はじめに



近年では、会社資産の横領・着服といった従業員不正が多く発生しています。
名だたる大企業においても、数億円規模の金銭横領などが明るみになったというニュースが聞かれる次第であり、不正が発生した後となっては、もはや手遅れとなってしまうことがほとんどです。

平成20年以後、全上場企業に対して内部統制報告制度(J-SOX)が導入され
多くの会社において基幹業務の整備がなされてきましたが
従業員不正の数が減ったとの話は全く聞かれません。
また、非上場会社や公益法人などにおいても、同様の不正が起こっています。
預金口座から現金を引き出して、遊興費に使ってしまったという話はめずらしくありません。

ここでは、なぜ、このような不正が起きつづけるのかを解説したうえで、
公認会計士が積極的に監督機能を果たすことで、従業員不正を未然に防止するご提案をさせていただいております。


<目次>






1.主な従業員不正事例


近年では、多くの従業員不正が起こっています。本項では、ここ数年間のうちに起こった従業員不正の一例をあげています

○ トイレタリー商品販売K社(東証1部)子会社の元経理責任者による2億円の着服事件

経理責任者としての立場を悪用して会社の預金口座から現金を着服。
同僚になりすましてシステムに侵入し第三者のチェックを受けたように経理処理して、実在の企業との間で取引があったように見せかけていた。

○ 電気製品メーカーT(東証1部)子会社の課長職社員による9億円の架空発注事件

課長職だった元女性社員が、取引先に架空発注し、代金を自分に還流させる手法で約9億円を着服。
東京国税局の税務調査により不正が発覚。

○ ジーンズ販売E商事(非上場)による200億円の投資損失隠し

グループの経理担当者が、自己の裁量のもとで証券投資を実行。
会社に200億円以上の損失をもたらすことになった。経理担当者の自殺によって事件が発覚。

○ バス事業会社S社(大証2部)子会社の元役員による3億円の架空工事発注事件

子会社の元役員が、架空と思われる工事及び水増し工事を発注し、その工事代金の一部を私的利用していた事件。
その額は3億5千万円にものぼる。元役員は複数の子会社の代表者を務めており、強大な業務権限を持っていたことが事件発覚を遅らせることになった。

○ 家具大手会社O社(名証2部)営業部門長による3億円の架空売上計上

元執行役員の営業部門長が複数の会社と実態のない取引を行い、回収できない売上金などが3億2千万円に上ることが発覚した。
犯行を行った元執行役員は行方不明となっている。

2.なぜ従業員不正が起こるのか

上記の従業員不正は、ほんの一部でしかありません。
今も日本のどこかで、会社や組織の現預金にアクセスできる従業員や職員が
誰の目にも触れないようにそっとお金を抜いているといっても過言ではないでしょう。
では、なぜこのような従業員不正が立て続けに発生するのでしょうか。その原因は、下記の点にあると考えられます。

1) 経営者の不正に対する意識が甘い

日本人経営者は性善説による考え方がベースにあり、性悪説に基づく欧米型の思考が苦手です。
うちの従業員に限って、横領や着服といった不正を働くことはないだろうと思い込んでいる方がたくさんいます。
実際、従業員が不正に手を染めるようになってしまったのは、未然に不正を防止する体制を経営者が確立してこなかったからともいえるのです。
こうした経営者の甘い考え方が、従業員不正を助長しているともいえます。

2)管理部門を少数の担当者に任せてしまっている

管理業務にかける資本や労力があるのであるならば、本業に力を注ぐべきであるという主張は非常に理解できるものではありますが
管理業務を1人の担当者に任せてしまった場合には、従業員が不正に手を染める環境が自然と作られてしまいます。
どんな善人であれ、衆人環視がない状況であれば、少しくらい現金をポケットに入れてもばれないだろうと思いがちです。
こうしたことが、多額の横領事件に発展することはめずらしくありません。

3) 内部監査や会計監査などが実施されていない

上記の不正事例では、上場企業でも現金の着服・横領といった不正が起こりうることを示していますが、その発覚は内部監査によるところが多いようです。
また、上場している親会社自体では不正が起こる可能性が少ないのですが、子会社で不正が多く発生している傾向があります。
公認会計士による会計監査は、親会社を中心として行われていますが、規模の小さい連結子会社では、金額的重要性の観点から、
重点的に会計監査が行われることがそれほど多くなく、このことが不正発覚の遅れにつながっているといえます。


3.なぜ公認会計士による監査が有効なのか?

