矢ヶ崎克彦氏、辰野町長4期目も移入ホタル問題に消極的だった

2015年4月12日投開票の県議選上伊那郡区(定数2)に立候補した矢ヶ崎克彦氏は,町民の支持を得られず落選した。現職時代の外来種ホタル商法を含め,政治家としての能力に疑問符が付いた矢ヶ崎氏である。

長野県辰野町・松尾峡  観光用移入ホタルの養殖場。観光客が訪れるホタル鑑賞スポットであり,町の観光サイトでもある。  古くからホタルの名所として有名だが,長野県天然記念物指定地となって以後,観光用に膨大な量のゲンジボタルを県外から移入し養殖,結果として,在来の(天然記念物指定当時の)貴重なゲンジボタルを人為的に滅ぼしてしまった地域でもある。  辰野町は,その移入の歴史や生態系破壊の事実を伏せて,天然のゲンジボタルを増やしてきたかのように宣伝し,ほたる祭りを継続している。  参照サイト: Yahoo!知恵ノート;長野県辰野のホタル再考: 観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n43312 筆者のホームページ:辰野の移入ホタル 生物多様性の喪失へ http://www.ab.auone-net.jp/~biology/Tatsuno.htm

インターネット新聞 JanJan, 2010/02/22


長野県辰野町では、昨年10月に行われた町長選挙の結果、現職の矢ヶ崎克彦氏が当選し、現在4期目の町政に入っている。

町立辰野総合病院の移転新築や道路整備など課題は多いが、本稿では、筆者が関わっている移入ホタル問題を取り上げたい。

ここ辰野町の松尾峡は、古くからホタルの名所として有名で、ホタル生息地として長野県天然記念物に指定されている。

しかし、主として観光目的で、1960年代に膨大な数のゲンジボタルが、他県業者からの購入や譲渡によって、複数回放流された。それを養殖することによって、今見られる大量の「ゲンジ集団」の基礎が築かれた。現在の松尾峡集団は決して自然のものではない。そして松尾峡では、この移入ゲンジが地元ゲンジに壊滅的な打撃を与えたことが最近明らかとなった。

これは以前、筆者がJanJan「ホタル保護条例」が問いかけるもの)に書いたとおりである。

問題は過去のことでなく、下流地域にも移入ゲンジの影響が及びつつあることだ。

筆者は、町役場に直接行ってこの事実を伝えたし、矢ヶ崎町長にもメールで伝えてある。しかし、それから半年以上たつが、矢ヶ崎氏は全く対策を採るつもりはないらしい。筆者にも何の返信もない。無視という状態だ。

ここのゲンジボタルが観光に役立ち、経済効果を上げていることは事実だ。私たちホタル研究者も、そのようなメリットを否定しない。だから、移入ゲンジを排除しろとか、利用するなとか言っているわけではない。ただ、残された地元産ゲンジを守る対策を立ててほしいと望んでいるのである。

今年10月には、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が、隣県である愛知県の名古屋市で開かれる。
この生物多様性保護の大切な一面が、ゲンジの地域変異のような種内変異の保護である。
辰野町もまた、辰野町環境基本条例で、生物多様性保護を訴えているのである。

このような状況で、辰野における移入ゲンジの悪影響を町長が公言することは、決してマイナスにはならないと私は考える。むしろ「ホタルの名所」の深刻な問題として、全国から意見を募ってみたらどうかと考える。また、地元産ホタルの保護区域を別に設けて、移入ホタルと自然ホタルを比較して見てもらうことだって考えられよう。さらに、ホタルの発生時期でなくても、この問題でシンポジウムを何度も開き、そのために人々に辰野へ来てもらう方策だって考えられる。「ホタル保護から見た生物多様性保護」と銘打ってシンポジウムを開けば、先進的な取り組みをする自治体として、このホタル移入問題が公になっても、決してマイナス評価は受けないと思う。

しかし、このような提案を町役場にしても、全く無視されているのである。それどころか、口頭で何度か申し入れたところ、「(そんなこと)や・り・ま・せ・ん!!」と、筆者は役場内で怒鳴られたことさえある。

