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2018年27巻1号(通巻82号)


表紙: 多点走査型2光子顕微鏡を用いたマウス膵臓におけるin vivo Ca2+イメージング
山中祐実、大友康平、後藤亜衣、中山博史、堀喬、根本知己
(第26回学術集会ベストイメージ賞ZEISS受賞)

スピニングディスクを用いた共焦点走査装置は、励起光を多点に分割して試料上を並列走査することで蛍光像の高速取得が可能である。我々は、励起光源に新規ハイピークパワー近赤外超短パルスレーザー光源を用いて多点走査型2光子顕微鏡を構築し、生体試料に対して低侵襲で、かつ、広視野と高時間分解能を有する蛍光断層像イメージング法を確立した (K. Otomo, et al., Anal. Sci., 2015, 31:307)。一方、細胞内遊離Ca2+濃度 ([Ca2+]i) の上昇が惹起する開口放出は、シナプス前終末はもとより多様な細胞の調節性分泌の基礎であり、ほぼ共通の分子機構により実現されている。膵臓腺房細胞ではコレシストキニン (CCK) 等の刺激により、腺腔への消化酵素原顆粒の [Ca2+]i 依存性開口放出が惹起される。我々は生理的な条件下での開口放出の分子機構の解明には、高速3 次元in vivo イメージングによる集団的な [Ca2+]i動態の定量的解析が重要であると考え、本研究では新規Ca2+プローブGCaMP7 を細胞質中に発現するGLT1-GCaMP7マウス (G7NG817、kCa = 243 nM、理研BSI・平瀬肇博士より) を用い、膵臓外分泌腺房のCa2+応答の可視化解析法の確立を目指した。先ず、呼吸や心拍を抑制して、麻酔下のまま倒立顕微鏡ステージ上で臓器を保定する機構を導入した。その結果、安定的なin vivo 観察を実現し、膵臓で深さ 50 μm までの 3 次元的光学断層像イメージングに成功した。次に、尾静脈にカニューレを挿入し、撮像中に血中最終濃度を任意の値に調整できる様にCCK-オクタペプチド(CCK-8) 溶液を投与することで、膵臓におけるCa2+振動の広視野、高速かつ 3 次元的な取得が可能であることを確認した。CCK-8 の血中濃度が 1 → 2.5 → 50 → 1000 pM となる様、30 分毎に段階投与したところ、励起光の断続的な照射による組織の障害や蛍光色素の褪色を抑えたまま、同一の観察視野で約 90 分間に渡り、3 次元的に撮像することに成功した (図)。その結果、in vivo でも急性単離標本と同様にアゴニスト濃度依存的なCa2+応答が確認された。一方、in vivo ではアゴニスト感受性自体は昂進し、また細胞間でのCa2+振動の同期性が向上している可能性が示唆された。本方法論は、生体内で真のシグナル動態を定量的に可視化解析でき、生理機能の基盤に関する新知見を与えることが期待される。