発表の概要

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発表者:
白井 述(新潟大学)

タイトル:  
乳児期における「動きを見る」ことの意味

概要:  
「動きを見る」機能、すなわち運動視の発達過程について、自身の関わってきた2つの乳児研究の成果を中心に報告したい。最初の報告(Shirai & Imura, 2014, Psychol. Sci.)では、運動視の機能が個体発生の過程でどのように変化するのか、特に、乳幼児期における身体運動機能のドラスティックな変化と関連して、運動視の機能が質的にも量的にも変化していく様子について紹介する。2番目の報告(Shirai & Imura, 2014, Exp. Brain Res.; Shirai & Imura, 2016, Sci. Rep.)では、静止画から喚起されるダイナミックな運動事象(implied motion)の知覚の萌芽となる機能が、乳児期初期に発現することを示した一連の研究成果について報告する。2つの報告を通して、乳児期における運動視の発達過程が持つ適応的な意義について考察したい。

キーワード: 
   乳児、運動視、適応的意義

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発表者:
岡崎 聡(京都市立芸術大学)

タイトル:  
音と音の同時性の知覚が従う法則および基礎過程

概要:  
音と音の同時性の知覚は,音声コミュニケーションや音楽体験の基礎をなしている。例えば,音声の子音カテゴリーは,同時性の知覚によって決定されることが示唆されている。また,時間的に進行する音楽においては,同時性の知覚が重要であることは自明である。これら音声や音楽の基礎過程として,あるいはその過程自体を研究する聴覚研究の対象として,同時性の知覚に関心が持たれてきた。一方で,同時性の知覚について体系的な測定は行われてこなかった。本研究は,あらためて,同時性の知覚について,周波数距離,周波数領域を要因として体系的に測定した。本発表では,測定の結果明らかになった同時性知覚の法則およびその背後にあるメカニズムについて,得られた知見を報告する。


キーワード: 
   聴覚心理学、同時性の知覚、同時性判断課題、知覚的融合

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発表者:
高橋 徹(早稲田大学)

タイトル:  
マインドフルネスの体験と、その効果、認知神経科学的観点から見たメカニズム

概要:  
近年、マインドフルネスという心のあり方を養うことで、うつや不安などの心理的問題が改善し、Well-beingが高まることが多くのランダム化比較試験によって示され、注目を集めている。マインドフルネスとは、「今ここの体験に対して、評価判断せずに注意を向けることによって得られる気づき」と定義される。その概念のルーツは仏教にあり、人生における苦悩を和らげるために編み出され、確立されていった心の使い方である。その苦悩を和らげるための方法論が、現代において科学の対象となり、その効果とメカニズムが実証的な方法によって検証されてきている。
本発表では、マインドフルネスと、その対となるような概念であるマインドワンダリング(目の前のことから注意が逸れ、関係のない思考をすること)を解説し、マインドフルネスの効果、メカニズムに関する主要な研究をレビューする。マインドフルネスは、注意制御や感情制御などといった、これまで心理学において研究されてきた複数の概念と関連しており、それらの基礎的な知見とどう接続することができるか議論したい。また、概念的な理解のみではマインドフルネスを理解することはできないため、簡単な実践・エクササイズを体験する。


キーワード: 
   マインドフルネス、うつ・不安、マインドワンダリング、注意・感情制御、認知神経科学

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発表者:
三好 正剛(千葉大学)

タイトル:  
実験心理学者のためのPython

概要:  
研究を効率よく進めるためには、さまざまな実験を手軽に制作できることが望ましい。これを達成するいち手段として、Jupyter NotebookやPsychoPy、Pandasを用いた実験制作環境の利用が挙げられる。Jupyter Notebookはデータ分析に広く用いられるPythonの開発環境である。Jupyter Notebookは対話的処理に優れるため、実験プログラムを1行単位でデバッグしながら制作することができる。PsychoPyはMatlab/PsychToolBoxと人気を二分する心理学実験ライブラリであり、実験刺激を容易に作成することができる。Pandasはデータを数表として保持・操作できるライブラリであり、直感的に実験のアウトプットを作成することを可能にする。これらのツールを組み合わせることにより、プログラムやウィンドウの出力を逐一確認し、試行錯誤を繰り返しながら実験プログラムを制作できる。本発表ではこれらの使用例について紹介するとともに、実験プログラムの設計や、刺激呈示と反応取得におけるアンチパターンについて議論する。

キーワード: 
   Python、PsychoPy、実験心理学


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発表者:
辻田 匡葵(東京大学)

タイトル:  
恒常法を用いた心理物理実験に対する一般化線形混合モデルの適用

概要:  
心理物理学研究では,実験によって得られたデータから主観的等価点 (PSE) や丁度可知差異 (JND) を算出し,独立変数がそれらの指標にどのような影響を及ぼすかを検討する。恒常法を用いる場合は,実験参加者毎にフィッティングした心理測定関数からPSEやJNDを算出し,それらの平均や標準偏差を求め,統計的仮説検定を行う,というのが一般的である。しかしながら,このような古典的な手法は適用条件が厳しいため,制限された条件の中で実験を立案しなければならない。また,見過ごされてきた統計的な問題点も存在する。本発表では,近年様々な分野で用いられてきている一般化線形混合モデルを使って,恒常法による心理物理実験をこれまでとは異なる手法で分析する方法を紹介する。発表者自身の研究への適用例やRでの分析方法についても言及する。

キーワード: 
   一般化線形混合モデル、心理測定関数、反復測定、閾値、R


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発表者:
清水 求(千葉大学)

タイトル:  
連続フラッシュ抑制を駆動する単眼性処理過程の特徴

概要:  
  連続して描き替わる高コントラストの視覚刺激が一方の眼に提示されると強力な抑制が生じ、他眼に提示された検査刺激が長時間にわたり知覚されなくなる。連続フラッシュ抑制として知られるこの現象は閾上の視覚刺激に対する知覚的優勢を柔軟に操作できる手法として広く用いられているが、どのようなメカニズムによってこのような抑制が生じているのかは明らかでない。特定の刺激属性に対する選択的な抑制の存在が指摘されているが、これは必ずしも刺激表象の抑制である両眼性処理過程の寄与を意味しない。本研究では単眼性処理過程の寄与を明らかにするため、視覚刺激とそれを提示する眼の条件を操作することによって抑制の強さがどのように変化するかを検討した。検出時間および検出率を指標とした実験結果は刺激提示眼を固定することで強力な抑制効果が得られることを示しており、単眼性処理過程の寄与を明確に指摘するものである。一方で、抑制の立ち上がりが非常に素早いため、知覚的優勢を固定したまま刺激提示眼の操作が可能であることが明らかとなった。

キーワード: 
  連続フラッシュ抑制、異眼間抑制



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発表者:
大西 まどか(東京女子大学)

タイトル:  
文字の空間周波数特性と読みやすさ

概要:  
読書は、最も重要な日常課題の一つである。新聞や本だけでなく、看板や飲食店のメニュー、商品の値札やバスの行き先など、さまざまな場面で文字による情報提供がなされている。それらを読み理解することは、日常生活を送る上で必要不可欠な行動である。約164万人の視覚障害者人口を抱え(社団法人日本眼科医会, 2009)、さらに超高齢社会を迎えた日本では、より読みやすい文字で情報を提示することが求められる。
読みやすい文字は、どのようなものであろうか。文字のデザイン要素は非常に多岐に渡っており、一度にそれらの要素を網羅的に検討することは不可能に近い。また、「読みやすさ」も、読みやすいと感じるかどうか、すばやく読み取れるかどうか、文字やそれを見る人の状態が良くないときにも正しく読み取れるか等、複数の定義が存在する。
本発表では、文字を読むために重要な空間周波数帯域やその量といった空間周波数的な特性と、それを見る人間のコントラスト感度や視力等の視覚特性をもって、文字の読みやすさを説明することを試みた研究を複数紹介する。 

キーワード: 
 文字、読みやすさ、フォント、空間周波数

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発表者:
将輝(慶應義塾大学)

タイトル:  
視線知覚の諸相

概要:  
私たちは,コミュニケーションにおいて,他者が注意を向けている対象が何であるかを推測し,その対象を両者の間で意味的に共有しようとする.このような事態においては,他者の視線方向,指差し,頭部方向,言語報告等の行動指標を手がかりに,対象が置かれた地点等が推測されていく.特に,視線方向は,発達初期から手がかりとして用いられており,重要な手がかりであると考えられる.視線知覚とは,他者の視線方向から注視地点を推測することを表す.視線知覚に関する研究は,Wollaston (1824)の報告や,Gibson & Pick (1963)による実験心理学的検討に始まるとされ,現代においても多くの研究者によって行われている.本発表の前半では,これまでに行われてきた視線知覚に関する形態学的研究,発達心理学的研究,心理物理学的研究を概観し,その要点と解決すべき点を考察する.本発表の後半では,発表者が関心を寄せている空間知覚や数理心理学の分野、発達障害児の知覚特性と,視線知覚の関係について議論したい.

