カフェイン(caffeine)について

カフェインを暴く。
 

コーヒーに含まれる成分として、真っ先に思いつくのがカフェインだと言って差し支えないでしょう。カフェインはそれほどコーヒーにとって重要な成分です。

カフェインの化学構造、化学名


カフェインは右のような構造をもつ化合物です。組成式は C8H10N4O2で表され、分子量は194.19 です。

分子内に非アミノ酸性の窒素分子( N )を持っていますが、このように植物の成分で非アミノ酸性の窒素分子を持つ塩基性物質を アルカロイド と総称します。カフェインはアルカロイドの一種と言えるわけです。

アルカロイドの語源はアルカリと同じです。

またカフェインの基本となる分子の骨組み(基本骨格)は炭素分子と窒素分子からなる、6員環(六角形)とそれに隣り合う5員環(五角形)で構成されています。この基本骨格はプリン環と呼ばれ、この骨格を持つアルカロイドは プリンアルカロイド と呼ばれます。カフェインはプリンアルカロイドの一種であるとも言えるわけです。

プリンとは、おいしそうな名前に聞こえますが食べるプリン (pudding) とは何の関係もありません。英語では purine と書きます。また、プリン環をもつ化合物は一般に塩基性を示すことが多いのですが、これらの塩基性化合物をプリン塩基とも呼びます。

カフェインの場合、このプリン環に2つの酸素分子( O )と3つのメチル基( -CH3 )が付いています。このうちの2つの酸素分子だけがプリン環に結合した物質を キサンチン と呼び、それにいくつかのメチル基が付いた化合物を総称して メチルキサンチン類 と呼びます。カフェインはこのメチルキサンチン類の代表的な化合物といえます。

メチルキサンチン類にはこの他にテオフィリン(1,3位にメチル基2つをもつ)やテオブロミン(3,7位にメチル基2つをもつ)などが知られています。テオフィリンはお茶に、テオブロミンはカカオ豆に多く含まれる化合物ですが、コーヒーにも少量が含まれています。どれもカフェインと良く似た性質をもつ化合物です。

さて、このようにカフェインは分け方によっていろんなグループに属しているわけですが、このことも関係して、いくつかの異名を持っています。むしろある意味、カフェインという名前の方があだ名のようなものなのですが、もっとも広く定着しており一般によく使われる名称になっているのです。

異名を挙げますと
3, 7-dihydro-1, 3, 7-trimethyl-1 H-purine-2, 6-dione
IUPAC命名法という、化学分野における国際命名法に従ってつけられた名称です。基本骨格のプリン環から見てどこが変わったか、という感じの名前です。数字はプリン環の、特定の頂点に対応して付けられています。
1, 3, 7-trimethylxanthine
プリン環の1, 3, 7 の合計3つ(tri = 3)のポジションにメチル基が付いたキサンチンという意味です。
1, 3, 7-trimethyl-2, 6-dioxopurine
キサンチンもプリン塩基に含まれ、2, 6-dioxopurineと言いかえることが出来ます。
methyltheobromine
テオブロミンはメチル基2つをもつメチルキサンチンです。それがさらにメチル化された、という名前です。

このほか、カフェインという名前が定着するまでに使われたものや、別のものだと思って発見され、名前が付けられたけれど実はカフェインと同じものだったというものの名前もあります。coffeine, thein, guaranine などがこれに当たります。thein, guaranineはそれぞれ、お茶とガラナから見つかったときに付けられた名前です。

カフェインの性状

一般にカフェインとして医薬品などとして扱われているものには、カフェイン一分子に対して水一分子の割合の混合物(一水和物)と水和物でない、純粋なカフェイン(無水カフェイン)があります。この両者で微妙に性状は異なりますが、ほぼ同じ性質を示すと考えて差し支えないでしょう。

