早期の歯周病

歯科処置は全身麻酔を伴う処置なのでまず血液検査およびレントゲン検査により健康状態を把握し麻酔処置が行えるかを判断します。また血液検査の異常値や心雑音など必要に応じて簡単な超音波検査も行います。この段階で大きな異常がみられた場合は処置を中止し、より優先順位の高い病気の治療をご提案します。

検査で麻酔処置が可能と判断された場合は、麻酔の準備をし全身麻酔下での処置に入ります。歯科処置では麻酔を導入し安定したらまず全ての歯のレントゲンを撮影し、特に歯根部や歯槽骨の状態を把握し、プローブという器具を使って歯周ポケットの深さをはかります。そして事前にヒヤリングした飼い主様の意向にそって治療をしていきます。

今回の歯科処置は奥歯(上顎臼歯)を中心に顕著な歯石の沈着があり付近の歯肉が赤く腫れているのがわかります。(歯肉炎)


一方歯科用レントゲンでは軽度な歯槽骨の減退があるものの大部分は歯根部もきれいなのがわかります。また歯周ポケットの深さも正常範囲内でしたので歯周ポケットのクリーニングを行い表面を磨いて終了します。

この例のように歯周病の早い段階で処置を行い、歯周ポケットのクリーニングを行うと歯肉の炎症も収まり歯にしっかりと密着していきます。一方この状態を放置すると歯周病が進行し歯槽骨も減退するためルートプレーニング、歯槽骨再生、抜歯などの処置が必要になります。

歯肉炎による腫れや口臭など歯周病を疑う所見が見られたらできるだけ早期に処置をすることが大切です。処置後は毎日歯磨きをすることで長期にわたり健康な歯を維持することができます。

よくある質問

歯磨きガムや歯を拭くワイプは有効ですか

口腔内の雑菌を減らしたり、歯の表面を擦ることで歯石の沈着を遅らせることが期待されますが、歯のメンテナンスで最も重要なのは歯と歯茎の間の汚れを落とし歯周病を予防することにあります。残念ながらこれらの製品は歯の先端部分への効果しか期待できず、歯と歯茎の間の歯周病への効果は期待できません。通常の歯ブラシが最も効果的な方法となります。

無麻酔での歯石除去は有効ですか

犬や猫の歯科処置の目的は歯石を除去することではなく、歯周病を治療することで少しでも長く健康な歯を維持することにあります。歯周病治療では歯と歯茎の間の歯周ポケットから歯根部にかけての目に見えない部分の処置を行うためどうしても麻酔下での処置が必要になります。

無麻酔で歯石だけ除去した場合、歯周ポケットや歯根部に残る炎症や歯周病菌の増殖を放置することになります。したがって歯周病の予防や進行を遅らせる効果は一切なく、全く意味のない処置になります。さらに健康な歯のエナメル質を傷つけ歯石の沈着を一層速めたり、歯周病の悪化に気づかないなどのデメリットもあります。