キーワード: 
視線知覚、視線理解、数理、発達

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発表者:
箕谷 啓太(東京工業大学[柏野 牧夫(東京工業大学・NTT)との共同研究]

タイトル:  
時間間隔の知覚と生成の相互作用

概要:  
数百ミリ秒から数秒までの時間間隔処理は、音楽演奏やスポーツなどにおいて重要である。この時間間隔処理には知覚・生成の2側面が密接な関係にあり、相互作用が存在すると考えられる。発表者らは、この時間間隔の知覚・生成間相互作用について調べている。本講演では、まず、生成が知覚に与える作用について、聴取者自身が生成した音の時間間隔の知覚を調べた研究を報告する。次に、知覚が生成に与える作用について、聴覚フィードバック(AF)の有無と遅延が時間間隔生成に与える効果を調べた研究を報告する。以上の研究から、自身が生成した時間間隔の知覚は受動的に聴取する場合と比べ秒以上では精度が悪化すること、AFの存在は生成の精度を向上させること、AFの遅延に対する生成の補償は完全には行われないこと、この遅延が200ミリ秒程度になると生成のばらつきが増大すること等が分かった。これらの結果から推察される時間間隔の知覚・生成処理の関係性について議論したい。

キーワード: 
時間知覚、知覚と生成、聴覚フィードバック

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発表者:
市村 大輔(平成扇病院 / 電気通信大学)

タイトル:  
なぜ理学療法士が数値シミュレーションをするのか?

概要:  
社会的な背景もあり、リハビリに対する期待や要求は年々高くなってきている。しかし、実際のリハビリ現場では体系的に確立された介入方法が必ずしも存在しない。様々な症状を呈する患者に対し、試行錯誤的な介入を実施しているのが現状である。その様な実際の現場の苦難や苦労等を動画を交えながら紹介する。さらに、リハビリ応用を見据えた神経筋骨格系モデルの歩行シミュレーションを紹介する。小脳の神経回路モデルと下肢筋骨格系動力学モデルからなる二足歩行の数理モデルを構築し、その挙動を計算機シミュレーションによって検証した。また、安定した歩行を実現するための神経振動子のパラメータを自動的に獲得するために、遺伝的アルゴリズムを使用し、実際に歩行動作が獲得できることを示した。今後、患者の個人因子等、数多くのパラメータを含んだ精緻なモデルを構築し、計算機上でその挙動を再現することで、計算機シミュレーションによるリハビリの可能性を検討していく。臨床と理論的研究をどのように橋渡ししていくのかについて議論していきたい。

キーワード: 
リハビリ 数値シミュレーション 二足歩行 小脳モデル 筋骨格系動力学モデル

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発表者:
大北 碧(専修大学)

タイトル:  
ヒトの音声シグナルはウマの行動変容に影響を与えるのか?

概要:  
ウマは約5500年前に家畜化された動物であり,その目的はヒトや物を運搬するためと言われている。また,ウマの特筆すべき用途は,戦争における機動力となった点であろう。現在では戦争馬の指導法を活かした馬術競技がオリンピックなどでも行われている。
ところで,このような使役動物としての用途のためには,ヒトの要求に対して,適切にウマが応える必要がある。前述の馬術競技においても,ヒトの出す音声や手綱による操作といったヒトのシグナルを受けて,ウマが行動を変えるとされているが,これまで実証されていない。そこで本研究では,馬術競技においてヒトの音声シグナルがウマの行動変容に影響を与えるのか検討した。まだ研究途中ではあるが,試行を重ねるとヒトの音声シグナルとウマの行動変容の時間的接近が見られたことから,ヒトの音声シグナルによってウマが行動を変容させることが示唆された。

キーワード: 
 ヒトーウマインタラクション 音声シグナル オペラント条件づけ

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発表者:
藤井 香月(千葉大学)

タイトル:  
キュウカンチョウとハトにおけるオブジェクトベースの注意の検討 -背景オブジェクトの効果と種差について-

概要:  
1つのオブジェクト全体に対して注意が向くオブジェクトベースの注意過程は,これまでヒトやチンパンジーにおいて確認されてきた。本研究では,キュウカンチョウとハトにおいて,オブジェクトベースの注意が見られるか検討した。背景オブジェクトとして同色の2本の長方形を用いた場合,手がかり刺激(cue)後の標的刺激(target)への反応時間は,キュウカンチョウではcue と同じ長方形内にtargetが出現するWithin 条件の方が,cueとは異なる長方形内にtargetが出現するBetween 条件よりも短くなり(オブジェクト内利得),オブジェクトベースの注意を示す結果となった。しかし,ハトでは2条件間に差はなかった。そこで,背景オブジェクトを2本の異なる色の長方形に変えて再度実験したところ,ハトでもtargetへの反応時間にオブジェクト内利得が生じた。本発表では,これらの結果をもとに,背景オブジェクトによる結果の違いと種差について考察する。

キーワード: 
 オブジェクトベースの注意 特徴ベースの注意 キュウカンチョウ ハト

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発表者:
関口 勝夫(千葉大学)

タイトル:  
複数ランドマークにおける冗長な空間情報の使用について ―ヒトとハトの類似点と相違点―

概要:  
ランドマーク(LM)はゴールまでのベクトル情報として定義され,LM-LM間とLM-ゴール間の相互的位置関係は幾何学情報として定義される。これらの空間情報が同ゴールの冗長な手がかりとなるような場合でも,ハトは両方を学習して使用する。ヒトも同様に複数LMとゴール間に関する冗長な空間情報を使用するかを検討するため,課題の空間次元(オープンフィールド・コンピュータモニタ)とLMの形(矢印型・非対称型)を操作したゴール探索課題を行った。いずれの場合もベクトル情報の使用は変わらずみられたが,幾何学情報の使用は,フィールド上よりもモニタ上のほうが,さらにLMが矢印型よりも非対称型のときのほうが多くみられた。この結果はハトと同様にヒトも冗長な空間情報を学習し使用することを示しているが,幾何学情報の使用は実験間で相違がみられたことから,ヒト特有の認知過程やベクトル情報との刺激競合が関与している可能性を考えられる。

キーワード: 
 複数ランドマーク ベクトル情報 幾何学情報 刺激競合 ヒト ハト

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発表者:
徐 貺哲(千葉大学)

タイトル:  
視線追跡を用いた顔への注意と対人印象の関係の検討

概要:  
本研究では複数の印象評定項目によって、目、鼻、口などの顔の各部位への観察行動が異なるか否か、また、各部位の観察時間が形成される印象に影響するか否かを、眼球運動データを用いて二つの実験で検討した。実験1では、印象評定項目や刺激写真が異なった場合において、観察行動が同様であっても、各部位の観察時間の違いによって形成される印象が異なることが分かった。実験2では、実験1の結果を踏まえ、強制的に特定の部位を観察させることによって、顔の印象を操作できるといった仮説を立て検証した。分析の結果、強制的に着目される部位を操作した場合には直接的な効果はなかったが、強制的に着目される部位を操作することによって、その後の観察行動次第では印象が変化することが示された。

キーワード: 
 顔の印象 顔観察 アイトラッキング

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発表者:
康 允範(千葉大学)

タイトル:  
視覚の運動情報がラウドネスに与える効果

概要:  
視覚や聴覚などの感覚器官は互いに密接な関係があり,それぞれの感覚に影響を与えることで知られている。この働きは感覚間相互作用と呼ばれているが,反応速度が早まったり感度が上昇したりする促進と,その逆の抑制が確認されており,刺激の組み合わせによって様々である。このように人は,刺激の特性によって知覚処理が多種多様に変化する。その中でも「ヒト」に対する人の知覚処理は,特別なものだと考えられている。本研究では,人間が知覚する中でも特異なものであるとされる「ヒト」の動作 (運動情報) とラウドネス(主観的音量)の間に感覚間相互作用が存在するのかどうか,また,存在する場合にはどのような効果であるか検討することを目的として,音付きの手叩きの動作とその音量ならびに動作の激しさを操作して実験を行った。結果,視覚の運動情報とラウドネスの間に相互作用は存在し,視覚の運動情報の激しさによって主観的音量が変化する可能性が示唆された。

キーワード: 
 視聴覚 感覚間相互作用 ラウドネス

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発表者:
小原 慶太郎(早稲田大学 / RIKEN BSI)

タイトル:
 視覚的注意が下側頭葉野の神経応答に与える影響の解明

概要:
特定の空間や物体に対して注意を向けることで、向けた対象に対する検出速度の短縮や検出精度の向上が生じることが知られている。行動実験によって確認されてきたこの注意の効果は、例えば視覚的な注意であれば視覚野の細胞の活動が、注意によって変化することによって生じている事が知られている。具体的に注意が神経応答のどのような側面に変化を及ぼすかという事については、視覚野毎で理解の多寡が異なる。中でも物体認識に関わる腹側視覚路の最終段に当たる下側頭葉野(IT野)においては、物体に対する注意がIT野細胞の応答強度を上げることが示された以外には、注意がIT野に与える影響については不明な点が多い。本発表では注意がIT野の神経応答に与える影響について、細胞外記録を用いて得られた新しい知見について報告し、そこから考えられる腹側視覚路内の神経回路に対する注意の影響について議論する。

キーワード:
視覚的注意 腹側視覚路 細胞外記録

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発表者:
 真田 原行(東京大学)

タイトル:
 動機づけによる視覚性ワーキングメモリ処理向上過程の解明

概要:
目的:動機づけはワーキングメモリ(WM)機能を向上することが知られており、先行研究ではその機序を担う脳領域の特定が進められてきた(例. Gilbert & Fiez, 2004)。しかしWMの時間的な処理過程の中で、いつ動機づけがその機能を向上するのかは未検討であった。そこで本研究では、時間分解能に優れる事象関連電位(ERP)を用い、動機づけがWM機能を向上するプロセスを明らかにした。
方法:金銭的報酬(高・低報酬)によって視覚性WM課題への動機づけを操作し、課題遂行中の事象関連電位を測定した。そしてWM処理の各過程(記銘・保持・検索)に対応するERP成分を抽出し、いつ報酬条件が影響を及ぼすのか分析した。
結果:視覚性WM成績は、高報酬条件において有意に向上した。またERPでは、保持などの高次過程に対応する成分で高報酬時に有意な振幅増加がみられたが、知覚など低次過程では影響が観察できなかった。
結論:動機づけは高次過程に影響することでWM機能を向上することが明らかとなった。しかし動機づけの与えられ方によっては異なる機序で影響が及ぶ可能性もあり(Kiss et al.,2009)、その点について議論したい。