カフェインは白色の粉末、あるいは柔らかい針状結晶(水和物の場合)または六角柱状の結晶(無水の場合)の形を取ります。匂いはなく、舐めると苦味を感じます。

融点は238℃ですが 昇華性があります 。昇華温度は178℃ですが、実際には130℃を越えたくらいで昇華が起こります。ですが化合物自身は熱に安定で、例えば焙煎時の温度では熱による分解や、化学構造の変化は起こらないとされます。

水にはやや溶けにくいのですが、 温度を上げることで溶解度はかなり上がります 。1グラムのカフェインを溶かすのに必要な水の量は常温では46 mlですが、80℃では5.5 ml、沸騰水ならば1.5 mlで十分になります。

カフェインの薬理作用

さて、このカフェインですが実はいろいろな薬にも配合されており、また「日本薬局方」にも登場する、れっきとした医薬品でもあります。その適応される症状としては ねむけ、倦怠感、腎性浮腫、偏頭痛、高血圧性頭痛 などが挙げられます。


よく「眠気覚ましにコーヒーを飲む」などということを聞きますが、これはコーヒーに含まれるカフェインによる薬理作用を期待しているのだとも言えるわけです。この例に代表されるように、コーヒーの持つ薬理作用の大部分がカフェインの作用であると言われています。

カフェインにはさまざまな薬理作用があることが知られています。
  1. 中枢興奮作用
    カフェインは中枢神経系(脳、脊髄など)を興奮させる働きがあります。これによって感覚受容(五感の感受性)や精神機能(頭の回転)の亢進をきたし、 眠気や疲労を除去する とともに運動機能を高めます。これが 眠気、倦怠感 に有効とされます。この作用はテオフィリン、テオブロミンなど他のメチルキサンチン類にも見られますが、カフェインの作用がもっとも顕著です。これはメチル基が増えることで脂溶性が増し、それによって脳へ移行しやすくなるためだと考えられています。
    余談ですが、医学薬学系の大学で学生向けの実習として次のようなものがよく行われます。学生を何グループかに分け、予め算数のドリルを制限時間付きでやってもらいます。そのあと、グループごとに普通のコーヒーとカフェインレスのコーヒーを飲んでもらいます。その後、もう一度算数のドリルをやってもらってコーヒーを飲む前と後の点数の変化を見ます。概ね、カフェイン入りのコーヒーを飲んだグループの方が成績が良くなりますが、中には「自分はコーヒーを飲んだ」という意識−一種の思い込み−で成績が上がる人もいるようです。このような現象はプラセボ(偽薬)効果と呼ばれる、一般的な現象の一つです。
    カフェインのこの中枢興奮作用はまず大脳皮質ついで延髄に働き、大量に投与すると脊髄の興奮も見られます。しかしあまりに過剰に投与するとけいれんをおこした後、死に至ります。
  2. 骨格筋に対する作用
    カフェインは骨格筋に直接作用して、筋肉の収縮を増強します。この結果、 疲労の軽減、活動性増大がおこります 。一方で過剰の投与により震顫(手などの震え)も起こります。
  3. 心臓に対する作用
    カフェインは心筋に直接作用して、収縮増加、拍数増加、拍出量増大をおこします。この作用は中枢作用とは逆にテオフィリンの方がカフェインよりも効果が大きいことが知られています。大量投与時には頻脈となり、不整脈が現れることもあります
  4. 利尿作用
    カフェインには腎臓の血管を拡張する働きがあります。腎臓は血液から老廃物を濾し取って尿を生成しますが、血管が拡張することで血流量が増し、この濾過を亢進させて 尿の生成が増加します 。このためカフェインの摂取によって利尿作用が現れます。腎性浮腫に対して有効とされるのは主にこの作用によると考えられます。この作用もテオフィリンの方がカフェインより強いといわれます。
このほかの作用として、 胃液の分泌を増大させる作用、基礎代謝量を亢進する作用 が知られています。また血管への作用は、どこの血管を見るかによって収縮させるか拡張させるかが変わりますが、脳血管に対しては収縮作用を示します。このことが偏頭痛や高血圧性頭痛に対して有効ではないかといわれています。

