・沼沢淑音ピアノリサイタル ”幻想・Fantasie・ファンタジー”


当日のライブ録画をYoutubeで公開しました

プログラムノート 沼沢淑音

コンサートのテーマを幻想にさせて頂いた理由は直観的、感覚的にこの言葉が音楽にとても近しいと思ったからです。幻想という言葉のもつ響きの中には秘密への憧れがあり、どこか謎めいていて掴みどころがなく、またどことなく魅惑の匂いがします。そこには有限から無限への飛翔があり、永遠があるのかもしれません。

 夢想家シューマンの音世界ではその有限と無限の狭間に狂気をみることができます。無限世界から現実に引き戻された時、或は幻想から立ち戻った時のシューマンに残るのは虚無なのかもしれません。シューマンはクララとの結婚に焦がれていましたがクララの父の反対にあい長らく叶いませんでした。幻想小曲集では「夜に」を引用してシューマン自身がヘーローとレアンドロスの話をクララに書き送りました。この話とは、レアンドロスはヘーローに恋し、毎晩彼女に会うために海峡を泳いで渡り、ヘーローは塔の最上階でランプを灯して恋人を導きました、ところがある冬の嵐の夜にレアンドロスは波に巻き込まれ、風がヘーローの明りを吹き消し、レアンドロスは方向を見失い溺死しました。ヘーローは彼の死体を目にして発狂し、恋人の後を追って塔から身を投げたというギリシヤ神話です。悲劇は最も美しいと言われますが、終曲の「歌の終わり」ではシューマン自身がやはり、最後に結婚式と葬式の鐘の音が同時に聴こえると言っています、そこには精神世界の溶解がみられます。

 ファウストはあの世での魂の服従を交換条件に、現世であらゆる人生の快楽・悲哀を体験させるというメフィストフェレスとの約束のもと、それに溺れてゆきます。リストのメフィストワルツは戯画的な側面が強い作品ですが、誘惑的で官能的な、またデュオニソス的な狂気があります。

 ドビュッシーのオンディーヌも水妖の誘惑ですがオンディーヌの誘惑や幻惑はある意味でそれを望んでいたドビュッシー自身に向けられた魔術なのかもしれません。シューマンの愛した幻想文学の奇才E.T.Aホフマンの世界観はエドガー・アラン・ポーに引き継がれたと言われそれは幻視の人ドビュッシーによって月、水、風、雪、光、等自然のエレメントを通して明らかにされます。

 終曲のフォーレはやはり幻想に生きた音楽家コルトーも「ピアノ音楽の中にこの作品と比肩できるものはわずかしかない」と言ったといわれる傑作で、まだ見果てぬ夜の夢のような曲でそこには叶わぬ夢の世界があるような気がします。そこに音楽の本質の一つがあるような気がしないでもありませんが、存在しようとする生存の本能と欲は幻想と深い位置関係にあるような気がします。幻想とはまた存在でもあるのかもしれません。


15時開演 14時30分会場                                 
沼沢淑音ピアノリサイタル.沼沢さんは今年モスクワ音楽院を卒業.2015年「ポッツォーリ国際ピアノコンクール」で見事優勝.このコンクールはマウリッチオ・ポリーニも過去に挑戦、優勝した非常に権威のあるコンクール.

日本で開催されて最も権威のある浜松国際ピアノコンクールでのハプニングです.「授賞式の際、海老彰子審査委員長が「パーティーで発表する"びっくり賞"がある」と予告していた賞は、「アルゲリッチ賞」「ネルセシアン賞」のことでした。「アルゲリッチ賞」は優勝したガジェヴさんと、惜しくもセミファイナルに進まなかった沼沢淑音さんに、そして「ネルセシアン賞」も沼沢さんに授与されました。アルゲリッチさん、ネルセシアンさんは沼沢さんがすばらしい音楽性を持ちながら次のステージに進めなかったことを大変残念に思っていたということで、今度の「別府アルゲリッチ音楽祭」への出演機会などが与えられるそうです。(以上、浜松国際ピアノコンクールの公式ウェブサイトからの引用.)」おめでとう沼沢さん!二枚の写真を提供してくださった藤巻氏に深く感謝します.



プログラム
シューマン 幻想小曲集 Op.12
リスト メフィストワルツ

フォーレ 夜想曲 第六番 変ニ長調
ドビッシー 前奏曲集より
ドビッシー 喜びの島

プログラムは変更になる事があります.ご了解ください.
ネルセシアン教授からのメッセージ:(日本語に翻訳予定)
 "I would like to express my deepest respect and admiration to Yoshiko Numasawa artistic values. He was able to show not only his pianistic perfection and stability but also a clear conducting power and clarity of his musical conception. I usually hear a finger dexterity and an abundance of effects in Liszt’ Spanish Rhapsody but his performance also contained a very clear orchestral approach, a strong logic and a feeling of a balance between the whole and details. 
     He was a very different person and a musician in Fantastic Pieces of Schumann where he was a sensitive soul in a deep introspection. And yet again, he managed to clearly show a balanced form of this cycle, making his listener focused on the main events of it.He manages to show not only his deep and spiritual understanding of music but also making his listeners entertained and following his music." (original text)



沼沢淑音

神奈川県伊勢原市に生まれ5歳よりピアノをはじめる。小学校、中学校時に全日本学生音楽コンクール東京大会で第2位受賞。
2007年にNHKFM「名曲リサイタル」に出演。
2010年に崎谷直人・新倉瞳両氏とのハイドン・メンデルスゾーンのピアノ・トリオのCDが発売され、レコード芸術誌に掲載される。

2004年「第5回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」で第3位を受賞。
2009年「マウロ・パオロ・モノポリー国際ピアノコンクール」で第3位を受賞。
​2013年「第3回アルフレッド・シュニトケ国際コンクール」で優勝。
2014年「ケルン国際音楽コンクール」で第3位受賞。
2015年「ポッツォーリ国際ピアノコンクール」で優勝。

これまでに日本国内各地、スペインのシグエンサでの音楽祭、ドイツ、イタリア、ロシア、ベラルーシ、中国等で演奏。
外山雄三指揮による仙台フィルハーモニー管弦楽団、沼尻竜典指揮によるアンサンブル金沢と共演、アナトリー・レービン指揮のロシアシンフォニーオーケストラと共演等国内外多数オーケストラと共演。

桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)ピアノ科を首席で卒業、あわせて桐朋学園音楽部門より特別奨学金を授与される。
杉安礼子、故ウラジーミル・竹の内、辻井雅子、佐藤辰夫、広瀬康、野島稔、ミハイル・カンディンスキーの各氏に師事。
桐朋学園大学ソリスト・ディプロマを経て公益財団法人ロームミュージックファンデーションの奨学生としてモスクワ音楽院でエリソ・ヴィルサラーゼ氏に師事、今年度6月モスクワ音楽院を卒業。