キーワード:
 ワーキングメモリ 動機づけ 事象関連電位 実行機能

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発表者:
 佐藤 夏月(中央大学)

タイトル:
 乳児期におけるcast shadow知覚の発達

概要:
  cast shadowとは、物体が照明を遮ることにより他の物体に落とされた暗い部分、いわゆる影である。成人では影の中を周囲より照明量が少ない領域と自動的に判断し、「影の中では物体表面の明るさは暗くなる」という前提を持つが、本研究では乳児が成人同様にこの前提を持つか検討した。さらに、成人を対象とした研究から明らかにされているcast shadowを知覚するための2つの必要条件 (Cavanagh & Leclerc, 1989) を、乳児が有するか検討した。これらを検討する上で、本研究では5-8ヶ月児を対象に、注視行動を指標とする親近化法を用いた複数の実験を行った。今回の発表では、これらの一連の実験結果について報告するとともに、乳児を対象とした視知覚の研究法について紹介する。 

キーワード:
 cast shadow,乳児,視覚発達,親近化法,実験心理学

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発表者:
 中村 航洋(慶應義塾大学

タイトル:
 無自覚的魅力評価に伴う魅力対象への注意バイアス 

概要:
 我々はアートや自然,人の顔など,多様な対象に魅力や美しさを感じる。感性心理学や神経美学による研究は,人が主観的に経験する魅力や美的感情の背後にある評価過程を明らかにしつつあるが,対象の知覚から魅力や美の意識的経験に至るまでの間で生じる評価過程を体系的に理解するには至っていない。近年,魅力や美的経験の主観的報告に先立って,魅力的な対象に対する視覚的注意バイアスが生じていることが報告されるようになり,魅力や美は従来考えられていたよりも急速かつ無自覚のうちに評価されている可能性が示唆されるようになった。本講演では,我々にとって最も身近な魅力評価対象の1つである顔に対しては,顔を意識的に知覚する以前に魅力的な顔に対する注意バイアスが生じ,顔に対する視覚的アウェアネスが変容している可能性を示す発表者自身の一連の研究について紹介する。 

キーワード:
 感性心理学,顔魅力評価,注意バイアス,視覚的アウェアネス

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発表者: 
 澤山 正貴(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

タイトル:
 多様な研究手法を用いて人間の視覚機能を理解する試み

概要:
 我々人間は眼や耳、皮膚などの五感センサを用いて物理世界で生じる事象を符号化し、その意味的情報を認識している。視覚に関しては、網膜に投影された光線場を脳が読み解き、物理世界にはどんな物体があるか、そしてその物体はどのような質的状態かを認識する。こうした脳の情報処理機構を明らかにするため、実験心理学や神経生理学の分野では古くから数多くの研究が行われてきた。一方、"脳"の情報処理機構の解明という制約を外すと、任意の光線場から意味的情報を推定する試みは、コンピュータビジョン (CV)の分野でまさに行ってきたことである。また、光線場から物理世界の意味的情報を推定する問題において、物理世界で生じた事象がその領域にどのような像を結ぶかという尤度は、コンピュータグラフィックス (CG) の分野で行なっている物理シミュレーションそのものである。光点の明滅のような単純な事象だけでなく、物理的に複雑な事象に対する視覚情報処理への関心も高まる中、こうした様々な研究分野の専門家が力を合わせて問題を解こうとする試みが近年数多く報告されている。本講演では、多様な研究手法を用いて人間の視覚機能を理解しようと試みる先行研究を概観するとともに、こうした観点から発表者自身が近年行っている研究について紹介する。

キーワード:
 実験心理学、心理物理学、神経生理学、コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックス、質感認知

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発表者: 
 山本 浩輔(慶應義塾大学)

タイトル:
 能動的および受動的多感覚処理過程における時間情報統合メカニズム

概要:
 時差をもった異種感覚刺激ペアの反復呈示によって,時差への順応が生起し,より大きな時差が同時と判断されるようになる。このような主観的同時性の再較正現象は,視聴覚や触覚という受動的感覚モダリティ間のみならず,運動とその感覚フィードバックといった能動的多感覚処理事態においてもその生起が確かめられてきた。従来の知見では,マガーク効果などの感覚間相互作用と主観的同時性の相関から,主観的同時性は多感覚情報の統合過程における時間情報処理を反映したものと考えられてきた。一方で近年の研究では,両処理過程が乖離したものであることが示唆されており,順応により変化する主観的同時性が,一連の知覚—認知過程においてどのような情報処理を反映したものであるかについては,未だ検討の余地が残されている。本研究では能動的および受動的モダリティの時間的再較正とトップダウン型注意との関連の検討を通して,知覚的時間情報処理メカニズムの階層性,および能動的・受動的時間情報処理メカニズムの相似性について検討する。

キーワード:
 多感覚情報処理,時間的再較正,同時性判断,時間順序判断

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発表者:
 井田 佳祐(早稲田大学)

タイトル:
 日英バイリンガルの機能的音韻単位の検討

概要:
 ヒトが発話をする前には,脳内で発話のための準備的処理が行われる。発話の準備処理に使用される音の単位は機能的音韻単位と呼ばれており,その単位の大きさは言語によって異なることが知られている。例えば,英語母語話者は音素を,中国語母語話者は音節を,そして日本語母語話者はモーラを単位として処理を行うことが示されている。近年,日本語と英語,中国語と英語のように,機能的音韻単位が異なる2言語を話すバイリンガルの発話準備についての知見が集積しつつある。本発表では日英バイリンガルが英語と日本語を発話する際に使用する機能的音韻単位と英語力の関連性について検討した研究を紹介する。マスク下プライミング音読課題による検討の結果,英語の発話準備に使用される音韻単位は英語力により異なり,英語力の低いバイリンガルはモーラを,英語力の高いバイリンガルは音素を使用することが示された。一方,日本語の発話準備においては,英語力に関わらずモーラが使用されていた。このことから,英語の発話準備処理に使用される音韻単位は,当初は日本語の単位であるが,英語力の上達により英語の音韻単位に変化することが明らかになった。また,音素単位の処理が可能な英語力の高いバイリンガルも日本語の発話においてはモーラを使用することから,機能的音韻単位は発話する言語に依存して調整されることが示された。

キーワード:
 バイリンガル,機能的音韻単位,音素,モーラ

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発表者: 
 浅井 智久(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

タイトル:
 知覚ー運動ループに生まれる自己表象

概要:
 私たちが感覚入力として外界から受け取る情報には,「自己由来の成分」が含まれている。この自己由来の感覚情報は様々な利用価値があるので,「他者や環境由来の成分」とは区別されて処理される必要がある。例えば,視覚フィードバックを利用しながらリーチング運動を行うような状況(視覚誘導運動)では,その視覚情報が自分の運動の結果であるという「帰属」(自他区別)をすることで初めて,リーチングに視覚情報を用いることが可能になる(フィードバック制御)。このような知覚ー運動のカップリングは,ウィリアム・ジェームズの時代からたびたび言われてきたが,近年になって,両者を媒介する機能の存在が議論されるようになってきた。つまり,感覚入力を運動出力に変換する際には,自他帰属というモジュール(いわゆる主体感)が媒介している可能性がある。この「自分がその行為をまさに行っている感じ」が,知覚-運動ループの中でどのように立ち上がるのか,どのような役割を果たしているのかについての実験結果を紹介し,自己という表象の成り立ちについて議論したい。

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発表者: 
 井関 龍太(理化学研究所)

タイトル:
 認知的制御レベルでの行動的慣性

概要:
 ある行動を維持することには,同じ行動を続けようとする慣性が伴う。このような慣性の働きは,運動反応のレベルに限られず,認知的制御のレベルでも作用すると考えられる。本研究は,間断なく連続的な課題要求によって,認知的制御のレベルで行動上の慣性からの脱却が難しくなることを実証する。具体的には,絶え間ない反応要求を行うことによって,同時課題における反応の開始には違いがないが,停止のみが遅延する ことが明らかになった。一連の実験の結果から,行動上の慣性が認知的制御のレベルに働きかけること,その作用は間断ない連続的な反応要求によって顕在化すること,その効果の現れ方は目標構造に依存することが明らかになった。

キーワード:
 認知的制御,同時課題,保続

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発表者: 
 岡崎 聡(千葉大学)

タイトル:
 2純音の同時性判断における周波数距離の影響

概要:
 同時性は,時間順序,時間の長さ,時間の速さの成立に不可欠である。この最も基本的な時間情報である同時性を人の聴覚はどのように処理しているのだろうか。発表者らは初めて,2純音の同時性判断が2音の周波数距離の関数としてどのように振る舞うかを量的に記述した。本発表では,聴覚における同時性判断の特性の理解が進んでこなかった理由について,発表者らの考えを紹介する。また,得られた結果から,同時性判断過程の可能な生理学的説明を考察する。 

キーワード:
 知覚的融合,蝸牛,聴覚

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発表者: 
 弘光 健太郎(中央大学)

タイトル:
 身体所有感覚変容の要因に関する検討—症例研究と実験心理学的研究によるアプローチ—

概要:
 わたしたちは自己の身体が‘自己’に帰属しているという身体的自己意識を揺るぎない感覚として持ち合わせている.なかでも,自己の身体を自己が所有しているという感覚を身体所有感覚(body-ownership)という.近年の研究においてこの身体所有感覚の変容について実験的に検討されており,視覚や触覚,前庭感覚,自己受容感覚といった感覚モダリティの統合により成立することが示されている.本発表では,感覚モダリティ間統合という身体所有感覚の成立前提をふまえた上で,身体所有感覚の機序について臨床研究と実験心理学的研究によって得られた知見を提供する.まず臨床研究では脳損傷により覚醒下手術中に体外離脱体験(out-of-body experiences: OBEs)を呈したケースを報告する.実験心理学的研究では,Ehrsson (2007) による体外離脱体験の実験的誘発パラダイムを用いて,体外離脱体験の実験的誘発に視点位置がどのように影響するかを検討した.さらに,バーチャルリアリティを利用した視点位置の変容が身体サイズおよび身体所有感覚の変容に寄与するかについて検討した結果を議論する. 

