ウルリッヒ・ベック教授、エリザベート・ベック=ゲルンスハイム教授 来日記念連続シンポジウム
個人化する日本社会のゆくえ ーーベック理論の可能性ーー Individualizing Japan and Beyond 【東京シンポジウム】 終了しました 再帰的近代化の中の個人と社会――社会理論の現在 Social Theory in Reflexive Modernization 2010年10月31日(日)12時開場、13時開会(終了17時予定) 一橋大学国立西キャンパス(JR国立駅下車徒歩6分) 兼松講堂 報告者:ウルリッヒ・ベック/三上剛史(神戸大学)/樫村愛子(愛知大学) 参加費:1,000円(当日徴収、アブストラクト集を含む) ※事前予約等は不要です。ご来場の順にご入場いただけます。 【京都シンポジウム】 終了しました リスクの時代の家族と社会保障――ベック理論との対話 Family and Social Security in Risk Society 2010年11月3日(水・祝)12時開場、13時開会(終了17時半予定) 立命館大学朱雀キャンパス(JR・地下鉄二条駅下車徒歩2分) 中川会館4階大講義室 報告者:ウルリッ ヒ・ベック/エリザベート・ベック=ゲルンスハイム/落合恵美子(京都大学)/武川正吾(東京大学) 参加費:1,000円(当日徴収、アブストラクト集を含む) ※事前予約等は不要です。ご来場の順にご入場いただけます。 【日本社会学会第83回大会テーマセッション】 終了しました 日本と東アジアにおける多元的近代 2010年11月6日(土) 13時40分~15時40分、16時~18時 名古屋大学東山キャンパス(地下鉄名古屋大学駅下車すぐ) 全学教育棟南棟S30講義室3階 報告者:ウルリッヒ・ベック/ハン・サン=ジン(ソウル国立大学)/油井清光(神戸大学) ほか4名 ※日本社会学会大会への参加登録が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。 ウルリッヒ・ベックやアンソニー・ギデンズが、「再帰的近代化」や「第二の近代」といった概念を用いて近代社会が新たな段階に入ったことを主張してから、すでに20年余りがたつ。その間、日本の社会学は彼らの理論的挑戦を好意的に受け止めてはきたものの、その可能性が十分に汲みつくされたとは言い難い。ベック理論にかぎっても、彼が提起したリスク社会、個人化、グローバル化、コスモポリタン化等の諸概念のうち、「個人化」や「コスモポリタン化」は、なお検討を深めるべき論点として残されている。今回、待望のベック教授およびベック=ゲンルンスハイム教授夫妻の初来日講演が実現するにあたって、我々はとくに二人が主張する「個人化」テーゼに焦点をあてて連続シンポジウムを開催し、この問題を、欧州、日本、そして東アジアという三つのパースペクティブから照射することにしたい。 「個人化」は、日本においても近年とくに注目されている概念である。経済が長期にわたって低迷するなか、個人の生活/人生がリスク化し、リスクに個人的に対処することが強いられるようになっている。これは単なる景気循環の問題ではなく、社会学が固有に研究対象とすべき構造変動をともなった問題である。すなわち、日本では00年代に入ってから、家族形態の多様化と個人化、キャリア形成を含むライフコースの個人化、教育や労働における心理学主義の浸透、人間関係の選択化、そしてアイデンティティの再帰化といった現象が、とくに集中的に現れている。これは、従来、リスクを縮減する役割を担っていた制度や中間集団が、機能不全ないし崩壊の危機に瀕しているからである。こうした意味で、日本社会の危機をとらえる概念として「個人化」はきわめて有効であり、その検討は緊急の課題であると言える。 我々はこれらの問題を、ベック教授の言う“コスモポリタン”な視座の下で検討したいと考えている。教授は、自ら主宰する研究プロジェクト”Reflexive Modernization”の枠内で、”Varieties of Second Modernity” (第二の近代の多様性)と題するワークショップを2009年4月に開催し、そこには中国、韓国、イギリス、デンマーク、トルコなどの研究者とともに、来日シンポ実行委員会のメンバーが招待されている。その成果は、ベック教授らが編集する欧州の学術誌の特集号に掲載される予定である。このように、夫妻は自ら「方法論的コスモポリタニズム」を実践すべく、国際比較研究に並々ならぬ意欲をもっている。今回のシンポジウムでは、これまでの成果を踏まえ、さらなる討論の深化が期待される。 個人化が注目された時期は、国ごとに異なっている。ドイツでは、ベック夫妻がそれぞれ発表した1983年の論文をきっかけに、個人化をめぐる論争が起こっている。これを受けてベック教授は『危険社会Risikogesellschaft』(1986)を著し、階級・階層に加え、女性、ライフコース、教育、労働の分野における個人化傾向を指摘している。英語圏では、2001年に夫妻による論文のアンソロジー“Individualization”が出版され、日本ではようやく2004年に、『社会学評論』が特集「『個人化』と社会の変容」を掲載している。 日本の場合は、グローバル化と新自由主義改革の急速な進行のあと、初めて個人化に注目が集まったが、欧州では“福祉国家の危機”がおとずれる以前から個人化は始まっているとされる。かつての日本では、終身雇用と年功型賃金、企業内福利厚生の制度が、生活の長期的安定を保障していた。すなわち、公共事業による雇用創出効果も含め、雇用保障のメカニズムが公的な社会保障を代替していたと言える。また、こうした企業中心主義は家族の全成員の生活を保障し、社会を統合する役割をも担っていた。こうした特徴的な制度が崩壊しつつあるいま、生活/人生上のリスクを安定化する装置は、どのようなものであるべきだろうか。「個人化」の経験的現実と理論的可能性を探究するにあたって、欧州と日本、そして東アジアを比較しながら考えてみたい。 欧州と同様、日本社会もまた、すでに「第二の近代」の段階に入っていると考えた場合、「第一の近代」から「第二の近代」への移行の時期と変化の規模、そしてその原因については、欧州・日本・東アジアの間に差異がみられるはずである。また、「第一の近代」におけるリスク縮減のメカニズムや、グローバル化や新自由主義など近年の社会変動との関係についても、比較の視座から検討されなければならない。また、新たな「自己」や「アイデンティティ」といった問題圏についても、地域ごとの差異を視野に入れた上で、個人と社会といった基礎概念の再定義から始めなければならない状況が生まれている。さらに、「個人化」の肯定的な側面と否定的な側面の関係、「個人化」の進行が第一の近代の必然的な帰結であると言えるかどうか、「個人化」とサブ政治やコスモポリタンな連帯との関係についてなど、ベック理論のなかで検証を要する論点は多岐にわたっている。 ◇企画◇
ベック来日シンポジウム実行委員会 伊藤美登里(大妻女子大学)、油井清光(神戸大学)、鈴木宗徳(法政大学) 大河内泰樹(一橋大学)、景井充(立命館大学)、日暮雅夫(立命館大学) 石田光規(大妻女子大学)、仁平典宏(法政大学)、丸山真央(滋賀県立大学) ◇主催◇ ベック来日シンポジウム実行委員会 一橋大学大学院社会学研究科 大河内泰樹(東京) 立命館大学産業社会学部 景井充(京都) ◇協賛◇ 大妻女子大学人間生活文化研究所 ◆お問い合わせ先◆ 〒522-8533 滋賀県彦根市八坂町2500 滋賀県立大学人間文化学部 丸山研究室気付 ベック来日シンポジウム実行委員会事務局 E-mail: maruyama.ma★shc.usp.ac.jp(★は半角の@に変えてください) |