105ヶ月の犬の口腔内腫瘍の症例です。左側下顎の犬歯のあたりに腫瘤ができ、1ヶ月の間にかなり大きくなったということで来院されました。目視では腫瘤のタイプや悪性かどうかの判定はできませんが、増殖が速く周囲に広がっていることから悪性腫瘍(癌)の可能性も心配されましたので、飼い主様と治療の進め方についてよく話し合い、麻酔による処置を2回に分けて行うことになりました。

1回目は口腔内レントゲンにより腫瘍の発生源、顎の骨や周囲の組織への侵食を検査します。また病変を一部切除し病理組織検査を行うことで悪制度の判定を含め、腫瘤のタイプを特定しました。さらに麻酔下で病変がどこまで広がっているか、歯の裏側までよく確認します。

レントゲンでは犬歯のエナメル質が一部破壊され、歯の内部 (歯髄)の方に連絡している様子が見られます。周囲の骨や歯の侵食はそれほど進行していませんが、歯肉の増生が著しいことがわかります。

病理検査は周辺性巨細胞肉芽腫 Peripheral giant cell granulomaの判定でした。これは腫瘍には分類されない反応性病変で悪性腫瘍の心配はありませんが増殖が早く周囲の歯や顎の骨を破壊することがあります。また反応性病変ということで付近に別の病変が隠れていることもあります。

悪性腫瘍(癌)も疑われるような病変では治療のアプローチについて判断が難しいことがあります。悪性病変の場合は再発を防ぐため正常な組織を含め大きく切除する方法が望まれますが、顎の部分切除など損失の大きな手術になります。一方控えめに手術をして不完全に切除するとすぐに再発するだけでなく周囲にがん細胞を撒き散らしさらに病巣を広げる危険性もあります。この場合は事前の検査で比較的悪性度の低い病変が疑われたため顎の切除ではなく原発病巣である犬歯と増殖した歯肉を全て切除することになりました。

下顎の犬歯は歯根部が大きく、犬歯の2/3が顎の骨に埋まっているため抜歯が困難な歯の一つです。無理して抜歯を試みても顎の骨を骨折する可能性があるので、外側の顎の骨を削り、犬歯を顎から引き剥がすように抜歯します。さらに犬歯に付着する増殖病変部を直接傷つけないように気をつけながら全てをきれいに取り除くように切除します。

病理検査は周辺性巨細胞肉芽腫 Peripheral giant cell granulomaの判定でした。これは腫瘍には分類されない反応性病変で悪性腫瘍の心配はありませんが増殖が早く周囲の歯や顎の骨を破壊することがあります。また反応性病変ということで付近に別の病変が隠れていることもあります。

悪性腫瘍(癌)も疑われるような病変では治療のアプローチについて判断が難しいことがあります。悪性病変の場合は再発を防ぐため正常な組織を含め大きく切除する方法が望まれますが、顎の部分切除など損失の大きな手術になります。一方控えめに手術をして不完全に切除するとすぐに再発するだけでなく周囲にがん細胞を撒き散らしさらに病巣を広げる危険性もあります。この場合は事前の検査で比較的悪性度の低い病変が疑われたため顎の切除ではなく原発病巣である犬歯と増殖した歯肉を全て切除することになりました。

下顎の犬歯は歯根部が大きく、犬歯の2/3が顎の骨に埋まっているため抜歯が困難な歯の一つです。無理して抜歯を試みても顎の骨を骨折する可能性があるので、外側の顎の骨を削り、犬歯を顎から引き剥がすように抜歯します。さらに犬歯に付着する増殖病変部を直接傷つけないように気をつけながら全てをきれいに取り除くように切除します。

最後に露出した顎の骨を被せるように口腔粘膜を縫合します。切除後は病変をもう一度病理検査に提出し、他に隠れた腫瘍病変などがないこと、病変部が完全に切除されていることを確認しました。

一般的には複数の麻酔処置を避け一度に全て終わらせたいところですが、このケースは麻酔処置を2回に分けて行うことであらかじめ病変の情報をある程度把握し、損失を最小限に完治できた例だと思います。