作用メカニズム

このように複雑な作用をもつカフェインですが、これらの作用が現れる理由として、次のようなものが考えられています。

カフェインはヒトの体内に存在するアデノシンと呼ばれる化学物質と非常によく似た構造をしています。アデノシンは、私たちの遺伝子でもあるDNAやRNAを構成する核酸の一部(核酸を作る4つの塩基のうちの1つであるアデニンは、アデノシンとリボースが結合している)であり、また体内でエネルギーとして利用されるATP(アデノシン3リン酸)という分子の一部にもなるという、生物にとってなくてはならない化学物質の一つですが、核酸やATPという形になっていない「アデノシンという分子」のままでも、さまざまな細胞に働きかけるということが、1980年頃からだんだん明らかになってきました。

脳などの神経細胞には、その細胞の表面にアデノシンを感知するセンサーとして働く分子を持つものがあることが発見されました。このセンサーはアデノシン受容体と名付けられました。細胞外のアデノシン濃度が高くなると、アデノシンがアデノシン受容体に結合して、その神経細胞に信号が伝えられます。このアデノシン受容体はさまざまな細胞に存在していますが、中でも重要だと考えられているのがドーパミン作動神経細胞と呼ばれる、覚醒や鎮静を司る神経系の細胞群です。この細胞にはアデノシン受容体の他に、ドーパミンという分子に対する受容体も持っていて、どちらかというとそのドーパミン受容体の方がむしろ重要だと考えられています。ドーパミンがこの細胞のドーパミン受容体に結合すると、精神が高揚し覚醒した、一種の興奮状態になると考えられています。このとき、同時にアデノシンがアデノシン受容体に結合していると、その興奮状態が少し抑えられます。

実際には、神経系の働きは極めて複雑なので、一概に「ドーパミン作動神経が働く=興奮」「アデノシンが働く=興奮の抑制」とは言い切れませんが、概ねそう考えてよい、という具合に考えてください。

カフェインはアデノシンによく似た構造を持つ分子なので、アデノシンの代わりにアデノシン受容体に結合することが出来ます。しかし形がよく似ているとは言えカフェインとアデノシンは別物で、カフェインは結合してもドーパミン作動神経を抑えません。むしろカフェインは、本来ならばアデノシンが結合すべきところに結合しているため、アデノシンの働きを邪魔(阻害)し、その結果としてドーパミン作動神経の働きが増強され、結果的に覚醒や興奮といった現象が起きると考えられています。

なお以前(90年代中〜後期まで)は、このようなアデノシン受容体の働きが十分には判っておらず、フォスフォジエステラーゼと呼ばれる、細胞のエネルギーを制御する酵素の一つを阻害することがカフェインが効くメカニズムとして重要だと考えられていました。しかしその後の研究で、アデノシン受容体阻害作用の方がフォスフォジエステラーゼ阻害作用よりも、より低い濃度のカフェインで働く主要な作用だということが示されています。

また、アデノシン受容体にはA1, A2A, A2B, A3という、少なくとも4つのタイプがあることが判っています。このうち、脳に多く見られるのはA1受容体(ドーパミンD1受容体を制御)とA2A受容体(ドーパミンD2受容体を制御)です。カフェインはこの両方の働きを阻害できます。A1とA2A受容体は互いの働きを抑えながら相互作用しているため、その作用はかなり複雑だと考えられていますが、眠気の覚醒にはA2A受容体の阻害が、興奮にはA1とA2Aの阻害の両方が、その原因になることが指摘されています。

