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2019年28巻1号(通巻84号)

表紙: 成長円錐ラメリポディア領域のアクチンの束化タンパク質ファシンの機能解析
田中みなみ、藤井裕紀、平野和巳、石川良樹、岡嶋孝治、加藤薫
(第 27 回学術集会ベストイメージング賞 OLYMUPS 賞)

 成長円錐は伸長中の軸索や樹状突起の先端に見られる構造で、水かきを持った蛙の手の様な形をしている。指の部分にはフィロポディアが、水かきの部分には、ラメリポディアが存在する。フィロポディアではアクチンの束が、ラメリポディアにはアクチンの網目が細胞骨格である。
 ファシンは、アクチンの束化タンパクで、フィロポディアのアクチン束を形成する。フィロポディアでは、数多くの研究報告がある。ラメリポディアにも、ファシンは一定量が存在し、近年は、がんの転移マーカーとして注目されているが、ラメリポディア領域のファシンの機能は未解析だった。その理由の一つは、ラメリポディアのファシンは可視化が難しいからである。
 我々は、超解像顕微鏡(SIM)を用いて、ラメリポディア領域のファシンの可視化に成功した。さらに、アクチンとファシンの共局在を、2 カメラ SIM を用いて、30nm 以下の精度で捉えた。2 つの蛍光色素の分布を 2 つのカメラで同時に捉え、アクチンとファシンの共局在を高精度で捉えることができた。
 この実験系でファシンの乖離に伴うアクチン骨格の変化を観察した。ファシンのアクチンからの乖離により、アクチン繊維束が細くなり、アクチン繊維束の方向が変化することがわかった。ファシンの乖離は、アクチン繊維束の形態変化を介して、細胞の機械特性に影響を与えていると予想し、AFM で弾性率(ヤング率)を計測したところ、ファシンの乖離により、弾性率が 40%減少することがわかった。ラメリポディアのファシンはがんの転移マーカーと報告されているが、細胞の弾性がファシンにより増加することが、ある種のがんの転移に関係しているのかもしれない。(Tanaka et al. Genes to Cells 24, p202-213, 2019)

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