キーワード:
 身体的自己意識,身体所有感覚,体外離脱体験,感覚間統合

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発表者:
 小早川 睦貴(東京情報大学)

タイトル:
 パーキンソン病における行動異常とコミュニケーション機能

概要:
 パーキンソン病は運動障害を主症状とする疾患だが,様々な認知機能にも低下がみられることがわかってきた。一部の症例では行動異常がみられることが報告されている。こうした日常行動の異常について,心の理論や意思決定といった機能から検討した。心の理論課題では,パーキンソン病患者は視線から他者の心理を読み取ることが困難であることが示された。また,意思決定課題では,報酬と罰に応じて自己の行動を制御することが困難であることがわかった。こうした機能低下の性質やメカニズムについて,パーキンソン病の脳構造の異常との関係も含めて考察する。

キーワード:
 パーキンソン病,意思決定,心の理論

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発表者: 
 上田 彩子(理化学研究所)

タイトル:
 化粧と顔知覚ーなぜ化粧をするのか?ー

概要:
 顔の化粧は,通文化的にも,歴史的にも,最もポピュラーな美容法として用いられてきた方法であり,目の輪郭や眉の形状などの顔の形態特徴を直接的に操作することができるツールとして知られている。これまでの化粧をテーマに取り組まれた研究の多くは,化粧の本来の目的である,魅力の向上効果に注目がされてきたが,効果の生起メカニズムや,顔知覚における他の側面への影響についてはあまり検討されていない。本研究では,化粧効果のメカニズムのひとつとして,化粧操作による顔の示差性の減少があると仮説だて,顔の再認課題を用いて検討した。その結果,より示差性が低くなる化粧条件で顔の再認成績が低くなり,化粧による顔の示差性の変化が,顔認識プロセスに影響を与えることが示された。この結果は,化粧効果が魅力の向上に限定されず,顔認識の他の側面にも影響を与えうるものであることを示唆している。

キーワード:
 化粧,顔知覚,視線検出

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発表者: 
 西口 雄基(東京大学)

タイトル:
 注意焦点範囲に対する感情刺激・感情状態の影響

概要:
 空間的注意の配分されている範囲である注意焦点の範囲は環境や個人の意図に応じて変化することが知られている。近年の研究では、注意焦点の範囲に対する感情の影響が注目されている。本研究では悲しみ顔刺激及び不安感情状態が注意焦点の範囲に与える影響を検証した。Digit-parity課題を用いた2つの実験の結果、悲しみ顔刺激を  500ms呈示した場合には参加者の感情状態にかかわらず注意焦点の範囲が狭くなることが分かった。また、悲しみ顔刺激を1000ms呈示した場合、不安の低い参加者においてのみ注意の範囲が狭くなることが分かった。本研究の結果から、注意焦点に対して感情刺激と感情状態が異なる影響を与えている可能性が示唆された。

キーワード:
 不安、ネガティブ感情、注意

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発表者: 
 相田 紗織(東京海洋大学)

タイトル:
 2次元刺激と3次元刺激の数量比較

概要:
 人間は日常3次元空間で数量知覚を行っている。従来の数量知覚研究は、構成要素が平面上に分布する2次元刺激を使うことが多く、構成要素が奥行きをもった3次元刺激での数量判断は調べられていない。本研究では、多数(70~600個)の構成要素(ドット)で構成された2次元刺激と3次元刺激(立体透明視刺激)で見かけのドット数に違いがあるかについて検討した。立体透明視刺激とは、視野上の同一領域に重なり合った複数の奥行きをもった面を作り出す刺激である。実験では観察者は左右に提示された2次元刺激と3次元刺激の構成要素数を比べて、多く見える方を選択した。実験の結果、(1)構成要素数が同じならば、2次元刺激よりも3次元刺激の数量が多く判断された(数量過大推定現象)、(2)現象の過大推定値は両眼視差量に依存した。これらの結果は、2次元刺激の数量判断を媒介するメカニズムと3次元刺激の数量判断を媒介するメカニズムが分離可能であることを示している。

キーワード:
 数量知覚,両眼立体視,両眼視差,恒常法

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発表者: 
 井手 正和(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)

タイトル:
 自己身体表象の基盤となる視触覚間の相互作用研究とその障害

概要:
 我々は “自分の身体が自分そのものである”という自己身体表象を脳内に形成している。そこでは,身体の位置や姿勢などに関する体性感覚情報だけではなく,他の感覚,例えば視覚情報も重要な役割を果たしている。本研究では,ラバーハンド錯覚課題や視触覚の時間順序判断課題を用いることで,視触覚間の相互作用が,刺激間の時空間的な一致性といった物理的制約とは別に,身体の解剖学的制約にも規定されることを解明した。更に,手に提示した触覚刺激が視覚的な見えを阻害するという,異種感覚間の知覚マスキング現象についても紹介する。これらの結果から,安定した身体表象を構築する過程は,視触覚入力に応答する神経活動の密接かつ直接的な相互作用を基盤とし,そこに身体の解剖学的情報がトップダウン的に影響するという仮説を提案する。最後に,発達障害者で見られる異種感覚間の相互作用の変調に関する近年の知見を概観する。 

キーワード:
視触覚間相互作用,身体表象,発達障害

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発表者: 
 村越 琢磨(千葉大学)

タイトル:
 変化検出メカニズムの二段階モデル

概要:
従来の変化検出研究では,変化を検出するためにVSTM内の詳細な表象の検索・比較が必要であると考えられてきた.しかしながら,我々を取り巻く環境では常に変化が生じている.このような環境において常に詳細な表象を形成し,変化を検索・比較することは非効率的である.そこで,本研究では視覚系は二段階の処理によって変化を検出するというモデルを提案する.このモデルでは,視覚系はまず,視覚場面の全体情報を利用し,視覚場面間に変化が生じたか否かだけの粗い変化を検出する.視覚場面間に変化が存在することが検出されると,その後,VSTM内の表象を検索・比較することで,どこで,どのような変化が生じたかの検討が行われる.本研究で提案された二段階モデルを仮定することで,必ずしもVSTM内の詳細な表象を必要とせずとも変化を検出することが可能となる.

キーワード:
変化検出,変化の見落とし,VSTM

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発表者: 
 増井 啓太(慶応義塾大学)

タイトル:
 高サイコパス傾向者がとらえる個人と社会

概要:
社会的動物とよばれるヒトは,決して一人では生きていくことができない。そのため,さまざまな他者と社会を構築し,その中で互いに関わり合いながら集団生活を営んでいる。しかし,なかには他者へほとんど共感せず,適切な対人関係を築くことに困難を示し,結果として他者を傷つける行為を選択しやすい人たちもいる。近年,そのような人たちが共通して持っている特性としてサイコパス傾向に注目が集まっている。サイコパス傾向とは,利己的で共感性が低く,衝動的で攻撃的な特徴の総称である。本発表ではサイコパス傾向の高い人たちの対人場面における行動,意思決定の特徴に関して,これまでに得られた知見を紹介し,彼ら/彼女らが個人,そして社会をどのようにとらえているかを考察する。

キーワード:
サイコパス傾向,利他性,罰,意思決定

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発表者: 
 板口 典弘(早稲田大学)

タイトル:
 身体と道具制御の連続性について:到達把持運動を用いた検討

概要:
私たちは,様々な種類の道具の使用を,全く意識することなく,巧みに遂行している。このような道具使用に関する身体運動の制御は,複雑な処理の末に達成されると考えられている。本研究では,脳にとっては身体も道具のひとつであり,身体と道具が同様の制約のもとで,制御されることを仮定した。この仮定を検討するため,到達把持運動において異なる“慣れ具合”の効果器を用いて把持をおこなった。すなわち,人差し指―親指,中指―親指による把持と,お箸,鋏様の道具の4種である。もし身体と道具が同様の制御法則に従うのならば,把持の洗練され方は効果器の慣れ具合に応じて変化するはずである。実験の結果,到達把持運動におけるAperture(効果器の先端の幅)のある特徴はどの効果器においても不変であった一方で,Aperture変化の仕方が段階的に異なった。この結果は,身体と道具がある一つの法則のもとで制御されており,かつその制御の実現度に関しては効果器の慣れ具合に依存することを示唆する。

キーワード:
運動制御,道具使用,到達把持運動

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発表者: 
 山本 健太郎(東京大学)

タイトル:
 運動対象の重なりが速度知覚に及ぼす影響

概要:
 本研究では,運動物体の重なりが速度知覚に及ぼす影響について検討を行った。二つの反対方向に回転する物体を同時に呈示し,一方を標準刺激,もう一方を比較刺激として,恒常法による速度弁別課題を行った。その結果,刺激を同じ場所に重ねて呈示した場合の方が,左右に並べて呈示した場合に比べて速度弁別閾が有意に高くなり,さらに手前に配置された刺激の運動速度が,奥に配置された刺激に比べて速く知覚された。また単一の比較刺激を,二つの重なった標準刺激の後に呈示し,それらの間で比較を行ったところ,手前の刺激は奥の刺激よりも知覚速度が速かったが,速度弁別閾は統制条件(単一の標準刺激を呈示した場合)と比べて有意な違いは見られなかった。これらの結果は,運動物体の重なりがそれらの間での速度弁別を阻害すること,また知覚速度が重なりの順序により異なることを示唆する。

キーワード:
 運動知覚,知覚速度,重なり,弁別閾

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発表者:
 浅野 倫子(立教大学)

タイトル:
 文章文脈と単語の認知 ― なぜ「斜め読み」が可能なのか?