カフェインの副作用、毒性

カフェインも過量の摂取によって体に害をなす作用が現れます。一般的に言う副作用や毒性です。

細かいことですが、本来「副作用」は「主作用」に対応する言葉です。主作用とは特定の治療の目的で薬を使うときに期待する、もっとも主要な作用のことですので、それ以外の作用は体に対して有益でも有害でもすべて副作用ということになります。しかしこれが転じて、薬を飲んだときに現れる有害な作用のことを指すようになっています。

大量投与時に現れる副作用として、 震顫、不整脈、虚脱、めまい、不眠、不安、瞳孔散大など の症状が挙げられます。また、一度に1グラム以上の摂取によって神経系や循環系に上述したような急性中毒症状が現れはじめ、致死量は約10グラムと言われています。ただし30グラムを摂取してなお回復したと言う例もあるようです。一般的なレギュラーコーヒー一杯に含まれるカフェインは大体 90-125mg と言われていますから、コーヒーだけならば一度に80杯程度飲むようなことがないかぎり、急性カフェイン中毒で死ぬことはないだろうという計算になります。

またカフェインに依存性があるかどうかということがしばしば問われますが、カフェインには軽度の精神依存性、判りやすく言えば 習慣性があります 。コーヒーをいつも飲んでる人の中にはコーヒーを飲めない状況で落ち着きがなくなったり、いらいらしたりするようになる人がいますが、それがこれにあたります。しかし、このカフェインの精神依存性はニコチンやアルコール、その他の非合法な麻薬などに比べると遥かに弱いものですし、ほとんどの場合は肉体依存(退薬時に体の痛みなどの苦痛を感じる)も伴わないため、 ほとんど問題にならない程度のものと考えられます。事実、禁煙はできなくてもコーヒー断ちについては、ほとんどの人が自分の意志だけで可能となるようです。

ただし一日に400mg以上(コーヒー3杯に相当)を常用している人の一部にはカフェイン禁断頭痛と呼ばれる、肉体依存様の一種の禁断症状が出ることがあります。これは、最後にカフェインを摂取してから12〜24時間経過すると偏頭痛様の症状が現れるもので、カフェインを摂取すると治まります。摂取しない場合は2〜3日程度、頭痛が持続することがありますが、それ以降は頭痛も治り正常に戻るため、医療上はそれほど問題とはされていません。

また、アルコールや麻薬などでは使っているうちに「効き」が弱くなる、耐性という現象が現れるため、使用量がどんどん増加してしまって取り返しの付かないことになることが知られています。このような薬物による耐性は、代謝耐性(肝臓がその薬物を分解する酵素をたくさん作るようになる)という末梢性の機構と、組織耐性(脳の神経組織に何らかの不可逆的な変化が生じる)という中枢性の機構の、2つの機構によって生じます。代謝耐性の方は普通に皆さんが飲む薬でも見られる現象ですが、組織耐性の方は麻薬などにのみ見られる現象です。カフェインの場合は代謝耐性も組織耐性も生じないことが判っており、麻薬などで見られるような、より強い効き目の強い薬物への移行も起こらず、飲用量の増加も多くの場合は起こらないと考えられています。

ただし、一方では常用する人の一部には「コーヒーが効かなくなってきた」と訴える人が存在するのも事実です。ただ、このような場合の多くは、精神疲労や不眠などが蓄積しており、コーヒー自体は一定の作用をしているのだけれど、飲む前の状態が悪化しているために前回飲んだときのレベルには到達しないことから、感覚的に「効かなくなった」と思ってしまっているものです。特に、カフェインには睡眠を妨げる作用がありますが、ほとんどのケースでは寝付きを悪くするだけでなく、眠りそのものを浅くすることが知られています。このため、就寝前にカフェインを摂取した結果、睡眠の質が悪くなって翌日日中の作業効率が落ち、それをカバーするためにカフェインを摂取してまた睡眠の質が悪くなり……という悪循環に陥りやすいことも指摘されています。ただし、これはカフェインそのものの耐性とは無関係な現象であって、むしろ生活習慣から来る問題です。

