であったことも、大いに考えられる。

武久源造「ピアノの発見」第二章は昨年の第一章に続き、バッハの音楽世界に焦点を合わせたものである。今回のテーマは、「父と息子の対決=バッハ家の場合:あなたの中に、父は生きているか?」である。バッハの4人の息子たちは、時には幾分躊躇しながらも、時間をかけて、チェンバロからフォルテピアノへと、その重心を移動させていった。しかし、父親であるバッハはチェンバロ的世界を集大成するとともに、それを破壊しすでにピアノを発見し、ピアノ的語法を創造しつつあった。(「第一章」)ここにおいて、父と息子との関係が、私たちが想像するよりも、はるかに困難、かつ、劇的なものであったことが、このコンサートで明らかになるであろう。考えても見て欲しい、自分が使っているフォルテピアノの表現力の可能性をすでに父親が見抜いていたと知った時、息子たちがどうやって父親を乗り越えたら良いのか、おそらくは長い時間途方に暮れるだろう。

武久源造 Genzoh TAKEHISA

1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。研究テーマは、主にバッハ以前の音楽におけるDispositioについて。

チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。特にブクステフーデ、バッハなどのドイツ鍵盤作品では、その独特で的確な解釈に内外から支持が寄せられている。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。音楽的解釈とともに、楽器製作の過程についても造詣が深く、楽器の構造的特色を最大限に引き出す演奏が、楽器製作家たちからも高く評価されている。

91年「国際チェンバロ製作家コンテスト」(アメリカ・アトランタ)、また97年および01年、第7回および第11回「古楽コンクール」(山梨)、ほか多数のコンクールに審査員として招かれる。ソロでの活動とともに、00年に器楽・声楽アンサンブル「コンヴェルスム・ムジクム」を結成し、指揮・編曲活動にも力を注ぎ、常に新しく、また充実した音楽を追求し続けている。02年から毎年、韓国からの招請による「コンヴェルスム・ムジクム韓国公演」を行い、両国の音楽文化の交流に大きな役割を果たした。91年よりプロデュースも含め35作品以上のCDをALMRECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1~9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。2016年3月には、2度目のゴールトベルク変奏曲の録音をリリース。これまた、レコード芸術誌の特選版となる。ここでは、日本で初めて16ft弦付チェンバロによって、ゴールトベルクの新しい可能性を切り開いている。

02年、著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画)を出版。各方面から注目を集め、好評を得ている。05年より鍵盤楽器の新領域とも言えるシンフォニーのピアノ連弾版に取り組み多方面から注目を集めている。06年NHK第一ラジオ「ときめきカルチャー」コーナーに年間を通して出演。1998~2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。2013年、ラモーの抒情喜劇『レ・パラダン』の日本人による初演を指揮して、絶賛を博する。また、近年、毎年、ヨーロッパ各国(ドイツ、リトアニア、アイスランド、スウェーデン等)で、即興演奏を含む多彩なプログラムによって、オルガン、チェンバロ、ピアノその他の楽器を使った・コンサートを行い、注目を集めている。

2015年、ジルバーマン・ピアノによるJ. S. バッハ「パルティータ」の世界初の全曲録音をリリースという快挙を成し遂げた.ジルバーマン・ピアノは日本ではよく知られていないが,今回の録音でジルバーマン・ピアノを用いた理由を、武久氏は明解に述べる.「チェンバロ、クラヴィコード,ピアノフォルテの三つの楽器の特質を備えたジルバーマン・ピアノは、バッハの「パルティータ」を演奏するのに最も相応しい.」

現代の聴衆のための表現芸術的な視点を重んじつつ、武久氏は、パルティータが創作された1730年前後の激動の音楽史にフラッシュバックする。

実はバッハがバルトロメオ・クリストフォリ以降の様々な打弦様式のフォルテピアノ、特にゴットフリート・ジルバーマンの発明になるジルバーマン・ピアノの存在を既に知っており、演奏もしていたという可能性を指摘する.すなわち、六つのパルティータは様々な楽曲様式と同時に様々な鍵盤楽器的特性を備えたジルバーマン・ピアノでの演奏を前提に作曲された可能性である.

ある資料では、バッハはジルバーマン・ピアノに1732年に初めて触れた、と伝えられ、現在それが定説になっている。一方、パルティータの全曲本は1731年に出版されている。従って、定説によれば、パルティータ作曲時に、バッハはピアノを知らなかったことになる。それにも関わらず、現代の多くの演奏家、音楽学者、愛好家は、チェンバロやモダン・ピアノで弾かれるパルティータに、いわく言い難い違和感を感じてきた。武久氏は楽曲の細部を綿密、かつ、多角的に分析することで、六つのパルティータとジルバーマン・ピアノとの結びつきを、強い説得力を持って確証している。

オフィシャルサイト
http://www.genzoh.jp/index.html


宮﨑貴子(みやざきたかこ)
大阪府出身。東京音楽大学ピアノ演奏家コースおよび同大学大学院を経て、ドイツ・ハノファー音楽演劇メディア大学ピアノ科、同大学古楽器科卒業。同大学修士課程フォルテピアノ科修了。在学中、同大学オペラ科にて伴奏助手を務める。
これまでにピアノを故・神野明、藤原亜美、石井克典、播本枝未子、倉沢仁子、ゲリット・ツィッターバルトの各氏に、フォルテピアノをG.ツィッターバルト、ツヴィ・メニカー、チェンバロをZ.メニカー、リート伴奏法をヤン・フィリップ・シュルツェの各氏に師事。
2013年シューベルト国際リートデュオコンクール優勝(ドルトムント・ドイツ)。 2011年ニーダーザクセン歌劇場管弦楽団(TfN Philharmonie)のフォルテピアノソリストとして共演(ニーンブルク・ドイツ)。ヨーロピアン・トロンボーン・フェスティバル Slide Factory 2011(ロッテルダム・オランダ)で公式伴奏者、2013年国際ヘンデル音楽祭(ゲッティンゲン・ドイツ)にチェンバリストとして出演。
留学中ドイツ・ゲッティンゲンで定期的に行ったフォルテピアノによるレクチャーコンサートは現地新聞にも取り上げられ人気を博した。2014年6月帰国。同月「ムジークフェストなら」にてピアノリサイタル。2014年3 月S.ハッセルホーン&宮?貴子ドイツ歌曲の夕べ(東京:トッパンホール、大阪:ザ・フェニックスホール)、4月フォルテピアノリサイタル(シャウムブルク・ドイツ)、10月フォルテピアノリサイタル(ルーテル市ヶ谷ホール)は、いずれも誌上、紙上にて高い評価を得る。
2014年12月ドイツでリートデュオのCDをリリース。2015年1月津田ホールで聴く女性作曲家シリーズ出演(企画・構成:小林緑)、「ショパン」2月号「ピリオド楽器で弾くモーツァルトのピアノ協奏曲」執筆、2月?3月ドイツ各地及びベルギーにてリートデュオリサイタル、5月ピティナ銀座ステーション・フォルテピアノレクチャーコンサート(ヤマハ銀座サロン)、6月トッパンホールランチタイムコンサート(フォルテピアノ)。2015年6月よりピティナWeb サイト「鍵盤楽器事典」に執筆中。
フォルテピアノ、リート伴奏、女性作曲家作品を軸に多彩な活動を展開しており、その日本人離れした豊かな色彩感、躍動感溢れるダイナミックな演奏と楽曲に対する深い洞察力で高い評価を得ている。