概要: 
 文(文脈)の理解には文を構成する単語の処理が必要である一方で、効率的に文を読むために、文脈からの単語の推測も行われる。文脈と単語の処理はどのような関係にあるのだろうか。本研究では、認知心理学実験によりこの問いについて検討した。瞬間提示された日本語の短文中にどのような単語があったかを回答するという実験の結果、文脈に不適合な単語よりも適合的な単語についてのほうが正確に回答できるという、文脈の効果がみられた。一連の実験の結果は、文中の個々の単語を1つずつ処理することが困難な瞬間提示状況下でも、単語の意味情報が並列処理されて文脈情報が活性化し、文中の単語認知に影響することを示唆するものである。このような処理が、斜め読みのような迅速で効率的な読み処理の基盤になっていると考えられる。

キーワード:
 単語認知、文の読み、瞬間提示

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発表者:
 田谷 修一郎(大正大学)

タイトル:
 眼間距離情報は網膜像差に基づく奥行き知覚に用いられるか?

概要: 
 両眼網膜像差(左右眼間の網膜像のズレ)は重要な奥行手がかりのひとつであるが,この手がかりのみで外界の奥行き量を一意に推定することはできない。これは網膜像差の大きさと外界の奥行き量の間に一対一の対応関係が無いためであり,例えば物理的に同じ奥行き量の物体を観ても眼間距離が大きくなるほど生じる網膜像差は小さくなる。このことから外界の奥行きを「正確に」知覚するためには眼間距離に基づいた網膜像差のゲイン較正(奥行きスケーリング)を行う必要のあることが予測される。視覚系が実際に眼間距離に応じたスケーリングを行っているかどうか検討するため,視距離と網膜像差量を固定したステレオグラムの知覚奥行き量と眼間距離を50名強の観察者で比較した。この結果知覚奥行き量と眼間距離の大きさは負の相関を示すことが示された。この結果は,視覚系が眼間距離を奥行きスケーリングに利用していることを強く示唆する。

キーワード:
 両眼立体視,奥行きスケーリング,眼間距離,個人差

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発表者:
 上山 景子(東京大学)

タイトル:
 情動的意味の認知における視聴覚統合過程

概要:
 人間同士のコミュニケーションにおいて,相手の情動的な状態を的確に推定するためには,相手の声色や表情から読み取られる情動的な意味を統合する必要があると考えられる。過去の研究では,表情と音声に対する情動的認知が互いに影響し合あうことが示されてきた (de Gelder et al., 1999; de Gelder & Vroomen, 2000; Grossmann et al., 2006)。
 本研究では,こうした情動的な意味の視聴覚統合過程における,経験の影響について検討した。この目的のために,音声に代えて音楽を聴覚刺激として用いることとし,表情と音楽の刺激対を呈示したときの脳波を,音楽経験者と音楽非経験者の間で比較検討した。 

キーワード:
 視聴覚統合,情動,脳波

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発表者:
 森 数馬 (産業技術総合研究所)

タイトル:
 音楽により生じる鳥肌感と涙感 -心理生理実験,音楽情報処理,自然言語処理,個人差による検討-

概要:
 芸術作品の鑑賞時に情動が高まることで,鳥肌が立つような感覚(鳥肌感)や涙ぐむような感覚(涙感)が体験されることがある.こうした体験は,音楽によって特に生じやすく (Goldstein, 1980),人の情動を理解する上で重要であると考えられる.情動反応と自律神経反応を測定する心理生理実験を用いて,音楽による鳥肌感の生起に同期した心理生理変化が検討されてきた (Huron & Margulis, 2010).しかし,音楽による涙感の心理生理変化は明らかでないのに加え,鳥肌感や涙感と関連する音楽音響,歌詞の言語内容および個人の特性について十分な検討が行われていない.本研究では,音楽聴取によって鳥肌感および涙感を実験参加者に喚起させ,その時間帯における心理生理反応を検討した.さらに,鳥肌感・涙感の要因を検討するため,音楽情報処理,自然言語処理を用いた分析および安静時の生理特性とパーソナリティの個人差の分析を行った.

キーワード:
 鳥肌感・涙感,心理生理反応,音楽音響,歌詞の言語内容,個人差

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発表者:
 村田 佳代子(首都大学東京)

タイトル:
 皮膚感覚からの自己運動知覚

概要:
 停車している電車に乗っている時,反対のホームに停車している電車が動き出した所を見ると自分の乗っている電車が反対の方向に動いて感じられる事がある。この現象は視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)と呼ばれ,多くの研究がなされてきた (Dichgans & Brandt, 1978; Lee & Lishman, 1975)。しかし,こうした現象は視覚刺激だけでなく聴覚刺激や前庭刺激によっても生じる事が多く報告されている (Lackner,1977)。日常生活の中で自己が能動的または受動的に移動するとき,視覚や聴覚の感覚器官だけでなく皮膚感覚からも情報を受け取る。しかし視聴覚刺激を伴わない皮膚感覚からの自己運動知覚に関する検討はまだ十分に行なわれていない。本研究では,実験参加者の視覚や聴覚を遮断し,皮膚刺激を与えたときの自己運動知覚の特徴を検討した。

キーワード:
 自己運動知覚,皮膚感覚,前庭感覚

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発表者:
 林 大輔(東京大学)

タイトル:
 フランカー刺激の方位が見えない状態におけるCollinear Facilitation効果

概要:
 本研究では,知覚処理における1つの重要な特徴である文脈効果の中で,方位の検出に促進的に関わる現象であるCollinear Facilitation (CF) 効果について検討した。CF効果とは,上下に高コントラストの縦縞(フランカー)があると,中心視野の低コントラストの縦縞(ターゲット)が検出しやすくなるという現象である。従来の研究では,フランカーの方位が常に知覚できる条件のみで実験が行われてきたのに対し,本研究では,フランカーの方位が見えない条件において実験を行った。そのことによって,未だ明らかでないCF効果のメカニズムに対してアプローチを行うとともに,文脈効果や意識的気づきに関する研究に与える示唆についても考察する。

キーワード:
 文脈効果,方位検出,心理物理学,意識的気づき

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発表者:
 宮澤 史穂(障害者職業総合センター研究部門)

タイトル:
 ワーキングメモリモデルにおける音韻情報とピッチ情報の保持システム

概要:
 言語と音楽において,音の高さ(ピッチ)は重要な要素の1つである。言語において,ピッチは文の意味を規定する役割を果たす(句末のピッチが上がれば疑問文,下がれば平叙文など)。また,音楽の構成要素の1つであるメロディは,ピッチが上下することによって決定される。さらに,ピッチは短期的に保持することが重要である。ピッチの変化を理解するためには,知覚した音のピッチを次々に保持していき,前の音と比較することが必要となるためである。
 情報の短期的な保持については,Baddeleyのワーキングメモリ(WM)モデルの枠組みのなかで考えることができる。本発表では,ピッチの保持をWMの中で,どのように位置づけることができるのかについて,音韻との関係という観点から検討を行った実験を紹介する。

キーワード:
 音韻情報,ピッチ情報,ワーキングメモリ

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発表者:
 今泉 修(千葉大学)

タイトル:
 片頭痛患者の視覚的不快 ―風景・絵画の画像解析を用いた検討

概要:
 片頭痛とは,発作的に頭の片側が痛む慢性頭痛である。患者は視覚過敏であることが多く,例えば,高コントラストの格子模様に不快を感じやすい (Marcus & Soso, 1989)。他方で,不快を誘発しやすい抽象絵画を画像解析すると,特徴的な空間周波数特性を示すことが知られているが (Fernandez & Wilkins, 2008),具象的な刺激である風景については検討されていない。
 本発表では,風景画像を解析して不快風景に特徴的な空間周波数特性を検討し,片頭痛患者と健常者とにおける視覚的不快の評価を試みたことを紹介する。一方で演者らは,片頭痛患者として知られるゴッホなどの絵画を画像解析することで,視覚過敏が創作物の空間周波数特性へ影響するかどうかを検討しており,この経過も報告する。

キーワード:
 片頭痛,不快,風景,絵画,空間周波数

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発表者:
 氏家 悠太(千葉大学)