摂取に注意が必要な人

カフェインの摂取に注意が必要な人としては、
  • 消化性潰瘍など、消化器系に炎症疾患のある人
  • 肝機能が極端に低下している人
  • 普段から不眠・不安を訴えがちな人
  • 妊娠中の方
  • パニック症候群の患者
などが挙げられます。また、カフェイン摂取に対して敏感な体質の人も少数ながら存在していることも知られています。


ほかにも薬を飲んでいる場合などは気を付けなければならないことがあります。例えば 精神安定剤や抗不安剤を飲んでいる場合 には薬の効きが弱くなりますし、 テオフィリン製剤を飲んでいる場合には副作用が強くなる ことがあります。また病院で使う 抗潰瘍薬 の中には、逆にカフェインの働きを強めるものもあります。そのような薬を飲んでいる人はカフェインの摂取は控えるか、最低限お医者さんの指示を仰いでからにしてください。

コーヒー中のカフェイン濃度

カフェインはコーヒーノキの中でも特に種子、すなわちコーヒー豆に高濃度蓄積されています。その量は品種、産地、収穫年度、製品ロットなどによってまちまちですが、コーヒーの 生豆中にアラビカ種では0.9〜1.4%、カネフォーラ(ロブスタ)種ではそれよりも多くて1.5〜2.6% 含まれています。

リベリカ種ではアラビカと同程度、アラビカとカネフォーラの交配種であるアラブスタ種ではほぼ両者の中間の量だと言われます。またカフェイン以外のプリンアルカロイドはこれよりはるかに少なく、アラビカ種で大体カフェインの300分の1程度、カネフォーラ種では未熟果にごく少量検出される程度です。

 性状 のところで述べたように、カフェインは熱に安定ですから、焙煎の過程で分解や変性することはほとんどありません。しかし130℃以上で昇華が始まりますので、その量は焙煎により減少します。
このことから浅煎り豆の方がカフェイン含量は多いという説もありますが、その減少量については、220℃で16分(深煎りに相当すると思われます)の焙煎でも10%に満たなかったという報告があり、また焙煎による豆重量の減少のため、カフェインの重量%は結局、深煎り豆の方が若干多くなるという報告もあります。
実際のところ、焙煎豆中のカフェイン含量はアラビカ種の場合で0.9〜1.5%と 生豆の場合とほぼ同程度 で、かつ 焙煎によって濃度は相対的に増加する ということのようです。

もちろんこの増加は見掛け上のものです。もし浅煎り豆と深煎り豆を比べる場合、単位重量あたりのカフェイン量は若干増加しますが、単位 豆数 当りの量は若干減少するわけです。

最終的なカフェインの量は焙煎度よりはむしろ豆の品種(アラビカかカネフォーラか)豆の使用量や淹れ方に依存するのではないかと思われます。 コーヒー一杯当りのカフェインの量はレギュラーコーヒーで40〜180mg(一般的なブレンドでは90〜125mg)、インスタントでは30〜120mgくらい と言われています。抽出効率にはもちろん幅がありますが、焙煎豆に含まれるカフェインの40〜80%くらいが抽出されると思われます。カフェインの溶解度は温度の上昇によってもかなり向上しますので、一概に論議することはできませんがかなり高い効率だと考えてよいでしょう。


また量とは直接関係があるわけではありませんが、抽出したコーヒー液を放置して ゆっくりと冷却していくとカフェインはクロロゲン酸と複合体を形成して不溶化、析出し 、コーヒー液が濁ってきます。

カフェインの味

カフェインの味は前述した通り苦味です。確かにカフェインはコーヒーにとって重要な成分ですが、 カフェインレスコーヒー であってもコーヒーの苦みが無くなってしまうわけではありません。またカフェインの苦味閾値は0.2〜1.8mM程度と言われており、それほど強い苦味とはいえません。これらのことから調べられた結果、 コーヒーの苦味のうち10〜30%程度がカフェインによる ものであると考えられています。