従業員不正は、組織内の内部監査によってある程度は発見することができますが、
やはり外部の公認会計士に会計監査を依頼することで、その発見可能性は格段にあがります。
その理由は以下のような点にあげられます。

1)監査のプロフェッショナルである

公認会計士は、決算書の監査を通して、従業員不正などに直面する機会も多く、その兆候を把握することについても一日の長があります。
そのような意味では、公認会計士が監査を実施することで、不正を防止する効果は高くなるものと思われます。
また、公認会計士が支出の内容を細かくチェックすることが、事前に担当者に知れ渡っていれば、無謀にも不正を働く組合員も少なくはなるとは思われます。
この点は、警察官が常駐している交差点で、赤信号を渡ろうとする人がいないのと似たような話です。

2)社内の人間関係に左右されない

内部監査が忠実に行われれば、従業員不正を抑止する効果は当然に期待できますが、会社内部の従業員同士による監査の遂行は、
日頃の密な付き合いもあるせいか、なあなあになる場合も多く、効果がそれほど期待できない場合があることも事実です。
公認会計士は、職業柄、会社の担当者が虚偽の発言をする可能性を常に考え、懐疑心をもって監査に臨みます。
したがって、内部監査よりもよりも監査の実効性は一般的に高くなります。また、日頃の付き合いやしがらみもないので、
不正を行った従業員がイヤだなと思うような的確な質問をズバズバすることで、従業員不正を追究していくことを厭わずに実行することが可能です。

3)経験に基づいた実効性の高い手続の実施が可能

従業員による不正の芽は、会計監査を厳密に行うことでその大部分を摘み取ることができます。
公認会計士は、豊富な上場企業などの監査経験に基づいて、的確な監査を実行することに長けています。
実査・立会・確認・証憑突合・分析手続といった監査手続を駆使することで、不正を未然に防止することができるのです。


4.会計監査を行う監査人は誰がふさわしいか?

会計監査を行う専門家は、監査法人が行う場合と、個人の公認会計士が行う場合があります。
会社規模や取引規模などに応じて、どちらに監査を依頼すべきであるかどうかは慎重な判断を行うべきですが、
従業員不正を未然に防止する監査を依頼するのであれば、個人の会計事務所に依頼することが望ましいといえます。
以下、状況に応じて解説していきます。

A)連結子会社の場合

上場企業や資本金5億円以上の大会社であるならば、当然に公認会計士による会計監査を受けているものと思われます。
しかし、実際には多くの連結子会社において多額の横領事件が発生しているのが現実です。
その理由としては、公認会計士による会計監査が、親会社を中心として行われていることにあげられます。
規模の小さい連結子会社では、金額的重要性の観点から、重点的に会計監査が行われることが少ないのです。
このことが不正発覚の遅れにつながっているといえます。
連結子会社の場合、親会社の監査人と異なる会計士が監査業務を行うことが忌避される傾向があるので、
子会社は税理士資格を持つ公認会計士にそういった役割を担ってもらうことで、従業員不正を防止することが期待できます。
すなわち、監査契約ではなく、税務顧問契約の範囲で、任意監査をしてもらえば、不正摘発に著しい効果が期待できます。

B)非上場企業・非営利団体の場合

今まで、監査業務を依頼したことのない非上場企業や非営利団体の場合には、監査法人に業務を依頼する選択肢もあるでしょう。
しかし、いきなり監査法人に監査業務を依頼した場合、多額の報酬を請求される可能性もあるので、あまり得策ではありません。
また、任意監査においては、依頼する会社の要望に応じたサービスの提供が求められますが
規制の厳しい監査法人では、柔軟な対応を期待することができません。

法人内の審査などがあり、厳格な検証が必要になるという理由で、会計上の判断に関する意思決定が非常に遅くなるばかりか
多額な業務報酬が請求されるとともに、対応するのは会計に関する相談のみで
税務や従業員不正に関する相談をしても回答してもらえないことが多々あります。
しかし、監査法人は無限責任を負うパートナーによって構成されるものであるため
組織的な意思決定を行うことが必然的に求められ、
意思決定が遅くなるのも当然といえるのです。

個人の会計事務所では、責任の所在が個人に帰属しているため、このような不満は少なくなりますし、
人件費や事務所経費などの面でも固定費負担が少ないことから、業務報酬面でもリーゾナブルな提示になることがほとんどです。


お問い合わせ等について

経営環境がますます厳しくなっていく中、従業員の生活もそれにあわせて厳しいものになっていく傾向があります。
しかし、それと同時に多額の現金を目にした従業員は、横領・着服といったことを考える可能性も増えていくのです。
経営者は、数億円もの不正事件が起こる前に、的確な措置を打つべきです。
そして、数ある対応の中でも、公認会計士に会計監査を依頼することは、従業員不正を未然に防止するうえで、非常に有効な手段となりえます。
早急な対応をとることで、リスクに備えることが経営者の務めであることを強く認識していただき、
これを機に、監査業務を依頼することによる不正防止対策を真剣に考えていただきたいと思います。

弊事務所では、連結子会社や非上場会社の会計監査をお受けしております。
また、連結子会社については、税務顧問契約の範疇で任意監査を行うサービスも行っております。
従業員不正が発覚してしまった、緊急の対応が必要となるケースでも柔軟に対応いたします。

お見積りや、詳細なお問い合わせについては、こちらまでご連絡いただければと思います。