タイトル:
 自閉症スペクトラム仮説に基づく音声錯覚の個人差

概要:
 自閉症の視聴覚音声処理の研究は,その障害の理解に加え,健常者の音声処理メカニズムの解明にも寄与しうるため,近年注目を集めている。しかし,自閉症の臨床群では様々な合併症[感覚調整障害(Dunn, 1997)など]を伴うことが多く,臨床研究では一貫した結論を導きにくいという問題もある。そこで,発表者らは,自閉症者・アスペルガー症候群・一般健常者の間で自閉症傾向の連続性を仮定した自閉症スペクトラム仮説(Baron-Cohen, 1995; Frith, 1991)に基づき,健常大学生を対象としたアナログ研究により検討を行ってきた。本発表では,視聴覚音声処理の指標としてMcGurk効果(Mcgurk & MacDonald, 1976)を利用し,質問紙で測定した自閉症傾向との関連を検討したいくつかの探索的実験を紹介して,自閉症の特異的な音声処理を引き起こす要因について考察する。

キーワード:
 自閉症スペクトラム仮説,McGurk効果,認知的個人差

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発表者:
 岡崎 義郎(千葉大学)

タイトル:
 ヒトのケミカルコミュニケーション -体臭関連化合物のニオイに対する反応の性差に関する検討-

概要:
 1971年にドミトリー効果(月経周期の同調)が報告されヒト個体のニオイが他のヒトに影響を与えることが示された。さらに乳児は自分の母親をニオイで同定出来ることが示されたり,Tシャツのニオイから性別が判断出来ることが示されたり,ヒトが発するニオイが様々な情報(性別,血縁関係等)を他の個体に与えていると思われる現象が報告されるようになった。本発表では,体臭関連化合物のニオイが何らかの性に関する情報を含んでいるとする仮説を事象関連電位の一種である随伴性陰性変動(CNV)を指標として探索的に検討し,結果としてアポクリン腺分泌物の主要成分の一つであるステロイド化合物呈示下でCNVの反応に性差が観察された実験を紹介し,ヒトのケミカルコミュニケーションについて考察する。

キーワード:
 フェロモン,ケミカルコミュニケーション,ステロイド化合物,随伴性陰性変動,性差,体臭,ヒト

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発表者:
 辻田 匡葵(千葉大学)

タイトル:
 身体運動と感覚との間の時間関係 -遅延順応に寄与する処理過程の検討-

概要:
 私達が身体運動を行う時,身体運動のタイミングと外界の刺激のタイミングのどちらが早かったか,同時だったか否かといったような時間関係を知覚する.このような身体運動-感覚間の時間関係の知覚は可塑性をもつことが知られている.すなわち,身体運動から一定の遅延を伴って刺激が提示される状態が数分間続くと,身体運動-感覚間の時間関係の知覚がその遅延を小さくする方向に順応的に変化する (身体運動-感覚間遅延順応).本発表では,身体運動-感覚間遅延順応にどのような過程が寄与しているのかを検討した実験を報告し,身体運動-感覚間の時間関係の知覚の基礎にある過程を考察する.

キーワード:
 時間的再較正,時間順序判断,クロスモーダル,網膜位置特異性,注意容量

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発表者:
 浅井 智久(千葉大学)

タイトル:
 運動フィードバックから自己由来成分を検出・利用するメカニズム

概要:
 私たちは,自分自身の運動に対する感覚フィードバックを通じて初めて,「自己」(さらには「他者」や「環境」も)を認識できる可能性が議論されている(再帰性の自己意識)。しかしながら,外的に入力されることになる刺激は基本的に発生源が未知で(例えば,自己由来vs環境由来),ノイズが含まれている場合も多い。そこで私たちには,入力されてくる刺激から自己由来の成分を取り出すメカニズムが備わっていると考えられており(内部モデル,順モデル),これをもとに自己・他者・環境とラベル付けされた感覚入力をそれぞれ利用することで,最終的にインタラクティブな世界の表象が構成されているはずである。本発表では,視覚誘導運動における視覚フィードバックの自他由来成分の操作によって,自他帰属の主観的・客観的指標に「妥当な」変化が見られることを示す。これは,感覚入力の自己帰属から利用へ至る過程を意味し,これがダイナミックにベイズ更新される自他表象の基盤になっている可能性について議論する。

キーワード:
 自他帰属,感覚運動制御,順モデル,フィードバック制御,フィードフォワード制御

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発表者:
 金谷 翔子(東京大学)

タイトル:
 身体所有感と感覚モダリティのつながり

概要:
 体のパーツや体全体が自己のものであり,自己がそこに宿っているという意識のことを身体所有感覚と呼ぶ。この感覚は通常,視覚,触覚,自己受容感覚といった様々なモダリティからの情報の一貫性によって保持されていると考えられ,その証拠として,これらの感覚情報間に矛盾が生じるような実験操作を行った場合,自然な状況下では起こり得ない異常な身体所有感覚が生じることがある。本発表では,そのような錯覚の代表例であるラバーハンド錯覚に関する実験結果を二つ報告し,身体所有感覚の形成に寄与する触覚情報の性質,および手の所有感覚が手の上の物体に関する視覚情報,温度感覚情報の相互作用にもたらす影響について議論する。

キーワード:
 身体所有感覚,ラバーハンド錯覚,運動感覚,視覚-温度感覚相互作用

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発表者:
 石橋 和也(東京大学)

タイトル:
 視覚探索における「あきらめ」の意思決定

概要:
 標的が低確率でしか出現しない視覚探索(空港の荷物検査や医療画像診断など)では,標的の見落とし率が急激に上昇する(出現確率効果)。現実場面での標的の見落としは重大な事故の原因となり得るため,この出現確率効果の特性の解明が求められている。これまでの研究は,標的の出現確率は標的の発見時の意思決定よりも,探索終了(あきらめ)の意思決定に強く影響を与えることを報告している。われわれは,出現確率効果が40試行から50試行の試行履歴に基づいて生起すること,また出現確率効果が意識的な出現確率の表象だけでは生起しないことを明らかにした。この結果は,出現確率効果を防止するためには,「意識改革」だけでは不十分であり,自動的な処理過程をコントロールする必要があることを示す。現在は,標的の出現確率が視覚探索に与える影響を,動物の採餌行動における最適化理論から説明することを試みている。本発表では最後に,視覚探索のあきらめの意思決定における最適化過程について考察する。

キーワード:
 視覚探索,出現確率効果,探索終了時間,最適採餌理論

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発表者:
 東山 英治(千葉大学)

タイトル:
 かけひきの社会的相互行為--ラグビーを題材として--

概要:
 認知科学や人工知能分野において知の身体性が重要視されて久しい.知の身体性とは,身体が環境と相互作用することによって認識や知が創世される現象をさす.スポーツはこのような研究の題材として最適なものと考えられるが,スポーツ科学などでは身体の運動学的最適化を取り上げるのみで,このような観点が抜け落ちている.本発表では,高梨らがサッカーの分析を通して提示した社会的相互行為としてのスポーツ研究の枠組みを用い,ラグビーにおける攻防が経時的にどのように変化して行くかを記述する.それによって,共在する他の選手の何を手がかりとして,あるプレーが行われているかを明らかにする.また,質的分析を利用することで,このような統制が困難なデータに対しての要因探索の一般的手続きを提案する.

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発表者:
 小松 由梨果(千葉大学)

タイトル:
 主観的輪郭形成のメカニズム-比較認知科学からのアプローチ-

概要:
 主観的輪郭とは,物理的に存在しない輪郭や明るさ,奥行きが知覚される現象のことである。この現象は,物体の知覚や認識といった機能がどのように脳内で実現されるのかを調べるため,Kanizsa (1955) で報告されてから現在に至るまで,多くの研究者たちがそのメカニズムを解明しようと試みてきた。そのため,現在では多くの神経科学的,行動心理学的研究からの報告に基づいた様々なモデルが提案されている。そこで,私はこれらのモデルを検証するため,ハトを用いた比較認知研究を行ってきた。本発表では,主観的輪郭形成のモデルや,ヒトや動物での先行研究についていくつか紹介し,これまでの研究結果を踏まえながら,ヒトとハトの知覚の相違点や,種間で普遍的な物体知覚の機能について考察する。

キーワード:
 主観的輪郭,比較認知,ハト

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発表者:
 関口 勝夫(専修大学)

タイトル:
 ランドマークを手がかりとした空間情報の統合と競合,およびそれらの関係について

概要:
 我々は,三次元空間を移動しながら生活しているが,決して無作為に移動しているわけではなく,ランドマークなどの手がかりから特定の場所までの距離や方向といった空間関係を認識しながら移動している。この際,認知地図の形成が深く関係しており,特に認知地図の構成要素でもあるランドマークの処理は認知地図形成の初期段階でみられるため,ランドマークの手がかりは空間認知において特に重要である。この認知地図形成において,複数のランドマークを手がかりとする空間情報の統合はもちろん,複数のランドマーク間で生じる手がかり競合の現象についてもあわせて考察することで,空間認知のパッケージを理解することにつながるのではないかと考えた。手がかり競合をどのように解釈し,統合過程とどのように関係づけられるのかについて提案する。

キーワード:
 空間認知,空間統合,連合学習,手がかり競合,比較認知

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発表者:
 福田 玄明(理化学研究所)

タイトル:
 生き物らしさ,人らしさの知覚 —社会的知覚における錯覚—

概要:
 我々は社会的な対象を見分ける能力を持っており,対象が生物か無生物かという判断を特段の苦労もなく行うことが出来る.例えば,日常経験において,ふとした時に「何かいる」と感じることがある.このとき,我々はそれが「何」であるのかわからないにも関わらず,それが「ある」のではなく「いる」と表現する,つまり生き物であると認識しているのである.このように,我々は,対象が「何」であるかの認識とは独立して,生き物を見分けるため認知機構を持っている可能性がある.
 このように社会的な対象を見分けることは,それが何であるかという客観的な証拠の認識に支えられているわけではなく,ヒューリスティックに支えられている.このことから,社会的な対象を見分ける我々の能力は ”perceptual social illusion”(知覚的社会性錯覚)と呼ばれている.このような社会的な対象の見分けの認知メカニズムを知ることは,我々の社会的認知の基礎を知るため,また,社会的な対象と見なされうる人工物を実現するために重要であると考えられる.しかし,どのような認知メカニズムがこのような生物/非生物の判断を支えているのかについては,まだ多くは解っていない.
 本発表では,生き物らしさ,人らしさの判断について心理実験,脳波計測などを組み合わせて行った研究について紹介する.

