猫 炎症性腸疾患と脱腸
猫 炎症性腸疾患と脱腸
3歳の若い猫ですが脱腸で来院されました。
通常の外部から押し戻す処置を行いましたがすぐに再発となり、やむを得ず開腹手術を行うことになりました。また食欲の低下と慢性の下痢が継続しており脱腸を起こしたと思われます。当初3kg程度の体重が1.8kgまで減少していました。
開腹手術では腸の壊死がないかを確認し、腹部の中から腸を引き戻します。
猫また腸壁と腹壁に浅い傷をつけ、双方を縫合することで腸と腹壁を癒合させ再度脱腸しないようにします。
さらに慢性の下痢の原因特定も必要です。年齢は若くても本例のように慢性の消化器症状や著しい体重減少が見られる場合はIBD(炎症整腸疾患)や悪性リンパ腫が重要な鑑別点となるため、腸を数カ所切り出して病理検査を行いました。
手術後はできるだけ早期に適切な食事を促し栄養を与えることが早期回復に重要なポイントとなります。猫では特に手術後の食欲回復に時間がかかることが多いため食道チューブを挿入し、手術後しばらくはチューブから流動食を給餌します。食欲が出て自発的な摂食が確認された時点で抜去します。
病理検査結果ではIBD(炎症性腸疾患)が確認され、投薬により徐々に回復し最終的に体重は3kg程度まで戻りました。本例のような場合は脱腸だけを修復するのではなく原因の特定と治療を合わせて行うことが大切です。