またあくまで推測に過ぎませんが、カフェインが増えることで、恐らく後を引かないすっきりした質の苦味が増えると思われます。これはこのような質の苦味が高温での抽出で顕著に増えること(溶解度の向上)、短時間で抽出されてくること(抽出効率が高い)、アラビカより苦味に特徴のあるカネフォーラ種に多く含まれることからの推察ですが、実際に確認しているわけではありません。

カフェインレスコーヒー

カフェインレスコーヒー(デカフェ)は通常、 生豆からカフェインをあらかじめ抽出除去して 作られます。この技術は20世紀の初めドイツで開発されたそうです。近年アメリカでは特にその消費量が大幅に伸びています。我が国でも最近需要が伸びつつあるようです。ヨーロッパではカフェインレスの場合のカフェイン残留量は0.1%以下(インスタントでは0.3%以下)と定められ表示が義務づけられていますが、我が国にはまだ規準が設けられてはいません。
その主な方法には1.溶剤抽出法、2.水抽出法、3.超臨界抽出法などがあります。
  1. 溶剤抽出法
    もっとも基本的な脱カフェイン法で、蒸気で膨潤させた生豆から 有機溶媒 を用いてカフェインを抽出します。用いる有機溶媒としてはベンゼン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどが用いられてきましたが、近年では溶媒の残留による安全性やカフェインの溶解性などからジクロロメタンが多く用いられているそうです。
    この方法はコストはそれほど高くありませんが、やはり安全性の面と、カフェイン以外の成分も抽出されてしまうという、選択性の問題があります。
  2. 水抽出法
    この方法は溶剤抽出法の問題である残留による安全性などの問題を解決するため、 有機溶媒の代わりに水を用いて脱カフェインを行う ものです。安全性と経済性のために現在もっとも多く利用されているそうです。カラムに生豆を充填し、そこに水を通してカフェインを含む水溶性成分を抽出します。さらに、その水を有機溶媒で抽出することで、カフェインを選択的に抽出します。
    この方法はコストが安く、生豆が直接有機溶媒に触れないことから、安全性も高いと考えられています。また選択性には問題がありましたが、カフェインを有機溶媒抽出した残りの水を循環させて再利用することで、カフェイン以外の成分の損失を避け、品質も以前と比べると大きく向上しています。
  3. 超臨界抽出法
    ヘリウム、水素、二酸化炭素などの気体に高圧をかけると液体になることは皆さんご承知かと思いますが、ここである一定以上の温度と圧力の条件により、気体と液体の中間の性質をもつという状態を作ることが可能です。このような状態を超臨界状態と呼び、またこのような状態にある物質を超臨界流体と呼びます。この状態において各種の気体は通常と異なる、変わった性質を示すようになり、工業的に様々に応用されています。
    二酸化炭素を超臨界状態にしたもの、すなわち 超臨界炭酸ガス は、上述した有機溶媒と同じようにいろいろな(主に脂溶性)成分の抽出に用いることが出来ます。しかも有機溶媒と異なり残留による危険性を考える必要がなくなります。そのため、有機溶媒の代わりにこの超臨界炭酸ガスを用いた脱カフェインの方法が近年開発されました。生豆を蒸気処理して水分を15〜30%に加湿した後、120〜180気圧の圧力容器内で超臨界炭酸ガスを80℃で5〜30時間循環させ、カフェインを抽出します。生豆の水分含量が低いとカフェインより先に揮発性成分が除去されてしまうため、あらかじめ加湿することが重要です。
    この方法は安全であり、さらに条件を検討することでカフェイン選択的な抽出が可能となっていますが、高圧装置が必要となるためイニシャルコストが高くなるという問題があります。
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Yukihiro Tambe,
2009/01/19 1:44
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Yukihiro Tambe,
2009/01/19 1:49
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