キーワード:
 生き物らしさの知覚,社会的認知,脳波計測

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発表者:
 小泉 愛(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

タイトル:
 セロトニン・トランスポータ遺伝子多型と情動の働き

概要:
 近年,セロトニン・トランスポータ遺伝子のShort型が,うつ病への耐性を高めることや,ネガティブな情報処理を促進することが報告されている。こうした知見は,Short型がネガティブ感情への感受性をあたかも決定付けているかのように,しばしば誇大解釈されている。しかし,発表者らは,Short型が情動情報処理に及ぼす影響を検討し,駆動される処理過程によって,Short型がネガティブな情報処理を促進する場合と,ポジティブな情報処理を促進する場合があることを示してきた。研究会では,こうした研究結果や他の研究報告を踏まえつつ,セロトニン・トランスポータ遺伝子多型が情動の働きに及ぼす効果の複雑さについて議論する。

キーワード:
 セロトニン・トランスポータ遺伝子多型,情動情報処理,遺伝,感情,うつ病

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発表者:
 佐治 伸郎(慶應義塾大学)

タイトル:
 音象徴の言語個別性及び普遍性に関する考察:日英の音象徴語を中心に

概要:
 本発表では,日英語話者の語用に関する音象徴的感覚に関して,その言語普遍性及び個別性を考察することを目的とする.特定の音が特定の感覚を表象するとされる音象徴は,心理学的文脈では主に共感覚性を基盤にした,言語普遍性の観点からその特徴が論じられてきた.一方,言語話者の慣習的な言語運用により形成される音韻体系が,当該言語話者の言語個別的な音象徴感覚をどのように構成するのかに関しての実証的研究は殆ど見られなかった.本発表では,これまでの音象徴研究における進展と問題点に幅広く触れながら,日本語,英語を母語とする言語話者がどのように異なる音象徴の語用感覚を持つのかを実験的手法を用い探る.

キーワード:
 意味論,音象徴,オノマトペ,移動表現,言語類型論

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発表者:
 佐久間 直人(千葉大学)

タイトル:
 日本における単語認知研究の成果と意義

概要:
 かつて単語の認知過程の研究は実験心理学における最も活発な研究領域の一つであった。現在,アルファベットを使用する言語圏での研究は,発展の段階が収束に向かっているといえる。しかし,日本の研究は,主に日本語の独特さを理由に成果が海外に伝わっていかない。本発表では,これまでの単語認知の研究史を概観し,さらに自身の実験をいくつか紹介することで,(1)単語認知のメカニズムは使用言語に関わらず共通であり,(2)日本語の研究成果を取り入れることでアルファベット語圏の研究がさらに改良されうるという2点を主張する。また,時間が許せば単語認知研究の展望とあわせて,認知心理学における機能モデル・計算モデルのあり方について議論したい。

キーワード:
 単語認知,漢字,仮名,機能モデル

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発表者:
 浅井 智久(千葉大学)

タイトル:
 「自己」の自然科学に向けて:自己の階層構造と他者

概要:
 私たちが自分自身を知覚・認知するメカニズムは,心理学のみならず科学一般の究極の問題として古くから提起されてきたが,近年になるまで実証系科学ではある種のタブー扱いにされてきた。そのブレークスルーになったのは,私たちの身体感覚(もしくはそれが可能にする運動感覚)は簡単に変容するという可塑的特徴であり,自分にとっての絶対的な所有物など幻想にすぎない可能性が示唆されている。本発表では,私たちの「自己」という感覚の階層構造が,この身体・運動感覚をもとに構成されている可能性を議論し,同時にどのように「他者」とコミュニケーションをとることができるのか,時間のある限りでデータを紹介したい。

キーワード:
 身体所有感覚(body-ownership),運動帰属感覚(agency),共感,ミラーニューロンシステム,自他区別

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発表者:
 栗原 彬(専修大学)

タイトル:
 連合学習の自動性

概要:
 連合学習理論は動物実験の知見を中心に組み立てられ, それ故に学習による行動の変化を自動的かつ機械的なものとして扱かってきた。また, 随伴性判断課題などヒトを対象とした実験においても適用され, 連合学習理論はヒトを含めた動物の学習メカニズムを説明できる枠組みとして捉えられてきた。一方で, 学習メカニズムは意識的な情報処理過程であると捉えることで説明される結果も報告されており, さらに, 近年のヒトや動物の因果推論などの研究によりそのような考え方が非常に強く主張されている。しかし, 学習による行動の変化が自動的である側面は無視できない。この点について, 新しい知識を獲得した際, 過去の知識をどう変えるかといった回顧的再評価における動物とヒトの違い, また, ヒトの系列学習において, 獲得された信念と行動が乖離する現象を通して紹介する。

キーワード:
 連合学習, 自動性, 回顧的再評価

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発表者:
 中村 哲之(千葉大学)

タイトル:
 ハムスターにおける空間探索 —手がかり利用の柔軟性—

概要:
 ヒトを含む動物にとって,環境を適切に認識して行動に移すことは重要である。その際に,時々刻々と変化する環境に対応するためには,環境内に存在するさまざまな手がかりを柔軟に使い分ける必要があるだろう。本発表では,オープンフィールドを用いた空間探索課題において,ハムスターが環境の変化に応じて用いる手がかりを柔軟に変化させることを示唆する研究を2つ紹介する。

キーワード:
 手がかり利用の柔軟性,空間探索,比較認知

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発表者:
 竹村 浩昌(東京大学)

タイトル:
 誘導運動知覚の神経表現

概要:
 我々の動きの知覚は,背景に存在している動きの情報によって大きく変調することが知られている。日常生活でも,空に浮かぶ月が,手前で動く雲と逆方向に動いて見えるような錯覚体験をすることがある。このような錯覚運動のことを誘導運動と呼ぶ。誘導運動は,視覚系に入力された動きの情報を,空間的に近傍の動きの情報と対比させるメカニズムの現れであると考えられ,そのようなメカニズムは動いているオブジェクトを背景から抽出する上で重要な役割を果たしていると考えられている。誘導運動は,動きの情報処理に深く関わる部位であるMT野におけるニューロン活動特性と類似性があると指摘されてきた。しかし,実際に主観的な誘導運動の知覚と,神経活動がどのように関連しているのかは未だに明らかになっていない。本発表では,誘導運動を対象としたfMRI実験の結果を紹介し,主観的な誘導運動の知覚と神経活動の関連について議論する。

キーワード:
 運動視,fMRI,心理物理学

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発表者:
 東山 英治(千葉大学)

タイトル:
 談話におけるジェスチャー産出に影響する言語的要因

概要:
 ジェスチャーは発話の単なる付属物ではない。発話産出課題において,両手で棒を握らさせ,ジェスチャーを制限すると発話が滞ることが指摘されている。これは,身体動作であるジェスチャーが認知過程である発話産出過程に関係していることを示唆する。特に会話場面では,発話はジェスチャーなど音声以外のモダリティと密接に関連し,総体として発信されている。本研究ではジェスチャーと言語との関連性を明らかにすることを目標とし,以下2つの分析を行った。分析Iでは,発話形式と談話上の性質からジェスチャーの生起を予測するモデルを立て,ジェスチャーの生起要因について分析した。分析IIでは,分析Iと同じ変数を用い,ジェスチャーを演じる際の視点表現を予測するモデルを立て,視点表現の要因について分析した。

キーワード:
 ジェスチャー,談話,マルチモーダル,多人数会話

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発表者:
 小林 恵(中央大学)

タイトル:
 乳児における顔の布置情報への感受性:アルチンボルド画像を用いて

概要:
 成人は顔が普遍的にもつ目鼻口の布置情報に敏感であり,その一例がアルチンボルド作の人物画からの顔知覚である。アルチンボルド画像は,野菜や動植物などの物体から顔が構成されているにも関わらず,その要素配置から顔が知覚される。また,アルチンボルド画像観察中には,顔特有のERP成分N170が計測されることが知られている。これらの結果から,成人は顔に共通の布置情報に対して敏感であり,高い検出能力を備えていると示唆される。本研究では乳児の布置情報への感受性の発達を,アルチンボルド画像を用いて検討した。生後5-8ヶ月児における,アルチンボルド画像観察時の注視行動とNIRS計測の結果について紹介する。

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発表者:
 川島 亜紀子(千葉大学)