繰り返すが、生物多様性保護が世界的に問題になっている時代である。
環境省の生物多様性調査、遺伝的多様性調査報告書(2000)でも、昆虫の中で特にホタルを取り上げ、その人為的移入問題が調べられている。

平成20年6月6日に公布された生物多様性基本法では、国だけでなく地方公共団体にも生物多様性保護が求められている。

このような状況で、いかに観光に役立っているからといって、移入ホタルの増殖ばかりを考えていては、時代遅れと言わざるを得ない。

辰野の移入ホタルに関しては、その悪影響が明確になると、2008年に夕刊や地方版とはいえ、いくつかの主要紙がこの問題を取り上げた(朝日新聞、6月17日長野、中南27面; 毎日新聞、6月22日長野、南信25面; 読売新聞夕刊、7月28日13面)。それにも関わらず、当時から町政を担っている矢ヶ崎氏は、この移入問題に全く取り組もうとしない。

昨年12月15日の第14回辰野町議会定例会で、矢ヶ崎氏は
「ホタルの移動事態は自然の生物のホタル体系を崩すもとであるというようなことも大きな問題」
(平成21年第14回辰野町議会定例会会議録、14 日目、p.20)
と述べている。

これは、どこかの新聞記事か論文の受け売りだろうか?それとも、ホタルの移動が自然のホタル生態系を崩すと理解しているが、具体的対策は採らないということなのだろうか?

文字通り「ホタルの里」として、経済的のみならず現代的な環境問題の観点からも、地元産ホタルの保護にいかに取り組むのか、矢ヶ崎氏の能力が試されるであろう。

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(以下は追記)

2011年,辰野町ではホタル保護条例が改正された。それに先立って,在来ホタル保護を盛り込むようにと,辰野町役場に提案したが,全く無視。全体として増えれば,在来ホタルが減るのも仕方ない,との主張を繰り返す。観光客にも県外からの移入であるという実態を告げないことを継続した。

Twitterで,
「辰野町行政そのもの(町長)に問題がありそうに感じています」
という町外の人のコメントを私はもらったことがある。しかしながら,町内の人は,ホタル保護に関する町行政の対応を,いったいどう考えているのだろうか?

辰野町のホタルを巡っては,これまで,東京都板橋区のホタル飼育施設に,ホタルが欲しいと役場職員が陳情に行って断られるという異常な事態も起きているのである。

そのような状況でも矢ヶ崎氏が,松尾峡の外来ゲンジボタル問題を任期中ずっと放置してこられたのは,町議会も町役場も,観光優先,経済的利益優先で「辰野ほたる祭り」を開催し続けているからである。

この点は,以下のページ参照

驚いたことに共産党さえも,この経済的利益優先の町政に全面的に賛成している。

さらに,外来種ホタル移入の事実を知っているのに知らんふりする三堀善業氏のような町議もいる。演歌歌手・水森かおりの「辰野の雨」に関連した矢ヶ崎氏の答弁では,彼もまた,知っているのに知らんふりしている。まさに辰野町議と町長の猿芝居である。

かの朝日新聞でさえ,かつて松尾峡の外来ホタル養殖の問題点を指摘しておきながら,今は全くそれに触れることなく,ここのホタルに感嘆するかのようなコメントを残している。

12013年10月22日,矢ヶ崎町長や共産党が支持する加島範久氏が,次期町長に無投票当選した。結局,矢ヶ崎氏は,外来ホタル対策の無視したまま任期を終えた。町おこし観光資源としてホタルを利用しただけで,生物多様性保全の観点からのホタル保護には全く無関心で,その点に関しては汚点を残した町政であった。

松尾峡は,東日本有数のゲンジボタル生息地と言われるが,実際には,膨大な数の観光用ゲンジボタルを県外から移入し放流・増殖させたから現在の姿がある。正確に言えば,今や日本最大規模の外来ホタル養殖地であり,生物多様性保全の観点からすれば,松尾峡は恥ずかしい場所であり,生物多様性基本法に反する場所なのである。

Yahoo!知恵袋を見ていたら,辰野町のホタルのガイドボランティアにさえ,町役場は在来ホタルの情報を伝えていないことが分かった。ウソで塗り固めた「ほたるの里」の実態である。

著者紹介

井口豊
生物科学研究所 長野県岡谷市
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