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2015年24巻2号(通巻77号)


表紙:超高磁場MRIを用いた生体内免疫細胞脳内浸潤の1細胞レベル可視化についての検討
森勇樹,陳挺,大野工司,吉田慎一,多胡善幸,小橋昌司,畑豊,吉岡芳親
(第23回学会学術集会ベストイメージング賞(ニコン賞)受賞)
    中枢神経系は免疫特権の器官と長く考えられてきたが,最近の研究で,免疫細胞が多くの神経関連疾患の発生に重要な役割を担うことが分かりつつある.免疫細胞は,恒常性の目印となる因子群のレベルに異常がないか,脳の微小血管系を常時監視している.異常があった場合,免疫反応が始まり,中枢神経系内のミクログリアの動員,または抹消からの免疫系細胞の浸潤,あるいはその両方が起こる.しかし,正常状態・疾病状態での免疫細胞の動態には,不明な点が多い.それは,生きた組織内での細胞の動きを,低侵襲で長期にわたって可視化することが難しかったためである.今回,マウス生体脳内の細胞移動を単一細胞レベルで連続的に追跡する目的で,高感度生体MRI(磁気共鳴イメージング)技術を開発した.MRIと超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO)の血管内投与を組み合わせることで,末梢の貪食細胞が,正常およびリポ多糖投与マウスの脳内部に移行する様子を追跡できた.また,MRIのタイムラプス動画により,生きた動物脳内での細胞移動の様子を示すことにも成功した.タイムラプスMRIでは,コントロールマウス脳内でゆっくりと動いている細胞の可視化・追跡も可能である.SPIOを利用した高感度MRI細胞追跡技術は,脳内の免疫細胞の動態とCNSの恒常性維持機構について,新たな視座を提供することが期待できる.