タイトル:
 夫婦間葛藤と子どもの精神的健康:発達精神病理学的アプローチによる検討

概要:
 発達精神病理学(developmental psychopathology)的アプローチは,近年,個人の適応と不適応の発達を研究するアプローチとして,欧米を中心として注目されている。本アプローチは,精神的に健康・不健康な状態,適応・不適応な状態は固定的ではなく,個人と環境の状況(組み合わせや相互作用)によって変わりうるものとし,通常の発達に否定的作用を持つ危険因子と,保護的作用を持つ保護因子による影響を,発達的な視点から検討するものである。今回の発表では,両親の夫婦関係の問題と子どもの精神病理との関連についての調査結果を,発達精神病理学的アプローチを援用しながら紹介する。

キーワード:
 夫婦間葛藤,子ども,統制過剰型問題,統制不全型問題,発達精神病理学

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発表者:
 大北 碧(千葉大学)

タイトル:
 ハトにおけるカテゴリ探索の検討 -顔合成画像の人工カテゴリを用いて-

概要:
 カテゴリ化は, 言語をもつヒト特有の「高次」な認知機能であると考えられてきたが, Herrnstein and Loveland (1964) の研究以来, ハトやサルなどの動物がカテゴリ化できることが多くの研究によって示されてきた。これまでの動物におけるカテゴリ化研究ではカテゴリの事例(メンバー)を一つずつ呈示する測定方法がとられた。そのため, 動物におけるカテゴリ化は, 自然場面のように複雑な背景の中から, 餌や天敵といったカテゴリを迅速に見つけ出すために必須と考えられる注意機能と結びつけて研究されることはなかった。そこで発表者は, 自然カテゴリの構造を模した人工カテゴリ(顔合成画像)を, 注意機能の研究に用いられる視覚探索課題に適用した, カテゴリ探索課題をハトに行った。ハトはカテゴリの事例が共有する要素に注意を向けて探索を行うことが明らかになった。

キーワード:
 カテゴリ化,注意,比較認知

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発表者: 
 前原 吾朗 (東京大学)

タイトル:
 輝度コントラスト及び運動の両眼視処理過程

概要:
 輝度コントラスト増幅調整と相反運動処理において,左右の眼からの信号がどのように統合されるのかについて検討するために,輝度コントラスト及び運動方向の弁別閾を計測する実験を行った。ターゲットガボアパタンは,ペデスタルと呼ばれるガボアパタンに重ねて呈示された。ペデスタルコントラストは独立変数の一つである。刺激の呈示方法には,以下の3条件があった。1)両眼呈示:全ての刺激が両眼に呈示された。2)単眼呈示:全ての刺激が一方の眼のみに呈示された。3)両眼分離呈示:ターゲットは一方の眼に呈示され,ペデスタルは他方の眼に呈示された。輝度コントラスト弁別と運動方向弁別のどちらの実験においても,閾値対コントラスト関数(TvC)は dipper 型をしていた。つまり,ペデスタルコントラストが増加するにつれ,閾値はいったん低下した後,上昇した。ペデスタルコントラストが低いとき,閾値は単眼呈示よりも両眼呈示条件において低かった(両眼加算)。ペデスタルコントラストが高いとき,両眼加算は見られなかったTvC関数における閾値の低下は,両眼分離呈示条件ではほとんどなかった。いくつかのモデルの当てはめから,両眼性の処理過程において輝度コントラスト増幅調整と相反運動処理は行われていることが示唆された。

キーワード:
 輝度コントラスト,運動,両眼視

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発表者: 
 金山 範明(東京大学)

タイトル: 
 脳の発振を頭皮でとらえる:時間周波数解析と独立成分分析の心理学領域への応用 

概要:
 近年脳波の解析技術は電子計算機の発達と共に高度になっててきている。そうした技術は認知神経科学の領域では世界的な標準になりつつある上,心理学領域での応用にも様々な可能性が見出されているが,原理の複雑さから日本の心理学領域では取り入れられている事例は少ない。脳波は脳機能測定器としては最も安価に調達でき,かつ簡便に測定ができる上,上記高度な解析も実は無料のソフトである程度行うことができるため,心理学領域における脳を用いた研究の発展に貢献することができる。本発表ではそうした解析技術の有用性を実際の発表者の研究を元に紹介する。

キーワード:
 脳波,時間周波数解析,独立成分分析,多感覚統合処理

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発表者: 
 本田 秀仁(千葉大学)

タイトル: 
 “小さな世界”が生み出す知識の性質:正確性・多様性・認知的制約

概要:
 我々は日々,他者とのコミュニケーションを通じて様々な知識を得て,またそれを他者に伝達する。つまり,知識はコミュニケーションを通じて社会に伝搬していくと考えられる。それではこのようなプロセスを経て形成された知識にはどのような性質があるのだろうか。本研究では,“小さな世界”(Watts & Strogatz, 1998)と呼ばれる人間関係ネットワークに注目し,小さな世界上に配置されたエージェントが1対1コミュニケーションを通じて知識を学習していくマルチエージェントモデルを構築した。計算機シミュレーションを実施してエージェントが学した知識の性質について分析を行った所,小さな世界構造は正確でかつ,多様な知識を生み出す ネットワーク構造になっていることが示された。また,エージェントに仮定した認知的制約が知識学習に与える影響を分析したところ,認知的制約は正しい知識を学習していく上で,促進的な影響を与えていることが示された。

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発表者: 
 青林 唯(千葉大学)

タイトル: 
 パーソナリティと感情―感情制御過程に着目して― 

概要:
 パーソナリティと感情は古くから“特性”“状態”として捉えられ,密接なつながりがあるとされてきた。この種の研究はあるパーソナリティ特性(e.g., “外向性”) が高いとある感情状態 (e.g., “ポジティブ感情”)になりやすいといった比較的単純な相関関係が仮定されてきた。しかし近年では社会的認知の研究が進むにつれて感情を内的過程としパーソナリティとどのように関連するか検討するようになってきている。本発表では感情の過程のなかでも感情制御に着目し,目標追及および感情プライミング法を用いた自動的感情制御研究の近年の流れを紹介する。その基本的仮定と理論的背景をレビューしたうえで発表者の研究についてふれ,最後に自動的感情制御研究の今後の展望について考察を行う。

キーワード: 
 パーソナリティ,感情,感情制御,自動性

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発表者: 
 増田 知尋(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)

タイトル:
 視覚的運動による諸事象と知覚特性について

概要:
 対象の運動を観察するとき,その対象の速度や運動方向に代表される物理的特徴だけでなく,運動対象とその周囲の相互作用や因果関係などを含む多様なできごと(事象)を知覚する。このような事象からわれわれが得る情報のうち,特に1)時間,2)対象の形状,3)対象の材質について,これまでの運動知覚研究の成果を概観しながら,発表者の研究を紹介する。また,これらを踏まえ,物理法則に従う運動との関係から,われわれの運動知覚の特性に関する考察を行う。

キーワード:
 知覚心理学,運動知覚,事象知覚

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発表者: 
 澤山 正貴(千葉大学)

タイトル:
 網膜情報の多義性を解く視覚システム―知覚心理学的アプローチによる基礎メカニズムの検討

概要:
 われわれの視覚システムは,網膜情報の多義性という問題を抱えながら,それを非常にうまく解いて世界を見ている。眼に届く光の強度(輝度)を例にとって網膜情報の多義性について考えると,視野内のある領域の輝度変化は,その領域の照明強度が変化しても物体の反射率が変化しても同じように生じうる。本来,輝度の情報だけでは,この照明の違いと物体の反射率の違いを区別できないはずだが,日常われわれはこの2つの違いを容易に見分けている。これまでの研究は,視覚システムがこの網膜情報の多義性を解く際に,さまざまなヒューリスティクス(いつも正解になるとは限らないが簡便に解を計算できて概ね正解できる方略)を用いていることを示唆している。本発表では,視覚システムの用いているヒューリスティクスに関して,知覚心理学的な観点から行われた先行研究の紹介と,発表者自身の研究の報告を行う。

キーワード: 
 知覚心理学,網膜情報の多義性,輝度情報の解釈,照明強度,物体反射率

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発表者: 
 中村 哲之(千葉大学)

タイトル:
 比較認知研究の興味と成果

概要:
 ヒトの「高度な」認知機能は,どのような過程を経て獲得されてきたのか。比較認知研究は,ヒトを含めた種々の動物の認知機能を分析・比較することにより,この問いに答えようとする立場をとる。本発表では,初めに,(1)知覚(2)物理的知性(3)社会的知性(4)意識・内省の4つのテーマから,比較認知研究のこれまでの成果を概説する。次に,発表者が行ってきた研究(鳥類の錯視・運動情報の処理(知覚),げっ歯類の空間認識(物理的知性),鳥類のメタ認知(意識・内省))を紹介する。最後に,ヒトを含めた動物の認知機能の進化的背景や適応的意義について考察する。

キーワード:
 比較認知,知覚,物理的知性,意識・内省

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発表者: 
 浅井 智久(千葉大学)

タイトル: 
 個人差研究から見えてくるもの:錯覚と自他認識の個人差

概要: 
 近年では,個人差の研究が見直されるようになってきている。それは,単に個人差の理解にとどまらず,個人差を通じて見えてくる私達の一般的な心理機能の理解に役立つからであると考えられる。発表者は,学部時代は錯覚を利用した知覚の研究を行い,院生時代はそれをもとに個人差の研究を行った。今回の発表では,今までの発表者の研究の過程を簡単に振り返ることによって,錯覚の個人差を利用することで,実験的には検討がしにくいと考えられてきた主観的感覚(クオリア)である自他認識や自己意識の問題に取り組める可能性を議論したい。

キーワード: 
 多感覚間統合,統合失調症,運動の主体感(sense of agency), 共感